孫呉ルート   作:眼鏡最高

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5、四面楚歌

牙連に出会って一日が過ぎ、家に着いた。

家の中に入ったが母はいなかった。まぁ仕事中だろうな。

 

とりあえず牙連に茶を出して、俺は椅子に座りノンビリしていた。牙連は家の書庫に入り、本を読んでいる。つねに本を手に持ってるし、本が好きなんだろうな。

 

…あぁ家だなぁ。やっぱ懐かしいもんだ…

なんとなく俺は哀愁を感じていた。そんな時に家の中に人が入って来た。

この独特な義足の足音は…母だ。

 

「なんだ。居たのか」

数年ぶりに会った息子への第一声がコレだ。

 

「おう」

別に何かを期待してたわけではないがな。

 

「…昔、孔融の世話になってな。窮地にいるから助けてこい」

なんの脈絡も無く母上殿はのたまった。

 

「はっ?」

俺は助手の朱知に顔を向けて、目で疑問を投げかけた。

 

孔融、孔子と言う人の子孫で、風変わりな人物。

母は怪我した時に、この孔融に世話になったらしい。で、孔融は黄巾賊討伐に向かったが、逆に都昌の町を黄巾賊に包囲されピンチのようだ。とんだ間抜けだ、馬鹿かよ。

 

「行ってこい」朱知の話が終わり母は、そう行った。

母に頼まれ、ほぼ命令だが、俺は孔融を助けに行く事になった。

あと朱知に母と仲をそれとなく聞いたが進展は無いようだ。まったくヘタレだ。

ちなみに牙連も話の途中からくわわり、母や朱知に挨拶をしていた。

 

母と朱知に別れを言い、俺が家を出ると、何故か牙連もついて来た。

俺が「なんでいる?」と聞くと「僕も行くよ」とほがらかに答えた。

 

「はっ?来るのか?」

あきれ顔で俺が言うと。

 

「1人より2人の方が良いでしょ?」

笑いながら牙連は答えた。

 

「少なくとも三千はいるぞ」

真面目に敵の兵数をつげたが。

 

「なんとかなるよ」

のんびり返事をした。

 

「人生損するタイプだな」

やっぱ本物の馬鹿だ。

 

「うん?」

牙連は不思議そうな顔をしていた。

 

少しばかり歩き俺は思う。こいつは、牙連は戦で役に立つのだろうかと。

 

 

 

一日かけて、ようやく都昌の近くにきた。だが、まだ半日ほどかかるだろう。それにしても人いねぇ。まぁ当たり前か、この道は都昌に続いてるから危なくて近寄らねぇよな。

くっちゃべりながら数時間ほど歩くと、都昌の方から商人の一行が歩いてきた。商人に声を掛けて、どこから来たのか尋ねると、のん気に劉備の所から来たと答えた。

都昌の事を尋ねると、そんな事になってるとは!?と驚いていた。さらに色々と商人に聞くと、劉備達は都昌の近くの長原に居るのに黄巾賊の存在に気が付いてないようだ。つかえねぇ〜。

つか劉備か…会ってみたいな。

まだ三国志の有名人には誰にも会ってない、やはり一度は会って見てなぁ。そんな事を考えながら、先に進んだ。

 

 

 

暮れなずむ夕日、もうすぐ夜になる。

そんな時間帯に俺達は草むらに潜みながら孔融の居る都昌に着いた。

正確に言えば都昌近くの森の中だが。

 

都昌の都をぐるっと見て回ったが、都の三つの門に黄巾賊は集まり出入り口をふさいでいる。予想より、ずいぶん人数が多く居る…

おおよそ、南北に二千ずつ、東に千、ぐらいだろう。

 

「どうするの?正面突破する」

前半は疑問形だが、後半は断定で言った。

 

「お前は馬鹿か、いくらなんでも無茶だろ」

流石に俺の中にも常識はある。

つか牙連の奴、自分はどうする気だ。逃げの一手か?

