魔法使いになった猫   作:雪兎 銀杏

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久しぶりの投稿っ!
イエェエエエエエエエエエっ!!!
……
どうもすみませんでした。


14.秘密

 

 

 

『プロテゴ・ホリビリス、恐ろしきものから守れ』

 

聞きなれない呪文が聞こえた。そして突如、触手が目の前の見えない盾のようなものに阻まれて近づいてこなくなった。

「え…?」

 

「デューロ、固まれ」

 

また声が響く。声の方を向くが……煙でよく見えない。この呪文はあんまり効いてなさそうだった。

 

「イモビラス、動くな」

 

その声と同時に触手は暴れるのをやめた。

いや、やめさせられた?

 

「レダクト、粉々」

 

動けなくなったマンイーターが、文字通り粉々に砕け散って消えた。早業である。

この魔法使いは一体誰なんだ……?

「……誰?」

足音が聞こえた。どこかにいってしまうようだ。

「誰なの?」

「………」

煙の間に、一瞬だけドアの外に出ようとする人が見えた。

「!あなた、さっきの…」

気のせいだったのだろうか。

 

さっきの人が、さっきの駅のホームにいた、リズを助けてくれた、あの男の子に見えたのは。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

その後瓦礫の中からセリアの杖を探し出し、何とか部屋の復旧をした。

私もセリアも酷い格好だった。土煙で折角の服も黒くなってしまったし。

「……ごめんなさいね、お騒がせして」

「ハーマイオニー、本当にごめんなさい。埋め合わせはするから」

「えっと…それより、二人とも大丈夫ですか?」

気まずそうな表情のハーマイオニー。現在、三人は食堂で昼食を摂っている。

先程の爆発マンイーター事件のすぐ後、リズとセリアはとりあえずすぐシャワーを浴び、服を着替えた。その頃にはもう昼食の時間だったので、今昼食中というわけだ。

「一体何があったんですか?」

「…私、魔法薬の研究をしてたんだけど…実験中に少し失敗して…爆発させてしまったの」

「……⁉︎」

その言葉に、リズは少々戸惑うが、

「セリアが実験で爆発させるのはよくあることなの」すぐに驚くハーマイオニーにそう付け加えた。

「魔法薬の研究、ということは、魔法薬学の先生なんですか?」

「?いや、違うわよ。私は【闇祓い】。だけど……ちょっと特殊な業務についてるの」

「特殊?」

「これ以上は守秘義務がございますので、お答え出来ません……なんてね♪」

なんてセリアはおちゃらけてみせるが、リズは数時間前のことについて、未だ頭を巡らせていた。

 

 

 

ーーー数時間前

マンイーター事件の直後

 

「セリア、あの男の子、誰?」

「………男の子?よく見えなかったわ」

セリアは見えなかったのだろうか。

リズは背負っていたセリアを下ろし、男の子の行ってしまった方へ走る。

「いない……」

「リズ!どうしたの?杖探すの手伝って!」

「う、うん」

廊下には、男の子がいないどころか、男の子の痕跡すら残っていなかった。

リズはなかにもどり、瓦礫を掻き分けながら杖を探す。土煙が立ち込めているからか、視界が悪くなかなか見つからない。

「……ていうかセリア、どうしてマンイーターなんか作っていたの?」

ずっと気になっていた質問をかける。

「………」

「……セリア?」

その質問に、セリアは急に黙り込んだ。

何かを考えているように見える。不審に感じたリズは心配になり口を開いた。

「……セリ

「杖がなくてよかったわね、リズ」

「……え?」

呼びかけが遮られる。嫌な予感がする。

次の言葉に何が来るのか、リズはなんとなくわかっていた。

 

「もし杖があったら、オブリビエイトしてたわ」

 

ぞわり、背中に冷たいものが伝わっていく。

マンイーターは、見られてはいけないものだったのか?それを見られたから、記憶を消す?普段のセリアとは似ても似つかない冷たい声が頭に反響する。

つまり、セリアはこう脅しているのだ。【他言無用】、【喋ったら記憶を消す】と。

「さて、杖を探しましょ」

いつもの明るい調子で、セリアが言った。

そのギャップに戸惑いながらも、リズはうん、と返事を返した。

他にも疑問はある。

どうして何処からか魔法が打ち込まれたことに疑問を感じていないんだ?男の子が見えなかったにしても、魔法が打ち込まれた時点で違和感を抱くはず……誰かがいたことに対して、どうしてなにもいわないんだ?このことについて聞いたら、オブリビエイトされるだろうか。もしそうなるとしたら……

