蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第五話 「憤怒」

「マークアイン……起動せず」

 

あれから毎日、俺は適応検査に志願した。

 

しかし、どのファフナーも起動することすら無かった。

 

保さんの声だけが虚しく響き渡る。

 

「亮介くん。今日はこれまでにしよう」

 

「ダメですよ。羽佐間と春日井が抜けたんです。早く俺の乗れるファフナーを見つけないと」

 

「しかし、あれから毎日検査している。検査とはいえファフナーに乗れば乗るほど同化現象の危険性が高まるんだ。原因を突き止めてからやらないと君の命に関わるんだ。」

 

「わかりました。また明日もお願いします」

 

「亮介くん・・・・・」

 

「にしても。春日井はともかく、なんで羽佐間は出撃したんですか。適正が高いからって寝たきりのやつが貴重な機体を無駄にして」

 

思わず溢れてしまった胸の内。

 

「亮介くん。黙っておくから容子さんの前では決してその発言をするんじゃないぞ」

 

「すみません。失礼します」

 

珍しく保さんが口調をキツくした。

 

「亮介」

 

部屋を出ると、恵が待っていた。あの日以来気まずい空気になり自然とお互いが距離を取るようになっていた。

 

「恵お疲れ、まだオペレーターの訓練か」

 

「うん。」

 

「先に帰ってるよ。頑張れよ恵」

 

恵の話したそうな表情に目を背け、俺はAlvisを後にした。

 

 

 

帰り道、千鶴先生が院長を勤める島唯一の診療所『遠見医院』に寄った。

 

「どうですか先生」

 

「身体上の問題はこれまで通りありません。でも相変わらずファフナーは起動しないのよね」

 

「はい」

 

「ファフナー自体に欠陥があるとは他のパイロットを見る限り考えにくいわね。現時点では、原因を突き止めるのは非常に難しいわ」

 

「そうですか」

 

「あなたがこれが関係あるんじゃないかと思い当たる節はある?」

 

「実は・・・・・」

 

俺は、初めてフェストゥムに遭遇したときのアノ事について話した。

 

「同化されそうになったの」

 

千鶴先生は驚愕していた。

 

「でも、突然砕け散りました」

 

「その事について誰かに話した」

 

「その場にいた恵が知っていて恵の両親にしか話してません」

 

「そう・・・・・。それも考慮して調べてみるわ。」

 

「お願いします。あの真壁司令には秘密に」

 

「あなたの意思は尊重するけど、必要となれば報告すると思っていて。現時点ではまだ話すつもりはないわ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「亮介くん。どうしてファフナーパイロットに拘るの。」

 

「えっ。どうしてと言われても・・・。死んでいった仲間の想いの分までこの島を守りたいのと島の役に立ちたいからです。」

 

「そう。これだけは覚えておいて。『戦うことだけが島の役に立つ方法ではない』ってことを。」

 

 

 

遠見医院を出ると

 

「霧島。話しがあるわ。」

 

狩谷先生が待っていた。

 

そのまま喫茶店『楽園』に案内された。

 

「あなた、外の世界に興味ない。」

 

「外の世界ですか。」

 

突然の質問に呆気を取られていると心を揺さぶる言葉を投げ掛けられる。

 

「ファフナーに乗れるようになるわ」

 

「えっ。どうやってですか。」

 

耳を疑うような言葉に思わず勢いよく立ち上がる。

 

「竜宮島の外にはね。新国連と呼ばれる世界的な組織と人類軍と呼ばれる新国連を支えている軍隊があるの。そこでもファフナーの研究が進められていて竜宮島のファフナーよりも乗れる可能性があるわ。」

 

「本当ですか。」

 

「どう私と一緒に・・・・・。」

 

チリンチリン

 

店のドアが空くと

 

「マスターいつもの」

 

酔っぱらいのオッサンが入ってきた。

 

「おっ狩谷。生徒と二人きりでなにしてんだ。」

 

「チッ。溝口・・・・・。霧島今の話し考えておいてまた返事を聞きにいくわ。」

 

狩谷先生は足早に楽園を出た。

 

「お前さん名前は。」

 

酔っぱらいのオッサンが話しかけてくる。

 

「霧島亮介です。」

 

「お前さんが・・・・・。そうか噂は聞いてるぞ。ファフナーのパイロットに志願してるんだってな」

 

「はい。」

 

「あっ。俺は溝口恭介ってんだ。よろしくな亮介。」

 

「よろしくお願いします。溝口さん。」

 

「お前は戦いたいのか。」

 

「はい。島のために戦いたいです。」

 

「そうか。ファフナーパイロットがダメなら竜宮島の防衛隊はどうだい。」

 

「島の防衛隊ですか。」

 

「おう。軍隊ってやつだ。そりゃファフナーパイロットに比べれば、軍隊なんてこれっぽっちも力になれないかもしれんが。軍隊だからこそ出来る島の守り方ってのがあんだよ。」

 

「・・・・・。」

 

「まぁ無理強いだと思うことわねーぞ。決めるのは亮介自身だ。参考になるかわわからんがそういう道もあるってこった。」

 

「はい・・・・・。」

 

溝口さんは突然小声で

 

「俺に言ってくれればいつでも紹介してやるぞ。」

 

そう言い残して楽園を後にした。

 

 

家に帰ると家の前で狩谷先生が立っていた。

 

「その様子だと決心したみたいだね。」

 

「俺は・・・・・。世界がどうとか、外の世界のことは何も知らないけど。今は竜宮島のために戦いたい。」

 

「そう・・・・・。見損なったわ。」

 

狩谷先生はそのまま立ち去った。

 

「亮介遅かったじゃない。どこ行ってたの。」

 

「恵。ちょっといろいろ」

 

「お父さんもお母さんも心配してるよ。早く。」

 

「あぁ・・・・・。」

 

俺は狩谷先生の後ろ姿を見送った。先生の後ろ姿はなんだか悲しげたった。

 

翌日、狩谷先生が竜宮島を裏切り島を出ていった。ファフナーパイロットの真壁一騎と共に。

 

俺は、やり場のない怒りを周囲にぶつけることしか出来なかった。

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