オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
タイトルが長い!
桜花殿超強化でごザルよ。変なところあったら言ってください。
次回でこの章は最後ですよー。
『いよっとぉ!そうはさせないぜぇ!!』
「っがは!?」
何かが体にぶつかり、俺は吹っ飛び転がった。
俺の体に抱きつくそいつは、銀色の髪の毛をしていた。
敵か?という疑問はすぐ様取り除かれる。
腹部に痛みが走り・・・・・ハッとした。
「ハルプ!?」
『おうっ!俺様登場、真打登場!桜花の悲鳴を聞きつけて、土壇場修羅場にいざ参上!!やって来ましたハルプさん!!』
俺から飛び退き、ハルプはそう啖呵を切る。
銀色の鎧を身につけ、その手には白楼剣。・・・・・そうか、俺は白楼剣で斬られたのか。
『さてさてさーて?悪い子にはお仕置きが必要だよな?』
「・・・・・ぅ、そ・・・?」
なぜかぼんやりとしている頭でそう考える。
妖夢は傷ついた体を抱き締めるようにハルプと対峙していた。その目が、絶望に暮れていた。
お仕置き?まさか、妖夢を殺す気なのか!?
止めないと不味い!!
今更ながらにそう思い、叫ぶ。
「待てハルプ!!それは」
『チッチッチ、言うな。分かってらぁ!』
そう言って楼観剣まで取り出したハルプ。絶対に分かってないだろ!!
妖夢は最早動く事すらままならない筈だ・・・・・!諦めるな・・・・・まだ、届く!!
────体が雷を纏う。詠唱無しで使う魔法。
助けなくてはと言う感情が、限界を超えさせた。
縮む視界。全てが引き伸ばされる様な状態で、俺はハルプに攻撃した。
『なにー?!』
ひねりを加えた一撃。今の俺に許された全力。
怪物を殺すための槍。
その一撃はハルプに直撃し、爆発。
「妖夢!無事か!!」
「だ、め・・・・・白楼剣、をつかっ、て・・・・・」
「そうか!!白楼剣!」
ボロボロの妖夢にそう指示される。そうだ白楼剣なら魂を斬れる!!
辺りを見渡し、地に突き立つ白楼剣を見つける。雷を纏ったまま急行。白楼剣を握ろうとしたが・・・・・それよりも先にハルプが掴んでいた。
くそ!速い!
俺を見上げ、真剣な顔でハルプは言う。
『・・・・・桜花、白楼剣は魂魄の血筋しか使えない。止めるんだ、凄い痛いぞ』
「・・・・・・・・・・俺は、妖夢を助ける」
『にしし、ならやめときな?』
「いう、事を、聞いたら・・・・・ダメ!」
『テメェ・・・・・ふざけ』
幻の正体がハルプなら、切り倒してでも進まなくてはならない。
だから・・・・・!
「ふんっ!!」
『ちィ!!』
発勁で吹き飛ばし、白楼剣を掴む。
その瞬間、視界が点滅した。
それが拒絶反応だと気がついたのは痛みを認識してからだ。
「ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?!?」
視界が点滅し、体はおぼつかない。
思考だって、上手くいかない。
だが、守るべき者が後ろにいる。
ならば、立つ。
単純化した思考で、そう願った。
「ハルプ・・・・・お前を、斬る!!」
『あ、あっれれ〜?正義の味方参上とか言ってたのに・・・・・なんか俺、悪者みたいになってんじゃん?おかしいなぁー』
斬る。真っ直ぐ、全速で、単純に。
考えるな、斬ればわかる。妖夢だってそう言っていた、あの時は「んなわけ無い」と言った。
ニヤニヤと笑うハルプに、俺は全力で斬りかかった。
「ぉおおおお!!」
『っ、マジかよ!白楼剣振り回せんのか桜花!?何ですか、気合いですか!?気合いの力ってスゲー!』
ハルプが俺を避けて妖夢に向かおうとする。だが、俺はそれより早くハルプの前に立ち塞がる。体が異様な程に軽い!!行けるか・・・・・?!
『はっやい!?おいおい!?桜花お前そんな速くなかった筈じゃ・・・・・!?』
俺の全力の攻撃は、全て受け流される。
雷を纏っていると言うのに、鎧のせいなのか全く効いていない。
魔力の全てをつぎ込んででも、加速する。
『桜花聞け!』
速く。
「聞かん!!」
速く!
