オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか? 作:シフシフ
「・・・・・・大丈夫みたいね」
幻想郷を少し越え、冥界の白玉楼にて──八雲紫は呟く。その視線の先には─────
「ふぁ~、妖夢、妖夢は何処に・・・・・・!!」
鼻血を吹き出して倒れた妖忌が居た。白い敷物は真紅に染まり、香り立つ鉄は興奮の証だ。
「親バカって怖いわねホント」
この場に幽々子がいたのなら「お前もな」と言われそうなセリフだが、紫は「はぁ」と溜息をつきさも嫌そうに能力を使用。即座にその血を掃除する。
「・・・・・・」
チラリ、と先程、いや6年ほど前から開きっぱなしのスキマを見やれば其処には妖忌が求めてやまない妖夢の姿が。
妖怪に良く似た、けれど全くの別物であるモンスターと仲睦まじく話し合って宴会を開いているようだ。恐らく、妖忌は孫娘の和気あいあいとした「女子らしさ」に頭をやられ鼻血が止まらなくなったのだろう。
「哀れね・・・」
その言葉が指したのは妖忌かそれとも妖夢か、はたまた妖夢に取り付く悪霊か。
「迎えにはいつ行こうかしら」
妖夢が悪霊に取り憑かれたと知った幽々子の慌てふためく様は非常に美味しかったが、それとこれとは別だ。友人との約束は守らねばならない。
あの悪霊が妖夢を殺そうとしている訳では無いと知った幽々子の顔も紫は大変気に入った。
「たしか妖夢の記憶が戻ってから周りとの関係を上手く構築出来たらよね?ある意味残酷だけど、お化けの考えることはわからないわ」
幽々子の提出した条件に文句を付けず、従ってあげる紫。妖怪なのだから仕方ないとは言え、他人の感情がどうこうするのを見ていたい。そんな気持ちは確かにあった。妖夢は失意の中どう思うのか、見てみたかった。
「さて────────」
紫は立ち上がり、くるりと背を向け歩き始める。そしてスキマが開きそこへ入っていった。
「────女狐め。幽々子様の友でなければ斬り殺しておったわ」
妖忌はパチッと目を開き、そそくさと身支度を整える。彼の紫に対する好感度はここ数ヶ月で一気に下がっている。何故ならば妖忌が「妖夢に会いに行く!」という度に全力で止められるからだ。
「もう、儂我慢できそうにないんじゃが・・・・・・おぉ妖夢よ、どうか早く帰ってきておくれ!そして儂「おじいちゃん!ただいま!」って・・・・・・!ブホォ!(鼻血)」
愛情は鼻から出る。
「イイ!可愛いっ!!ハウッ・・・・・・!?」
腰痛は腰からくる。
『さぁて!じゃあやりますか!』
宴会の途中でハルプが立ち上がってそう言いました。今回は私もお酒を飲んでいません。当然ですね、飲むと倒れますから。
「本当ニ変ワルノカ?」
「キュー」
「心配でスね」
異端児の皆さんからも心配する声が。不安と期待が綯い交ぜになっているようです。
『まーかせろ、俺を誰だと思ってる?最強の能力を持った最強の男!!』
「「「「「「男?」」」」」」
『言うな、傷つく』
ふふ、皆に言われて上を向いちゃってます、涙まで演出して割と緊張してますね?誤魔化すの下手ですよー?ほら、タケも笑ってます。
「こ、これから世界が変わるのですね」
「そそ、そうらしいよリリっ、僕、実感がわかない」
「おう、俺もだ」
「春姫殿、良く見ておいて下さい!きっと凄いですから!」
「うんうん!」
「然様でございますか!私、より一層胸が高鳴って参りました!」
「おいおい、プレッシャーをかけてやるなよ。ハルプが困るだろ」
・・・・・・ハルプ、固まってますね。
私はハルプに近づき、トントンと肩を叩きます。するとハッとして再起動しました。プレッシャーで押しつぶされてましたねこれ。
『よぉし、行くぜ、うん。いくぜ』
ハルプは体の中から水晶を取り出しました。宴会をしていても食べることが出来ず雰囲気を楽しむことしか出来なかったフェルズさん、それを察して頼み事したハルプとの共同戦線です。
『あー、もしもし、俺だよー』
〈私だ〉
『お前だったのか』
〈?〉
『何でもない。で、どうだいそっちは』
〈ウラノスとの話しはついた。これより30秒後に、世界全体に異端児の存在は広まるだろう〉
『どうやってやるんだ?』
〈ウラノス本人が語ることになっている、先程の手はず通りの内容だ〉
『そうかそうか、ありがとな、じゃあ合わせるから』
〈頼む〉
むー、ウラノス本人の声となれば皆さんの信用も跳ね上がり、可能性も多少上がるのでしょう。ハルプが言うには全員に異端児の事を意識させなければイケナイらしいです。まぁ、認識を変えるんですから、知らなければ意味無いでしょうからね。
「・・・・・・」
「おいタケ、そこまで緊張しないでおくれよ。隣にいるボクにまで緊張が移ってしまうよ」
タケ・・・・・・なんだか嬉しいですね!皆が私たちを見守ってくれる。私たちを信じてくれている。気持ちのいいものです。暖かいです!
