厨二なボーダー隊員   作:龍流

87 / 134
前回更新分を、ご指摘を受けて修正しました。よろしければご覧ください。
SQめちゃくちゃひさしぶりに買いました。ワートリが読める幸せを噛み締めて生きています。それにしても巻頭のマンガがエロい。


乱舞。混迷の戦場

 動けない。

 暗闇の中で、来馬辰也はなんとか身を起こそうとした。しかし、体をぎっしりと締め付ける土は水を吸って重く、思い通りの動きはできそうにない。

 

『来馬さん!大丈夫ですか!?』

「なんとか、ね……今ちゃん、僕の現在位置を送ってくれるかい? 真っ暗で、何も見えないんだ」

『りょ、了解です!』

「鋼は大丈夫? 動けそう?」

『こっちは光がうっすらと見えているので、どうにか抜け出せそうです。すいません来馬さん。レイガストを手放したせいで、対応が遅れました』

 

 如何にも村上らしい己の行動を悔いる発言に、来馬は思わず苦笑する。

 

「これは仕方ないよ……鋼がレイガストを手放したのは僕を守るためだし。それに『スラスター』があっても、この土砂から逃げ切れた保証はない」

『待っててください。すぐに抜け出して、助けに行きます』

「ありがとう」

 

 礼を述べた来馬は、そこでようやく土砂に巻き込まれていないもう1人のことを思い出した。

 

「太一、そっちは大丈夫?」

『全然大丈夫じゃないっす! めちゃくちゃメガネくんに追われてます! もうオレ死ぬかもしれないんですけど!』

『諦めないで走りなさい!』

『だって今せんぱーい!』

『鋼くん達のとこへの最短ルート送ったから、とにかくがんばってそこまで逃げてきなさい! それでいいですよね、来馬さん!?』

「うん。助かるよ、今ちゃん」

 

 現状、鈴鳴は完全に後手に回ってしまっている。狙撃手にとって最適な転送場所と、多対一という理想の状況を作り出したはずなのに、気づけばこの有り様だ。

 玉狛の掌の上で、完全に踊らされていた。その事実に歯噛みするしかない。

 

「でも、まだだ」

 

 けれど、まだ自分達は負けていない。誰よりも、自分自身に言い聞かせるために呟きを漏らしながら、来馬は全身に力を入れて土をかき分ける。先は全く見えない。けれど、少しずつ手足が自由に動くようにはなってきている。ならば、まだ希望はあるはずだ。

 来馬辰也の考えは、決して間違いではなかった。

 トリオン体は、通常の肉体とは違う。トリオンを用いた武器でなければ傷つけられない特殊な体は、通常の物理法則を無視して使用者を守る。土砂に潰されるという選択肢も、窒息で息絶えるという選択肢も最初からない以上。今、この状況を抜け出せば逆転は可能……という彼の思考は、至極真っ当で前向きなものだった。

 ただ、来馬は間違っていたのではなく、理解していなかった。

 この策を練った人物が『相手を生き埋めにして動きを止めた』程度で、勝利を確信するほど甘い人間ではなかったということを。玉狛第二が仕掛けた地形戦の本質が、もっと先にあることを。

 

「……え」

 

 またもや響いた、衝撃と轟音。

 

「これ、は……!?」

『来馬さん! また砲撃です! 注意してください』

 

 次いで、オペレーターからの警告。来馬は再び流れ始めた体の感覚に、一つの確信を抱いてしまった。動けない。流される。その先にある自分の末路に。

 

「鋼! バッグワームを……」

 

 そうして、彼の体は光に包まれた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「あ、雨取隊員が来馬隊長を撃破っ……!?」

 

 最初に落ちると思われていた甲田が、予想以上に粘っていたせいもあるだろう。遂に出た最初の緊急脱出に、会場の歓声が止まらない。予想通りの反応だとは思いつつも、しかし実況席に座る綾辻遥は戸惑っていた。

 

「これは……土砂に巻き込まれて身動きが取れない来馬隊長を、レーダー頼りに撃ち抜いた……ということでしょうか? 本当にそんなことが……?」

 

