リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;) 【完結済み】   作:先詠む人

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どうも。先詠む人です。
間に合って良かったー!!《*≧∀≦》

今回は説明回でもあるんで隼人の一人語りが長いです。

因みに作中での知識は自分がこないだ被爆者の方などから大学の授業の関係で聞いたことや、これまで生きてきた中で知った知識を織り混ぜています。


第35話 平和の鐘は今年も鳴り響く

「~~~~~を持って今回の式辞とさせていただきます」

 

「「「……。」」」

 

 おじいさんからおばあさんまで人がたくさんいる平和記念公園の特設会場のすぐそばの記念館同士を繋ぐ空中廊下の下の陰で俺も、雷香も、玲奈もみんな黙って式辞を聞いていた。

 

 平和記念式典が始まってから既に数分が経っていた。

 

 式が始まった後、まずは開式の辞が述べられてから年々増え続けている原爆死没者の名前が書かれた名簿が”安らかに眠ってください もう過ちは繰り返しませんから”と書かれた石棺の中へと納められ、そこから始まった式辞を今は迎えていた。

 

 そして、近隣の小学校の代表生徒や総理大臣たちが花を石棺の前に設置されているラックに置いていく光景を見ながら俺は

 

(そう言えば、某国の大統領が来るって噂になってはいたけど結局来なかったな………。)

 

 と、現在駐日大使をしているその某国の大統領だった人の娘さんが献花をしている光景を見ながらそう思っていた。

 

 …………その時の俺はそう思うだけで終わったが、その次の年にその噂は本当のものになり、広島市が厳戒態勢を取ることになるなんて思ってもみなかった……。

 

 

 そんなことを考えているうちに時は進み、時計の長針は3を指し示そうとしていた。そして……

 

「黙祷」

 

 司会者が発したその言葉とともに周囲から声と言う声が消え、少し離れたところにある平和の鐘が

 

 ゴーン ゴーン ゴーン ……

 

 深い余韻を周囲に与えつつ鳴り響いた。

 

 

 

 

 一分間と言う長いようで短い黙祷の時間が過ぎ、平和宣言が始まったところで俺はすぐ横で他の人に習って黙祷をわからないなりにしていた二人の肩をたたいた。

 

「ほら行くぞ。」

 

「え?まだ式続いてるよ?」「式を放っておいてどこに行くのお兄ちゃん?」

 

「この後は、偉い人の話を聞いてハトが飛んでくのを見たりだとかそう言うのだけだからもっとタメになるものを見に行くぞ。」

 

「「もっとタメになる………?」」

 

 俺は顔を見合わせて困惑する二人を引っ張って平和大橋(平和公園の前にある平和大通りを東に進むとすぐにある橋)の方へと歩き出した。

 

 

 

「こっちな。」

 

 橋を渡るとすぐに左に曲がって俺は川沿いを歩きだした。

 

 行先はもう決めている。

 広島に落ちた原子爆弾の象徴であるあのドームだ………と言うわけではなく、そこから少しだけずれた位置にある、あの場所だ。

 

 

「ねぇお兄ちゃん疲れた~。おんぶして~。」

 

 川沿いを歩き始めてまだ数分もたっていないのに玲奈がそう言って駄々をこね始めた。

 

「あ、玲奈!!!自分だけずるいわよ!!!!お兄ちゃん私の方からおんぶしてよね!!!!」

 

 玲奈が駄々をこねたのを見て雷香までもが俺におんぶしろと要求してきた。

 

「おいおい……「「それー!!!」」ってちょっと待てって!!!」

 

 俺が後ろから聞こえてきたそんな会話に半ばあきれながら振り向くと、二人は同時に俺に抱き着いて来た。

 

「クッ……重い……。潰れる潰れる!!!!!」

 

 流石に雷香か玲奈のどちらかだけならおんぶできたのかもしれないけど、二人同時はさすがに死ねる。

 

 ……結局、俺がつぶれないで必死に耐えてそのまま膝を曲げて腰の高さを低くしたことでぎりぎりセーフで済んだ。

 

 

 

「はぁ。危ないだろ。」

 

「「ごめんなさーい。」」

 

 二人をはがした後、俺は歩きながら説教していた。

 いくらなんでもあれ(さっきの)は危ないからだ。

 

「(あの喫茶店が見えて来たからぼちぼちかな……)あそこの横断歩道わたるぞ~。」

 

「「はーい!!」」

 

「返事が良くてもさっきのはダメだからな。」

 

「「はーい……。」」

 

 そんな感じで俺と雷香と玲奈が会話をしながら歩いていくのを通りすがったおばあちゃんは目を細めて何かを懐かしむかのように見つめ、木陰で慰霊碑がある方を見ていたおじいさんはうれしそうに微笑んでいた。

 

 