『さぁ、変えよう。何もかも、俺達の思うがままに』
「はい」
ハルプがニッと笑って私に手を伸ばす。私はその手をしっかりと握った。
『理不尽なんてぶっ飛ばす、常識なんて覆す!』
緊張した顔付きで、けれど確かな意思を感じさせる言葉で、宣言する。
『準備はいいな?』
「はいっ!」
2人で深呼吸する。すって、吐いて。すって、吐いて。時間が来るまで待って、待って、待って・・・・・・。
『────よし』
目を瞑っていたハルプが小さな呟きと共に目を開く。私も予定通りに感覚共有をして、念のためこの暖かな感情を送る。緊張が少しでもほぐれるように。
『───権限を行使する!』
世界は──────音を立てて崩れだした。
もちろんいい方向に!
「ふぅぁ~、おはようございますぅ」
あれから数日、私達はのんびりとした日々を過ごしています。オラリオは今日も平和ですよ。以前とはガラッ!と変わりましたがね。
『おっ妖夢起きたか!なぁなぁ早く早く開店一番で店入るんだろ!?』
「あぁー、そうでしたね。フッ!!」
パチン!とほっぺを叩いて気合い充分!眠気はサヨナラしちゃいます。そして顔を洗って急いで着替え。
「んー、どうですか?」
『おー似合ってる、流石だな!』
「えへへ、ありがとうございます」
私は誕生日の時に貰った猫耳フードのパーカーに、ミニスカート、そしてニーソックスと言う出で立ちです。対するハルプは、両腕、腰、足を鎧で覆っており、ワイシャツ、丈の短いブレザーに私とお揃いのミニスカート。それと白いマント。そして、私たちの頭には命に貰った髪飾りを付けてます。完璧です。
『武器はどうするか』
「あ、私はナイフで」
『OK、じゃあこれねー』
「ありがとうございます。ハルプは刄軍・無銘の太刀で良いですか?」
『いいぜ!』
お互いに見せ合いっこして、変な所が無いかを確認。OKですね、可愛いハルプです。
ぇ?そ、そんな、恥ずかしいので褒めないで下さい!
『うむうむ、じゃ、行こうか!』
「ええ、行きましょう!」
ハルプが差し出してきた手を取って、歩き始めます。目指すはクルメのお店。異端児の皆さんを呼んであるので、貸し切りです!
あ、そう言えば異端児の呼び方を変えようって街の皆さんが騒いでましたが、あれはどうなったんですか?
