今回の登場人物
《如月龍神(きさらぎたつみ)》
厨二。孤高のB級隊員だが、孤高であるが故に色々と気を使っているらしい。
《加古望(かこのぞみ)》
A級6位加古隊隊長。ポジションは射手(シューター)。スタイリッシュな二宮さんに鳥籠な那須さん、天才な出水に持たざるメガネとシューターは激戦区のポジションだが、きっと蝶のように舞い、蜂のように刺す活躍を見せつけてくれるに違いない。彼女が作る炒飯はヤバい。好物はリンゴ。
《黒江双葉(くろえふたば)》
最年少A級隊員の加古隊攻撃手(アタッカー)。『弧月』を背負ったニンジャガール。好物は白玉あんみつとみかん。
《喜多川真衣(きたがわまい)》
加古隊の特殊工作兵(トラッパー)。冬島さんが半袖なので、多分彼女も半袖。好きなものは湯豆腐とこたつ、絵を描くこと。既に出不精の気配プンプンである。原作にも登場していないので、今回は登場しない。
《小早川杏(こばやかわあん)》
加古隊オペレーター。オペ子なので、多分かわいい。好きなものはピオーネと磯部揚げ。読書と犬。磯部揚げ……? 原作にも登場していないので今回は登場しない。
《太刀川慶(たちかわけい)》
加古さんの炒飯の犠牲者。一回死んだ。
《堤大地(つつみだいち)》
加古さんの炒飯の犠牲者。二回死んだ。
扉を開けた加古望は、首を傾げた。
「あら、珍しいわね?」
ボーダー本部には各隊ごとに作戦室が設けられており、防衛任務や訓練などの合間の時間には、正隊員はここにいることが多い。実戦、ランク戦では文字通りの『作戦室』として使われるが、平時は隊員達の憩いの場となっており、わりと各隊それぞれに部屋の特色が出ている。那須隊の作戦室はSF映画のような内装がセンスがいいと評判であり、太刀川隊や諏訪隊の作戦室は、ゲームや麻雀をする隊員の溜まり場である。
作戦室に他の部隊の隊員が訪ねてくるのは、珍しいことではない。なので、加古が首を傾げた理由は訪ねてきた『人物』の方にあった。
「どうしたの? 如月くん。何か用事?」
如月龍神。個人(ソロ)のB級隊員であり、いつの日か必ず『太刀川慶』を倒すと普段から豪語して憚らない筋金入りの変人である。
「いや……双葉に用があったんだが……」
「双葉に? 悪いけど、まだ学校から戻ってないわよ。もうすぐ帰るとは思うけど」
再び首を傾げた加古の前で、龍神は困ったように頭をかいた。
「そうか……」
「なになに? ようやくウチの隊に入ってくれる気になったと思ったのに、単に双葉に用事があっただけなの?」
ガシッと龍神の肩を掴んで、加古は微笑んだ。色々と……というか、かなり変わった性格の龍神だが、加古はそういう細かいことは気にしないタイプだ。それにイニシャルは『K』だし、実力は中々だし、双葉もなついている、という理由で、加古は結構頻繁に龍神を隊に勧誘している。
だが、当の龍神の反応はいつも通りだった。
「ふっ……『ファントム』の異名をとる加古さんから誘いを受けるのは、俺も嬉しい。だがな、俺にも俺で考えていることがあるんだ。申し訳ないが、その誘いは受けられない」
「あら、いつものことながら残念だわ」
さして残念でもなさそうに加古は言った。この手のやりとりはいい加減二桁くらいになるので、言葉通りの意味である。
「お詫びと言ってはあれだが、土産がある。つまらないものだが、よかったらみんなで食べてほしい」
そう言って龍神が差し出した袋には、果物が入っていた。りんごとみかん。加古と双葉の好物だ。さらに別のスーパーの袋にはちょっといいものっぽい『豆腐』と『磯辺揚げ』のパックが入っている。加古は素直に感心した。
「真衣や杏の分まであるなんて……空気読めないくせに、こういうところで気がきくから、ますます欲しくなっちゃうのよね」
「やめてくれ。大したものじゃない」
各部隊の作戦室を訪れる際に『お土産』を持参するのは、もはや龍神の癖のようなものだった。
