リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;) 【完結済み】 作:先詠む人
「雷香!!玲奈!!!…………夢……か……。」
と、
無意識のうちに伸ばしていた手を脂汗でぐっしょりとなっている顔にかざしながら泣きそうになるのをこらえる。
ふと目が行ったベッドボードに置いた卓上カレンダーに表示されている日にちは2021年3月10日。
その日、雷香と玲奈が俺の前より痕跡も残さず消えてから6年目に俺は突入した。
5年前のあの日、二人が0と1に変換されるのと同時に画面に吸い込まれていくのを必死に画面の方へと手を伸ばすことで防ごうとした俺だったけど、二人が変換されたデータはそんな必死に画面をふさぐように手を置く俺の手の隙間を縫って画面へと吸い込まれていった。
「嘘だろ……冗談キツイって……誰かウソだって言ってくれよ……おい!!!」
誰もいなくなってしまい、パソコンの起動音が鳴り響く部屋で一人、俺はうなだれつつそう呟き、そのまま
「クソぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!」
部屋で絶叫した。
ただ何も考えず感情のまま叫ぶ俺の目には、涙があふれて止まらなかった。
「諦めてたまるか………そうだまだ艦これにつなげば!!」
そう思ってサイトに繋ぎ、そのまま艦隊これくしょんのページを開き、ログインしようとした俺をあざ笑うかのように猫は笑った。
「嘘だろ……」
画面には
<通信エラーが発生しました。お手数ですが、オンラインゲームのTOPからゲームの再開をfajusivep;ruawinbruawpni32"!#"$#$%IYU#)QP"$YU()VNB$(VUPQN$(。>
と、今はもういなくなったはずの妖怪猫吊るしが鎮座し、そしてその文面は途中から完全に文字化けしていた。
「そんな………」
落胆を隠せず、何度もトップページから艦これにログインしようと繰り返す。
しかし、何度繰り返しても猫が俺を笑うだけ。
艦これにつなげば何か変わるかもしれないという俺の最後の希望は絶たれた。
そんな状況のせいで震える手でスマートフォンからログインしようとスリープモードを解除する。そこで俺はさらなる絶望を突き付けられることになった。
「なんで……」
俺のスマートフォンの一番最初のホーム画面の壁紙は正月に撮った苦笑する俺を真ん中にして左右両脇に玲奈と雷香が着物を着てニコニコ笑っている写真の
しかし、今俺の前に映し出されているその画面には苦笑する俺
そんな画面を見て嫌な予感がし、俺は慌てて立ち上がり廊下へと飛び出した。
飛び出したせいで廊下で滑って転びそうになりながらも雷香と玲奈の部屋の前にたどり着く。
無言でドアノブを握る俺の中にはある最悪の光景が広がっていた。
内心そうじゃないことを祈って俺は扉を開ける。さっきまでだったら扉の向こうには二段ベッドを含めた雷香たちのものがある女の子の部屋とでもいえそうな部屋が広がっていた。しかし、今この扉の先に広がっていたのは…
「…………」
俺は扉の先を見て無言で崩れ落ちた。
扉の先に広がっていたのは埃をかぶったタンスや段ボールなど俺が二人が来る前によく見た光景となっていた。
……そしてその日のその後の記憶はない。
その後俺は実質艦これを引退し、アカウントこそ残ってはいるもののログインすること自体しなくなった。
あの頃持っていたものは豊中の方で働いている間に実家に残していた物はほぼすべて売られてしまっていた(上にその際発生したお金はすべてクソばばぁに戻った母さんの懐に入った)せいで今では当時のことを何となく示すものも範囲に加えても実家にあるのはロックシードしか残っていなかった。
久しぶりに帰省して完全にゴミ置き場と化した自室を見て呆然とする俺の前で偉そうにしていたばばぁ曰く「オークションサイト見ててプレミアがついてるのがあったからそれを売ろうとして探したんだけど見つからない。あんたどこにやったの?」だそうだ。誰が教えるか人の宝物に対してそんなこと考える奴に。
事実を言うと、ばばぁが捜していたロックシードはずっともはや荷物置き場となっていた俺のベッドボードのすぐそばにいくら操作してもクラックが開かない状態でおいてあった。
俺はあまりオークションサイト自体見なかったから知らなかったけど、何故か俺が持っているロックシードそのものが闇オークションサイトにて高値で裁かれていたらしい。ちなみに現物は俺が持っている上にもともとそんなことになっていること自体知らなかったから後でアイツらからそのことを聞いて引いた。