え"・・・・・・
さて、町中を歩く私たちですが、以前との違いはすぐにわかりました。
「キュイー!」
「うふふ、可愛いー」
「キュ!キュー!」
アルミラージを撫でる女性。
「いやっほぉー!!たっのしーー!」
「待テ、危険ダト言ッテイルダロウ!」
「嫌だ!おれはグロスさんの背中で滑り台するの!!」
「私もー!」「僕もー!」「わーわー!」
子供たちがガーゴイルにじゃれ付いていたり。
「ははー!アンタやるな!」
「まだまだだなモルドっち!」
「そらよっ!!」
「へへっ!」
リザードマンが模擬戦をしていたり。
「デは行きまスよ、~~♪~~♪」
「「「「~~♪」」」」
広場の音楽隊にハーピィーやセイレーンが加わっていますし。
「ヒヒィイン!!ブルルル」
「おおっと、すまねぇ!流石に重過ぎたか!?」
「ブルルル!」
「おっ?軽すぎるってのか!いいねぇ!そう来なくっちゃな!」
ペガサスやユニコーンが荷馬車を軽々と運んだり。
「よっ!いい飲みっぷりだ!」
「おいアンタ、俺と力比べしねぇか?」
「カードで勝負だ」
「へっ、飲み比べなら負けねぇぜ!」
酒場では赤帽子のゴブリンが勝負事で無双していたり。
「賑やかですねぇ」
『あぁ───────良かった』
およ?っと、ハルプの方を見れば、慈愛の眼差しをしていました、ちょっとずるいと思ったのは内緒です。私にはまだあんな顔はできそうにありませんね。
「あっ!妖夢さーーん!ハルプさーん!」
「えっ何処ですか!?あっ!妖夢様ーーー!!」
「っておい!お前らいきなり走らないでくれよ!!」
なんて言ってたらベル・クラネルさん達が走ってきましたね。ハルプはその表情を何時ものニヤケ顔に変えると『リリルカー!』とリリルカさんを抱き留め、ベル・クラネルさんを回避しました。「あ、あはは」とベル・クラネルさんが残念そうにしてます。フォロー必要ですね。
「こんにちはベル・クラネルさん!いいお天気ですね!」
「はいっ!それに、街も賑やかです!」
実に嬉しそうにベル・クラネルさんは笑った。私やあの場所に居た人々はハルプの能力の対象からは外してもらっていますから、変わる前を知っているので喜びも増します。
「おーい、フォー!そっち運んでくれー!」
「フォォォオオオ!」
「いいぞ!おおおお、すげぇ!何個運ぶんだよ!?はっはっは!」
・・・・・・ほんとに、いい景色です。
『さて、リリルカ成分も補給したし行くかな』
「え、ずるいです私も補給したいです。リリルカ、来てください」
「────は、はいっ!」
「おいリリ助、顔真っ赤だぞ」
「ヴェルフ様は黙っていてください!」
「イッテ!イッテ蹴ること無いだろ!」
ハルプもそう思いますよね?
『うん。最高っ』
「これを私達が作り出した、なんて少し信じられません」
ハルプが変えることが出来たのは約90%の人類です。つまり、残り約10%の人類は異端児を嫌い、攻撃してきます。この街でも同様に、異端児を怖がり隠れてしまう人や、夜に闇討ちしようとする人が居るはずです。
『それを止めるのが俺達の役目ってこったな』
「ですね」
残りの10%は、私達や異端児の皆さんの努力で埋めて行くしか無いようです。でも、この光景を見たあとなら頑張れます。だって、楽しいですから!
『よーし、ほら行くぞ』
なので美味しいご飯を食べて力を蓄えなければっ!
『・・・・・・食いしん坊(ボソッ』
「違います!!」
もう、デリカシーがありませんねハルプは!
