魔法使いになった猫   作:雪兎 銀杏

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13.訪問と災難

 リズの姉であるセリアの職業が、リズは未だによくわからない。

 ブラッドリーが闇祓いというのは耳に入っているが、セリアはどうなのだろう?

 ブラッドリー程ではないが朝早く出かけていき、帰る時間はまちまちだ。

 一日中家にいることもある。魔法薬学に関係のある仕事らしく、一日中薬草園と研究室を行き来していたりすることもある。

 何かしらの薬草を調合をしているが、それは薬草だけには留まらないらしい、蛇の毒や、フグの針などを使用しているのを見たことがある。

 ブラッドリーもセリアも、極秘だと言って研究内容を教えてくれないから、勝手に推測するしかないのだが。

 セリアがよく薬草園の屋根を吹っ飛ばしているのを見るにーーー安全な研究内容ではないのだろう。

 

 まあ、それはそれとして。

 今日はハーマイオニーが、遊びに来る日である。

 

「リズ、もうすぐ時間よ」

「待ってセリア、私変じゃない?」

「大丈夫大丈夫。リズはとってもかわいいから。それよりバスに遅れるわよ」

 服の確認をしてから、お気に入りのコートを着て帽子を被る。

 今日はブラッシングもしっかりしたし、服も選んだ。白いセーターと青いプリーツスカート。黒いタイツとブーツ。ーーセンスが皆無なので、半分くらいセリアが選んだのだが、きっと、おかしくはない……筈だ。

 しかし、先生が仕事でいないのが残念だ。ハーマイオニーに会わせて見たかったのだけど。

 

「地面が凍ってて滑りやすいから気をつけるのよ」

「はーい」

 適当に答えて館の外に駆け出す。

 猫の身体能力ならば、転んでも受け身くらい取れるだろうが、セリアもブラッドリーも、リズに対して妙に過保護だ。渡された路銀も何だか多く感じるし。

 何はともあれ、楽しむとしよう。

 ブラッドリーの過保護もいつものことなんだし。

 

 近くのバス停に来ていたバスに乗り込む。

 駅まではすぐなはずだ。リズは後ろから3番目の席に浅く腰掛け、雪化粧で染まった街を眺めた。

 そういえば、プリズンリバー家は純血の家の割に割とマグルに理解のある家だ。よくわからないかもしれないが、例えばロンなどはバスの乗り方などわからないだろう。バスよりも便利なものが魔法界には沢山あるからだ。

 確か、プリズンリバー家の前頭主が、ホグワーツにいた頃、マグル学を専攻していたとか。そのお陰か、マグルに関する歴史や習性などの本が多い。その影響もあり、ブラッドリーもセリアも、マグルに詳しい。

 魔法族はマグルの世界で挙動不審なことが多いから、マグルについては理解を深めたほうがいいと思う。マグルの世界にも便利なものあるし。電子レンジとか。

 

『次は***駅でございます』

 

 無機質な機械音の声が響く。

 私は停車ボタンを押して、席から立った。

 キキーッ

 

「きゃっ」

 

 運転手の急なブレーキで前のめりに転びかける。あ、マズイ転ぶな、そう思った時、ガシッと腕を掴まれた。

「え…?」

 振り向くと、私の背後に座っていた男の子が、私の腕を掴んでいた。

「大丈夫?」

「う、うん。ありがとう」

「そう」

 私はお礼を改めて言ってからバスを降りた。

 その男の子も降りるところだったのか、後ろから付いて降りてきた。

 駅の掲示板を見ると、雪のせいか、大分電車が遅れていた。

「立往生してたりするのかな?」

 ハーマイオニーが少し心配だ。

 どうしようもないし仕方ないので駅内のベンチに座った。暇つぶしに、バッグに入れておいた本を読むことにした。手がかじかんでうまくページが捲れない。そういえば、用意しておいたのに手袋を置いてきてしまった。

