魔法使いになった猫   作:雪兎 銀杏

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原作を知っている方のほうが読みやすいかと。


3.ダイアゴン横丁

 3.ダイアゴン横丁

 

 リズがプリズンリバー家に来て半年経った。

 不思議なことにリズは、猫だったはずなのに文字も書けたし勉強もできた。

 人間生活には不自由しなかったのでよかったのだが、なんとも奇妙だった。

 

 それから、妙なことを話された。

 もし何か聞かれたら、ブラッドリーとセリアの妹と話し、両親は死んだことにすること…と言われたのだ。

 確かに屋敷には3人しか住んでいなかったし、両親が亡くなっていると言っても、納得はできる。

 

 8月の初め、リズはブラッドリーとマグルの街を歩いていた。

 ロンドンは…ましてや地下鉄に乗るなんて初めてだった。

 もちろん、ブラッドリーだってマントを着ているわけではない。

 赤いシャツと黒いロングコートを着ている。(暑くないのかしら、とリズは密かに思った)

 リズは涼しげなノースリーブワンピースの下に、動きやすいショートパンツを履いていた。

「どこにいくの?」

「ホグワーツの道具を買いに行くんだ。だから、ダイアゴン横丁に向かってる」

「ダイア…なんて?」

「ダイアゴン横丁。魔女や魔法使いの必要とするありとあらゆる道具が売っている横丁だ。入学許可書に教材リストが同封されていただろう?そこに書いてあるものを買えばいい」

 地下鉄の階段を上りきり、いろいろな通りを通ったが、未だダイアゴン横丁という標識は見当たらない。

 きっと魔法で見えないようにしてあるのだ。

 

 ブラッドリーは突然足を止めた。

 あまりにも急だったので、リズはブラッドリーの背中にドスンとぶつかってしまった。

 

 そこには、『漏れ鍋』というパブがあった。

 本屋とレコード屋に挟まれていているのに、マグルたちは気がつかない。

 見えていないのだろうか。

 ブラッドリーは無言で漏れ鍋に入っていった。

 リズも続いた。

 

 入った瞬間、どこからかハリー・ポッターと叫ぶ声が聞こえた。

 目の前に立っている、凄く背の高い毛むくじゃら大男の隣に立っている男の子のことのようだった。

 ブラッドリーは、人混みを掻き分けてその大男に近づいていった。

「やあハグリッド!久しぶり!」

 急に、ブラッドリーが叫んだ。

 大男は、くるりと振り向いた。

「おんや、ブラッドリーじゃねぇか。元気だったか?」

「ああ、元気だった。……その子が、ジェームズの?」

「あ、えっと、僕、ハリー・ポッターといいます」

「知っているよ。なにしろ有名だからね。ハグリッド、この子の買い物に来たのか?」

「ああ。入学前に物を揃えなにゃいかんからな」

「そうか。悪いが、この子と一緒に行ってくれないか?これから私は用事があって…」

「構わんよ。妹さんか?」

「ああ、セリアの下の子。リズ」

「可愛らしいな、うん。髪が白いのはお母さんの遺伝か?え?」

「えっと…」

「リズは養子なんだ」

「そうか。わりぃな」

「い、いえ」

 少し戸惑いながら、リズは答えた。

「それじゃあ行こうか。またな、ブラッドリー」

「ああ」

 リズは一瞬ブラッドリーを見たが、おとなしくハグリッドについていった。

 

「ハリーって、あのハリー?」

 リズはハリーにそっと尋ねた。

 ハリー・ポッターのことは、前セリアが話していた。

 ヴォルデモートに殺されなかった、生き残った男の子として。

「そうだよ。多分…」

「へぇ…思ったより、痩せてるね」

「…そうかな?」

「もっとちゃんと食べたほうがいいよ」

「……うん」

 ハリーの背はリズと同じ、いや、リズの方が少し高かった。

「リズ、とりあえずハリーの金をグリンゴッツから下ろさにゃいかん。付き合ってくれるか?」

「わかった」

「グリンゴッツって?」

「魔法使いの世界にも銀行があるんだよ。なんだっけ?小鬼が管理してるらしいの」

「リズはグリンゴッツに行ったことがねえのか?」

「ない。ダイアゴン横丁にも行ったことがないの。今までずっと薔薇の館にいたし」

「薔薇の館?」

 ハリーが聞き返した。

「リズはプリズンリバー家の末娘でな。プリズンリバー家っていうのは、魔法界では有名な名家なんだ。だが、お前さんの両親と同じように、数年前リズの両親が亡くなってなぁ。年寄りだったが、いい人だった」

