仮面ライダージョーカー
仮面ライダー???
一方その頃…迷いの竹林では白スーツで白いソフト帽を被った男が彷徨っていた。
「……どうしてこうなった!!」
彼の名前は左翔太郎。探偵である。暇の余りに事務所で居眠りした矢先に紫に送られこのざまである。眠っていた為紫の説明も聞けず、相棒とは「ここには興味深い本が沢山ある。ゾクゾクするねぇ…!」を最後に全く連絡が取れない状態。そして送られた場所がこの竹林。はっきり言って割と詰んでる状態である。
「落ち着け…ハードな男はどんな時でも冷静に…だ…」
トレードマークのソフト帽を抑えながら深呼吸をして止まっていた足をもう一度動かす。彼もまた厳しい戦いを耐え抜いた仮面ライダーの一人。体力と根性には相当の自信があった。しかしここは迷いの竹林。体力や根性でどうにかなったらこの名称は付いていないのである。
「…クソ!どうなってやがる!!」
いかに鍛え抜かれた精神と肉体を持っていようと彼はただの人間。何時間もゴールが見えない竹林を彷徨っていれば心も骨も折れる。思わず片膝を付き地面を殴る翔太郎。その様子を遠くの竹林から見ている影二つ。
「どうよ、れーせん。いかにも怪しい奴だろ?」
「そうね…確かに怪しいわね。波長も若干不安定だわ。たかが人間だと思うけど念の為お師匠様に報告しに行きましょう。」
「そーだね。最近はここも物騒だし。そーしよう。」
二つの影が翔太郎に背を向けた瞬間、二人の目に白い悪魔の姿が映る。白い悪魔はその慈悲無き瞳に二人を捉え、容赦なく攻撃を仕掛ける。
「やば…」
「ッ…!しまっ…」
それはあまりに閃光の様な出来事、無論対応出来る筈も無く二人は断末魔の様な声をあげながら地に伏した。
流石なのか当然なのか翔太郎はその断末魔を聞き逃さずに声の方向に疾走する。現場に到着した翔太郎が目にしたのは血を流して倒れる二人の女ともう一人、それは自らの記憶に強烈に焼き付けられた悪魔の姿。
「大道…克己…!」
思わず口にしたその名は風都史上最悪の犯罪者にして最強の仮面ライダーに変身する者の名だった。
「久しぶりだな過去の仮面ライダー。」
「何でてめぇがここに居る!その二人は…お前がやったのか!?」
「さぁな。こいつらは誰か。何で俺だけがまた蘇ったのか。俺にはさっぱり解らん。まぁ蘇ったのは、なすべき事があるからだろうが……今はそんな事はどうでも良い。」
「何…どういう事だ!!」
「あの時の死んだ自分への弔い合戦だ。幸い酵素はもう必要ないんでな。」
悪魔は不敵な笑みを浮かべながらベルト装着し白いメモリを取り出す。
「…ッ!!」
その悪魔の笑みに答えるように翔太郎は同じベルト装着し黒いメモリを構えた。
『ジョーカー!!』
『エターナル!!』
二人は同時にメモリを起動させこれまた同時にメモリをベルトに装填しあの言葉を発する。
「「変身!!」」
『ジョーカー!!』
『エターナル!!』
竹林中に紫と青の衝撃波が迸る。その中心に立って居るのは黒い仮面ライダー『仮面ライダージョーカー』と白い仮面ライダー『仮面ライダーエターナル』である。
「もう罪を重ねるのは止めろ!大道克己!!」
「今更だな。」
エターナルは有無を言わさず自らの武器である『エターナルエッジ』で斬りかかる。それを徒手空拳で受け止め弾くジョーカー。それを何度か繰り返した後にエターナルは攻撃の手を止め、口を開いた。
「どうした?あの時のやる気は何処に行った?」
「あの時とは事情が違うんだよ…!」
「何故だ?ここが風都じゃ無いからか?」
「そんなの関係ねぇよ。何所であろうと俺は誰かを泣かせる奴を止める。それが仮面ライダーの流儀だ!!」
「じゃぁ何故だ?」
「ネーナって子を…覚えてるか?」
「……!!」