 観戦する隊員達のために行うのが実況だが、堪え切れずに自分の疑問が口に出てしまう。それほどまでに、綾辻は困惑していた。

 レーダー頼りの狙撃、というのは確かに存在する。しかし、目標を直接視認せず障害物ごと撃ち抜くような狙撃……ボーダーで『壁抜き』と呼ばれる技術は、現場の観測とオペレーターの的確な指示、そして狙撃手の高い技量が合わさってはじめて成立するものだ。地形を平面で捉えた場合、ボーダーのレーダーは精度を上げればそれなりに正確な位置を捕捉できる。だが、そこに現実の三次元的な要素……『高さ』が加わってくると話は全く別。相手の高さを狙撃手側が正確に把握できない以上、高度計算はオペレーターの情報に頼らざるを得ない。逆に言えば、オペレーターの情報伝達に少しでもミスがあれば『壁抜き』はターゲットに掠りもしないのである。

 嵐山隊には狙撃手がいるので、当然綾辻も『壁抜き』に近いオペレーションを模擬戦で数回経験したことがある。変態揃いの狙撃手達の中でさらに『変態』と呼ばれる彼は、基本的に『イーグレット』しか使わないので分厚い壁を撃ち抜くことはできなかった。ただ、イーグレットの威力でも貫通可能な薄い壁板越しに"お得意の『ツインスナイプ』で同時に2発"当ててみせただけである。彼も充分に変態だった。

 結論を言えば、いくら宇佐美が優秀なオペレーターであるとはいえ、ただでさえ難しい『壁抜き』に近い狙撃を、土砂崩れという不確定要素が多い自然現象の中で成功させた。それがどうしても、綾辻には信じられなかった。

 

「ある程度の位置はレーダーで確認できたとしても、どこに流されるか分からない土砂崩れに巻き込まれた相手を狙えるとは、到底思えないのですが……」

「いや、そんなことはない」

「え……?」

 

 しかし。

 そんな彼女の疑問を、木崎レイジは一言で否定する。

 

「土砂崩れに人が巻き込まれた場合。地形条件などにもよるが、どこまで流されたか、あるいはどのあたりに"埋まっている"か。それをある程度予測することは充分に可能だ」

「ウソ!? そうなのレイジさん!?」

「ああ」

 

 ウソはついていないぞ、と。小南に念を押しながら、レイジは手元に置いてあったタブレット端末に手を伸ばす。

 土砂崩れは『斜面崩壊』という別の名で呼ばれることがある。

 斜面崩壊とは、表層にある土砂や岩石が、地中のある面を境にして滑り落ちる現象のことだ。山崩れ、崖崩れ、あるいは一般に土砂崩れと言われているものは、全てこれに相当する。そして、これらの現象によって流れ落ちる土の塊は『崩土』と呼ばれる。

 

「土砂崩れがいつ起こるかを予測することは不可能に近いが……逆に、流れ落ちる崩土がどこまで到達するかは、かなりはっきりしている。意外に思うかもしれないが、こういったデータや予測がなければ、レスキュー隊員は土砂崩れの時、どこを掘り返して救助活動を行えばいいか分からないだろう」

「た、たしかに……」

 

 タブレットを観戦用大型モニターに連動させ、マップを表示。そこに赤いラインを引いて、レイジは観戦者達に見せるための簡単な図解とした。

 

「今回の場合、流れた崩土はここまで到達している。崩す場所を予め想定して、シミュレーションを繰り返し行えばかなり正確なデータを蓄積できるはずだ。現場の隊員が相手の位置を正確に把握しているなら、尚更だな」

 

 如月隊の面々と戦闘を行っている遊真を見やって、レイジはさらに補足する。

 

「加えて言うなら、ランク戦のステージは絶対に『変化しない』。普通なら、自然の地形は時間の経過と共に変化する。だが、ランク戦のステージは仮想現実……いわば作り物だ。天候や気温などの条件も、一度設定して決めてしまえばそれで固定される」

 

