孫呉ルート   作:眼鏡最高

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ごめんなさい。
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。





9、囚人生活

捕虜になった。

俺は捕虜になっていた。

 

気絶し、気が付いたら縄で縛られていた。縄でグルグル巻きだ。もはやミノムシ。間抜け過ぎる。

 

俺が居る場所は天幕の中で、見張りには爺さんが居る。その爺さんは仁王立ちで、俺を鋭く睨んでいる。なかなか強い気を持ってるな。

 

「爺さん、疲れるだろ。座ったらどうだ?」

俺が親切心で言ってやると。

 

「年寄り扱いするなっ!」

あろう事か爺は俺を殴りやがった。

 

「ぃだっ!なにすんだ!爺!てめえ!」

ミノムシ状態の俺はジタバタする事しかできない。

 

「捕虜のクセに生意気な事を言いおって」

鼻息荒く爺は吐き捨てるように言った。

 

「あぁ?喧嘩売ってんのか?」

しかし睨んでもミノムシの状態じゃカッコがつかん。

 

で、俺と爺が睨み合っていると。

魯粛子敬が来た。一時期、子敬の家に世話になった。子供とは思えないほど、頭が良い利発な奴だ。久しぶりに見たが身長変わってねぇなぁ。

 

「お久しぶりです、太史子義殿。大丈夫ですか?」

ニコリと笑いながら、子敬は俺を地面から起こしてくれた。

 

「おう。ここに居るって事は、お前孫家に使えてんのか?」

抱き起こされてわかったが、剣ダコが出来てる。よくよく見れば身体も鍛えてるな。

 

「はい。冥琳様に声を掛けていただき、自分で決めて士官する事にしました。今は軍師をしています」

 

「へぇ、さすがだな。それに身体の方も鍛えてるみたいだな」

 

「はい。せめて自分の身は自分で守りたいので、武の方も頑張っています」

 

「そうか、元気そうで何よりだ。所で俺はどうなる?つか、あの後どうなった?」

そう俺が言うと、子敬は俺がどこまで覚えてるか聞き、わかりました。と言い話しだした。

 

「まず、あの後、一騎討ちが終わり、子義殿の部下たちは全員がおとなしく武器を捨て投降しました。ですので、この度の戦での死者はいません。それで、子義殿の事は未だ決まっておりません。雪蓮様と牙連様は仲間にしようと主張しているのですが、冥琳様が、その、とても反対していまして、荒れに荒れています」

アハハと苦笑いで話を締めくくった。

 

爺に睨まれながら、その後もテキトーに、くっちゃべていたら、お呼び出しがかかった。腰から下の縄だけ解かれ、魯粛が俺の前に、爺は俺の後ろの位置について天幕から外へ出た。

 

天幕を出ると、大勢の奴らが縄で縛られていた。本当に残ってるな。陳武達…、つか俺が太守を自称し仲間にした時の盗賊の奴らまで、見た限り全員残っている。

 

で、俺は、おそらく孫呉の幹部どもが集まってる場所まで連れてこられ、地べたに座らせられた。孫策が簡易的な椅子に座り、左右の横には周遊と牙連が立ち、爆乳の弓持ってる女、あと魯粛と爺が加わって並んだ。

 

すると牙連が無言で進み出て、刀を振りかぶった。

 

俺の人生ここで終わりか、呆気ないねぇ。

 

一直線に刀は振り下ろされた。

 

しかし刀は俺にも服にもかすりもせず、見事に縄だけを切った。ん?