 

セリアがあの男の子を、【知っている】可能性があることになる。

 

 

 

「どうかした?リズ?食事が進んでないようだけど」とセリアが尋ねてきた。その声で現実に引き戻される。

「考え事。何でもないよ」

笑って答える。

セリアはなにか隠しているに違いない。

 

 

 

 

*********

 

 

 

昼食の後、ハーマイオニーを客間に案内してから、すぐ図書館へ向かった。

ニコラス・フラメルについて調べるためだ。

 

「……本当にホグワーツの図書館より広いのね」

何百冊もの本を見上げて、ハーマイオニーが呆然と呟いた。

「初代の人から本集めが趣味だったみたい。何代も何代も集めてたらこんなに大きくなったらしいの」

「人の一生分以上の量があるわけね…」

目をキラキラさせている。

もしかしてこの図書館の本をコンプリートしたいのだろうか?それは無理がある…。

「ーーところで、本当のところ、さっきの爆発は一体なにがあったの?」

暖炉の火をつけながら、リズはその質問に、ん?となりながら返した。

「……えっと…セリアが嘘ついてるって気付いてた?」

「…セリアさんというより、リズの様子がおかしかったから」

自然にしているつもりだったが、ハーマイオニーにはお見通しらしい。

「……話したいのはやまやまなんだけど…話したら記憶消されるの」

ハーマイオニーはそれに対し驚いたのか、少し目を見開いた。

「……でも、【話さな】ければいいんでしょ?筆談ならいいんじゃないかしら」

「ーーその手があったか」

 

二人はニヤリと笑い、リズは羊皮紙に要点をまとめて書き出した。

 

・セリアがマンイーターを作っていたこと。

・男の子がマンイーターから助けてくれたこと。

・セリアが男の子についてなにも言わないのが不審なこと。

・男の子は何者なのか。

・セリアは何を隠しているのか。

 

ハーマイオニーはそれを見て、暫く考え込んだ。

「男の子の使った呪文は?」

リズは記憶を呼び覚ます。猫の鋭い聴覚は、しっかりと呪文を記憶していた。

「プロテゴ・ホリビリス、デューロ、イモビラス、レダクト」

「プロテゴ……デューロ……」

ハーマイオニーはブツブツと復唱する。

「……リズ、この図書館には勿論、呪文集があるわよね?」

「う、うん」

「私はその男の子とやらが使っていた呪文について調べるから、マンイーターがほかの魔法生物と似たような特徴を持っていないか調べて」

「……オッケー」

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

調べを開始してから半刻ほど経ったとき、ハーマイオニーはぎょっとした。

調べがつかなかったのではない。それどころか、リズの家の驚くべき図書館の大きさで、呪文の解析はかなり捗った。

ハーマイオニーは、リズから聞いていた呪文を調べれば、何かわかると思っていた。【男の子】と言っていたから、使っている魔法の練度で年齢がわかると思ったのだ。……だが、ますます男の子とやらの正体がわからなくなってしまった。

「リズ、その、プロテゴ・ホリビリスっていうのを使っていたのは、本当なの?」

もう一度確認する。

「確かだよ」

「じゃあ、男の子って何才くらいに見えた?」

「私たちと同じくらいか、ちょっと上くらいじゃないかな」

考え込むようにリズが言う。リズが言うからには、確かなんだろう。だが……この魔法は……。

 

プロテゴ・ホリビリスは、強力な盾の呪文だ。それも、許されざる呪文の対抗措置としても使われるほどの強力な代物であり、習得にはかなりの時間がかかる。並みの魔法使いに使用できるものじゃない。ましてや、ハーマイオニーたちと同い年の魔法使いが扱えるものではない。

加えて、同じくらいに見えた、と言っていたが、現在魔法界では17歳以下の魔法使いが学校外で魔法を使うことは禁止されている。

同い年の男の子が、学校外で、しかも、プロテゴ・ホリビリスを使用した?ありえない。男の子が存在しないか、子供ではなかったと考えるのが自然だ。

「…嘘に決まって…」

ハーマイオニーは混乱していた。頭の中にぐるぐると思考が回転する。

 

リズの周りではいつも、予想もできないことが度々起こる。【まるでリズが引き寄せているかのように】。

 