その後、アイツらに教えてもらったサイトにアクセスしてスクショを撮り、ロックシード自体を出品者が持っていないことと、持ち主である俺本人が売る気がないことをSNSに作った捨てアカ上で明言したため出品者がひどいことになったそうだが俺には関係ない話だ。まぁ、最終的に強盗殺人してでも俺から奪い取るつもりだったということを後々警察に捕まった出品者の取り調べの際に言ったという内容をニュースで見たときはさすがに血の気が引いたが。
…………ある意味このロックシードは、神様があまりにも俺のこと不憫に思って見逃してくれた妖精さんの置き土産かつ、何かあるものなのかもしれない。
そうして二人が消えた日のことを夢に見た日の夕方。
大学を卒業後、市役所の職員としての権利を手に入れた後に大阪の北摂にある豊中という都市へ移住した俺は、その日の勤務を終えて一人暮らす家に帰ろうとしていた。
薄暗くなった道を今朝見た夢のことを思い出しながら歩く。
あの日以降、俺は二人と楽しく遊んだ記憶こそ夢見ても、あの日のことを夢見たことはなかった。
なのに……だ。
いきなりあの日のことを夢に見るなんてどうかしたのだろうか俺の頭は。
そんなことを考えながら歩いているとふと誰かとぶつかった。
「おっと、失礼。」
そう言いながらぶつかった相手の方を見る。
その相手は身長が大体160~170cmぐらいの黒いパーカーを着て、ジーパンを穿いている女性だった。胸は結構ある方だろうか。ただ、フードを深くかぶっているせいなのか、顔がまったく見えない。
「あのー?どうかしましたか?」
その女性はこちらの方をじーっと見てきたので俺がさらにそう尋ねると
「……早く思い出さないと怒っちゃうよおにーちゃん♪」
先ほどまで何も言わずに立っていた女性はそう言って俺の横をすり抜けていった。
「あ!ちょ!?どういう意………え?」
すり抜けて行った女性が言った言葉の意味をとらえようと振り返りながら女性がの方へ手を伸ばした俺が見たのは
「……誰もいない?」
誰もいなくなって、街灯だけが道を照らす景色だけだった。
「……てなことがあってさ。幽霊でも出たのかと思ったよ俺は。」
その日の夜、俺は2年前に廉価で発売されたVRユニットを使ったVR空間の中にある酒場で愚痴っていた。
「それはさすがにちょっと怖いな。」
そう言いながらデータの酒をあおるのはキャラクターの頭上に表示されている名前の表示上ではJIO。
ようは、多井と俺は広島と大阪というはるか遠い距離をはさんでVR空間上で酒を飲んでいた。一応、フルダイブ型のVR空間のため、味覚エンジンも積んでるから酒を飲むという感覚はある。
まぁ、俺が現実では酒が飲めないけど、酒でも飲んでなきゃ話せられない気がしたから敢えてこっちでと頼んだものあるが。
「だろ。しかもそれが今日って言うのがなおさらな…」
「あ。そうか。そう言えば今日だったな。
「………あぁ。なんで俺だけ二人が消えるのを防げないんだよ。なんでお前らはそのままイチャイチャしてんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」
「まぁまぁ、酒飲めって。データだけど。飲んで飲んで全部吐きだしちまえよ。」
「ちくしょぉぉおおおおおお!!!!!」
あの日、実は大井達他のメンツの所に来ていた彼女たちも体が0と1で分解されかけたらしい。だが、それは途中で止まって逆に一度でも行為に及んだことがある場合はおなかに新たな命を宿した状態で戻ったらしい。
なお、そのせいで大井はもう子持ちだ。
大学卒業とともに正式に結婚式を挙げ、そのままその日の夜に2人目も仕込んだらしい。何してんだこのカップルは。
ちなみに他のメンツもなんだかんだで今は社会人として必死に働きながらやってるそうだ。
俺は公務員になったとはいえ、それは二人がいなくなった穴を何かで埋めようと代償行為として勉強していただけだったからなれたようなもんだったから威張れるわけもなく。
そのまま俺はデータの酒を飲み、そのまま虹色のデータを何度も口から出しながら怨嗟の声を上げ、そして気づいたら空間内のソファの上で寝落ちしていた。
「…?」
ふと、何かをかけられる感覚があって目を開く。
どうやら寝落ちしたとはいえ、正常な脳波ではなかったせいかログアウト処理が行われなかったらしい。周囲に見える光景は俺が飲んだくれたVR空間内で、向かい合うように置かれているソファには大井の姿はなかった。
「毛布…?」
そんな中で体を起こすとパサリと音を立てながら毛布が落ちた。
「誰がかけてくれたんだろう…」
そう思いながら周囲を見渡すと設定上そとには宇宙が見えるようになっている窓のそばに明るめの茶髪の女性が立っていた。