『なんだとぉ!?』
速く!!
「ぉぉぉぉおおお!!!」
全力の振り切り。死体と血煙が巻き上がる。
『・・・・・・・・・・・・・・・おい、桜花。話を、聞け』
「はぁあああ!!」
『あぁクソが』
ハルプが指を鳴らした。隙だらけだ!俺の全力をかけて・・・な!?
─────俺は空を見上げていた。
なにが、起きた・・・・・?
咄嗟に周囲を見渡す。ハルプがこちらを見下ろしている。
『話しを聞けって、言ってんだろ?』
苛立ち、俺の腹を小突く。痛みは無い。それどころか、少し嬉しそうに見える。俺を無力化できたから、楽に殺せると、そういう事か・・・・・!
『白楼剣握って尚且つ魔法まで使うとか、魔力枯渇すんぞ?』
他に勝つ方法なんてないんだ、なら、これでいい。
俺は立ち上がろうとして失敗する。
『はぁ、止めないか。ならいいさ、そこにいろ』
ハルプが右手に白楼剣を持ち、妖夢の方へと歩いていく。止めなくては。
「待て!ハルプ・・・・・!くそ、なんで動かないんだ!?」
ハルプが白楼剣を掲げる。
妖夢が儚げに、こちらを見て微笑んだ。
─桜花は悪くないよ─
そう、口が動いた。
「クソがっ!!」
動け、動けよ!?お前は何がしたいんだカシマ桜花!!助けたいんだろ!?妖夢を助けたいんだろ!!!
こんな情けなくて良いのか!?団長ならもっと・・・・・!
──夢想するのは過去の妖夢達。
黒いゴライアスとの死闘。あの時、あの2人は身を呈して戦った。体を張ったんだ。
なら、俺も。団長の俺も──────!
「─────体をはれぇええええ!!」
──何が壊れた音がした。
『────っ!!』
「はぁ、はぁ・・・・・殺らせないぞ・・・・・」
『ははっ・・・・・1%を超えやがった』
ハルプがため息をつきながら笑い、2歩ほど退る。そして刀を構えた。
「
「もう、俺は逃げたくない」
もう、逃げられない。これ以上は。
槍を構えハルプと対峙する。
『運が無いな、俺は。でも・・・・・』
物理的な圧を感じるほどの、殺気が俺を押し退けようとする。足に力を込め、睨みつける。
『勝てないぞ、桜花じゃ』
「ッ!!」
神速の一撃。
刀同士がぶつかって火花が散る。というか、火花しか見えない。
速すぎる。防げたのは単なる偶然。構えていたら、そこに当たった。ただそれだけの事。
「ぐふっ!!がっ!」
吹き飛び死体の山に突っ込む。
『はっはっは、桜花、諦めてくれ。これはお前の為なんだぞ?』
まだ、遅い・・・・・!!
魔力を雷に返え、更に速く。
『おー速いねっと!!』
「んぐぁっ!!」
蹴り。
俺の全速力はあっさりと蹴り破られる。・・・・・だがやられっぱなしになる訳がない。タケミカヅチ様に鍛えられたんだ、まだ、何とでも・・・・・!
『───ありゃ?』
蹴り飛ばされる衝撃と勢いを利用し、逆に投げ飛ばす。
そしてそこに袈裟斬り。大量の白い光が空へ飛ぶ。
『あぁ───痛い。とても痛い。まぁだが、嫌いじゃない。どうせ消えるなら、最期くらいは、一人くらいは・・・・・助けたいからなッッ!!』
「ぐっ・・・・・!!ぁあ!!」
ぐらりと揺れながら立ち上がったハルプは、陰鬱とした表情から一転、烈火の様な表情で、そう叫ぶ。
そして俺は反応すら許さず、吹き飛んでいた。
「ぐ・・・・・」
立ち上がり、ハルプを見る。その顔は、何処か覚悟を決めていた。
『立て桜花。お前はきっと、違う道を歩める。なら、餞別だ。ここで今のお前の限界まで、強くなれ。そうすりゃあお前は俺を殺せるさ』
「上・・・・・等ッ!!」
白楼剣を握りしめる。熱をあげて反発する白楼剣により手の表面は焼け爛れ、白楼剣とくっ付いている。だが、好都合だ。これなら疲れで落とすことも無い。
雷を滾らせて、構える。
ハルプも自然体で構えた。
俺は雷に全神経を集中する。
ハルプが地を蹴る音、それよりも速く、バチッと雷は反応した。それに従い、俺は屈む。頭の上を白楼剣が通り過ぎる。
『!』
驚いた顔のハルプの顔を狙い、突き上げる。
顔をそらされ回避、蹴りを放つハルプだが、バチッと雷が反応する。
「おおぉぁ!!」
雷は金属に反応する。雷を纏い、雷の動きが分かる俺は、鎧を着て刀を振るうハルプの動きを、接近された瞬間、ほんの一瞬だけは理解できる。
バチッ、バチッ、バチッィ!!
