蒼穹のファフナー~ファフナーに選ばれなかった男の戦い~   作:naomi

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第五十話「近付く脅威」

「ひとまず危機は脱したわね」

 

この日佐喜さんが様子を見に店を訪ねてくれていた。

 

派遣部隊が出発してから佐喜さんは定期的に店に来て私達の心配をしてくれている。

 

「復帰した二人はどうですか」

 

「要はトルーパー・モデルを無限に増殖させる力を発現して、羽佐間は未来を読む力を発現させたみたい」

 

「未来を読むって凄い力ですね」

 

「でも、不完全らしくて、当たったり外れたりを繰り返しているのよ」

 

「そうなんですね…」

 

「なんだか嫌な感じなのよね、敵の学習能力が早すぎて2人が復帰しても対策されるのも時間の問題かも」

 

「2人の新しい同化現象はどうなんですか」

 

「要は増殖によって出来た個体の全ての感覚を引き継いで感覚が麻痺してるらしいわ」

 

「どういうことですか」

 

「『自分が複数いる感覚』らしいわ、どれが本当の私かわからないって叫んだこともあったって」

 

「カノンは」

 

「羽佐間はパッと見は変化を感じないけど、独りになりたがったり非戦闘時でもファフナーに乗る時間が多くなってきたわね」

 

「非戦闘時も」

 

「『やるべきことがある』って言って、半日近く乗り続けたこともあるそうよ」

 

(カノン…)

 

それぞれに起きた新同化現象。原因は突き止められないまま、ただ時間だけが過ぎていた。

 

そんなある日

 

「いらっしゃいませ…どうされましたか香奈恵さん」

 

「久しぶりね恵ちゃん。今日はお願いがあって来たの」

 

鏑木香奈恵さん。彗くんと早苗ちゃんのお母さん、『あの日』以来顔を合わせるのを私は避けていた。

 

「なんですか」

 

「貴女にもこの書類にサインして欲しいの」

 

手渡された書類名はには『第2次L計画実行提案書』と書いてあった。

 

「どうするんですかこんなのを提出して」

 

「これが実現すれば、今迫っている竜宮島への脅威は消え去るは。きっと」

 

「いやです」

 

「なぜ、この計画を実行出来れば多くの人達が助かるのよ」

 

「そんなわけないじゃないですか、これに似た計画が実行されて、作戦に参加した人達は全滅したということを私ももう知っています。僚くんや祐未ちゃん、亮介のお母さんや貴女の娘さんだって…」

 

「そうよ…皆いなくなったわ。私達が生き残る為の犠牲になったの、今がチャンスなのよ、死んでいった人達に報いる」

 

「それでは意味ないじゃないですか、皆私達が生き残るために…」

 

「私も行くはずだった。なのにここにいるの。おかしいでしょこんなの、なんで早苗が犠牲になって私が生き残ったのよ」

 

「お気持ちは察します。でも過去だけでなく今を見てあげてください。彗くんが私達のために命懸けで戦ってるんです」

 

「貴女はいいわよね、原因不明のメモリージング不良でこの計画を知らずに生きていられたんだから。貴女だって本当はきっと…」

 

押し込んだ思いを吐き出てしまった。

 

「そうです。私も亮介も原因不明のメモリージング不良であの作戦への参加を間逃れました。他の同級生は卒業して皆知っていたのに、私達はそのせいで留年しました。そしてフェストゥムが竜宮島に襲来してからようやくその事実を知りました。メモリージングではなく、Alvisの記録保管庫で」

 

「…」

 

「確かに、私は貴女の苦しみを全てはわかってあげられません。でも…でも貴女もわかりますか。皆が私達の友達がこの島を守るために命懸けで戦っていたときに何も知らず平和を謳歌していた事実を知った時の私達の心情を、わかってくれるんですか」

 

その場で泣き崩れる私。

 

「どうしたんだ恵」

 

口論の声を聞いたのか佐喜さんが慌てて店にやって来た。

 

床に落ちた書類に目をやる佐喜さん

 

「佐喜さん貴女も…」

 

「言いましたよね香奈恵さん。私はその書類に絶対サインしません。まだ諦めてないので」

 

「…そう。…お邪魔したわね恵ちゃん」

 

香奈恵さんはそう言い立ち去った。

 

「恵…」

 

「ごめんなさい佐喜さん。ごめんなさい」

 

「…なんであんたが謝るの。貴女は何も悪くないじゃない」

 

崩れ落ちた私を優しく包み込む佐喜さん。二人だけの夜の花屋に私の泣きじゃくる声が響き渡った。

 

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