 

「これを使う」

俺は蛇腹刀に手を掛けた。

 

ひとまず俺達は、干し肉を食い、休む事にした。

 

とうの昔に日は沈み辺りは真っ暗。

そして月が雲に隠れた時に、俺達は動き出した。

 

 

門が無い西にある城壁に向かった。さいわい黄巾賊には見つからず無事にたどり着いた。牙連は黄巾賊が辺りにいないか警戒している。俺は伸ばすだけなら使える蛇腹刀を手にとった。

 

「刀で、どうするの?」

牙連が心底不思議そうな顔をしていたので。

 

「まぁ見てろ」

ニヤリと笑ってやった。

 

後ろに蛇腹刀を大きく振りかぶり、力一杯に刀を伸ばした。

蛇腹刀は真っ直ぐに伸びて城壁を越え、何かに引っかかった。

運が良い、一発で成功するとはな。

 

「凄いね。伸びる刀なんて初めて見たよ」

牙連は少し眼を見開いていた。

 

「母から譲り受けた刀だ。詳しい事は知らん」

まぁ見た目は蛇尾丸とは言わなくていいだろう。

 

蛇腹刀の伸びた場所と刃の無い部分に足を掛けて俺達は忍び込んだ。見張りがいないのか、誰にも見つからずに登りきっちまった。俺達にはとっては良かったが、駄目駄目だろ。見張りぐらい居ろよ…

 

俺は地道に蛇腹刀を手で戻し、腰におさめた。

んで、どうするか考えていたら城壁に登る階段の下から…

 

「朝まで歩哨するなんて、ついてない」

「仕方ないさ。黄巾の連中に囲まれてんだからよ」

そんな男二人の声が聞こえた。

 

ちょうど見張りの交代時間だったようだな。

流石に見張りぐらいは居るか、安心したぜ。

 

そして階段を登りきった二人の兵士が、俺達を見つけた。

 

一瞬、二人の兵士はほうけたが、すぐに剣を構え、わめき出した。

一応、俺達は黄巾賊では無いと言ったが、もちろん兵士二人は信用しなかった。とりあえず俺達は、抵抗せずに大人しく捕まった。

 

武器を渡し、手を縄で縛られ、牢屋にブチ込まれた。

孔融に会わせろとわめき散らし、数時間して本当に孔融が来た。

俺が太史慈子義だと名乗り、母が世話になったから助けに来た事をつげると、またたく間に孔融は信用し、俺達を牢屋から出してくれた。本人だし、ありがたいが、俺達を簡単に信用しすぎだろ。

 

はい。数日が過ぎた。

 

手伝いに来たが、何もさせてもらえねぇ。軍略の会議にも俺達は出させてもらえず、わざわざ策を進言してやったのに聞く耳すら持ってねぇ。

 

孔融とまともに話したのは二回。初日の夜に「太史慈殿の武勇伝を聞かせて欲しい」とせがまれ、テキトーに昔話をした事。三日目の夜に俺達の所に忍んで会いにきて、他の武将の面目があるので策があれば私に直接言うように、詫びを言われた。孔融、意外に凄い人物なのか?

俺達が、人数が少ない場所を急襲し打って出る作戦を話したが、賛同するのは難しいと苦い顔で言い部屋から出ていった。

 

その後は、酒を飲んだり、転生前の現代の話を牙連にしたり、孔融が飼ってるパンダを見に行ったり、兵士達とかるく手合わせした。

 

さらに数日後。

町は黄巾賊に完璧に包囲された。

数は五千から八千ほどに膨れ上がっている。

ますますピンチだな。つかマジで危なくなってきた。

 

昼下がり、城壁の上に登り、黄巾賊の連中を見ていた。

 

「弓、得意なんだよな?」

黄巾賊を見据えたまま、隣に居る牙連に尋ねると。

 

「うん。的になら外した事はないよ」

明快に答えた。

 

「よし」

せっぱ詰まってるし、もう好き勝手にやっていいだろう。

一応、孔融に話し通しとくか?