「……」

「…ハーマイオニー?」

「……え?なに?」

「何かわかったの?」

「……いえ、まだよ。リズは?」

落ち着け落ち着け、ハーマイオニー・グレンジャー。そんなことあるはずがないじゃないか。きっと思い違いだ。男の子について、もう一度考えてみよう。

 

「マンイーターに、謎の男の子、ニコラス・フラメルに、賢者の石……調べることが多いわね」

だが結局、二人はニコラス・フラメルについても、賢者の石についてもわかることはなかった。膨大な量の本ゆえに、情報が少なすぎて本が絞れなかったのも、原因の一つだったのかもしれない。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

夕食の時間を屋敷しもべが知らせにくるまで、二人は夢中で図書館を探り回っていた。なので、二人は食堂でブラッドリーとセリアが話し合っているのを知るよしもなかった。

セリアは初めてリズに会った時のように、屋敷しもべにもしゃべっている内容が聞こえないように魔法をかけた。なんとなく、二人の周りを魔法の膜が覆っているのがわかる。

 

「あの子が…男の子の姿が見えたって言ってたわ。どうするの?」

セリアはそう切り出した。いつの間に帰ってきたのだろう、ブラッドリーは冷静な様子で答える。

「今は、問題ないだろう。だが…厄介だな」

「どうして?」

「思ったより進行が早いからだ。どうやったら止められるのか…」

ブラッドリーはこめかみを抑えて何かの書類を見つめている。同じような書類がセリアの手にも握られていた。二人はより一層深刻そうな顔をする。

「ねぇ、やっぱり、無理があるんじゃない?」

セリアは不意に不安そうな声を出した。

「なにがだ?」ブラッドリーが応じると、セリアは気まずそうに口を開いた。

「いくら【ダンブルドア】の頼みでも…【キメラ】を作るなんて…」

ブラッドリーは口を堅く結ぶ。どんな言葉をかけてやればいいか、考えているようだ。

「すまない、お前にしかできないんだ。材料はスネイプが揃えてくれる」

「…………」

セリアは下を向いて腕を組んだ。その目は迷うように震えている。ブラッドリーはそれを肯定の意と受け取り、話題を変える。ブラッドリーは、セリアがこの依頼を断れないと知っていた。

「しかし、マンイーターを見られたのは問題だな」

「…そうね」

「屋敷しもべだったらまだよかったのに…よりによってリズか…」

ブラッドリーは責めるようにセリアを見る。セリアはバツが悪そうにそっぽを向いた。

「どうしようもないわ。私知ーらないっ!」

投げやりに言い、セリアは書類を投げ出す。その羊皮紙にはーー【リズ・プリズンリバー】の文字があった。

「わかってる。だから脅すしかなかったんだろう」

 

「ええ。だってあの子、オブリビエイトが【効かない】んだもの」

 

「…やっぱりか…」

「どちらかというと、効きづらいっていうべきね。オブリビエイトだけに限らないと思う。他にも効きづらい呪文があるはずよ。試したことないからわからないけど」

ブラッドリーはふと思い出したことを口にした。

「確か、ネビル・ロングボトムの下敷きになってときに肋骨を折ったことがあったな」

「……あったわね。そんなことも」

「全治二週間。【長すぎ】やしないか?」

マダム・ポンフリーは大体1日、長くて3日で怪我を治してしまう。ホグワーツに在学中、セリアが三階から落ちた時も、2日で怪我を治してくれた、凄腕に魔女だ。つまり。

「……回復系の魔法も効きづらいってことになるわ」

セリアの顔が真っ青になる。ただでさえリズは怪我が多いのだ。もし、大怪我をしたときに魔法が効かなかったら……想像は容易い。セリアの体が、ブルブルと震えだす。ヴォルデモートのことを、リズに話したときのような怖がり方だ。

「…まずいな。オブリビエイトはともかく、回復系が効かないとなると…」

「怖い、怖いわ。あの子が死んじゃったらどうしよう……っ!私…っ」

口調が乱れ、涙が溢れそうになっているセリアを落ち着かせるように、ブラッドリーは肩を掴み、落ち着けと言った。セリアは幾分か冷静になったようだった。

「だけどまあ、これからは怪我も減ることになるだろうな」

「どうして?」

セリアが不思議な顔をして問いかける。ブラッドリーは不思議な笑みを口に浮かべた。

 

「その【男の子】とやらが仕事を続ける限り、あの子が怪我をすることは、まずないからさ」

 

 

…to be continued

 

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