 そんなことを考えながらふと顔を上げると、あの男の子は駅のホームに立っているのが見えた。

「寒くないのかな…」

 本に目線を戻す。

 暫くして、駅ホーム内に電車が入ってきた。

 人混みに揉まれて、男の子の姿は見えなくなってしまった。

 ハーマイオニーの姿を探す。

 人が多すぎてよく見えない。リズの背が低いから尚更だ。

 暫くキョロキョロと辺りを見渡していると、後ろから肩をとん、と叩かれた。

「リズ!」

「……!ハーマイオニー!」

「久しぶりね。元気だった?」

「もちろん!」

 ハーマイオニーは重そうなトランクを一個と、リュックサックを一個背負っていた。

 重そなトランクの方をリズが持つことにした。

「ありがとう、リズ。あの後、ニコラス・フラメルについては何かわかった?」

「それが…さっぱり。賢者の石についても、何にも」

「うーん、そう。私と一緒に探して、捗るといいけど」

「ハーマイオニーは何かわかった?」

「……パパもママも知らなかったわ。教科書にも載ってないし」

「歯医者だものね。当然か」

「あなたのお兄さんには聞いてみたの?」

「聞けるわけないじゃない。先生は闇祓いだよ?ホグワーツに関係してることを、先生が知らない筈ない。私が嗅ぎまわってるって知られたら……どうしよう」

 そのとき、バス停に着いたのでリズ達は立ち止まった。

「?……先生?」

「ん?なに?」

「お兄さんのこと、【先生】って呼んでるの?」

「うん。そうだよ」

「普通名前で呼び合うものじゃない?」

「……そうなの?」

「少なくともロンはそうしてたわよ」

「へぇ」

 猫のときにいた兄弟とは名前というより匂いで識別してたから、よくわからない。

 どうしてブラッドリーはあの日、先生と呼んでくれ、と言ったのだろう。セリアも知らなかったから、私が知る筈ないんだけど。

 

「まあ、いろんな家があるし、私も一人っ子だから、よくわからないわ」

「私も他の家のことはよくわからないなぁ。……あ、バス来たよ」

 バスに乗り込んだとき、ハーマイオニーが少し目を丸くして言った。

「意外だわ」

「なにが?」

「リズがバスの乗り方を知ってることよ」

「意外かな?」

「意外よ。知ってると思うけど、魔法族のマグル理解の低さは相当なものよ?ロンなんか、電話のかけ方もわからないと思うわ。マグルの世界に放り込んだら、きっと挙動不審で職務質問されちゃうわ」

「純血の家なんかに見られる特徴だね。セリアが言ってたけど、前の頭首の人がマグルに理解のある人だったみたいなの」

「へぇ、そうなの……セリアって、お姉さん?」

「うん」

「そっちは普通なのね」

「そういえば……そうだね」

 

 館の近くのバス停で降り、暫く歩く。

 プリズンリバー家の敷地は、割と郊外にあるし、無駄に広い。魔法で中も広げてある。……見た目的には十分な大きさだと思うんだが。

「ここが私の家」

「お、大きいわね」

「中はもっと大きいんだよ」

 縮尺の違いに、きっとびっくりするだろう。

 そう思って、扉を開けたとき、

 

 ドォオオオオオオオオオンッ!!

 

 という爆発音が、館内に鳴り響いた。

 焦げたような煙の香りに混じって、薬品の匂いがしている。どちらにせよ、猫の鼻にはキツイ。

 爆発音の時点で確定。セリアの仕業だ。

「あぁもう!ハーマイオニー、ちょっとここで待ってて!」

「え、ちょっとリズ⁉︎」

 

 研究室の方に走る。ドアが吹っ飛んでいて、壁が壊れて空が見えていた。

「セリア⁉︎」

 部屋内は瓦礫であちこち埋もれていた。

 セリアの姿が見えない。どこにいる⁉︎

「……セリア!!」

「……リズ?」

 声のした方を見ると、瓦礫の下にセリアが倒れていた。

 どうやら怪我をしているようだ。

「ちょっと、大丈夫⁉︎」

「あー、ごめんなさいリズ。また失敗しちゃったわ☆」

「失敗しちゃったわ☆、じゃないよ!早く瓦礫から出て!治療するから!」

「うん、わかった。あ、でも……」

「でもじゃない!早く!」

「治療する前にあれ、片付けないと…」

「……あれって?」

 そう呟いたとき、リズの頭の上スレスレを、なにか巨大なものが通り過ぎていった。

 もう少し背が高かったら、死んでいただろう。

「え、なに、今の」

 巨大なもののほうを見る。

 見た瞬間、ぞわっと鳥肌がたった。

 

 それは、物凄く巨大で、蠢く触手を持った、緑色の【植物】だった。

 いや、植物のように見えるだけで、中身は生物なのかもしれない。不気味なほど巨大な、黒い穴が、体の真ん中に空いている。あれから養分を取り込むのだろうか。

 触手がぐわんとこちらに伸びてくる。

 薙がれる前に、リズはセリアを背負ってジャンプした。流石というべきか、猫の跳躍力で壁にジャンプして逃げた。

「ギャアアアアアアッ!なにあれ⁉︎」

「あー、あれは実験でできちゃった魔法生物よ。マンイーター」

「マンイーター⁉︎食われる!絶対食われる!」

「大丈夫大丈夫。私が杖でなんとか…………あら?」

「あ、物凄く嫌な予感がする」

「ごめん、杖落としちゃったわ」

「ちょっとぉぉおおおおおおっ!本当に死んじゃうよ⁉︎」

「どうしましょう……」

 

 今はなんとか避けてはいるが、いずれ限界が来る。魔法を使うにも、今は杖がないし……。

 なんとか、触手の当たる寸前でジャンプする。しかし、相手も相手、いつの間にか、二人は壁際に追い詰められていた。

 

 あぁ、運の尽きだ。今度こそ、本当に死ーーーー

 

『プロテゴ・ホリビリス、恐ろしきものから守れ』

 

 

 

 

 ……To be continued




誰⁉︎Σ(゚д゚lll)
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