赤いのって別人だけど外見そっくりだし知らない人がみたら同一人物だとおもうよね。
そして言わば等身大自分ポスターがあったら居心地悪いよね。
騎士王サマはそんな気持ち。
「で、その未練やらなんやらが英霊になるのを邪魔してるらしい。それで、なんで俺んとこに送ったかは神様言ってた気がするけど聞いてなかったから知らない」
「そこは重要な所なんですが!?」
全く、ゴロウには真剣さと言うものが足りないと私は思う。
しかし、未練、未練か……私に英霊となることを阻害するほどの未練があると……?
「なあ」
「はい」
ふとゴロウに話しかけられて返事をする。
「今でもシロウのこと愛してるか?」
「は、えっ!?」
あまりに突飛な内容だったためうろたえてしまったが、この世界では私は物語の中から出てきたようなもの。
当然……し、シロウへの想いも……語られていても、おかしくは……ない、だろう。
「サーヴァントでもなく、今は一人の女の子だし言っても問題ないぞ?
……今でも、愛してるか?」
「……」
「愛して、いるんだな?」
「……はい。シロウを、愛しています」
ゴロウは額に手を当てて「やっぱり」と言った。
同時に私も理解する。シロウに二度と会えないこと以上の未練など私にとって無いだろう。だが、まさかそこまでだとは私自身も思わなかった。いや、考えたくなかっただけかもしれない。
「あのクソジジイ、どうしろって言うんだ……」
「あ、あの」
私は、どうすればいいのだろう。受肉している上、宝具もない以上、私はただの人なのだ。王として生きていた頃も、以前英霊として存在していた頃も、私はここまで焦ったことはない。これから、ただの人間として、全く違う世界で一人で生きていくのは……
「ああ、安心しなよ。ウチから追い出したりはしないから」
「あ、ありがとう……ございます」
……ゴロウがいい人で良かった。
外見上の歳は私とそこまで違わなさそうなゴロウがこのときは頼もしく見えた。
「いいっていいって。んじゃセイバーって呼ぶのもこの世界じゃ変だし、なんか呼び方考えるか」
「呼び方ですか?」
「まあサーヴァントでもないんだしセイバーじゃなく名前で呼ばないとね。本名じゃないといろいろ面倒なこともあるし、名前言うときはアルトリアでね」
「し、しかし名前を明かすのは……」
「まあ、セイバーって名乗る方がおかしいからね。聖杯戦争じゃないから戦わないしアルトリアって名乗ってもなんも問題ないよ」
なるほど。この世界での勝手はわからないが、確かにセイバーという名前の人は珍しい……というかほとんどいないだろう。そして、もしこの世界ではアルトリアと呼ぶのも変なのならば呼び方を考えるのは当たり前とも言える。
「アルト……はダメだな。アルクと被る」
「アルクというのは誰ですか?」
「簡単に言うと吸血鬼のお姫さま。興味あるなら後でそのお話も見せるよ」
「是非!」
「んと、それじゃ、アルトちゃんは?」
「さっきとなにが違うのですか?」
「アルトぴょんは?」
「……無理です。恥ずかしすぎます」
「アルアル」
「…………」
「ごめんなさい嘘です」
「ゴロウ、真面目にやって下さい」
「ルト」
「そこで切る意味を教えてもらいたいのですが?」
「トリア……は無いな」
「ないですね」
「……諦めていいかな」
「一度言ったことを曲げないで下さい」
……この人はセンスがないのだろうか。それとも私が折れるべきなのか?
そもそもシロウにすら本名で呼ばせたことはほとんど無いというのにゴロウに呼ばれることを良しとするのもこれからの生活のため……。毎日呼ばれるのだから下手な呼び名は絶対に御免被る。
「じゃあ、アルで」
「……先ほどのアルクという方と被るのでは?」
「いや、アルクはアルクって呼ばれるし、いいかなって……ダメ?」
「……でも一番マシですしね……もうそれでいいです」
「マジで!? やっふぉーい!!」
「ど、どうしたのですか急に!」
私が驚いて聞くとゴロウは「嬉し……じゃなくて、アレだ、アレ」と言葉を濁した。
嬉しい? 何が……
そういえば、あの壁に貼られているのは私の絵だったか。
だとすると……このゴロウの部屋にはいろんな私が貼られている。黒い私や赤い私も……これは一体どういう……?
「ゴロウ、なぜこの絵はあちこちに貼られているのですか?」
「そりゃもう!憧れのセイバーちゃんと毎日一緒にいたい……か……ら……」
「…………」
「ア、アル?そ、その、これは、言葉のあやっていうか」
「……捨ててください」
「……え?」
「捨ててください!
即刻!
今すぐ!
そんな邪な気持ちで私の絵を集めて飾らないで頂きたい。私これからここに住むのですよ!? 邪な思いと一緒に捨ててください!」
「なんでさ!? ちゃんとアルには部屋数あまりないけど違う部屋用意するよ!」
「それでもです、安心できません!」
「あっちょっ! その等身大ポスター結構高いんだよ!? あっ!そっちは限定版黒セイバー!
や、やめたって!」
「貴方がっ! 泣くまでっ! 破るのをやめません!」
「もう泣いてるよぉぉ!! ああ、5980円が!」
私はこれからここに住むのにあたって、これはこの家を完全に掃除せねばならないようだ……
もし、もし仮に私関連のいかがわしいものがあれば即座に切り捨ててやる!