4月1日。すごい短いですが、夕方七時に閃いたので投稿します。
珍しく、居眠りをしてしまっていたらしい。
如月龍神はソファーから起き上がって、ぐるりと周囲を見回した。薄暗い室内には、人の気配が一切感じられない。作戦室にいるのは、どうやら自分一人だけらしい。チーム結成からしばらく、特に忙しい時間が続いていた。なので、居眠りくらいはしても仕方がないとは思うが……
「いや、やはり弛んでいるな」
緩みかけた自己評価に、独り言で喝を入れる。こういう時に仕方がない、と理由付けして自分に甘えてしまうと、ずるずると自堕落の沼にはまってしまう。休める時に休むことはとても大切だが、それはそれ。これはこれ。体に力を入れて、龍神は立ち上がった。
元々、今日の午後はランク戦ブースに籠って調整に使うつもりだった。しかし、現在の時刻は三時半。昼食すら取らずにうつらうつらと眠くなり、完全に寝過ごした形である。まずは顔でも洗って、少し遅くなったがランク戦ブースに赴くべきだろう。午後から入っている人間はちょうど休憩を取りたい時間だろうし、もしかしたら顔見知りの隊員がラウンジにいるかもしれない。
だが、頭の中でまとめ終えた予定は、唐突に響いたインターホンの音にかき消された。
「ん?」
紗矢か甲田か。それとも丙か早乙女か。誰か帰ってきたのだろうか?
やや首を傾げながら、龍神は扉を開いた。
「……なんだ、やはり作戦室にいたのか」
扉の先にいたのは、小さな……本当に小さな少女だった。
身長はギリギリ150センチに満たないくらいだろうか。少しクセの強い髪はボブヘアに切り揃えられており、ボーイッシュな印象を受ける。が、しかし、目元がややきついことを除けば顔立ちは整っており、年相応にかわいらしい。サイズが大きめの青いジャージを首元まできっちりと締めているその姿は、正しく健康的なスポーツ少女といった風貌だ。
「どうした? 鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして。わたしの顔に何かついているのか?」
「いや……その」
予想以上に男らしいぶっきらぼうな口調に驚いて、龍神は言葉を詰まらせた。それに加えて、この少女はまるで自分と面識があるような口ぶりだが……正直に言って記憶にない。
「なんというか……きみは正隊員か? すまない。俺が忘れているだけかもしれないが、どこかで会ったか?」
「……なに?」
ぴくり、と細い眉が釣り上がる。ただでさえクールな雰囲気の少女はますます表情を険しくすると、ぐっと背伸びをして……足りない身長を補うためにぷるぷるとつま先立ちをしながら腕を目いっぱい伸ばして、龍神の顔をむんんずと掴んだ。
「ぶふぉ!?」
「……いい度胸だな、如月。先輩に向かって『きみ』とは。冗談にしても少し笑えんぞ。馬鹿者め」
小さな手のひらで、ぐりぐりと頬を引っ張られる。龍神は意味が分からなかった。このクールロリにしか見えない少女が、先輩?
「この前、機会があれば個人戦をやりたいと言っていたからわざわざ探していたのに……さては貴様、寝ぼけているな?」
やはり、見た目にふさわしくない尊大でぶっきらぼうな口調。なるほど、見かけによらずこの少女は、スポーティクールロリっぽい見た目をしつつも、龍神より年上なのかもしれない。しかし、だとしても、龍神はこの少女の顔にまったく見覚えがなかった。少なくとも、ランク戦の約束をした記憶などまったく……
―――いや、待て。
小さな背丈。ぶっきらぼうな口調。鋭い目元。これらの要素だけを抜き出せば……該当する人物は、いるにはいる。だが、それだけはありえない。ありえない……はずだ。
唇が震えているのを自覚しながら。それでも龍神は―――可能なら彼女が否定してくれることを願いつつ―――そのありえない可能性を口にした。
「……風間さん?」
「なぜ語尾に疑問符をつける? そうに決まっているだろう」
四月一日。
尊敬しているA級3位部隊の隊長が、ロリになっていた。
まだ続きます。
エイプリルフールスペシャルということで、もう一作品、別に投げさせていただきました。そちらもいろいろとおもしろい作品になっているのでぜひ読んでみてください。