「う、うわぁ飛んだ! い、いや跳んだなのか、わっわっ!
きた! 僕のほうにきた! 早く、早くしてくれよ三原君!」
「ちょっとは大人しくまってて下さいよっと!」
手に持っている長い針でGを死点を軽く突く。殺虫剤でも死なない厄介なやつだったので時間がある今回は見つけ次第突いて殺している。
「だ、だいたい僕だってあいつらを倒そうとしたんだ!な、なのにあいつら僕の殺虫剤を嘲笑うように動き出したんだよ!」
「ケチって安い殺虫剤買うからですよ……」
殺虫剤が効かないタイプということは伝えない。俺としてはケチりぐせをぜひ治して欲しいからな。
「うっ!うううるさいな!」
今、俺はこのくそ頼りないご近所さんの家でG抹殺と言うバイトをしている
……のだが、この人、ギャーギャー騒いで邪魔なのである。
この人日本語ペラペラなのだが実は外人で、頭はいいのにどうにも頼りない。
今は大学の講師をしているらしいのでうちの近所にある祖父母の家に住んでるのだそうだ。で、だいたい俺はこの人に呼ばれると何かしら面倒なことを頼まれる。今回のGしかり、しっかりバイトとして給料を貰えるので一応請け負うのだが正直自分でやって欲しいことばかりだ。
「しかし三原君……どうやってあいつらを仕留めてるんだ?」
「Gの甲殻の隙間に俺の針でプスッと突けば死にますよ」
はい嘘。
死点突いたら誰だって死ぬし、だいたいGにそんなもんあったら誰だって苦労しないわい。
「へえ~特別製なのかいそれ?」
「ええ、でもかなり難しいですし逃げられると自分のほうに来る可能性もあるのであまりオススメはしませんよ?」
はい嘘その2。
俺にとっては正直楽チン。必要な道具は直死の魔眼と棒だけというお手頃感。
俺は初めは別の能力で逃げないようにしたほうがいいかとも思ったが、考えてみればちょっとは手こずらないと怪しまれそうだと思い、直死以外は自力でやってる……のに、この人目ぇキラッキラさせて見てるから気まずいったらない。
「確かに。君も時々手こずってるみたいだし、何より僕のほうに飛んでくると考えただけでやってられないって!」
「いい年の人が虫嫌いって気持ち悪いだけですよ」
……マジでこの人ヘタレだな……俺が言うのもどうかと思うがヘタレだ。
「至近距離まで近づいて針で平然と刺す三原君も気持ち悪いぞ」
サラリと言い放ちやがった!
俺だって好き好んでG殲滅なんてことやらねえよ仕方無くに決まってんだろが!
金払う側だからって調子に乗りやがって……
これはちょっと俺が直々にお灸を据えてやる必要がありそうだな。
俺がそんなことを考えていると、突然隣で悲鳴がした。
「う、うわっ! わわわっ! み、三原君なんだよあれ何なんだよ!」
「なんですか、まだいたんです……か……」
先に言っておくと、俺は別段虫が得意な訳じゃない。だけど別に苦手でもないから、駆除するのは別に問題なかったんだ。
ところが。
目の前にいたのは、大きな黒い塊だった。俺は特別な人間だからかもしれないが、騒がずにその塊を観察していた。いや、してしまったって言ったほうがいいかもしれない。
俺は大量のGが集まってその黒い塊を形成していたことに気づいてしまったんだ。
塊のあちこちから触角とおぼしきものがでていて、全体的に黒光りしていて、それがワサワサと動いているんだ。
キモい。
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい!!
で、だ。
こんな地獄のような光景を前に、冷静でいられるだろうか?
答えはNOだ。俺はかろうじて思考だけはできたが、隣の人は気づいた直後意識が飛んで倒れてる。
そして、ちょっと動いたときに反射的に青の力で破壊しようとした俺は、悪くないよね? そう、これは事故なんだ。たとえこれでこのあたり一帯更地になってもこんなやつ殺したほうが良いよね? よし、駆除だ、削除! 跡形も残さねぇぞ! あは、あははははははは!!!
だけど、その塊は俺が半分壊れながら青の力で破壊するより前に俺に飛びかかってきた。
その一瞬がスローモーションに見えた俺は、大量のGが目の前を覆い尽くすように襲いかかってきた恐怖で、意識が途絶えた。
目が覚めると、そこは上下左右真っ白の空間だった。
……というかこの空間に俺は覚えがある。
あのいまいましい部屋だ。
「おお、うまくいったようじゃの」
背後から声がする。これも聞き覚えがある声で、二度目ともなるとあまり驚かず、俺は背後に向かって質問をした。
「……俺死んでないよね?」
「Gたちを使って呼んだだけだからの。現実では気を失なっとるよ。用が済んだら返してやるわい」
……確定だ。
もうなんか怒りしか沸いてこない。絶対俺こいつを許せないわ。
俺は怒りを込めて振り向きながら言い放つ。
「呼び方考えろやクソジジイ!!!!」
そこには、まるでイタズラが成功した子供のように笑う神様
クソジジイ
がいた。