 今回の場合は、長時間の小雨という天候設定がそれだ。あとは、シミュレーションの方法はいくらでもある。レイジは今回の作戦の詳細を修から聞かされていなかったが、そういえば千佳からは何回か『土砂崩れ』について聞かれたことがあった。改めて思い返してみれば、宇佐美も普段のランク戦の時より準備に追われて忙しくしていたように感じられる。

 

「例えば……そうだな。狙撃訓練でよく使う人間サイズのターゲットマーカーを様々な地点に配置して、その上で土砂崩れを起こす。こんな実験を繰り返し行えば、データの精度はさらに増すだろう。実際に、誰かが巻き込まれてみてもいい」

「そ、そこまでしますか……?」

 

 笑顔で隠しきれない冷や汗を浮かべながら綾辻が問い返したが、レイジは答えなかった。遊真あたりは喜んで巻き込まれにいきそうだし、一見常識人に見える修も、あれで大概頭のネジが外れている。宇佐美に「へいへい!土砂崩れ体験コース一発いっちゃう!?いっちゃおうぜ!」などと言われたら、簡単にのせられそうだ。

 しかし、玉狛は変人の集団……などという印象を本部で持たれるのは嫌だったので、レイジは何も言わなかった。沈黙は金である。

 

「それに、雨取のアイビスは『狙撃』ではなく『砲撃』だ。当てる必要はない。ただ射線に『巻き込んで』しまえばいい。当てやすさという点で見れば、ただの『壁抜き』よりもハードルはぐっと下がる」

「つくづく、雨取隊員のトリオン量は凄まじいですね……」

「……でも、レイジさん」

 

 感心して頷く綾辻とは対照的に、小南は何か釈然としないといった様子で手を挙げる。

 

「あたし、そういう小難しい話はともかくとして……千佳が人を、むぐっ!?」

 

 撃てるとは思わなかった、などという前にレイジは小南の口元を押さえ込んだ。

 

「ふごっ……ほっどぉ! へーじざんなすぶんの?」

(うわっ……ちょっと! レイジさんなにすんの?)

「小南。ここは公共の場だ。発言はきちんと考えてからしろ。いいな?」

 

 小声でそう言うと、小南もさすがに気がついたのか、コクコクと頷いた。レイジは深いため息をつきながら、解説席に座り直す。

 ……とはいえ、小南の疑問はまさしくレイジが最も気にしていることだった。他の隊員達が注目している土砂崩れを用いた奇策については、レイジは父の影響で事前に知識があるため、そこまで驚きはなかった。それよりも今、気になってしかたないのは……やはり『人を撃った』千佳のことだ。

 人が吹き飛ぶところを見るのがこわい。人体のパーツが自分の攻撃で欠損することに耐えられない。そういった理由から戦闘員をやめていった隊員は数え切れないほどいる。今はもういない、レイジの妹弟子である二宮隊の彼女もそうだった。だから、人を撃てない千佳に対する指導メニューを、自分なりに組み立ててきたつもりだった。撃てないのなら、無理に撃つ必要はない。そういったスタンスで、修も遊真も宇佐美も、千佳に接してきたはずだ。

 そんな弟子(千佳)が、遂に人を撃った。

 無理に撃つ必要はない、とはいっても、レイジはべつに千佳を甘やかしてきたわけではない。撃てるようになったのなら、それは戦闘員として純粋に喜ぶべきことだ。

 

(もしくは……"吹き飛ぶところが見えない"からこそ撃てたのか?)

