とりあえずあれから通常運転に戻った俺は、再びバイトを始めた。もともと人脈とおそらく発動しているであろうカリスマのおかげであちこちからの要請を受けてチマチマヘルプで入る形を取れるのがありがたい。
この力をホイホイ使ってたら厄介事がありそうな気がするが、俺は全く気にしない。気にしたところでもう手に入ってる力なんだからどう使おうが俺の自由じゃないか。そもそも厄介事が起こっても対処はどうとでもなる。
だが、起こらない方がいいのは間違いないし、でも自重すると楽ができないし……
「おーい吾郎君、この機材全部地下に持っていってくれ」
「はーい」
俺は今電気屋でバイトしている。以前もバイトに来ていたので、家の事情もあるしヘルプで時々入る事にオーケーが出ている。当然裏方。いや、接客してもいいんだけど、女性を問答無用で惚れさせてパソコン買わせるんでも、あとあと正気に戻って返品されまくったらこの店に迷惑かかると思い自分で断った。
うん。その方がいいよね。やっぱり記憶操作とか無理やりとかは良くないよね。
荷物を見に行くとそこは段ボール箱の山、山、山。機材の入った箱がこれでもかと山積みになってやがる……まあこれくらいなら能力使わなくても俺のパワーでいっぺんに……
あれ?
持ち上がらない?
え? なんで?
だって俺何使っても疲れなかったじゃねえか!? 何ゆえ……あ。
その時俺は嫌なことに思い至った。まさかあれだけいろんなチート貰ったのに俺の体のスペックってそのままなんじゃ!? ってことにさ……
チートだから無理やり能力使えてるだけで能力使うのやめたら素のスペック。能力使ってればオールAでも……それじゃ俺って例えるなら姿消えたりとか蒼い何かを出せるとか十一回までなら殺されても生き返れるだけのフリーターじゃんか! 確かに神様に「能力」って言ったけどさ……俺これじゃ魔力無限のオールE以下スペックだよ!
ギルガメッシュのマスターに相性最適な奴じゃん!? いやだ! あんな友達これっぽっちもいない金ぴか自己チューに使い古されるような立ち位置いやだぁ!
「……店長、これバイト代上乗せですよね?」
「え?」
「え?」
いや、この際もうすべてに目をつぶろう。能力「だけ」で俺は楽してやる!
すごい情けないが手に入れた力は使ってナンボだからな。スペックはダメでも能力総動員すれば身体能力なんていくらでもあげられるし! もう素は諦める!!
とりあえずこの機材を楽に運ぶには……
ズボッ
「えーと……あ、これこれ」
空間から取り出したのはちっこいナイフと鞭。これを機材にくくりつけて……
そのまま手ぶらで地下に行き……
「よし。この辺でいいか」
もう一度さっきのナイフと鞭を取り出せばきっと宝具にくくりつけられてる機材も一緒にくる、はず! この発送を考えたときは俺は天才じゃないかと思ったぜ。
フフフ……我に荷物運びなどという下等な行為を雑種ごときがさせるとどうなるか思い知らせてくれるわ!
「さあ我に楽をさせろ!ゲート・オブ・バビロン」
そんな完全に本人(ギルガメッシュ)が聞いたらぶちギレる位に似てないモノマネをしていた俺は、後で「自分で掴んで引っ張り出せばよかった」と後悔することになった。
何もない空間から現れたナイフと鞭は確かに機材を連れてきた。俺はそれを見上げて計画の成功をはしゃぎたくなるほど喜んだ。
……そう。「見上げて」いたんだ。
勢いよくすっ飛んで行った後に続くグシャリという鈍い音。軽い振動が起き、一番下の箱が潰されて、崩れていく。
「……調子こいた……」
本人と同じように射出してしまって、一番下の箱はクッションとなりグシャグシャだ。
幸い他の機材は壊れなかったのと中は細かいネジなどが入っていたので、そこまで被害は出ずに済んだ。
「能力で元に戻せないかな……ちょうどいいのな……」
「なにやってんだ吾郎君!? あーあーこんなにしちゃって!」
「……店長」
OH……直す前に
そのあと俺はみっちり叱られた。クビにこそならなかったが、いくつかネジなどが無くなったので弁償するはめになった……
……なに、この程度俺がこれから調子に乗らない為の先行投資だと思えば……ハハ……ハハハ……