龍神は個人(ソロ)のB級隊員。防衛任務の際には基本的に他の隊と組む。必然、組んだ隊には迷惑をかける形になるので(特にオペレーターに)、なるべく好きなものを差し入れするようにしているのだ。ボーダーは人格的にいい人が多いので(太刀川と菊地原は除く)、大抵は遠慮されるのだが、個人(ソロ)活動が長かったおかげで全隊員の好みはほぼ把握している。
この差し入れのおかげで、龍神は他の隊の作戦室に居座っても何も言われずにスルーされる地位を獲得することに成功している。孤高である為にも苦労があるのだ。
ちなみに基本的に龍神が入り浸っているのは、ゲームができる太刀川隊の作戦室(太刀川がいない時)やマンガや小説が大量にある諏訪隊の作戦室である。だが、その二部屋はゲームの大会や麻雀大会などで混雑する場合も多々あるので、映画が揃っている荒船隊の作戦室と、米屋がいる三輪隊の作戦室(三輪がいない時)にもよく行く。奈良坂がいる時も長居すると嫌な顔をされるのだが、たけのこのチョコ菓子ひとつで解決するので三輪に比べればどうということはない。きのこよりもたけのこである。
さて、というわけで、龍神は加古に捕まることはあっても、加古隊の作戦室を訪れたことはあまりない。
なので、
「せっかくだから、双葉が来るまで中で待っていたら?」
と、言われ、
「そうか。なら、お邪魔させてもらおう」
あっさり足を踏み入れたのが、龍神の最初のミスだった。
加古隊の作戦室は流石女子チームと言うべきか、綺麗に片付いていた。机の上に、加古の読みかけと思われるファッション雑誌が置いてあるくらいだ。
「やはり、諏訪隊や荒船隊の作戦室とは違うな……」
「諏訪隊は堤くんが片付けないと、誰も片付けしないものね。冬島さんとか太刀川くんも散らかすだけ散らかして帰って行くし。でも、荒船隊の作戦室って結構キレイだった気がするけど?」
「あそこは今でこそ片付いているが、ちょっと前までは魔窟だったんだ。加賀美さんの創作物に、荒船さんの大型プロジェクター。他にもトレーニング用具やハンモックやらで収拾がつかなくなって、荒船さんが私物の持ち込み制限を徹底して、ようやく今の状態に落ち着いた」
「へぇ、そんなことが……」
「俺もバレないと思って私物を持ち込んでいたが、撤去されてしまった……あの時は荒船さんに怒られたな……」
と、普通に会話を楽しんでいた。そのせいで、加古がフライパンや包丁の準備をしていることに気が付けなかったのが、龍神の第二のミスである。
「ねえ、如月くん。お腹空いてない?」
「む……確かに。ちょうど小腹が空く時間帯だ。だが、その土産はあくまで加古さん達へのものだ。俺が手をつけるわけには……」
「その点は大丈夫よ。私が今から作るから」
「作る……?」
第三に、加古の前で空腹を訴えた時点で、龍神の命運はほぼ決定してしまった。
「な、にを……?」
加古は持ち前の美貌を最大限に発揮した、素晴らしい笑顔で言った。
「私が炒飯(チャーハン)を作ってあげるわ♪」
――加古望の炒飯(チャーハン)。
ボーダー内で知らない者はいない、危険物である。
「私は6歳の時からお料理していてね~。特に炒飯が得意料理なのよ。太刀川くんとか堤くんから聞いたことない?」
「あ、ああ、まあ、それは……」
聞いたことあるどころではない。むしろ詳細に知れ渡っている。
曰く。堤が食べた『チョコミント炒飯』は、チョコの甘さとミントの香りが炒飯とまったくマッチせず、堤は一度死んだ。
曰く。太刀川が食べた『いくらカスタード炒飯』はいくらのぷちぷち感とカスタードの甘さが絶妙にマッチせず、太刀川ですら死んだ。
曰く。再び堤が食べた『蜂蜜ししゃも炒飯』は、ししゃもの魚臭さと蜂蜜の優しい甘さがやはり全然マッチせず、堤はもう一度死んだ。
要するに、食べたら死ぬのが加古の炒飯である。
龍神は冷や汗を垂らしながら、必死に周囲を見回した。
(どうする? どうすれば、この部屋から緊急脱出(ベイルアウト)できる!?)