「………誰?」
このVR空間は製作者が許可を出した人しか入れないようにソフトの仕様上なっている。
しかし、俺はその女性に許可を出した覚えはなかった。すると女性は窓の方を向いたまま
「誰?ってひどいな。おにーちゃん♪」
と、何が面白いのかわからないが楽しそうに笑いながら腰に手を当て上半身をわずかに斜めに倒した。本来なら首をひねっているから顔が見えるはずなのになぜかその顔は見えない。
「でも、仕方ないよね。」
見えるはずなのに見えない。そんな事実に困惑している俺を放置して女性はそう続けると
「もうすぐ会えるよ」
と、何故か顔だけがはっきりと見えないのに笑っているということだけが分かった女性はそう言ってから姿をもともとその場にはいなかったかのように消した。
「消えた!?」
慌てて立ち上がり、女性がいた場所まで駆け寄る。
その場所には、さっきまで誰かがいたというぬくもり以外何もなかった……。
唖然とした表情で立つ俺の耳にポーンと言う音が響いた。
何かの通知だと思って視界の左上にある通知欄を注視する。するとそこには
LIME <JIO>「そう言えば、今日艦これサービス最終日だけどお前それ知ってた?」
というメッセージが送られてきていた。
「は………?」
慌ててVR空間内でPoitterを起動して久々に艦これのPoitterアカウントを確認する。
そこには運営からの「長らくのご愛好ありがとうございました。艦隊これくしょんは、本日をもってサービス終了させていただきます。」という内容のメッセージが固定メッセージとして表示されていた。
「………」
そこから後の行動はもう反射の域に達していた。
空間内でブラウザを起動し、〇MMのサイトへ移動する。そして長らくサインインしていなかったせいか忘れてしまったパスワードをどうにか思い出し、ログイン。
そして〇MMゲームのマイページへと移動していつも遊ぶゲーム欄へ手を伸ばしたタイミングでふと我に返った。
ゲーム欄に光っているのは艦隊これくしょんの文字だけ。
元々〇MMのアカウント自体艦これをするために作ったようなものだったため、それ以外のゲームに手を出す気など一切起きなかったからだった。
「………」
振るえる指の下にある艦これの文字列を見て脳裏に浮かぶのはあの文字化けした猫。
(やめよう。どうせ引退していたも同然なんだ。そんな俺が最終日だからってログインできるはずがない。
内心、あの絶望を味わいたくないからと逃げ出そうと指を離したその瞬間だった。
ザザッ
今俺の胸の前の空間上に投影されているパネルにノイズが走る。
そのノイズはすさまじい勢いでパネルを侵食していき、最終的には画面全部を覆い隠してしまった。
「うぉ!?」
このVR空間製作ソフトが発売されてからかれこれ2年ほどたつが、これまで長い間使ってきた中で一度も起きたことがないその現象に驚いてパネルから反射的に距離を置く。
距離を置かれたパネルはバイブ機能でもついているのかと言いたいぐらい震えている。そしてもはやパネルに映し出されているものはすでにブラウザ画面とは到底言えない砂嵐へと変わってしまっていた。
徐々にパネルの高さが俺の胸の高さから床へと近づいていく。
そしてその一端が床に触れた瞬間、空間自体が一気にノイズに覆われて俺の意識は強制的にシャットダウンさせられた。
意識がなくなる寸前、俺はこちらへと猫を右手で持って引きづりながら這いよって来る少女たちを見た。
「うわぁぁぁ!!!!」
叫び声をあげながらガバッと言う音が似合いそうな勢いで背中を預けていた椅子から起き上がる。
左手でダイブ用の機械を顔から外し、荒くなった息を整えた。
最後に見たあの光景のせいでびくびくしながら周囲を見渡す。だけど、そこにはダイブ前と何ら変わらない俺の部屋があるだけだった。
その事実に一安心してから俺は機械とコードでつながっているパソコンの画面を見た。するとそこには
「ただいま」
の文字だけが表示されていた。
「お……おかえり……?」
半ば反射的にその文字に対して言葉で反応してしまったその時だった。
パソコンの画面に緑色の文字が躍り出す。
しかし、その色の文字が表示されることは本来あり得ない。なぜなら俺の使っているパソコンのOSで起動画面などで表示される文字の色は白一色だからだ。理由は知らない。
そしてその文字が現れるスピードは徐々に加速していって最終的に
「わぷっ!?!」
画面からあふれ出し、俺を呑み込んだ。
文字に物理的に押し流されるといういまいち現実感のない現象に襲われた俺は結局、壁際で座っていた椅子ごと止まっていた。