その名前を聞いた瞬間、克己は硬直する。それは仮面に隠された表情を如実に表わしていた。
「その子は生きてる。そして俺達に会いに来た。お前等の敵討ちの為にな。言ってたぜ、お前は…仮面ライダーだった。ってな。」
「……」
「お前、何でまた蘇ったのか解んねぇって言ってたな。それはきっと、その子の想いに答える為だと…俺は思うぜ。」
翔太郎の言葉にエターナルはひたすら沈黙する。それは動揺と逡巡を込めた沈黙。それを知ってか知らずか、翔太郎は言葉を続ける。
「もう一度言うぜ。大道克己。これ以上罪を重ねるのは止めろ。そして仮面ライダーになるんだ。」
「……」
赤い瞳と黄色い瞳は睨み合いの間に長い沈黙と拮抗状態が生まれる。それを破ったのはお互いに向けられた二つの光線だった。
「なに!?」
「…チッ…」
ジョーカーは強化された身体能力でひらり光線を躱し、エターナルは圧倒的な防御力を誇るマントを身代わりに光線を防ぐ。それぞれの方法で光線を対処した後二人はその攻撃の主を見据える。
その姿とは痩せた白いボディに青く不気味に伸びた指。その異様な姿に拍車をかける様にその怪人にそばには二つの眼球が浮いていた。
「何だこいつ!?見た事もねぇドーパントだ!!」
「……コイツはアイズドーパントだ。」
思わぬ方向から来た自らの問いの答えにジョーカーは赤い瞳をエターナルに向ける。
「成程。恐らくコイツがこの女二人を攻撃した真犯人だろうな。」
「は!?お前じゃ無かったのかよ!!」
「俺だと言ったか?」
「なっ…」
動揺するジョーカーを鼻で笑い、エターナルは続ける。
「まさか、コイツにまた会うとはな。…お前の言う事も一理あるかもしれん。」
「つー事はまさか…」
「勘違いするな。協力はしない。しかし、共闘はしてやろう。」
「……おめぇこそ勘違いすんな。俺達はまだお前を許しちゃいねぇ。」
「それで良いさ。」
かつての敵に目を向けながらエターナルは一つのメモリを取り出して腰のスロットに装填する。
『ゾーン!!』
瞬間、倒れていた二人は消え。ジョーカーの目の前にもう一つの『J』のメモリが落ちる。自らのメモリと違うのは細部が青みがかっている事だ。
「こいつぁ…成程な。」
全て納得した様にそのメモリを拾いあげ自らのメモリと交換する。
「死体になって起き上がった気分はどうだ?ドクター。」
「………」
アイズドーパントはその言葉に反応する事無く理性無き『ゾンビ』の様に二人に突進する。
「もう一度地獄に行ってくると良い。今なら懐かしい顔に会えるさ。」
エターナルはエターナルメモリを取り外し、エターナルエッジに装填し、ジョーカーは腰のスロットに装填する。
『エターナル!マキシマムドライブ!!』
『ジョーカー!マキシマムドライブ!!』
瞬間、アイズドーパントの動きは停止し、その隙を逃さずジョーカーは紫炎を纏ったパンチを繰り出す。
「「さぁ!」」
後方に吹き飛ばされ、立ち上がったアイズドーパントが見た物は脚に紫の炎と青白い炎を纏った二人の仮面ライダー。
「お前の罪を数えろ!!」
「地獄を楽しみな!!」
二つの宣告。低空と高空から蹴撃。それは正に閃光の出来事だった。
必殺の攻撃を加えられたアイズドーパントは呻き声すらあげる事も出来ずに空中で爆散した。
事の終局を見てジョーカーは翔太郎へと…変身を解除する。
「お前の罪は決して許されるもんじゃねぇ…だがなぁ…罪を憎んで人を憎まず。罪滅ぼしがしてぇなら協力してやらねぇ事も…」
翔太郎は帽子を押さえながら隣で共に戦ったエターナル…大道克己の方を向く。
「…っていねぇじゃねぇかァァァ!!」
正しく忽然。大道克己は何時の間にか翔太郎の周りから姿を消していた。悔しさの余り大道克己の名前を叫ぶが、返ってくるのは無慈悲な沈黙だけだった。