このセイバーは
1.いろいろ終わったのち正式に英霊になった青い本家セイバーです。
2.あほんだら。
を、含みます。
聖杯戦争の後、私はあるべき場所で死んだ。元の時代で私は死に、今度こそ私は正式な英霊となる──筈だった。
しかし、私はすぐに召喚された。私の目から光が消え、体から力が抜けていく、あの死の感覚は間違いなくあった。だが、私は今はっきりと体の感覚を感じていた。
再びあの戦争が始まるのか、私を呼ぶことで新たなマスターは聖杯に何を望むのか。暗い、暗い思考の末に、自分の視界はだんだんと鮮明になっていく。
ああ、私にはどこまでも戦いの運命が付きまとうらしい。
──だが、それがどうした。
その運命のお陰で、私はあの人に会えた。それ以上に何を感謝することがあろうか。
悲観することですらない。愛したあの人に会えない思いに比べれば、戦いの運命など、取るに足らないではないか。
さあ、新たな戦場は私に何をさせるのか──
願わくば、良きマスターであって欲しいものだ。
そして、視界が完全になったとき、目の前にいる私を呼び出したであろう青年は動かなかった。ならばこちらから問うしかないだろう。この者は、マスターたる者なのか、否か。
「問おう、貴方が私のマスターか……え?」
……こ、れは、土下座? されているのは……私?
……
…………
………………
いや、オカシイだろう!
なぜサーヴァントにマスターが頭を下げているのだ!?
使役されるのは私のはずで、別にギルガメッシュのように臣下にして尊大な態度をとりたいわけでもないのに!
もしかして、私は、かなり変な人に召喚されてしまったんだろうか……
だが、私の考えを遮るかのように土下座をしていた彼が、そのままの姿勢で話し出した。
「俺は貴女のマスターじゃありません」
マスターじゃない? なら一体なんだと言うのか?
確かに代わりの者がマスターとなることも不可能ではないが周りに人はいない。間違いなく彼が召喚したはず……
「あなたもサーヴァントじゃありませんよ、アルトリアさん」
「な!?」
な、なぜ!?
アーサー王として召喚されたなら私の本当の名を知るわけが……いや、それに、今彼は何と言った?
「サーヴァントじゃないとはどういうことですか!? これは聖杯戦争ではないと!? それに、どうして私の名を……」
「いっぺんに聞かないでくださ……もう敬語めんどくさいな。とりあえず、霊体化できる? 宝具だせる?」
土下座から起き上がった彼に言われて慌てて確認しようとするが……できない。
霊体化はもともとはできなかったが、死んで正式に英霊化した私ならできるはずなのに霊体化できない!それはおろか宝具を出すことすらもできない!
「俺の腕に令呪はある? 魔力は感じる? セイバーの着てるその鎧も多分、ガワだけだよ」
……否定ができない事象が積み重なっていく。それが私の頭を急速に冷やしていき、同時に今の状況を呑み込むべく頭が思考を繰り返す。
これは、聖杯を求めるものでもなければ、戦争でもない……
「で、名前を知っている理由だけど、壁のポスター見てみな?」
「……これは、私、ですか?」
「信じられないかもしれないけど、セイバーや、士郎、切嗣、君らが参加した聖杯戦争は、この世界では物語としてすべて語られてるんだよ。セイバーの名前も当然語られてる」
……もう、なにがなんだか……
「そ、そんな、ことが、」
「あ、なんなら見る?ちょうど録画しといたZeroのブルーレイがこのあたりに……」
~鑑賞中~
「ほ、本当に……」
……否定ができない。彼の言うことを否定できる材料が何一つとして無いのだから。彼が見せた「あにめ」という映像は、寸分違わず聖杯戦争で実際に起こったことだ。その渦中に自分がいたのだから間違える筈がない。
あととてつもなく綺麗な映像だったことも地味に驚きだった。
「だが、ならば貴方は」
「あ、俺の名前吾郎だから。三原吾郎ね」
「そうですか、では……ゴロウ。なぜ私を召喚したのですか?」
「あ、そこがそもそもの間違いだ。俺は召喚してないよ」
「え?」
「まず、それを話す必要があるかな……」
彼ではない?
では誰が?
私はこの時一瞬だけ得体の知れないものと対峙しているかのような気分だった。
「いいか、セイバー。召喚って言うかどうかも怪しいけど、君を呼び出したのは他でもない──
──神様だ」