壁に椅子ごとぶつけられたときの痛みに耐えながら奔流の源だったパソコンの方を向く。
するとそこには二つの影が片膝を立てて丸まるような形でいた。
右側の方の影は黒いパーカーを着ていて、左側の影は若干明るい感じの茶髪だった。
「………誰?」
俺が唐突に表れた二つの影に警戒しながら告げると
「誰ってお兄ちゃんは少し見ない間に自分の
「でも仕方ないじゃない。私たちだってこんなに大きく育ったんだもの。わからなくてもおかしくはないわ
「え…?」
二つの影は俺の言葉に不満を言いながらも笑いながら立ちあがる。
その二人の顔は……
頭の中で消えたはずの2人と目の間にいる女性たちが重なった。
「本当に雷香と玲奈…………なのか…?」
かすれるような声でそうこぼした俺の言葉に対して二人は
「「大正解!!!」」
と、背中合わせで俺の方に指を突き付けながら楽しそうに言った。
「っ!!」
椅子から立ち上がりそのまま二人の元へ駆け寄る。そして俺はそのまま
「もう!ちょっとお兄ちゃん苦しいよ!!」
「確かに苦しいけどそうなるわよね。だって、私たちは事前に知っていたとはいえ悲しかったのよ?それなら全く何も知らなかったお兄ちゃんは私たち以上に悲しくっても仕方ないものね。」
2人を力いっぱい抱きしめていた。
「「「………」」」
しばらくの間部屋に静寂が続く。
「………よかった。」
永遠に続くのではないかと思われそうなその静寂を打ち破ったのは玲奈だった。
「上手くこっちに来れてよかった……!!時間の流れがあっちの世界とこっちの世界じゃあ違うのが分かってたからお兄ちゃんが私たちのことを認識できないほど老いていたらと思うと眠れなかった!!!」
「でもちゃんと来れたんだろ。」
「計算上は大丈夫って明石さんから聞いていた。けど、実際にこの目で見なきゃ安心できなかった!!」
玲奈の言葉に反応した俺の言葉に対して雷香が目を潤ませながらそう答えた。
「俺もつらかったけど、お前らもつらかったんだな…。」
そう言いながら二人の頭をなでる。どうも俺と離れていた俺からしたら5年間の間にかなり成長したらしく、胸板に何か柔らかいものが4つ当たっているがそれを気にしないように必死にしながら5年前のように頭をなでてあげながら空を見上げる。
夜のとばりは優しく町を見下ろし、月がそんな世界に生きる俺たちを淡く照らしていた。
「そう言えばちゃんと言うの忘れてた。」
そうやって月を見ながら頭をなでているとふと何かに気付いたかのように雷香がつぶやいた。
「あ。確かにちゃんと言えてなかったわね。」
その言葉に玲奈も同意するかのようにうなずくと
「「ただいま。おにーちゃん♪」」
とあの時より成長したせいでかわいいというよりも魅力的?とでもいえばいいのだろうか。まぁ、そんな感じで艶っぽい笑みを浮かべながら二人はそう言った。
なら俺がその言葉に対していう言葉はこれしかないだろう。
「おかえり、二人とも。」
そう言って俺が頭をポンと軽くたたくと二人はあの日、ハロウィンで見たあの笑顔のように
「エヘヘ」
「ウヒヒ」
無邪気?な顔で満面の笑みを浮かべた。
これでこの物語は一旦幕を落とす。
この後3人がどういった風に暮らしていったのか。
結局、二人の内のどちらと結ばれたのか。
最終的に隼人はダメにされたのか。
……………すべては空に輝くお月様だけが知っている。
「リアルでもダメになりたくないなぁ……( ̄▽ ̄;) 」これにて完結。
はい、と言うわけで今作品最終回です。
自分が作った作品ではこれが初めての完全に最終回となります。
ちょっとですね。先に最終回を書いてしまった関係でモチベーションが上がらなかったのもあってバレンタインデーのネタとか完全に飛ばしてしまったのが心残りですが、これにて三人のお話は終了となります。
恐らく今後この現代来ちゃいました系統は雷香Onlyの「君が横にいるということは」とIFルートしか書かないと思います。
恐らく運営のミスで日刊ランキングに1時間程度載ったりなどとこの1年と半年ほどの間に様々なことがありましたが、楽しんで書かせていただきました。
最終回の最後、そのあとに3人がどうなったのかは読者の皆様にお任せします。
それでは〆に移らせていただきます。
この作品自体は大空飛男さんの「提督に会いたくて」のネタを許可をいただいて書き始めたのが最初になります。
本家である大空飛男さんの「提督に会いたくて」は現在も連載を続けておりますのでそちらも是非ご覧ください。
後日、書きたいことを「執筆後記」と言う形で投稿させていただきます。
そちらでは裏ネタも書こうかなって考えていますのでどうぞよろしくお願い致します。
ではでは……