音が響く。剣戟が鳴る。何かが潰れる音が響く。
剣圧は風を巻き起こし、剣閃は光を乱反射した。
互いに、傷が増えていく。
圧倒的なステイタスの差を、魔法でどうにか埋めながら、俺は薄氷の上の戦いを繰り広げた。
右から来る。下に屈む。蹴り上げが来る。後ろに退る。振り下ろしだ。刀を水平にし、流す様に受ける。
頬を刀が滑る。吹き出す汗、流れ出る血液。それらを雷て吹き飛ばし、俺は白楼剣を奮った。
小さく、傷付けた。白い光が少し飛ぶ。
戦いの中、ハルプの顔は百面相を繰り返した。
嬉しそうだったり、陰りを見せたり、楽しそうにしたり、悲しそうにしたり。傷付けられれば少し怒り、俺を傷付け「してやったり」と自慢げな顔をする。
でも、常に、笑っていた。
不思議な感覚だった。手に汗握る、一瞬の油断も出来ない戦いなのに、意識だけは、それを少し離れた場所から見ていた。
俺は今、目の前の少女を・・・・・ハルプを、別の誰かだとは思えない────
「がはっ!!」
突如、腹部に重い一撃を受けた。思わず膝をつき、白楼剣を杖にして体を支える。
『────これはとある男の話だ。』
ハルプは突然、そう語り出した。
『男はとあるファミリアの団長だった。皆からの信頼は厚くく、実力もあって人望もあった。責任感も強く、常に苦悶していた。』
何処か遠くを見るように、悲しげに二刀を消し去る。
『ある日、その男の家族は気が狂ってしまった。それをどうにかしようと、その男と家族は立ち上がった。ファミリアの者達はそれを知らなかった、けど、感じ取って協力した。集結するファミリアの面々に、その男は感動して、狂った家族を救おうとみんなを鼓舞した。』
気が付けば鎧も消え、普段の服装となったハルプは、ゆっくりと俺の方に向かってくる。
『だが、狂った家族は不思議な力を持っていたんだ。男達は皆、不思議な世界に飛ばされた。荒野の世界、矛盾の世界、死体の世界、孤島の世界。男は死体の世界に飛ばされた。』
ハルプの話に、聞き覚えがあった。だが、確信は出来ない。立ち上がろうと踠くが、上手く力は入らない。
『男は絶望した。どこを見ても、知っている顔ばかり、どこを歩いても、愛する家族を踏みつける。心が変な音を立てた。男は気絶し、暖かな布団で目を覚ます。そこには家族が居た。姿こそ変われど、変わることのない家族が。』
語り部口調になり、ハルプの話しは進んでいく。そして、進めば進むほど、俺に当てはまっていく。
『家族は男に協力した。元の世界に帰るために。しかし、男はその家族も助けようとした。心が折れそうになる旅を続けた。やがて、心は折れた。家族はそんな男を心配し、命を捨てて戦った。』
妖夢を見る。出血が酷いのか、目は虚ろとなり、今にも死んでしまいそうだ。どうにかして動かないと、助けられない。
『男は悲しんだ。男は感謝した。男は・・・・・家族を信じた。─────────そして、裏切られた。』
ハルプの声が低くなる。憎々しげに妖夢を見た。
妖夢が、少しだけ、身じろぎしたように見えた。
『罅に飛び込めば、元の世界に帰ることが出来る。男は家族を信じ、飛び込んだ。そして』
ハルプが叫ぶようにして、手に刀を作り出す。
・・・・・帰れるのか?話を聞いて、少し迷いが生まれた。
『また、繰り返した!!!』
怒り。堪えようのない怒りが、ハルプを支配している。それがはっきりと分かる。
俺はひたすらに困惑していた。
『男の心は砕けた!!なんど罅に飛び込んでも、元の世界には帰れない!!帰ることが出来ない!何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!!!・・・・・家族を踏み付け、2度と会うことは無いと、そう思った。』
疲れたように、息を吐く。
