九尾に両親を殺された僕が左遷されナルトの世話係になった。 作:柚子ゴル
火影室から出て未だ混乱する頭のまま、急いで暗部のロッカー室へと急いだ。僕は任務が終わり次第すぐに火影邸に行った。だから今は誰もいないはず…。
暗部ではなくなったのだから、僕専用のロッカーもなくなるだろう。ロッカーの中身を整理しているところを誰にも見られたくはなかった。
あんなウキウキしながら出て行った僕が実は昇格などではなく左遷だと知ったら元、同僚はどんな反応をするだろうか。きっと笑うだろう。よかったなと表上喜んでも自分よりも新人が隊長格になるのは心は穏やかでないはずだ。心の中でざまぁみろと言い、表上ではお前みたいな優秀な奴が残念だなと言うだろう。そんな奴らの目にはきっと馬鹿にしたような同情するような冷笑しているような視線で僕に絡めつくに違いない。そんなところを僕は見たくなかったし感じたくなかった。何故ならもっと自分自身が惨めになる。考えるだけでも吐き気がする。
暗部のロッカー室につき周りに誰もいないのを確認してから、ロッカーの中にあるものをカバンの中にいれる。
幸いそんなに大荷物にはならなかった。
ほっとしながらこれから自分はどうすればいいのだろうと考える。エリートの道を外れてどうやって昇格の道を目指せばいいのだろうか。そもそも火影には僕を昇格させる気がないのか?何故なら僕がやなはた一族だから、という理由で。僕が両親を探していることは火影も知っている。何故なら僕はどうしようもなく馬鹿だった頃、自分から情報を曝け出し、火影になんとかしてくれと頼んだからだ。しかし、両親を隠したことにもしも火影も絡んでいたら?僕が目障りで仕方がないだろう。だから左遷させた?
…嗚呼、僕はなんて馬鹿なんだ。火影すら信用してはならなかったのに。いや、そもそも本当に火影がその件に絡んでいたとはわからないが。
僕はギリっとはを噛み締め拳を握りくそっと呟きロッカーを殴った。ロッカーはベッコリへこみしまったと焦ったが別にいいかと思い直した。
「もう昇格するなんて道残されてねーし。」
僕はロッカー室の自身の名前が書かれたプレートをべりっと剥がす。これが唯一僕が暗部であるという証明になるものだったのに。プレートをぐしゃりと原型をなくさせ近くにあったゴミ箱に投げ入れる。カコンという小気味いい音がなった。
しばらくぼーっと今まで暗部になるために必死に努力をしてきたことを振り返る。そしてやはりこの理不尽さに納得がいかなかった。やはり火影もグルなのかと疑念を抱かざるおえない。
悶々としながらはやくロッカー室を後にするべきことを思い出す。暗部はいつ駆り出されるかわからない。つまり元、同僚がいつ来るかわかったものではない。今彼らに会ってしまったら自分はどうなるかわからない。
周りを注意しながらそそくさとロッカー室から出ようとすれば、途中で最悪な人物に会ってしまった。
「あれ?ヤマトじゃね?」
ピタリと僕の体が止まる。目の前には元、暗部の先輩が入り口で僕を見つめていた。しまったと思ったがこいつはまだ僕が暗部を辞めさせられたことは知らない。なんとか平常心を保ちニコリと笑った。
「こんばんは。任務ですか。先輩。」
「ああ、まぁな。それよりお前昇格したんだろ?すげーじゃねーの。え?この前入ったばっかなのによ。」
そう言って話す先輩の目にははっきりとした嫉妬や嫌悪が含まれていた。僕が入った当初からこの先輩は僕が気に入らないらしくいつも嫌みたらしく僕に絡んできた。もちろん今言った言葉も皮肉だろう。
「昇格だなんてそんな違いますよ。そこまで僕は優秀ではないです。
すみません。ちょっとこの後用事があって失礼します。」
頭を下げ急いでこのムカつく先輩から逃げようとする。しかしそれは先輩の手によって塞がれた。
「待てよ。その荷物はなんだ?昇格じゃないなら何故火影に呼ばれた?」
ちらりと先輩の目を見る。目だけは人を騙せない。その目にはただただ疑問が生じているようだ。しかしこいつがその理由をわかるのも時間の問題。何故なら今まで暗部をクビになった奴らもこうやって荷物をまとめひっそりと出て行ったから。その時僕は何をやらかしたんだかと他人事だった。まさか自分がその立場になるなんて思っていなかったから。黙っている僕に対し先輩は急にハッとして笑い出した。
「ははっ、お前まさか…なんだよお前まさか暗部を降ろされたのか?」
