魔法使いになった猫   作:雪兎 銀杏

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偶には童心に帰って雪で遊びたいもんですな。


12.休暇

 翌日、早く起きたリズは一瞬戸惑った。

 いつもの天蓋ベッドじゃない。

 ここは何処だっけ?

「あぁ、そっか。クリスマス休暇か…」

 そうだ、休暇中だった。ここはホグワーツではないのだ。

 そう思って苦笑してしまう。

 それほどリズにとって、ホグワーツでの生活は充実したものだった。

 ここ数ヶ月で、随分と人間らしい感情を手に入れた気がする。

 ずっと前からここにいたような気さえするのだから、不思議なものだ。

 

 昨日普段着のまま寝た筈なのに、いつの間にかネグリジェになっていた。

 何故いつもいつの間にか着替えさせられているのだろう。

 リズは窓の外を見た。

 嬉しいことに、雪が降っていた!

 リズはすぐにネグリジェを脱いで、暖かいコートや、ブーツを取り出して、庭に出た。

「わぁ…」

 あたり一面雪が積もっている。薔薇を見れなかったのは残念だが、これが見られるのなら悪くはない。

 リズは園芸用のスコップを倉庫から持ってきて、雪だるまを作ることにした。

 雪玉を三つ重ねて、頭にバケツを被せる。そこら変の葉っぱで顔を作った。

 雪玉を三つ作る時点でびしょ濡れになり、大変だったが、作り終えると楽しかった。

 

「…昔もこうやってセリアと遊んだよね。楽しかった」

 

「そうだね!」

 

 雪玉を転がしながら、夢中になって答える。

 あぁ、楽しかった。毎日雪だるまを作って、中に入ってココアを飲んだ。暖炉の火でマシュマロを焼いて、それを食べたっけ。

 楽しかったなぁ。

 

 

 ーーあれ?今の誰?

 それに昔?昔って、どういうことだ?

 周りを見渡す。

 

 声はもう聞こえなかったし、リズ以外誰もいなかった。

 

(……それになんで私、雪だるまなんて知ってるんだろう…?)

 どうして雪を見てすぐ、作ろうと思ったのだろう。

 ーー1回だって、私は作ったことなどなかったのに。

 

「さ、寒いせいだよね。中入ろう」

 

 足や肩についた雪を落とし、中に入る。

 ドアを閉めた途端、じんわりと温かさが指先から伝わった。見ると、さっきまでついていなかったのに、暖炉が赤々と燃えていた。

 セリアがつけたのだろう。

 

 コートを屋敷しもべに預けて、食堂に入ると、既にセリアがいた。やはり、先生はいないようだ。

「おはよう、リズ。あら、遊んできたの?」

「うん」

「いいわねぇ、子供は。朝から元気で。良いことよ。私、朝は貧血で元気が出なくてねぇ」

 随分おばさんくさいことを言う。

 またまだ若いだろうに。

「あれ、先生は?」

「仕事だって。もう出かけたわ。忙しいみたい。兄さんは優秀だから、引っ張りだこらしいわ。ふふ」

「へぇ、そうなんだ」

 

 気がつくと、テーブルに食事が並べられていた。昨日が豪華だったためか、今日の食事は質素に見える。

 スープにパンケーキが数枚、テーブルの真ん中には蜂蜜入りの紅茶ポッドが置いてある。

 

「リズ、今日はどうするの?」

「図書館で宿題かな。暇だし」

 

 勿論嘘である。本当はニコラス・フラメルについて調べるつもりだ。

 ハーマイオニーを招待する前に、見つけられることなら見つけておきたい。

 ホグワーツの図書室よりも広いここの図書館ならば、おそらく何か資料があることだろう。

「そう。私は仕事あるから、何かあったら屋敷しもべに言ってね。寒いから暖かくしなさいね。図書館は広くて寒いから」

「わかった」

 返事をしてから、席を立つ。同時に、セリアは姿現しで消えていた。

 気が早いことだ。

 リズは図書館へ行く前に、羊皮紙と羽根ペン、インクを部屋から持ってきた。

 寒いとのことだったから、一応コートも。

 途中屋敷しもべに運ぶのを手伝いましょうかと言われたが、断った。

 ブラッドリーに何か報告されたら、それこそ怒られる気がする。

 

 別館に移動し、図書館に続く重い扉を開ける。

 ーーなるほど、セリアの言う通りである。かなり寒い。

 リズはすぐコートを着込み、暖炉の近くに椅子と机を並べ、早速探索を開始した。

 

 

 

 ーー1時間後

 

 なんの成果もなし。というか、非効率すぎた。

 賢者の石のけの字も出てきやしない。

 学校の外では魔法は使えないし、この広い図書館で、どうやって本を絞るか、考えていなかった。

「屋敷しもべは知らないだろうしなぁ…」

 さっきの決意表明が早速崩れそうだ。うごごご。

 

 ーーふと、頭の隅に、【地下室】のことがよぎった。

 ここに来た最初の頃、セリアが、地下室には図書館に入りきらない本を保管している、と言っていた。鍵もかかっていたし、妙に頑丈な扉だったので印象に残っている。

「…あの中にないかな…?」

「アロホモーラ」、と唱えれば空くかもしれないが、魔法を使ったら退学になってしまう。

 賢者の石のためにそこまではできない。

 そういえば、私はニコラス・フラメルについていつ、どこで知ったのだろう。

 どこかで本を読んだのだろうか。ーーよく思い出せない。

(……ニコラス・フラメル…賢者の石……)

 

 私が知っているのは、ニコラス・フラメルが賢者の石の力を使って不老不死であるということ、賢者の石から不老不死になる『命の水』を創れるということだ。

 仮に、あの茶色い包みの中身が、賢者の石だとしよう。

 グリンゴッツの713金庫の侵入者は、賢者の石を狙っていた。

 ニコラス・フラメルは賢者の石が狙われていることを知って、ホグワーツに預けたのかもしれない。

 それでホグワーツに、フラッフィーみたいな罠が仕掛けられているんだろうか。

 

 結局一日費やしたけれど、ニコラス・フラメルについて詳しいことはわからなかった。

 賢者の石についても同様だ。

 

 熱中しているうち、夕方になっていた。

「…リズ」

「えっ!はい?」

 声を掛けられ、振り向くと、ブラッドリーが立っていた。

「夕飯の時間だよ」

「もうそんな時間⁉︎」

 昼食を食べ忘れてしまったようだ。今更になってお腹が空いてきた。

「随分熱中してたみたいだね」

「うん。勉強とか調べ物とか、楽しいから」

「ーー」

 ブラッドリーは、一瞬何かを言いたげに口を開いたが、何故かすぐ口を噤んでしまった。

「今日は久しぶりにセリアが食事を作ったから、いつもと味が違うかもしれないな」

「そうなの?」

「セリアの料理は不味くないんだが、時々大外れがあるから困る」

「あはは、確かにそんな感じするかも」

 

 

 セリアの料理は、大したハズレもなく美味しい料理だった。

 少し味付けが違かったが、それが新鮮だった。

 

 

 そして、寝る前にリズはハーマイオニーに手紙を送った。

 

 

 ”ハーマイオニーへ

 

 元気ですか?

 こちらでもニコラス・フラメルについては調べていますが、詳しいことはよくわかっていません。残念ながら。

 ハーマイオニーはどうですか?

 

 p.s.ハーマイオニー、今度私の家に遊びに来ませんか?歓迎します。

 

 リズ・プリズンリバーより”

 

 

 

 

 ……To be continued

 

 

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