 

「私達の仲間にならない?」

俺が間抜け面で不思議がっていたら、孫策がそんなことを言ってきた。

 

「嫌だと言ったら?」

頭で考えるより早く、俺は口に出していた。

 

「逃がすわ」

孫策は真顔でのたまった。

 

「はっ?…それで俺がもう一度襲ってきたらどうすんだ?」

 

「今度は私がコテンパンのけちょんけちょんにしてやるわよ!私がやりたかったのに牙連が勝手に行っちゃうし!」

 

「くっ、あははは」

 

「それで仲間になるの?ならいないの?」

 

「無理だな」

どよめき、怒り顔の奴らもいる。

 

「その、苦手なんだよ。敬語とか、臣下の礼とか、だから友の、朋友の手伝いなら喜んでやろう。それじゃ駄目か?」

 

「なら!今から私と貴方は朋友ね!もちろん手伝ってくれるわよね!」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

 

 

孫策、もとい雪蓮と朋友になり、俺は孫呉の食客的な立ち位置になった。とは言っても牙連や雪蓮などごく少数にしか信用されておらず、影から俺を見張る奴らがいる。

 

この一月ぐらい、戦らしい戦はしていない。

雪蓮たちは劉ヨウの首を取りたいらしいが、劉ヨウは彭沢の都に逃げこみ、都から一切打って出てこず守りを固め、亀の如く籠城している。

 

俺たちは彭沢の都に一番近い、曲河の都に今はいる。雪蓮が言うには周瑜が裏で何かやってるらしいので、それ待ちらしい。

 

退屈な日々だったが、一つだけ異常な点を上げるとしたら周瑜が『不自然に優しい』のだ。あれだけ俺を嫌ってたはずなのに、普通に話しかけたり、笑ったりする。なにより時たま用もなく俺の部屋にふらっと来ては雑談し帰るのだ。

 

「邪魔をする」

今日もまた周瑜が来た。だが、いつもと周遊の雰囲気が違っていた。

 

「太史慈、孫策をどう思う?」

座るでもなく、部屋を見回したまま話し出した。

 

「そうだな。大雑把でガサツな」

俺が喋ってる途中で、周瑜は話し出した。

 

「そうだろう。孫策には孫呉を任せておけない。私と共に孫呉をとらないか?」

そんな阿呆な事を言いながら周瑜は段々と俺に近づいて来た。

 

「はっ?」

いや、はっ?

 

「孫策は、ただの戦馬鹿だ。私は、お前を王にしたい」

俺の横に座り、最後に艶っぽく言いながら、しなだれかかってきた。

 

「演技は完璧だ。だがよ、お前が雪蓮を裏切る訳が無い。もうちょっとマシな嘘をつけや」

冷めた目で周瑜を見やると。

 

「ふん。思ったより馬鹿ではないようだ」

すぐさま周遊は俺から離れ、布でゴシゴシと拭っていた。俺と触れた箇所を。

 

「そりょどーも」

 

「牙連の友でなければもっと厳しい生活だったろう。牙連に感謝するんだな」

あらかた布で拭き終わってから、吐き捨てるように周遊は言い放った。

 

「そうか。持つべきものは友だな」

何故かギンッと音が付くほど睨まれた。

つーか、う〜ん…

 

「顔色が、悪いな…」

ほんとに微妙な変化だが、昔より顔色が悪い。

 

「…お前さ、病気だろ?結構おっ!?」

俺が喋ってる途中で、周遊は腰の剣を抜き、いきなり切りかかってきやがった。マジ危ねえ!

 

「いきなり何すんだ!?馬鹿か!?」

座ってた椅子を使い防いだが、椅子は粉砕された。軍師のクセに身体能力が高過ぎだろ!

 

「黙れ。知られたからには…殺す」

 

「うおっ!?わかった!待て!」

容赦なく連続で突きを放ってきやがる。

 

「大人しく、死ね」

ヤバイ…、こいつ本気だ。

 

近くにあった寝台の布を掴み、周瑜に向かって投げつけ、目くらましにし、剣を持っている腕を掴んで、いっきに床に組み敷いた。

 

「誰にも言わねぇよ…、そんなに知られたくねぇなら誰にも言わねぇから」

できるだけ冷静にして周瑜に言い聞かせた。

 

「口約束など誰にでもできる」

周瑜は俺を睨みあげていた。頑固な女。

 