『・・・・・・・・・・俺が、そいつを見つけた時、もう・・・・・ダメだった。廃人だ。義務感、罪悪感、正義感、猜疑心、疑問、疑惑・・・・・ありとあらゆる感情が、そいつの心を粉微塵に砕いちまった。』
ハルプの目が、赤く輝いて見えた。
『だから、
ハルプが俺を捉える。俺は・・・・・目をそらした。どうすれば良いのか、分からなくなってしまう。
俺は、妖夢を信じてきた。なら、信じきるべきだと、俺の心は言う。
だが、理性が待ったをかける。ハルプの情報に嘘は見られない。
『桜花、お前は─────砕けてくれるなよ』
ハルプが妖夢の元に歩いていく。ゆっくりと、しかし、確かな足取りで。
俺は、まだ、迷っている。
情けない。俺はダメなやつだ。どうして、こんな。
自分を責める。責めてばかりで進まない。
だからダメなのだと、理解しているのに進めない。
ハルプが何かに気が付いたように、固まった。
『・・・・・・・・・・お前妖夢じゃないな。いや、妖夢だけど、俺が混じってる』
そんな声を聞いて、顔を上げる。どういう事だと聞こうとしたら、ハルプは妖夢の顔から眼帯を引きちぎる。露出する、赤い瞳。
『・・・・・貰ったのか。』
「・・・・・」
ハルプの問に、ゆっくりと妖夢は頷いた。
『・・・・・後悔は、あるか』
「・・・・・」
妖夢は上半身を起こすのも辛そうにしている。だが
頷く。
『その目が、この世界の基点になっている。・・・・・渡してくれるか?』
「・・・・・」
・・・・・妖夢は首を横に振る。
もしも、その基点とやらが無くなれば帰れるのだとして妖夢も助けられるのだろうか。
「ハルプ、その基点を壊せば、助かるのか!?妖夢は!」
『あぁ』
突如降って湧いた朗報に、浮き足立つ。俺は気が付けばハルプを信用していた。
「妖夢!その目を、諦めてくれないか?お前を助ける最後のチャンスなんだ!」
俺は妖夢に駆け寄る。いつの間にか、体は動くようになっている。
妖夢は悲しそうに目を伏せる。顔は血が足りないのか青白くなっていた。体は震え、もう助からないかも知れない。
「何でだ妖夢、俺は・・・・・・・・・・お前を、助けたいんだ」
「
ポツポツと、消えそうな声で明かされる妖夢の心境。
長年一人でいて、大切な誰かに似た何かを殺し続け、やっと、やっとの事でであった家族は・・・・・すぐさま帰ろうとしていた。
だから、離れたく無かった。
仮に家族の元の世界に自分が行ったとしても、邪魔になるだけだ。
だから、止めようとした。でも、帰ろうとする家族は必死で、自分がその立場だったらと考えて・・・・・止めることが出来なくて・・・・・少し魔がさして騙してしまおうと考えた。
そうすればずっと一緒にいられると思ったから。
ゆっくりと途切れ途切れに語られる妖夢の心境に、俺は様々な気持ちを抱いていた。
騙されたのか、と言う確かに落胆もあった。けれど、それは些細なものだ。
根底にあった守りたい、助けたいと言う想いは曇らない。
「・・・・・居てやるさ、ずっと。だから、行こう。」
俺がそう言って笑い掛ければ、妖夢は目を見開いて・・・・・涙を流しながら笑った。
「ありが、とう・・・・・!」
妖夢は必死に声を絞り出しそう言って、俺に抱き着いた。
その背中を確りと抱き締め返し、ハルプを見る。
『やれやれ、なんだかなぁ・・・・・必死こいて助けに来たのにねぇ。お前ら帰ったら俺消えんだぞっ!うあー、そうやってイチャイチャすんなよ!!』
「ありがとう、ハルプ。助かったよ」
ハルプにお礼をする。こいつがいなければ、俺は絶望していたのだろう。そう思うと、感謝の気持ちが溢れ出す。
『はぁ〜・・・・・死んでしまえ、この朴念仁が。』
「なんでだ!?」
その後、ハルプが妖夢から赤い瞳、基点を取り出し、破壊。
すると、地面を覆い、空から垂れ下がる死体たちが光となって消えていく。
「「うわぁ・・・・・」」