加古の炒飯の威力は絶大だ。なにせ堤が二度も死ぬほどである。龍神は一度も死にたくはない。
「やっぱり炒飯のポイントはパラパラに仕上げることよね。フライパンに油をちゃんと敷くのはもちろんだけど、冷やご飯をレンジでチンしたりすると水分がとんでいいのよ」
「成る程……流石は加古さんだ」
表面上は涼しく応対しつつも、龍神は焦っていた。はやく対応策を練らなければ、このまま成す術なく散る羽目になる。
「ちょっと待っててねー。すぐに出来るわ」
しかし、鼻歌混じりにエプロンを着けて、楽しそうに調理(?)を始めた加古に、今さら食べられませんとは言えない。噂を聞いていても犠牲になる隊員が後を絶たないのは、この純粋な笑顔が原因だろう。
(いや、待てよ……?)
龍神は加古の手つきを見て、以前聞いた別の話を思い出した。
曰く。A級3位風間隊の隊長である風間蒼也が食べた『カツカレー炒飯』は、普通においしかったらしいのだ。
そして龍神は双葉から「加古さんの炒飯の噂は大袈裟過ぎです。ハズレでもそこまで不味くはありません」と聞いている。
加古の調理の手際は、決して悪くない。むしろ、流石に6歳からやっているだけあって、とても手慣れている。つまり――
(ハズレではない炒飯を引き当てれば、俺は生き残れる!)
活路は見いだした。後は往くのみ。
意を決して、龍神は口を開いた。
「加古さん。ひとつ聞いてもいいだろうか?」
「なにかしら?」
「炒飯の『具』には何を入れるんだ? できればリクエストしたいんだが……」
噂を統合し、分析すれば分かる。加古の炒飯の殺傷力の秘密は"具の組み合わせ"にある。チョコミントという前提からヤバい炒飯はさておき、いくらやししゃもは、単体では具として問題なく機能するハズだ。そこにカスタードや蜂蜜といった甘味が投入されるせいで、味が崩壊している。そもそもどうして炒飯に甘味を投入するという発想に至るのか、果てしなく謎ではあるが、とにかく具の投入をコントロールすれば死は回避できる。
(風間さんは好物である『カツカレー』をリクエストしたことで、イロモノの具の投入を回避している)
カツカレー炒飯もどうやって作ったのかはわりと謎だが、手堅い具なら問題はないだろう。
「いいわよ。冷蔵庫にあるものなら、なるべくリクエストに応えてあげるわ。むしろその程度ならお茶の子さいさいよ!」
エプロン姿で振り返って、加古は言った。
よし、と心の中でガッツポーズをして、龍神は声が震えないように気をつけながら発言した。
「加古さん。俺は加古さんの料理の腕を信用している。故に、シンプルな具でお願いしたい。そうだな……卵とハムがいい」
「卵とハムねぇ……基本中の基本過ぎて味気ないわ」
かたちのいい眉を顰めて、加古は不満そうだった。
しまった、しくじったか、と龍神は体を強張らせる。
「まあ、もちろんOKよ。任せておきなさい」
白く細い指で丸を作って、加古は微笑んだ。セーフ。セーフである。
龍神はほっと息を吐いた。
(これで心配はなさそうだ……これで俺も風間さんと同じように生き残れる)
「でも折角だから余っていた納豆を入れてみましょう!」
(なん……だと……?)
