堅く結ばれた友情。
久しぶりに里帰りしようと思い、俺は家に向かっていた。
んで、のどかな山道を歩いていたら、見るからに盗賊5人に囲まれてる紅髪の男が居た。最近は黄色い布の奴ら暴れて物騒だからな。この盗賊は違うようだが。
それにしても過激な紅い髪色と違い、顔は温和でのほほんとしている。あと雰囲気がゆるい。
たぶん身長は俺よりデカく、体は引き締まり見た目武人だが、武器は持っておらず、手には一冊本を持っている。どこかチグハグなんだよな。
う〜ん、わかんねぇ。弱いか、強いか、わかんねぇ…
「おいっ!加勢するか?」
俺は紅髪の男に目を向け声を掛けた。
「いえ大丈夫です。今、話し合いの最中ですから」
能天気に笑って紅髪の男は答えた。つか話し合いって…相手は既に刀を構えてるだろ。今すぐに襲い掛かってもおかしくない状況に俺には見えるんだが…
「てめぇら!バカにしてんじゃねぇよ!」
いきなり盗賊Aがキレて紅髪男に切り掛かり、盗賊BとCが続くように襲い掛かった。いったい、どんな話し合いしたんだよ…
何故か盗賊DとEは俺の方に切り掛かってきた。盗賊Dの剣撃を刀で受け止め蹴りをDにくらわし、盗賊Eの剣撃は避けEの顔面に拳を入れた。
俺が紅髪の方に顔を向けると、紅髪の男は避けていた。ひたすら避けまくっていた。
ただABCの攻撃を綺麗に見切り、まるで演武をしているようだった。しかも剣を避けながら「こんな事はやめましょう。不毛です」とか「こんな、くだらない事、やめませんか?」とか言っていた。
最初は見ていたが、いい加減じれったくなり、俺がABCをぶっ倒した。
「お前は何をやってんだ?」
横に居る紅髪男に呆れた声で俺が言うと。
「話し合いで解決したかったのですが…、すいません」
少し苦い表情で紅髮男は答えた。
「そうかい…。つか、こんな所で何してんだ?」
「見聞を広めようと旅している最中です」
「へぇー」
あれから同じ方向に行く事が分かったので、旅は道連れ世は情け、そんな感じで二人で一緒に歩いている。なかなか面白く、天然な奴だった。ちなみに武器は一つも持っていない、争い事が苦手で武器は持ちたくないらしい。ただ争い事は嫌いだが体を動かすのは好きで演武や武術の型を知っていた。弓も的に当てるなら外した事がないらしい。
これが天才って奴かね。
それにしても争い嫌いな男に武の才能か、皮肉なもんだな。
辺りが暗くなったので俺達は野宿にする事にした。
保存食を食い終わり、火を囲みながら国の事や自分の考え、どんな場所を旅したか、あいつは強かった、あそこの飯はマズイ、くだらない馬鹿話をしていた。
「ずっと睨まれてるかと思っていました」
「元々の目つきだよ。悪かったな極悪な目で」
不貞腐れ気味に言うと。
「鋭くてカッコ良い眼ですよ」
ほんわかオブラートに包まれた。
「柔らかく言うな逆に辛いわ。自覚してるから別に平気だ」
優しさが痛い時もある。
「本当の事ですよ。僕は少し垂れ目ですから」
自分の目元を指差して答えた。
「そう言うもんか」
無い物ねだりかね…
少し沈黙があり、突然。
「僕は、イトコが好きなんです」
常にゆるい顔をしているのに、この時は真面目な表情だった。
「そうか」
俺が当たり前のように頷くと。
「罵声や蔑みの目で見られるかと思ったのですが…」
やんわりとした優しい口調で不思議がっていた。
つか。
「なんで?」
ホントになんで?