「それも、ヴォル……『例のあの人』がやったの?」

「ああ。本当に残念なことだ。いい人だったのに…」

「君も…」

「…でも私養子だし、1歳の時ことなんて覚えてないよ」

 リズは慌てて言った。

 というか、リズは最近来た者だし、そんな事情聞かされていない…。

 リズはあとで聞いてみようと思った。

 

 3人は漏れ鍋の中庭に出た。

(それまでの間ハリーに握手してくる人が沢山いた)

 ハグリッドは、ブツブツと何かつぶやきながら、ゴミ箱の上の左から三番目のレンガを軽く叩いた。

 

 ハグリッドでさえ十分通れるほどのアーチ型の入り口ができた。

 その向こうは石畳の通りが曲がりくねって先が見えなくなるまで続いていた。

「ダイアゴン横丁へようこそ」

 二人が驚いているのを見て、ハグリッドがニコッと笑った。

 

「色々買わにゃならんが、まずは金を下ろさにゃならん。リズ、これはブラッドリーからの金だ」

 小さいけれど重い。

 中を開くと、どっさりと金が入っていた。

「1年間は大丈夫な金が入っとるそうだ。大事に使うんだぞ」

「わかった」

「それじゃ、行こうか」

 

 グリンゴッツはしばらく歩くと見つかった。

「グリンゴッツだ」

 ハグリッドの声が、頭上からした。

 それは、ひときわ大きな白い建物だった。

 壁に、こう書いてある。

 

 

【見知らぬ者よ入るがよい

 

 欲の報いを知るがよい

 

 奪うばかりで稼がぬ者は

 

 やがてはつけを払うべし

 

 おのれのものにあらざる宝

 

 我が床下に求める者よ

 

 盗人よ気をつけよ

 

 宝のほかに潜むものあり】

 

 

「言ったろうが。ここから盗もうなんて、狂気の沙汰だわい」

 

 そう言いながら、中に入っていった。

 入る時、左右の小鬼が銀色の扉を入る3人にお辞儀をした。

 本にあった通り、コインを秤に乗せる小鬼がいた。

 

 ハグリッドが小鬼と話している間、リズはハリーに話しかけた。

「マグルと暮らしてるの?」

「そうだよ」

「どんな人?」

「ひどい奴らさ。話しても面白くない」

「ふぅん…」

「リズは養子って言ってたよね」

「ええ」

「…いつから?」

「…よく覚えてない。気がついたらいたし」

 リズは咄嗟に思いついた言い訳を言った。

 冷や汗を感じたが、ハリーはそれ以上聞いてこなかった。

「魔法は使えるの?」

「うん。簡単のなら。でも私、マグルについてはそんなに詳しくないの。ずっと薔薇の館にいたから。花の種類とか、薬草とか、動物とかなら詳しいわ」

「へぇ、なにかホグワーツについて知ってることを話してくれない?」

「いいよ。ホグワーツって、

 ”グリフィンドール”、”スリザリン”、

 ”ハッフルパフ”、”レイブンクロー”

 の四つの寮があるの。

 7年間、この中のどれかの寮で過ごすのよ。プリズンリバー家は、確か…スリザリンの家系らしいけど、私はグリフィンドールに入りたい。どうやって決めるかは知らないけど」

「知らないの?」

「セリアが見てのお楽しみとか言うから…」

「セリア?」

「私の姉さん」

「お姉さんもいるんだ!」

 

 その時、ハグリッドが二人を呼んだ。

 三人はトロッコに乗って、ビュンビュン地下へ走っていった。

 冷たい空気の中を風が切って走るので、リズは目が痛くなって目を閉じてしまった。

 

 トロッコは小さな扉の前で止まった。

 二人はずっと話していたので気がつかなかったが、ハグリッドは酔ったのか壁にもたれかかっていた。

「セリアが言ったのはこういうことだったんだ。セリアって読めないな…」

 リズは何故かセリアに渡された酔い止めを、ハグリッドにやってしまった。

 リズは猫だ。

 三半規管が弱いわけないだろう。

 

 ハリーの金を取ったあと、またトロッコに乗り込んだ時、ハグリッドが言った。

 