塔の最上階附近、フレイヤは俯いていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オッタル」
小さく呟かれる名、すぐさま帰ってくる返事。ただならぬ雰囲気の中、フレイヤは顔を上げる。その頬には1滴の涙が。
「なんで、なんで私は地上を歩けないのぉ・・・・・・!」
そして、フレイヤは物凄い情けない声を上げた。
「もっ!申し訳ありません。ギルドがフレイヤ様の魅了を警戒し、異端児などへの影響を恐れているようなのです、今しばらく我慢を」
オッタルはキュン死しそうになり止まった心臓をぶん殴り再起動させると、フレイヤに事の事情を説明する。しかしその程度でわがまま女神☆フレイヤちゃん!が黙る訳もなく。
「無理っ!もう無理よ!だって私いっっっっぱいっ!我慢したものっ!そうでしょ!?ねぇねぇそうよね!?」
「はぅっ!?・・・・・・はい、フレイヤ様は凄まじい苦痛の中耐え忍んでおります」
オッタルの胸に飛びつきスリスリしながらの全力の媚び売り。オッタルの心臓が3度止まり再起動するを繰り返す。
「お願いっ!なにか一つでいいから叶えてオッタル!」
「(幼児退行したフレイヤ様かわゆす)わ、分かりました。何がよろしいですか?」
「あの2人と交流したいわ!!」
「よろしいので?魅了されてしまっては・・・・・・」
「大丈夫よきっと!うん、平気よ!私の感が言っているわっ!」
腰に手を当て自信満々に人差し指をオッタルに向ける。そこには美の女神ではなく、お預けをくらい続けた小動物のような美女がおりましたとさ。
「(キャラがブレてるフレイヤ様可愛い)畏まりました、では連れてまいります」
オッタルは飛び出した。妄想したのだ。妖夢とハルプに直接会い、蕩けるフレイヤの顔を。
───────見たい(迫真)
もうオッタルは止まらない。まさに猪だ。
予め聞き及んでいる。まだ時間は速いが、クルメ・フートが開く店にて異端児と落ち合うことを。ならば、そこに向かうまで!
「ん?っ!?走らないで下さイ!うぁぁああア!」
猪の疾走に巻き込まれた妖夢の担当職員、ジジが跳ねられ空を飛ぶ。しかし、そこはオッタル。吹き飛んだジジは空中で回転を繰り返し、ギルドに配置されたソファーにボフッと落ちて無傷。
「な、何ガ・・・・・・?」
ジジは困惑とともに、バラ撒かれた書類を回収するのだった。
『よーっおっし!貸切!』
いっちばーん!俺達の勝ち!ココをキャンプ地とする!
「これからは事前に言ってくださいよ、楽しみにしてくれ人も増えて来ましたから」
クルメが眉毛を八の字にして、困ったようにいう。確かに予約とかしとけば良かった。でも、ほかのお店でもみんなこうやってたからいいのかと思った。
『まぁまぁ、いいじゃねーか!許せ!』
「酷い!?」
「立場の乱用はやめましょうかハルプ」
『ちっ、反省してまーす!』
妖夢に怒られたのでやめます。
「あはは、私じゃなかったら止めないんですか?」
『えー?他にはタケとー、命とー、千草とー、桜花が言ったら止めるぜ!』
巫山戯てたどたどしい口調にしてキリッとキメ顔。妖夢が吹き出し、クルメが苦笑いしてる。
『さぁクルメ!喜べ沢山来るぞお客が』
「えっ、本当ですか?どんな人ですか」
『異端児のみんな!』
「おー、仕入れたんですね!?」
『食材じゃ無いぞ!?』
「わ、えっと冗談です」
『え、何そのブラッドジョーク。おっそろしいわ』
こわっ!あれ、妖夢がお腹抱えてる。ふむふむ、クルメさんは料理になると怖いですよね?確かに、でも笑うほどでは・・・・・・
「えっと、何時頃に異端児の皆s」
クルメがなにか言おうとした瞬間、店の扉は開け放たれ、雪崩込むようにして異端児の皆がやってくる。
「いやぁ~、つっかれたーー!」
「ハァ、子供ノ相手ハ疲レル(チラッ」『おい何で俺見たおい』
「朝の歌は良いデすね〜」
「カタカタカタカタ」
「『ひぃいいい!人骨ぅ!?』」
「カタカタカタ・・・・・・」
「おいハルっち!骨皮っちを虐めるな!」
『皮要素はどこに・・・・・・?』
骨しかねぇじゃん。皮要素は・・・・・・バッ、馬鹿な、頭皮が少し残っているだと・・・・・・!?このハルプの慧眼を持ってして見抜けなんだ・・・・・・。
暫くワイワイと料理がくるまでの時間を楽しんでいると、新たな来訪者が
「いやっほーっ!僕が来たぞクルメっ!喜びたまえっ!」
と、全力で扉を開け放ち現れたリーナ。そこに集中する俺達の視線。
「ふぇっ!?驚いたよ、開店からそこまで時間は経ってないのに凄まじい繁盛ッ!!」
だがまぁ、異端児に対する警戒は無くなった上、リーナの性格上ビビるはずもなし。するりとレイの横に座り、ぐでッとテーブルに突っ伏す。
「いやぁー、いい高さだよねココ。寝るのに最適、流石クルメだよスヤァ…」
「速?!」
のび太に迫る程の就寝速度、だと?