 そんなわけで横断歩道を渡ってすぐにあるY字路を左へと進む。

 右に行けば本通り(広島市の主要商店街)の方へと進めるが、今回目指してる場所はそっちじゃない。

 

「ほら、ここだ。」

 

 俺は小さいながらも碑が立っている病院のそばで立ち止まった。

 

「お兄ちゃんこの金属板に書かれているのって何?」「なんとか心地(ごこち)?」

 

「爆心地な。てか、お前らさすがにそれ(爆の字)はわかるだろ。」

 

「「……わかんないもんはわかんないもんね~。」」

 

 おいおい………雷香は艦娘だったんだから魚雷が爆発とか日常茶飯事だったはずだろ。てか、玲奈はレ級になったときにその辺インストールされたんじゃ………あ、最近こいつら日アサばっか見て学校の宿題してなかったような気が………

 

「お前ら、一週間アニメ禁止な。特にプ◯キュア。」

 

「「えーー!!!!!」」

 

「本分を見失ってどうすんだよ。もし、急に向こうに帰らなきゃいけなくなったときに技術面はともかく学力面で他のみんなに置いてけぼりにされてていいんか?」

 

「う……。」「私はたぶん大丈夫だもーん。」

 

「……玲奈はあとでお説教な。体罰はないけどフルコースで。」

 

「ヒッ!!!!」

 

 このフルコースって言うのは俺が理詰めでネチネチ小姑のごとく叱っていく説教スタイルのことで、命名者は最初にこれを食らった家の鎮守府の方の青葉。なんでフルコースってなったのかは俺も知らない。

 

 あ、横須賀の青葉は夏休み序盤に開放した。妖精さんづてで聞いたからたぶん大丈夫なはず。……大丈夫だよな?

 

 それで、偶然俺の部屋に置いている漫画を取りに来ていたせいでその光景を見ていた玲奈にとってこのフルコースはトラウマになってるみたいだ。

 

「お……お兄ちゃん。情けを……情けをください……。」

 

 そう言って、フルフル震える玲奈を放っておいて俺は解説を始めた。

 

「1995年8月6日の朝8時15分に丁度この病院の真上で世界初の原子爆弾。リトルボーイが炸裂したんだ。」

 

「原子爆弾自体は第二次世界大戦上のドイツが開発を進めていたんだけど、世界で初めて実戦投入したのはアメリカのこの一撃だった。」

 

「その日、この広島の空は今日みたいに雲一つない空だったらしい。そのせいでアメリカがここに原爆を落としたって聞くと皮肉にしか思えないけどな。」

 

「当時の日本は雷香は響とかから聞いて知ってるかもしれないけれど国力がひっ迫していて、今の俺のような年齢の男子はみんな戦場に送られた。そして中学生ぐらいの学生たちは焼夷弾による被害を避けるために家を取り壊す作業をしていたんだ。」

 

「そして、その日の朝早くにアメリカの飛行機が広島の空を偵察するために一度飛んできて空襲警報が広島に出された。」

 

「だけど、その飛行機は偵察機だから何も落とさずに帰っていった。」

 

「それで空襲警報が解除されてみんなが防空壕って言う空から落ちてくる爆弾を避けるために掘られた穴から出て来たんだ。」

 

「その頃、その偵察機から報告を受けたアメリカの基地からB-29って言う大きな爆撃機……って言ってもわかるか?わかんない?そうだなぁ………爆弾を落とすことに特化した飛行機って想像してもらえればいいかな?」

 

「それで、飛び立ったB-29がその腹に積んでいた原子爆弾。ここで落とされたのはリトルボーイ。ああ意味はちっさい少年って意味なんだけどな、そんでそれを落として離脱したんだ。」

 

「さっきの警報で何も起きなかったから安心していたのもあったんだろうな。空襲警報が出されたかどうかははっきり覚えてないけど防空壕に逃げていた人は少なかったらしい。」

 

「そして運命の8時15分に世界最初の原子爆弾、リトルボーイはここ広島の地で地獄を生み出した。」

 

「今俺たちが立っている近辺で生存していたのは本当にごくわずか。それも偶然地下の部屋に潜っていたり半地下の部屋に入った人たち位だった。」

 

「それ以外の人はどうなったのか?()()()()()()()()()よ。」

 

「あぁ。比喩なんかじゃない。物理的に骨すら残ってないんだ。」

 

「今は運の悪いことに資料館が改装中だから見れないかもしれないんだけどそれを示す証拠がある。」

 

「それは来年見に行った方が良いかもな。てか、トラウマを植え付けられた時に見てないのか?」

 

「え?何を見たのか思い出したくない?……まぁ、しゃあないか。」

 

