ハリーは試合に出ることに決めたものの、不安でいっぱいだった。
魔法薬学の授業は毎週拷問にかけられているようだったし、一人になると跡をつけられているんじゃないかと思った。
しかしいよいよ、試合の日がやってきてしまった。リズたちはスネイプがなにかハリーを傷つけるような真似をしたら、すぐに「足縛りの呪い」をかけてやろうと画策した。
「ハリー!」
試合直前だった。
リズは更衣室の前でハリーに話しかけた。
ハリーはドアノブを回す直前だったが、思わず振り向いた。
「どうしたの?なにかあった?」
「いや、なにかあったってことはないんだけど…」
思わず呼び止めてしまったのだ。
「……頑張って。でも死なないで。絶対に帰ってきてね」
「うん。そうだ、あのさ」
去ろうとしたリズを、ハリーは思わず呼び止めた。
「なに?」
「…君が僕の誕生日プレゼントにくれた、あの瓶のことなんだけど」
「ああ、あれがどうかした?」
ハリーはローブの下から、いつぞやにあげたあの瓶をとりだした。中には、まだちゃんと薬草がいくつか入っていた。
「…君の言う通りだった。お守りみたいにローブの中に入れておいたんだけど、夜学校を歩いていて、ランプを落としてフィルチにバレそうになったとき、ちゃんと光ったんだ。あのとき、君の瓶のお陰で迷わずに逃げれた」
「……」
「えっと、そのなんというか、ありがとうって言うの、忘れてたから」
ハリーは顔を赤らめて微笑んだ。
「…そっか。あのね、その瓶の中に、ヤドリギの葉が入ってるの」
「そうなの?」
「ヤドリギの花言葉には、『困難に打ち克つ』っていうのがあるの。だからきっと、大丈夫。ハリー、君なら勝てるよ」
リズは、最後にハリーの手をぎゅっと握り、笑った。ハリーも思わず笑い返していた。
二人は、お互い笑顔で別れた。
ハリーは、更衣室でユニフォームに着替えた後、リズに貰った小瓶をじっと見つめた。
心臓がバクバクと脈打っている。ハリーは深く深呼吸した。
ローブのポケットに瓶を戻し、ニンバス2000を手に取る。
(大丈夫だ…僕ならできる)
そんな自信とも暗示ともつかないものを背負って、クィディッチの試合が始まった。
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結果は、思ったよりもすぐに片付いてしまった。
グリフィンドールの圧勝である。
開始五分も経たないうちに、ハリーはスニッチを取ってしまった。
その間にグリフィンドールの悪口を言われたロンとネビルがマルフォイ一味と殴り合いをするという事件があったが、苦々しい事件は勝利で吹き飛んでしまった。
グリフィンドールが首位に立ち、スネイプに目にもの見せてやったのだ。
「おめでとう、ハリー」
リズは箒置き場でハリーを待ち伏せていた。
お祝いがひと段落すれば、ハリーが箒を置きに来るだろうと思っていたのだ。
「リズ!夕飯に行かなくていいの?」
ハリーは興奮の冷めやらぬ口調で言った。
「これから行くわ。ハリーにエスコートしてもらおうと思って」
「あはは、そっか」
二人は木の扉に寄りかかり、少し話をした。
こうして二人きりになるのは、久々な気がした。
いつもハーマイオニーかロンがいたし、ゆっくり話す機会も、忙しくてあまりなかった。
二人が城の正面の階段を誰かが降りて来ることに気が付いたのは、話していてしばらく経ってからだった。
「誰だろう?」
「……スネイプだ」
フードを被った男は足を引きずっていた。恐らくはスネイプだろう。
あきらかに人目を避け、こっそりと禁じられた森の方へ向かって行く。
「リズ、後ろに乗って」
「オーケイ」
ハリーとリズはニンバス2000に跨り、城の上まで滑走すると、スネイプが森の中に駆け込んで行くのが見えた。二人は跡をつけた。
しかし、木々が深々と生い茂り二人はスネイプを見失った。
「どっちに行ったんだろう?」
「高度を下げてみようか」
段々高度を下げ、梢の枝に触るほどの高さになったとき、誰かの話し声が聞こえた。
二人は声のする方にすーっと移動し、太いブナの木に音を立てずに降りた。
「リズ、誰がいるか見えるかい?」
「ちょっと待って…」
リズは器用にするすると枝を降り、下にいる誰かを覗き込んだ。
猫の視界は暗いところでもよく見える。
木の下の更地にはスネイプとクィレルが立っていた。
「…な、なんでよりによって、こ、こんな場所で…セブルス、君にあ、会わなくちゃいけないんだ」
「このことは二人だけの問題にしようと思いましてね」
スネイプの声は氷のようだった。
「生徒諸君に『賢者の石』のことを知られてはまずいのでね」
リズは目を見開いた。
「あのハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もうわかったのかね」
「で、でもセブルス…私は…」
「クィレル、私を敵に回したくなかったら」
スネイプはグイと一歩前に出た。
「どういうことなのか、私には…」
「私が何が言いたいか、よくわかってるはずだ。あなたの怪しげなまやかしについて聞かせていただきましょうか」
「でも、私は、な、何も…」
「いいでしょう」
とスネイプが遮った。
「もう一度よく考えてどちらに忠誠を尽くすのか決めておいていただきましょう」
スネイプはマントを頭からすっぽり被り、大股に立ち去った。
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二人は急いで寮に戻り、クィレルがスネイプに脅されていたことをロンとハーマイオニーに話した。
「僕らは正しかった。『賢者の石』だったんだ。それを手に入れるために手伝えって、スネイプがクィレルを脅してた」
「多分、フラッフィー以外にもなにか別の沢山の魔法が石を守ってるんだわ」
「クィレルが闇の魔法に対抗する呪文をかけて、スネイプがそれを破らなくちゃいけないのかもしれない…」
事態の深刻さに、四人は顔を青ざめる。
賢者の石が安全なのは、クィレルがスネイプに対抗している間だけだろう。
あの臆病な先生は、一体いつまでもつだろうか。
今日の夕飯はミートソースです。(だからどうした)