曰く。同性不婚です。イトコが好きなんて狂人ですよ。周りに白い目で見られても平気です、でも雪蓮が知って軽蔑されたら僕は死んでしまう。イトコと結婚が出来るのは王ぐらいですよ…、力なく最後にそう言った。
「なら王になれよ」
真剣に言うと。
「好きな子が王を目指してるから…」
薄く笑い、そう答えた。
んで、俺が何を言うか考えていたら。
「僕は、兄を殺しました」
溶けるようにポツリと呟き、まるで心を無くしたような表情だった。
〜〜〜
ポツポツと雨が降り出した夜の晩でした。
イトコの母が亡くなり、順当に行けばイトコが一族の当主を継ぐ事が決まっていたのですが、まだ誰が次の当主になるかは不安定な時期だったんです。色々と意見が出ていました。
そんな時期に兄は軍を増強し、イトコの周りに斥候を出し、一族に連絡をとっていた。僕は気になり、密かに兄に会いに行きました。もしもイトコの邪魔をするなら殺すつもりで。
塀を飛び越え兄の屋敷に侵入し、兄の部屋に向かいました。幸い灯りがあり、薄ぼんやり灯りに照らされた兄の姿が部屋の外から見えました。
「兄上…」
静かに扉を開けて入り、僕は囁くように言葉を発しました。
「なっ!?驚かすな!?お前か、どうした?」
すぐに椅子から立ち上がり剣の柄を握っていましたが、僕の姿を確認すると手をゆるめ顔も柔らかくなりました。
「僕は…、兄上がやるなら手伝うよ」
事外には言いませんでしたが、これで伝わるはずです。
少し間があり。
「なっはっは。お前が居るなら千人力だな。たやすく俺が当主になれる」
酒でも飲むか?と兄は笑い、僕に背を向けたました。
決まりですね、兄上…
「一つお願いがあるんだ」
僕は剣の柄を静かに握りました。
「おう、なんだ言ってみろ」
兄上は酒瓶を持ち、僕の方に振り向こうとしていました。
「死んで」
向き直った瞬間、言葉と共に剣を振り抜きました。
ゴロンと首が落ち、そして兄上の体が崩れました。
「一瞬だから痛みは無かったはずだよ、兄上」
すぐに僕は、その場から逃げたのです。
〜〜〜
俺のキャパには、もう入り切らねぇ…
「…なんで話した?」
「なんでだろう…、きっと責めて欲しかったんですよ。それに誰かに聞いて欲しかった」
最初は自分でもわからない風に言ったが、後半は言葉に出してやっと気が付いたような表情だった。
「んな事、俺に言うな」
はた迷惑すぎる。いや、それよりも…
「つか争いが嫌いで、武器すら持ちたくない、お前が…」
実の兄を殺したのか?とは聞けなかったが。
「僕は雪蓮、イトコの為なら何だってできます。いや、きっと僕が雪蓮の役に立ったと思いたいだけなんでしょうね」
俺の質問を先回りし答えた。
ただ答えた時の眼が純粋過ぎて、俺は逆に怖くなった。
しばしの間、獣の息も、虫の声も、何も聞こえなかった。
俺は何と返答して良いかわからず…
「…俺は生まれ変わり、転生者だ」
なんとなく俺は俺の秘密を話した。
「…なんで僕に話したの?」
とても不思議そうに首を傾げていたが、男がやってもな…
「勘だ。つか信じるのか?」
信じないだろう、と思って話したが。
「そうですか。信じますよ。」
真剣な目で真っ直ぐ俺を見ていた。
「お前、あれだろ。馬鹿だろ」
本物のバカを俺は初めて見た。
「そんな事はないですよ?そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。僕の名は、孫瑜仲異、真名は牙連です」
さらりと笑顔で、牙連は真名を名乗った。
「なんで…真名まで言うんだよ」
真名って、凄く、めっちゃ、とても、大事なモノだったよな?
俺の勘違いだったけ?
「勘です。それに預けたいと思ったから」
そんな理由かよ。顔が笑っちまうぜ。
やっぱ…
「本物の馬鹿だな。俺の名は、太史慈子義、真名は誠だ」
笑いながら俺は名を名乗った。
「誠は、なんで僕に教えてくれたのですか?」
心底不思議そうな表情を牙連はしていた。
「勘だ。それに俺も馬鹿だからな」
また俺が笑いながら言うと。
「そうですか、それなら納得できます」
至極真面目に頷いていた。
「おい!そりゃどうゆう意味だ!牙連!」
俺は立ち上がり怒鳴った。
牙連は「勘に納得した」そう言う意味で言ったようだった。
そんな感じで夜が過ぎていった。