なんということだろう。
さっきまでは影もかたちもなかったというのに、一瞬で納豆のパックが開けられ、フライパンの中にぶち込まれてしまった。
「な、納豆か……」
「あら? もしかして如月くん、納豆嫌いだった?」
「いや、そんなことは……ない」
ぐっちゃぐっちゃと、フライパンの中でライスと納豆が混ざっていく。しかし、納豆は納豆スパゲッティなどもあるし、そこまで異色のチョイスではない。
(大丈夫だ……まだ、まだ大したことはない)
「加古さん、他には何も入れないのか?」
「そうね。あとは軽い味付けだけよ。塩、胡椒を適量振り掛けて……」
本当に鮮やかに、適量の塩と胡椒がふられていく。
(そうだ……そのままだ。そのまま完成しろ!)
「さらに隠し味のいちごジャムを投入するわ♪」
(…………バカ、な?)
なんだかわりと高そうな瓶詰めのラベルから、スプーンでごっそりといちごジャムをすくって。
躊躇いも躊躇もなく、加古はそれをフライパンの中に叩き込んだ。
「はい、お待たせ!」
龍神は完全に思い違いをしていた。
加古望はマイウェイをマイペースでモデルウォークする女――己の道を己の理念に乗っ取って突き進む人間である。つまり、調理に関して人の言うことなんて聞かない。
「これ……が」
「ええ。私の新作。名付けて『納豆いちごジャム炒飯』よ!」
そのまんまじゃねぇか、と突っ込む余裕すら龍神にはない。加古は自信満々のドヤ顔で、テーブルの上に皿を置いた。
(まずいな……これは……俺の貧弱な想像力を遥かに超えている……)
まず、炒飯はなんかヌラヌラと光り輝いていた。調理の最初の方でパラパラに仕上げるには云々と加古は言っていた気がするが、それは調理という道程をマイペースでウォークする過程でどこかに蹴飛ばされたらしい。
とりあえず、なんか甘い香りが漂ってくる。さらに、それが納豆の発酵食品特有の匂いと混ざりあって、食欲をまったくそそらない。
「さあ、遠慮なく食べて!」
エプロンを脱ぎながら、加古が催促する。
もはや、どこにも逃げ道はない。かわりに死んでくれる堤大地もいない。
龍神は、覚悟を決めた。
「……いただきます」
スプーンで炒飯をすくう。ぬちゃあ……と納豆が糸を引いた。あんまり火が通っていないのだろうか。豆粒は薄いピンク色に染まっている。
(大丈夫だ……大丈夫だ。甘納豆だと思えばッ……)
一口目。
「ッ…………」
ただ一口で、龍神は確信した。
これは、17年の人生の中で、最もまずい炒飯だ、と。
いや、最もまずい料理、と言った方がいいかもしれない。
(いちごジャムの酸味と甘味が別ベクトルに納豆と化学反応を起こし、卵の風味とネギのシャキシャキ感がさらにそれを増長している……ハムはそもそも存在感がない! なんなんだ、これは!?)
頭の中でも自分が何を言っているのか分からないが、とにかく龍神は混乱した。
これはヤバい。堤が二度死ぬのも当然の破壊力がある。
(だが……それよりもさらにまずいのは……)
龍神は知らなかった。加古望が作った炒飯がヤバいのは、味がヤバいだけではない。
「どう? おいしい?」
食事をしている間、加古は食べている人間から決して目を離さない。頬杖をついたまま、穢れなき笑顔で食べている人を見詰め続けるのだ。
これでは――
(不味いなんて……言える訳が、ない。言える訳ないだろう!?)