「俺は天なんてモノは信用してねぇ。だから俺は俺に誓おう。俺の誇りにかけて、お前の秘密を守ろう」

長いこと目が合っていたが、しばらくして周瑜は顔をうなずかせ目が見えなくなった。

 

そして黙りぱっなしだった周瑜が口を開いた。

 

「はなせ」

 

「あっ?」

 

「手を、はなせ」

 

「あぁ」

もう大丈夫だろうと思い俺が手を放すと、周瑜は無言で立ち上がり、服を軽く手で払い、そのまま無言で部屋から出て行った。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

劉ヨウが死んだ。

突然と劉ヨウが死に、劉ヨウの軍勢には亀裂が生じている。跡継ぎ決めないまま死んだので、兄、弟、伯父、それぞれが当主には自分が相応しいと主張している。

 

攻めるには絶好の機会、容易く終わる。軍略会議中に私が雪蓮や皆に策の話をしていると。

 

「劉ヨウの配下、集めに行くか?」

突然と太史慈が口にした。

 

「そう。なら」

声色から雪蓮が乗り気だったので。

「…反対だ。まだ太史慈は信用できない」

私は雪蓮の言葉を遮り、太史慈を睨んだ。

 

「同意だ。裏切る可能性がある」

程普も頷き、私の言葉に続いた。おそらく程普に爺とでも言ったのか太史慈は程普に嫌われている。予想通りだな。

 

「誠が裏切る?あり得ないよ。絶対に」

やはり牙連は太史慈を庇い、力強く言い切った。

 

「で。どうすればいい、俺はよ」

太史慈は雪蓮を見ながら尋ねると。

 

「誠、頼んでいいかしら」

雪蓮は考えるそぶりも見せず、太史慈に言い放った。

 

「おう。七日までには帰る」

すぐに椅子から立ち上がり、太史慈が部屋から出ようとしたので。

 

「行きに一日。戻るのに一日。わかってて言ったのか?」

太史慈の背中に向かって言ってやると。

 

「男に二言はねぇよ」

あいつは振り向きもせず、そのまま部屋から出て行った。しかし、いまだ会議中だと言うのに。ちっ、仕方ない。

 

「太史慈の動向が分かるまで軍略会議は中止だ。武将は、いつでも戦が出来るように準備だけは怠らないように。雪蓮、他に何かあるか?」

 

「ないわ!お開きで!」

満面の笑顔だった。そんなに会議が終わって嬉しいのか。はぁ。

 

「そうか。二人で話したい事があるから残ってくれ」

 

「…はーい」

面倒臭いのが丸わかりだ!まったく!

 

そして皆が退出し、二人だけになり、一呼吸おいて私は雪蓮に話しかけた。

 

「太史慈を信用し過ぎだ。すぐに真名を許すわ。重要な策を任せるわ。一月前まで敵だった男だぞ」

睨む表情で雪蓮を見つめていると。

 

「刃を交えれば分かるわよ、誠が信用できる男だって。それに冥琳この前、兵が足りなくてブーブー文句言ってたでしょ?これで解決するわよ」

 

「兵数が少なければ、考えられる策も少なくなると言っただけだ。やりようはいくらでもある」

 

「でもさ。冥琳だって絶対反対って訳じゃないでしょ。もし反対だったら、口で言い負かしちゃうじゃない」

 

「はぁ、もう太史慈の話はお仕舞いだ。さぁ雪蓮、溜まってる書類をやってもらうぞ」

 

「えぇ〜!!」

 

「えぇじゃない!やれ!」

 

 

七日後、夕暮れ前。

太史慈は劉ヨウの兵を集め戻ってきた。

 

 

「約束したろ美周嬢、俺は必ず約束を守る男だぜ」

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

劉ヨウの兵を集め帰って来た夜。

牙連に誘われ、酒盛りをやっていると…

琴ような音色が聞こえた。

 

「ん?これは?」

 

「あぁ、冥琳だよ。でも珍しいなぁ。機嫌が良い時にしか弾かないのに」

 

へぇ…

 

いい、音色だ。

 

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