ガラガラガラ。
お、また誰か来たな?
「ふ、外まで声は聞こえていたがまさかこれ程までとはな。妖夢、ハルプ、邪魔するぞ」
『邪魔をするなら帰ってーな!』
「こらこら、ダメですよハルプ」
いや、言わなければならない気がしてね、仕方ない。
お?アリッサがクルメと話してるな、ふむふむ、外に貸切の看板でも立てておけば?って話か。確かにねー、あ、でも貸切になんてされると思ってなかったからそんな看板の用意ないのね。すまねぇ、ならば俺が作ってやろー。
『任せろー!』「バリバリー!」『妖夢止めてっ!』
失敗しそうだからやめて!
素早く店外に出て、素早く看板を設置。内容は《タケミカヅチ・ファミリア&ゼノス宴会中につき、貸し切り》だ、完璧だな。これで入ってきたら空気が読めないに違いない。
「む」
お?男の人の声だ。俺が振り向けば、看板をじっと見ている人物が。ムキムキで猪耳、武器は特に付けてない。うん、オッタルだな!
『へっへー、悪いが貸し切りだぜ!いくらオッタルと言えど!この場には入れられないのでーす!』
「そうか・・・・・・では少し外に来て話をしないか?魂魄妖夢にも用があったのだが」
あ、そうなんだ。にしても俺達に話って何だろな。
『あれ、そうなの?わかった、待っててー。おーい、妖夢ー、俺達にお客さんだぜー』
「剣客ですか!?今行きます!」
『あらやだ、戦闘狂?』
血の気があり過ぎてお母さん悲しいわ。え、お母さんはどちらかと言うと私?ないわー、妖夢がお母さんとか、ないわー!良くて妹かなっ!
ぇ、なんで白楼剣を詠唱し始めたんですか?やっぱり・・・・・・行動力、ですかねぇ。
「ぐぬぬ、よしんば私が母でないとしても・・・・・・」
『世界、1位です』
「・・・・・・?何の話だ」
「いえいえ、お気になさらず」
オッタルの困惑顔を初めて見た妖夢はSANチェックです。成功?では減少値は0っすね。
「そうか、では来てもらいたい所がある」
へぇ?
─────────。
なるほどねー、妖夢、お手柄だぞ!
「みょん?」
白楼剣は消さないで背中か腰にさしとけよ?魅了されて目がハートの妖夢とか見たくないぞ俺は。
「あっ」
どうやら俺の言葉の意味に思い当たった様子。ふむ、フレイヤだろー?どうする、白楼剣で魅力は弾けるだろうが、好きにやられるのもアレだしな。・・・・・・オッタルと仲良しアピールをして嫉妬させるというのはどうだろう。
「ふむふむ」
やるか?よし、決まりだな!
「あの、オッタルさん」
「・・・・・・なんだ?」
「一つ・・・・・・お願いがあるんです」
両腕を後ろで組んで、上目遣いでそういう妖夢。ナイスだ、それで落ちねぇ大人はいねぇ!オッタルも多分断れないはずだっ!