それでもなお黙っている僕に対して先輩は確信したようにもっと豪快に笑い始めた。
「あひゃひゃひゃ!なんだよお前!あーんな目キラキラさせといて辞めさせられたのかよ!やー、火影様も枠なことなさる。でも俺は残念だぜ?お前みたいな優秀なやつがまさか暗部を辞めさせられるなんて思わなかったからな?くっくっく。それで?暗部をおろされて?何やるんだよ。」
僕はぎゅっとカバンを握る手に力を込める。怒ってはいけない。一応相手は先輩なのだ。しかも今となっては同等ではなく僕の方が立場は下だ。こいつが飽きるまで付き合わなければいけない。もしも僕がこれからも昇格を狙うのならば。
黙っている僕に痺れを切らしたのか先輩は僕の顎をくいっとあげ耳元に口を持っていき、息を吹きかけながら呟いた。
「それともその美貌でまた色任務でもやるのか?」
にたりといやらしく笑い僕の目を見てくる。
その目は欲望と蔑みが織り混ざっていた。
こいつは僕に欲情でもしているのだろうか。憎たらしく思っていた相手が思いがけず立場が自分よりも劣ったものになり一種の興奮を覚えているのか。自分より弱いタイプの人間に対して優越感を感じるタイプか。
どちらとしても僕は実際男相手だろうが女相手だろうがこの美貌を活かして色任務をしてきた。しかしそれは望んでしていたものではない。フルフルと震えながらそれでも立場をあげるため、または両親に一歩でも近づくためにそれこそ本当に自殺を考える程思いつめてやってきたことだ。心の中で確かな殺意が目覚める。気にしていることをズバズバと言うこの男に。男は相変わらずムカつく顔で僕の顔を見てくる。僕は目を逸らさずキッと睨む。するとその男は堪らず、といった表情で僕に提案する。
「俺の愛人になるなら、世話ぐらいしてやってもいいぜ?」
カッと顔が熱くなるのがわかった。
何故僕はこんな男にこんな事を言われないといけないのか。意味がわからない。そもそも自分にはそんな男趣味などない。任務で男の相手をしたからといって僕は決してそちら側ではないし、プライベートではそんなこと微塵のかけらもしない。僕にとってはもはやそれらの事はトラウマであり自ら進んでやりたいとさえ思わない。黙っている僕に自分の意見を了承したと捉えた男は僕に顔を近づけてくる。もう気絶させて帰ろうと手を出そうとした時、別の誰かが先輩であった男に手刀を落とした。綺麗な長髪の黒髪をなびかせたった今手刀を施した相手に蔑んだ目を向ける男。うちはイタチ。僕はいきなりの登場に呟いた。
「イタチ…」
それに気づいたイタチは僕を探るような目で見て言った。
「お前がやられっぱなしとは。いつもは同じ立場の人間だったらもっと言い返すだろう?」
「……。」
うちは一族の中でも天才と言われるうちはイタチ。
こいつは僕の唯一の友人でありライバルだ。イタチもまた暗部でありしかも分隊長を務めるまでに成長している。
自分の中では勝手にライバルとしてイタチを見ていてずっと少しでも近づくために頑張っていた。
しかしそれもいまや天と地の差になったわけだが。そう思うとなんだか視界が涙でボヤけてくる。自分が唯一心を許せるのはイタチぐらいでイタチの前でしか本性を晒せない。だからイタチの前でしか泣けない。今まで泣きたいのを我慢してきた。だけどイタチが来たから泣いてもいいよね?なんて心の中で呟いてイタチの前で泣き出してしまった。
✳︎
泣き出した僕にビックリしたイタチは僕をロッカー室から人気のない外に連れ出した。
イタチはただただ泣きながら話す僕の話を黙って聞いてくれた。
火影の理不尽さとかも愚痴ったし、九尾を腹に宿した四代目の餓鬼の世話もやらなくてはいけないことも話した。その都度イタチは黙って頭を撫でてくれた。昔からイタチは僕が泣き始めると頭を撫でてくれる。両親がいなくなった時側で励ましてくれたのもこいつだし、今まで挫折しそうになった時いつも助けてもらっていた。感謝してもしきれない。逆にイタチが困った時絶対助けるからと言うけれどなかなかイタチは悩み事を話してくれない。
僕がしんと黙るとイタチはニコリと笑いながら僕に言ってきた。
「ヤマト、俺にも弟がいるが小さい子は可愛いぞ?」
ほがらかな顔をして言うイタチに僕は思わずまた始まったと眉を顰めた。
それから小一時間ほどイタチの弟、子供の可愛さの話を聞かされた。
次回はナルト登場です。