 

 

 

翌日。

牙連と兵士Aは東の門から外に出た。

黄巾賊の連中は不思議そうな顔をしている。まぁ無視だ。

兵士Aには的を持たせ、牙連は弓と矢を持っている。

二人は少しばかり歩いて距離を開けた。

門の前で、一射、二射、三射と牙連は矢を放ち、兵士Aが手で持ち上げている的に当てた。

んで、すぐに牙連と兵士Aは町の中に戻った。

 

二日目。

昨日と同じように、弓の練習している。

黄巾の連中は、またか、とそんな顔をしている。

まぁでも、まだ武器を持ってる連中が居るな。

 

三日目。

また同じように、弓の練習をしている。

黄巾の連中は、ほとんど全員がのんびり見ていた。

よし。これなら完璧だな。

 

四日目。

同じように、一射、二射、三射と牙連は打ち終え。

兵士Aと一緒に門の中へ戻った。

 

そして門が閉まる直前。

 

俺は馬を駆け、門から躍り出た。

 

驚いた表情の黄巾賊達の顔が、ぐんぐん近づきハッキリと見えてきた。そして俺はそのまま黄巾賊の陣に突っ込んだ。慌てた様子の黄巾賊を景色と共に置き去りにし、俺は陣の中を駆けた。数人は切りかかって来る奴も居たが、一太刀で切りふせ突き進み、一気に駆け抜けた。

 

振り返る事はせず、そのまま手綱を強く握り走り続けた。すると真横にヒュンと音が聞こえ矢が一本後ろから飛んできた。そして、それに続くように矢がアホのように飛んできた。

「ぐっ、くそったれが」

矢が肩に当たったが、死んでないだけマシか?

しばらくして矢は飛んでこなくなった。

 

振り返り見ると、黄巾賊の連中が遠目に見えた。

 

「よくやった」

俺は馬の首を撫で、少しスピードを緩めた。

ただ止まる事はせず、肩に矢が刺さったまま馬を走らせ続けた。

「もう一踏ん張り、頼むぜ」

 

 

 

そして俺は長原にたどり着いた。

劉備が居る、長原へ。

 

なにゆえ黄巾賊の包囲を一騎で駆け抜けたか。

もうわかってるだろうが劉備に援軍を求める為だ。

 

ちなみに黄巾賊の陣の真ん中を突き進んだのは目的地の長原が門を出た直線上にある為、混乱させて追っ手を遅らせる為、あとは俺の鬱憤解消だ。

 

長原の町の中に入り、大声で「劉備はどこだ!?」と叫ぶと、槍を携えた、黒髪に、ポニーテールっぽい髪型の女があらわれた。

女は「とっ、劉備様に、なんのようだ」と言い俺を睨みつけ槍を構えていた。なかなか強いな。こんな時じゃなきゃ、手合わせしたいぜ。

俺が、都昌が黄巾賊に囲まれ危ない事を伝えると、女は驚き「そうか、すまない。案内しよう」と謝り槍をおさめた。

 

ちなみ、この女が関羽だった。

俺の少ない三国志データでは、ヒゲのイメージで男だった気がするが…

きっとアレだ。パラレルワールド的な感じだろ?多分そうだよな?

 

後に知るが張飛や劉備も女だった。

つか武将や軍師は、ほとんど女だった。

孔明、うちわ持ってる奴。こいつも女、つか幼女だった。

他には趙雲、黄忠、厳顔、魏延、鳳統、名前を聞いたが…知らん。

 

あと二人だけ男の武将が居た。

夏侯覇。なんか聞いた事があるような名前だった。

でも最後の文字は、トンかエン、だったような?

 

もう1人は、北郷一刀。

名前が日本人っぽい。つか日本人だよな?

この時代に日本から遠路はるばる大変だったろう。

移動手段が船に馬、あとは徒歩だ。

よく、こんな所まで来たもんだ。

 

 

いましがた劉備達に話を終え、俺は別の部屋で治療を受けている。

先に治療を受けろと言われたが拒み、都昌や黄巾賊の話をした。

今頃は軍師と武将で話し合っているだろう。

 

治療を終え、案内された場所は元の部屋だ。

挨拶もせず俺がすぐに尋ねると、劉備は明瞭に答えてくれた。

「黄巾賊をやっつけます。すぐに都昌に向かいましょう」

 

戦の準備を整え、俺と劉備軍は都昌に進軍した。

 