ハルプから治療を施された妖夢は、少し元気を取り戻し、窶れた顔も、少し良くなった。そしてこの光景に感嘆のため息をつく。
そして、ハルプから色んな話を聞いた。
ハルプの能力の話し。
基点について。
世界の脱出方法などなど。
話し終えて、ハルプは腕を組んで頭を悩ませる。
『・・・・・むー、気に食わん。俺だけ消えて、みんな無事とか・・・・・許さん!という訳で桜花!勝負だ!!俺の技色々と教えてやんぜ!!』
まだ教えてくれるのか。と少し笑う。するとハルプは『何笑っとんじゃー!』と飛びかかってくる。
ハルプは消えてしまうのだという。だが、俺は心配してなかった。ハルプ本人も決して深く考えている様子もない。
ハルプは言った
『消えるっつっても、未来から来ただけだし?例え消えたとしても?この時代の俺はいる。そして、俺よりも長くお前達と居てくれる。なら、いいじゃん?ね、ね、いいよね?』
なんだか最後の方が心配そうだったが。
『うし、じゃあ、やるぜ?』
ハルプは刀を肩の上まで水平に上げている。
あの構えを俺は知っている。「燕返し」だ。決して回避の出来ない魔剣。
『最後に、教えてやるよ』
ハルプがそう言うと、ふと、
「『秘剣──────』」
俺だって何度も練習した。追いつくために、追い抜くために。
ハルプが優しげに笑う。
過去に何度も何度も反復練習をくりかえした。
結局出来なかったが・・・・・今なら、行ける!いや、やらなきゃならない!!ハルプの意思を無駄にしないためにも。
「『燕返し───!!』」
合計にして六つ。俺に向かってくるのは三つ。そのどれもが即死の一撃。俺は三つを全て防御に使う。
『じゃ、終いだ。終わらせろ、桜花!!』
「・・・・・応!!」
三本の刀を三本の刀で受け流す。
受け流し、開かれた中央。ハルプへの最短距離。
即座に弓を引くように刀を構え、魔力の殆どを雷に変え、雷を全て刀に纏い・・・・・放つ、文字通りの全力。
「牙突────雷式!!」
───俺はきっと、この
─────
─────
雷の閃光は弾け、大量の光が飛び散った。
残心も程々に、倒れるハルプを受け止める。
『いいね、良い、一撃だ。桜花・・・・・団員たちが、お前を待ってる。皆、あの時、傷を負った。多くの者が、血を流した。帰ってこなかった奴らが居た。だから、お前が助けるんだ。桜花、俺の歩んだレールから抜け出した、お前にしか頼めない。』
ハルプが俺の手を掴む。俺も握り返した。
「俺を誰だと思ってるんだ?」
ニッと笑って、ハルプに問いかける。
『ムッツリの意気地無しの情けない団長様、だろ?』
「うぐっ・・・・・そ、そうだな!!そうだよ、悪かった!!・・・・・だから、変えてくる。助けてくるよ」
『ふふ、あぁ、任せたぜ。』
ハルプが手を翳す。すると、空間が捻じれ、トンネルようなものが出来上がる。これを通れば、次の世界だ。
『これを、持っていけ。ほかの世界に行くのにも、帰るのにも必要だ。・・・・・でも、帰るときは、そこにいる俺を倒すしか無い』
ハルプが俺を呼ぶ。手を差し出してきたから、手を受け皿のようにして待っていると、べちょっと目玉が落ちてきた。驚いたが、先の妖夢を見ていたからか、やり方は分かる。
「すぅ─────ありがとうな」
『おう!』
俺は自分の左目を引っこ抜く。
「んぐっ・・・・・・・・・・ぁぁ!い、てぇっ・・・・・!!」
そして、そこに赤い瞳を嵌め込んだ。
『それでそれは、お前のものだ。消えないし、無くならないよ。・・・・・頑張ってくれよ?桜花』
「あぁ────任せろ」
───────
「────待たせたな、お前達。」
俺が辿り着いた世界は────矛盾の世界だった。
「桜花殿?!」「桜花!!」
次話は既に書き終わっているのです。頑張るのです。
コメント、誤字脱字報告いつでも待ってます。