 

 今の修なら。それくらいは織り込んだ上で、作戦を組み立てるだろう。それはいい。隊長として、勝つための手段を増やすのは当然だ。

 しかし、だとしても。

 レイジは、ここで千佳に『人を撃たせた』という事実に、うまく説明のできない不安を強く感じた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 最初の得点を玉狛に許してしまった。

 

(全く……つくづく後手後手だな)

 

 心の中で悪態を吐きながら、龍神は握りしめた弧月を横薙ぎに振るう。来馬の緊急脱出後も変わらず、龍神は遊真と斬り合いを演じていた。

 玉狛の策が、うまく回っている。ともすればうまく行き過ぎなほどに、はまっている。もしも自分が観戦する側であったなら、弟子の成長を素直に喜んでいただろうが、敵に回すとひたすらに鬱陶しい。地形変化という強みを活かした上で、千佳の大火力を存分に活かした砲撃……まさか、本当に当ててくるとは思いもしなかったが、同時に不可能でもないと龍神は思った。

 遊真は「当たった」と強がってみせたが、あれは半分本当、半分ウソのハッタリだろう。『嘘を見抜くサイドエフェクト』を持っている遊真は、時にそういった『嘘』が有効に働くことをよく理解している。千佳の砲撃が当たらなくても、遊真の機動力なら再度の砲撃で土砂から顔をだした相手を殺すくらいはできる。あるいは、龍神達に対してそうしたように『土砂崩れ』で崩して遊真が仕留める……というのが本来の形だったか。いずれにしろ、1点取られてしまった今はどちらでも変わらない。そんな風に思考する程度には、龍神は冷静だった。

 本当の意味で心の底から予想外だったのは、千佳が人を撃った、ということくらいだ。

 

「(甲田、丙! 踏み込み過ぎるなよ。コイツには常に余裕を持って当たれ。深追いすれば、その瞬間に喰われるぞ)」

「(わかってます)」

「(そこまで命知らずじゃないっすよ。また雨取さんの砲撃がいつ飛んでくるかわかんねぇし……)」

 

 内部通話で2人に指示を与えながら、龍神は次の一手を組み立てる。

 3人で1人を取り囲む今の状況は、端から見れば如月隊の有利に思える。しかし、彼らが取り囲んでいるのはおとなしいウサギではない。ボーダー入隊から僅か数ヶ月でマスタークラスと張り合うほどに成長した、戦場育ちの狡猾な猛獣だ。不意打ちで足場を崩す、というカードを握られている以上、パワーバランスはむしろ玉狛の側にあると言っても過言ではない。咄嗟の状況に対応する判断力と柔軟性において、遊真は龍神を上回る。龍神もそれを理解しているからこそ、迂闊に仕掛けるような真似はしなかった。

 スコーピオンの斬撃を弧月で捌きながら、龍神は通信系を切り替えた。

 

「……江渡上」

『あと3分……いいえ、2分頂戴。あっちも移動してるから、すぐには捕まえきれない』

「なるべく急いでくれ」

『了解』

 

 こちらの準備が整えば、それがベスト。しかし敵は、当然それを待ってはくれないわけで。

 

『……如月くんっ!』

 

 息を飲んだ紗矢からの警告を受け、龍神は背後に向かって声を張り上げた。

 

「砲撃! くるぞっ!」

 

 もはや狙撃と呼ぶつもりはない龍神の呼称を裏付けるかのように、一筋の光条が飛来。その威力を存分に発揮して斜面を抉り取り、重い土砂の塊がポップコーンの如く空中に跳ねる。続く第二射はエスクードを展開していたエリアに直撃。堅牢な『壁トリガー』を土台から崩し、いとも簡単に押し流す。

 

「うっそだろおい……一応、あのウサギネイバーの砲撃も防げる盾だってのに!」

「生やしたとこから崩されちゃ意味ねーよ!」

 

 こちらの対応を崩された。しかし逆に言えば、崩すために敵も手を打たざるを得なかったということである。

 

「江渡上! 絶対に捕まえろ!」

『言われなくても』

 

 頭も体も、全力で回さなければ状況に対応しきれない。グラスホッパーを用いた高速機動を繰り返す遊真は、やはり速い。小柄なターゲットを目で追いながら、龍神もグラスホッパーを展開。空中機動に移る。

 

(やはり、俺は後回しか)

 

 狙いは甲田か丙。龍神は後回しにして、とにかく如月隊の戦力を削ろうという腹積もりだろう。見た目は幼くても、空閑遊真という少年は戦いにおいてどこまでも冷静だ。殺すか、殺されるか。そういった戦場で培われた経験は、普通のボーダー隊員にはないものである。

 甲田と丙が後ろに下がり、遊真が追い縋る。よくも悪くも、拮抗状態から動き始めたシチュエーション。故に、そんな場に遠慮も躊躇もなく飛び込んできた馬鹿は、

 

「どぇええええぁ!?」

 

 予想以上に目立った。

 

(太一!?)