「話を戻すぞ。それでここ一帯はほぼ生存者無し。そしてここから少し離れたところでも原子爆弾が放った熱風……あぁ、骨すら残らなかった理由はそれな。その熱風のせいで原爆が落ちて炸裂した瞬間ここいら一帯が太陽並みの熱にさらされたらしいから。そしてその熱風のせいで大量の致命的なやけどを負った人たちが生まれた。」

 

「その人たちを再現したのが俺達共通のトラウマになってるアレな。おぇ……」

 

 話している途中で俺は自分で自分のトラウマのスイッチを押してしまい、フラッシュバックを起こして被爆者の方々に失礼だとはわかってはいるものの吐きそうになった。

 

「悪い。トラウマがな……。話を戻すぞ。そして原子爆弾は炸裂したときに熱風以外の被害も生み出したんだ。」

 

「それは簡単に言えば強風だ。だけど、その強風は俺たちが知ってるようなレベルじゃないからな。」

 

「その強風のせいで家々は吹き飛び、崩れ、そして下敷きになった人たちがたくさん生まれた。」

 

「ただ、下敷きになっただけなら助ける手はあったんだ。問題はその後だった。」

 

「熱風のせいで火事が起きていたんだ。」

 

「そしてその火事はただでさえ致命的な傷を負った人たちが多いから消火されることは無かった。」

 

「そして、その火事はどんどん広がった。最終的に広島は熱風にさらされた後、突風にさらされ、そしてダメ押しとでもいうかのように火の海にされたんだ。」

 

「移動するぞ。」

 

 

 俺はショボーンとしている雷香達を引き連れて来た道を引き返すかのように移動した。

 

 そして先ほどわたった横断歩道を渡ると今度は右へと曲がった。

 

「ここが原爆ドームな。もともとは事務員さん……大淀さんみたいな感じで働いてる人たちが働いていた場所だったんだが、原爆の被害を受けてこうなった。それでもこの建物は運がいい方らしいぞ。他の建物は全部爆風で崩壊したのに対してこの原爆ドームは偶然爆風が中を通り抜けただけで済んだから建物が崩壊しなかったらしいし。」

 

「それじゃあ行くぞ。」

 

 俺はざっと原爆ドームを指差して説明してから再び歩き出した。

 

 今度は原爆ドームの横の道を通って川沿いを北上する。

 

 川沿いを北上すると、路面電車が走っている大きな道にたどり着くからそこを左に曲がって橋を渡り始めた。

 

 そして橋の途中で円谷プロのマークみたいに斜めに枝分かれしているところで立ち止まって振り返った。

 

「ここが相生橋。アメリカが原爆を落とすときに目標地点とした場所だ。」

 

 今俺が立っているのはT字で言うのならばちょうど横棒と縦棒の接着点だった。

 

「原爆は落ちた直後も落ちてからもずっと人を苦しめた。」

 

「原子爆弾の原子って言うのはこの世の中の全ての物を構成している単位のことなんだ………って難しかったか。」

 

「まぁ簡単に言うと、世界をレ◯ブロックみたいに考えたら一つ一つのブロックがその原子ってこと。」

 

「そして原子爆弾はその原子が破壊されるときに発生するエネルギーを兵器としたものなんだ。」

 

「原子爆弾は放射線って言う目に見えない毒を残していった。」

 

「そして、それは黒い雨と言う形で。さらにあらゆるところに隠れた刃として大やけどなどをして死にそうになっている人たちを助けに来た人や、自分の知り合いが無事なのか確認しに来た人を対象に誰にも気づかれずにその体をむしばんだ。」

 

「俺のひいばぁちゃんもその残った放射線によって体を蝕まれた。そしてその後に俺のばあちゃんが生まれたから母さん、俺と代を重ねて俺は4代目だ。」

 

「多分、難しいからわかんないと思うし、言ったら心無い奴からいじめられるかもしれないから絶対に言っちゃいけないけど俺は専門的に言うと被曝4世なんだ。」

 

「あはは、わかりづらかったかやっぱ。」

 

「それじゃあ、他の奴らも俺と同じようなことしてるだろうしぼちぼち合流しようか。」

 

 俺はスマホのLIMEを起動してこう打ち込んだ。

 

 ―--全部見せた。合流場所はどこだ?---

 

 と。

 




先詠む人のひぃじいちゃんは爆弾が落ちたあと知り合いを探しに広島市に入っていたので被爆しました。
作中で隼人は自分のことを被曝4世と言ってますが、あれは察している人も居るかもしれませんが先詠む人自身の投影です。
親が転勤族だったのでそれが原因でいじめられたこともありました。
でも、思春期真っ只中を過ごした大阪ではそんなことはなく。広島では尚更無かったのでそこまで歪まずに済みました。

感想、評価をもらえると先詠む人は嬉しいです。

あ、アンケートしてます。
URL
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=115172&uid=116136&flag=1

これからのことに関わってくるので回答宜しくお願いします。
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