「ということなんですが」
「辞めといた方がいいだろうな」
『ですよねー』
やっぱりグラサン掛けて三位一体団子三兄弟作戦はダメだったか・・・・・・。
一方その頃、フレイヤは自室でそわそわしていた。待ちに待った日が来た。もう正直手に入らなくても良いとすら思っているが、でもお触r、触れ合いたいものなのだろう。
「ソワソワ、ソワソワ」
ソファーに座ったと思えば立ち、鏡の前でスカートをパンパンと叩きシワを伸ばし、ほっぺをムニムニして可愛らしい表情を作る。
「はぁ」
胸を抑えて時が来るのを待つ。化粧でもするか、服を変えるか、髪型は平気か、どんな話をすればいいのか、開口一番は何を言うか。
フレイヤの目がグルグルになっているがお愛嬌だ。
「えっと、そうね、これはここよねっ、うん」
言い聞かせるように、全く関係の無い物を動かしては元の場所に戻す。
そしてコンコン、とノックが。
「はぃっ、入っていいわよっ!」
飛び跳ねそうになる心臓を抑え、上ずった声でそう言う。初対面だから、出来るだけ、好印象を・・・・・・!
フレイヤの視線の先、扉は開いて行き・・・・・・銀髪がちょこんと顔を出す。
「はうっ!」
そして、次に青い目が、恐る恐るといった様に部屋の中を覗き悶絶するフレイヤを見て、扉の奥へと戻った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
嫌われたか?いや、それよりもこの距離で見れた青い目にキュン死しそうだ。フレイヤの脳裏にはもうまともな思考は残されていなかった。
「ぇ、えっと、その、入っても大丈夫ですか?」
鈴のような高く可憐な声。既に鼻血が吹き出そうだが、美の女神がそれではダメだ、と己の矜持と鋼の精神(笑)で持ちこたえたフレイヤ。
「えっと~、その、魂魄妖夢、です。あの、なにか御用ですか・・・?」
手をお腹の前で握り合わせ、キョロキョロと怯えたようにあたりを見渡しつつ、時折恥ずかしそうにフレイヤを見る。
その姿、普段と違う格好も合わさり、フレイヤはゆっくりと後ろに倒れた。その表情は聖母のそれだ。
変態ゆえのキュン死なのだが、今までの我慢を認められたのか奇跡は起こる。
「だ、大丈夫ですか!?」
と妖夢がフレイヤの元に駆け寄ってくる。フレイヤの隣りにしゃがみこみ膝立ちする妖夢。猫耳パーカーにミニスカート、ニーソックスという出で立ちはフレイヤには眩しすぎた・・・・・・。
「だ、大丈uブッ!?」
薄らと目を開けて弱々しい感じを作りつつ横を見れば、なんと色白の肌と、白いニーソックスが生み出す絶対領域が。いやそれだけではない、防御の緩いミニスカートに守られていたはずの、全体神聖不可侵領域まで見えてしまったのだ。
吐血。鼻血。
それは─────感謝であった。
フレイヤを包み込む満足感、達成感、充実感。
「白、さい、こ・・・・・・ぅ」
フレイヤの意識は実に30分後に目覚めることなる。その時には既に妖夢たちの姿は無く、フレイヤはいつまでもそれが夢では無いか、オッタルに問い続けたと言う。
「うぇえええぇぇん!絶対に嫌われたわよあんなのぉぉおおお」
自覚があるだけ、マシという事なのだろうか。
「やっぱり、おかしい」
「え?どうしたんですかアイズさん」
「・・・・・・何でもない」
賑やかとなった街を見て、何かが引っかかる。
────どうして自分は
考えるほどに、頭が痛くなってくる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何でもないよ」
すこし、頭を冷やしたくなった。
キャラ崩壊が激しすぎる・・・・・・!
これが、可能性の能力・・・・・・!
そう、全てはハルプのせいだったんだよ!!
はいはいハルプハルプ。
という訳で、とても平和な世界になりました。
強引なのは否めないですが。能力が不完全で過去には戻れない以上、こうするしかハルプには無かったんや!
誤字脱字、コメント待ってます!!
余談。
そして2期を待ち望んで下さる人がいるようで、私は感激しております。
次に2人が行くならどこだろうと、軽く考えてみたら、
東方?ヒロアカ?ブリーチ?オーバーロード?フェアリーテイル?fateシリーズ?・・・・・・どこに入れても楽しそうです。能力的にはどの様な作品であれ最低限戦えるとは思いますが、悩ましいですねぇ。