 

 再び崩れ始めた土砂を転がるように落ちてきたのは、最良のポジションに陣取っていたはずの狙撃手。乱戦狙いでこの場に飛び込んできた……というのもあるだろうが、どちらかと言えば玉狛の再びの砲撃で、転げ落ちるつもりのない斜面を落ちてきてしまった、と言う方が正解のようだった。

 どんな狙撃手でも、この乱戦のど真ん中に好き好んで落ちてくるわけがない。

 龍神にとっても、遊真にとっても、別役太一は倒すべき敵ではなく……

 

「甲田っ! 狙え!」

「……っ!」

 

 是が非でも獲りたい『1点』だった。

 

「ハウンド!」

 

 甲田が追尾弾を放ち、遊真がグラスホッパーで飛び、龍神が孤月を構える。

 

「ひぇえええええええ!?」

 

 斜面から突き出した木に引っかかる形で九死に一生を得た太一は、そこでようやく自分を取り巻く状況を正しく理解し。迫り来る無数の弾丸から身を守るために、全方位に薄くシールドを展開した。甲田の弾丸は、半透明の壁に阻まれて届かない。

 

「……もらった」

 

 上出来だ、と甲田に対して内心で呟きながら、龍神は旋空孤月を視線の先の『1点』に向けて振るう。広範囲をカバーするために薄く広げたシールドの耐久力では、旋空によって拡張されたブレードは防げない。それをよく理解していたのだろう。

 龍神と太一の間に割って入った遊真が、スコーピオンで伸びる斬撃を受ける。小柄な体躯が空中で衝撃を受けてくるくると回転し、折れたスコーピオンと漏れ出すトリオンの粒子が宙を舞った。予想外とも言える遊真の行動に、龍神は目を剥く。

 

(太一を、カバーだとっ!?)

 

 

 

 

 遊真の行動に、観客席でもどよめきが広がった。

 

「お、遊真が割り込んだ」

「なんと玉狛が鈴鳴をフォロー!」

「……リスキーだが、うまいな」

 

 ぽつり、とレイジが呟く。

 

「喰らいつくぞ」

 

 

 

 

 

 右も左も敵。そんな乱戦という状況において、いくら点を獲らせたくないとはいえ、敵のカバーをする理由は限られる。否、一つしかない。

 

 敵の手に落ちるはずだった得点が、自分達のものになるからだ。

 

 奇しくも、実況の一言と同時。

 空中に身を踊らせた三雲修は、無防備な狙撃手の姿を眼下に捉えた。

 

「オサム」

「わかってる!」

 

 ナイスカバー、などと言う余裕はない。鈴鳴の狙撃手をここまで逃がしてしまったのは自分の責任だ。千佳への砲撃タイミングの指示も、微妙に見誤った。だからこそ、チームのエースがフォローしてくれたこの1点は、是が非でも獲る。

 手にしたレイガストをブレードモードにチェンジ。直上から振り下ろすように、修は全力の斬撃を太一に叩きつける。

 

「スラスター、イグニ……」

 

 トリオンが燃焼し、刃が加速する。その刹那。

 

 

 

「"オン"」

 

 

 

 三雲修の視界は、横合いからきた唐突な衝撃によって殴り飛ばされた。

 龍神でも甲田でも丙でも遊真でもない。この状況で、後一歩のところで得られたはずの『1点』。それを邪魔する存在は、1人しかいない。

 

「鋼さんっ!」

 

 全身を土気色に染め、それでもなお仲間を助けるために駆けつけた村上鋼は、後輩の顔を見てほんの少しだけ顔を綻ばせる。

 

「待たせたな、太一」

 