普通、まずい料理は一口食べて不味ければ、食べるのを止めることができる。それに、マンガのように一口食べて気絶するようなことは、現実ではありえない。
だが、加古の炒飯を前に『いただきます』と宣言した人間は、
(ニコニコする加古さんの前で……)
「おい……しい、です」
「そう? よかった!」
(おいしくない炒飯を食べ続けながら、笑顔で感想を言い続けなければならない……)
なんという苦行。
なんという地獄。
如月龍神は、ようやく理解できた。
これが――加古望の炒飯(チャーハン)の全貌。
確かに、
「ねえねえ、次はどんな具を入れたらいいと思う?」
「そう……だな」
これを全て食べ切ったあとに、自分が生きているという保証を、龍神は持つことができなかった。
◇◆◇◆
黒江双葉はボーダー本部への道を急いでいた。加古から龍神が来ているとメールで連絡を受けて、久しぶりに双葉はとても嬉しくなった。しかも、お土産のみかんまであるらしい。
双葉は如月龍神を尊敬している。
理由は、いつもカッコいいからだ。
幼馴染みの緑川はいつも玉狛支部所属のS級隊員である『迅悠一』がカッコいいと言うが、双葉は龍神の方がカッコいいと常々思っている。
双葉が入隊時に『弧月』で出した記録を、龍神は大幅に上回っていた。そしてある時、双葉に声を掛けてくれたのだ。
――――――――――――――――――――
「そこの女の子。『弧月』の鞘を少し引き摺っているようだが、邪魔じゃないのか?」
「……放っといてください。どうせ私は小さいですから」
なんだかやたらに気取った喋り方だったので、無性に苛立って、双葉はそのまま彼の前を通り過ぎようとした。子供扱いされたことに腹が立ったのかもしれない。
しかし、
「まあ、待て」
ひょい、と彼は双葉の腰から、勝手に弧月を取り上げてしまったのだ。
「……なにするんですか? 返してください」
「待てと言っている。そう急くな。この刀は、もっとお前に合った装備の仕方がある」
彼はどこからか黒い紐を取り出して、双葉の『弧月』の鞘に縛り付けた。
「よし……これを前で結べば、引き摺らないから邪魔にならないだろう? ニンジャスタイルの完成だ!」
「…………」
確かに。背負えば『弧月』は、そこまで邪魔にならなかった。
それに『ニンジャスタイル』 悪くない。ちょっとカッコいいかもしれない。
「いや……でもただの紐では流石にまずいな……鬼怒田さんに頼んでちゃんとした『トリオン』の紐を……うん、そうするか」
ぶつぶつと呟きながら、彼はそのまま歩き出してしまった。双葉は慌てて、後を追う。
「待ってください! お名前、なんて言うんですか?」
彼はニヤリと笑みを浮かべた。
「ふっ……俺か? 俺の名は――」
――――――――――――――――――――
「加古さん! 如月先輩は!?」
作戦室に飛び込んだ双葉は、目の前の光景に目を疑った。
「しっー。ダメよ、双葉。如月くんはお腹いっぱいになって寝ているから」
「…………」
如月龍神は、スプーンを握ったまま机に突っ伏していた。
いつもなら双葉が来たら「ふっ……」と笑いながら腕を組んでいたり、脚を組んで座っていたりするのに、今日はそれがない。
双葉は、ちょっとがっかりした。
「加古さん、炒飯作ったんですか?」
「ええ。まず『納豆いちごジャム炒飯』を作って、如月くんの食べっぷりがあまりにもいいものだから、次に『鯖ブルーベリー炒飯』も作ったのよ。でも、さすがに食べ過ぎて眠くなっちゃったみたいね」
双葉は心の底から龍神のことを尊敬した。加古さんの炒飯を二皿も食べ切るなんて、中々できることじゃない。
やっぱり、尊敬できる先輩だなぁ……と。双葉は一人で頷いた。
「ところで、調子にのって作った炒飯がまだ余ってるんだけど、双葉も食べる?」
「三皿も作ったんですか?」
「なんだか今日はアイディアがどんどん沸いてきたのよ! 如月くんのおかげね。やっぱり彼、うちのチームに欲しいわ」
「……そうですね」
結局、最後の『梅干しりんご炒飯』は、双葉がおいしくいただきました。