「次は七一三番金庫を頼む。ところでもうちーっとゆっくり行けんか?」

「速度は一定となっております」

 走り出してすかさず、ハリーはハグリッドに尋ねた。

「七一三番金庫?何が入ってるの?」

「それは極秘じゃ。ホグワーツの仕事でな。ダンブルドアは俺を信用してくださる。お前さんたちに話したら、俺がクビになるだけじゃすまんよ。……もう話しかけんでくれ。吐きそうだ」

 

 七一三番金庫には、鍵穴がなかった。

「下がってください」

 グリップフックは勿体ぶって言い、長い指の一本でそっと撫でると、扉は溶けるように消え去った。

「グリンゴッツの小鬼以外の者がこれをやりますと、扉に吸い込まれて、中に閉じ込められてしまいます」

 グリップフックが言った。

「中に誰か閉じ込められてないかどうか、調べたりしないの?」

 とハリーが聞いた。

「十年に一度くらいでございます」

 

 二人は期待して中を覗き込んだが、中にあったのは、茶色の紙でくるまれた薄汚れた小さな包みだった。床に転がっている。

 ハグリッドはそれを拾い、コートの奥深くにしまいこんだ。

 

 再び地上に出た3人は、すぐに買い物に出かけた。

 最初に行ったのは、洋装店だった。

 ハグリッドが元気薬を買いに行っている間、二人はそこで制服を買うことにしたのだ。

 ハグリッドと離れるのは不安だったが、ハリーといるからまだマシだった。

 

「坊ちゃんとお嬢ちゃんも、ホグワーツなの?」

「ええっと…」

「全部ここで揃いますよ……もう一人お若い方が丈を合わせているところよ」

 店の奥の方で、青白い、顎の尖った少年が踏台の上に立ち、もう一人の魔女が長い黒いローブをピンで留めていた。

 

 二人はその少年の隣の踏台に立たされ、丈をあわされはじめた。

「やあ、君らもホグワーツかい?」

 少年が声をかけた。

「うん」

「私も」

 ふと、リズが切り出した。

「……あなたどこかで見たことあるな。前新聞に載ってた……マルフォイという人に似てる」

「僕の父はルシウス・マルフォイさ。僕はドラコ・マルフォイ。君の名前は?」

「私はリズ。リズ・プリズンリバー」

「プリズンリバーって名前、知ってる。父が少し話していたからね…。それじゃあ君、スリザリンかい?」

「プリズンリバーはスリザリンって聞いたけど、まだわからない」

「一緒の寮になったら仲良くしよう」

 

 マルフォイの興味は、次にハリーにうつされた。

「君はクィディッチはやるの?」

「ううん」

「僕はやるよ。…父は僕が寮の代表選手に選ばれなかったら、それこそ犯罪だって言うんだ。

 君はどこの寮に入るか知っているの?」

「ううん」

「彼女が言ったように、本当のところは行ってみないとわからないけど、僕はスリザリンに決まってるよ。プリズンリバー家と一緒で、僕の家族はみんなそうだったんだから」

「ねえドラコ。あ、ドラコで構わない?…もしスリザリンじゃなかったらどうする?」

「構わないよ。ハッフルパフなんかに入れられたら、僕は退学するな。そうだろう?」

「うーん」

 

 ハリーにとって、リズが会話を持ってくれるのはありがたいことだった。

 なにを話しているのか、よくわからなかったからだ。

「さあ終わりましたよ、坊ちゃん、お嬢ちゃん」

 二人は踏台から降りた。

 

「じゃ、ホグワーツで会おう、リズ」

 外に出ると、ハグリッドが二人にアイスを買ってくれていた。

 リズのは甘いミルク味とキャラメルだった。

 

 いろいろな買い物をした。

 最後に杖を買おうというとき、リズはなにか動物を買うことにした。

「そうだハリー、まだ誕生祝いを買ってやってなかったな」

 ハリーの顔が、急に赤くなった。

「今日、ハリーの誕生日だったの?じゃあ私もこれあげる」

 リズは鞄から瓶を取り出した。

 中に数個薬草が入っている。

「お守り。暗いところで光るし、中の薬草は傷薬にもなるし、解毒にもなるの。役に立つ」

「ありがとう!」

「俺はふくろうを買ってやろう」

 

 リズは動物店でふくろうを買った。

 大きな金色の瞳をもった、小さいけれど可愛らしい、アフリカオオコノハズクにした。

 

 …To be continued

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