 レイガストによるシールドチャージを不意打ちでもろに受け、修の体は一気に吹き飛ばされた。なんとか勢いを殺し、体勢を立て直し、信じられない面持ちでNo.4攻撃手を見る。

 

「村上、先輩っ……」

 

 バッグワームで姿を消していたせいで、警戒を怠っていた。そもそも、土砂からの離脱にはもう少し時間が掛かると思っていた。しかし、いくら言葉を重ねようと、それは言い訳だ。自分自身の迂闊さを呪いながら、修はレイガストを構え直した。そして、同時に考える。

 村上が太一の援護に駆け付けた、今。無防備な狙撃手の次に狙いやすいターゲットは……

 

「オサムっ!」

 

 

 自分だ。

 

 

 遊真からの警告に、顔を上げる。黒い刃がレイガストに食い込み、火花を散らす。腕に響く衝撃に足を踏ん張り、半透明のシールド越しに、修は久方ぶりとも言える師匠の顔を見た。

 

「会いたかったぞ、馬鹿弟子」

「如月先輩っ……!」

 

 

◇◆◇◆

 

 

 戦況は加速する。

 如月龍神、甲田照輝、丙秀英。

 空閑遊真、三雲修。

 村上鋼、別役太一。

 

 総勢7名が集結する大乱戦。

 ROUND3は、文字通りの山場に入ろうとしていた。




たまにはいいかな、ということで、ダラダラあとがき書きたいと思います。
今年もいろいろありましたが、一番驚いたのはレイジさんを実況席に座らせた時点で「今回のランク戦のステージギミックは『土砂崩れ』ですか? レイジさんがいるのも、お父さん関係で災害の解説してもらうためだったりします?」と、個人メッセにドンピシャ予想がきたことです(イラスト頂いた読者さんや他作品の作者さんとは時々メッセでやりとりしてます。いつもご指摘ありがとうございます)。ワートリの読者はみんな変態かよ……。もぅマヂ無理……もっとがんばって話の展開つくろ……

そんなわけで、お話作りをしていると作中で説明しきれない要素や、キャラの変化が出てきたりします。今回で言うと、例えばこちらの修は龍神との修行で近接戦闘能力が向上していますが、逆に烏丸の指導を受ける時間が少し削れているせいで、アステロイドの取り扱いが原作よりも若干悪くなっています。太一を仕留めきれなかったのはそのためですね。原作より強化されても一部で弱体化の補正を受けるメガネ……さすが、ジャンプ最弱主人公候補……
もちろんこれは、太一が現状唯一中距離でライトニングを用いた射撃戦を(来馬さんと一緒とはいえ)行った狙撃手であるということも関係していますし、このことから他の狙撃手よりも(防御・援護のパラメーターとは別に)ある程度撃ち合える能力があると、作者が勝手に解釈しています。これは次回少し触れるかもしれません。
さらに言うなら、実は修ってアステロイドを使ってちゃんとタイマン勝負で仕留めた相手がほとんどいないんですよね……遊真に気を引いてもらった相手をアステロイドで仕留めるパターンがほとんど。得点をきっちり決めにいきたい時は、大体レイガスト&スラスターのコンボ使ってます。カシオぶった斬ったり、那須さんぶった斬りにいったり。犬飼戦で使った時間差置き弾があっさりシールドに防がれているあたりに、圧倒的トリオン格差が垣間見える。逆に、似たような置き弾攻撃で香取隊のろっくんを仕留められたのは、犬飼とのレベルの違いを感じましたね。考察すればするほど、この主人公が唯我に負け越す説得力が増していく……っ

なぞのキャラの濃さを発揮しはじめた羽矢さんと厨二の絡みとか、TSボーダーの続きとか、書きたいものはいろいろあるんですが、とりあえずランク戦がいいところなのでこちらを進めていきたいと思います。ちなみにこの時点で1000字超えています。書きたいこと書いてるとほんと文字数膨らむな……ってことで、今回はここまで。最近寒くなってきました。作者は来月のSQを全裸待機しているので、みなさんも風邪とか気をつけてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。