劉備軍の兵数は六千、都昌に居る兵が二千、合計で八千。だいたい黄巾賊と同じ兵数だ。まぁ劉備軍や都昌の兵は一応、正規軍だ。農民上がりの黄巾賊に、武器や鎧がそろってる俺達が負ける事は無いだろう。でも油断は禁物だな、俺は気合いを入れ直した。

 

ひっそりと都昌の東門の近くまで俺達はやって来た。

この日の風は、ちょうど良く微風だ。んで俺は、都昌の町に常備してあった狼の糞を袋から出し、枯れ木や草をかぶせた。火打石を何度も打ち、ようやく火をつける事が出来た。

 

そして、まっすぐ黒い煙が空に上がった。反撃の狼煙だ。

牙連にはあらかじめ東門の近くから黒い狼煙が上がったら作戦成功。失敗した時には赤い狼煙を上げる予定だった。

 

うっし、準備万端。

後は、あっちが打って出てくるのを待つだけだ。

 

少しして都昌からカンカンと鐘を叩く音が聞こえ、東門が開いた。

なんで、あいつが…

先頭には何故か紅髪の男が居た。遠目からだが間違いなくアレは牙連だ。

しかも牙連は馬鹿デカイ丸太を持ち、黄巾賊に突っ込んで行った。

それに続くように都昌の兵も黄巾賊に突っ込んだ。

 

東門から出て来た兵士の数は500ほどだ。

たぶん牙連の奴、反対を押し切り、無茶やって出て来たな。

争い嫌いのクセに、本当にバカな奴だよ、お前。

 

牙連達と黄巾賊がぶつかり合った直後、劉備軍の武将が号令を掛け、五千人の雄叫びが轟き、俺は劉備軍と共に戦場へ雪崩れ込んだ。

 

挟撃された二千の黄巾賊は、瞬く間に瓦解し四方八方に逃げて行った。

 

丸太が一本、兵士達の間から見えた。

そこに足を進めると、牙連が居た。

ちなみに丸太には血が一滴もついていなかった。

 

「よう。無茶させたな」

俺は、かるい感じで牙連に声を掛けた。

見た所、怪我は無いな。

 

「そうでも無いよ」

普段と同じように牙連は答えていた。

 

「後で聞かせてもらう。行くぞ!」

牙連に返事をし、辺りの兵を鼓舞した。

 

すぐに俺達は動き、あらかじめ劉備達と決めていた南門に向かった。

劉備軍は半分の三千ずつに別れ、一方は都昌に入り、もう一方は外から南門に向かった。もちろん都昌の兵士も一緒にだ。

 

南門に着くと孔融が居た。何か言いたそうな顔だったが時間が惜しい、素早く個別に黄巾賊を撃破したいので、さっさと門を開けるよう孔融に俺は言った。それと都昌の兵士も千ほどになった。

 

俺達は南門の黄巾賊三千を先程と同じように挟撃で蹴散らした。

 

すぐ俺達は踵を返し、黄巾賊の頭目が居る北門に向かったが、そこに黄巾賊の奴らは人っ子一人居なかった。

北門の兵士に聞くと、どうやら劉備軍が来たと知り、逃げたようだ。

 

こんな感じで都昌の戦は終わった。

 

その日は祝勝の宴会をし、都昌の兵士や劉備達と一緒に飲んで騒いだ。

 

 

 

そんで後日。

 

俺は今、戦っている。

苛烈な槍の突きが連続で放たれ、それを見切り今度は俺が刀を振るったが、むなしく空を切った。すぐ槍の横薙ぎの一閃がきて刀で受け止め、俺は力で押し切った。が、相手は俺の力を利用し後ろに飛び退いた。

俺は、一旦距離をあけた趙雲子龍を見据えた。

 

数時間前。

俺と牙連が部屋で無駄話をしていたら、槍を持った青い短髪の女が来た。確か名は趙雲子龍だったな。挨拶もそこそこに子龍は単刀直入に俺と手合わせしたいと言ってきた。

もちろん俺は、一に二もなく頷いた。

 

そんで近くの修練場に行くと、そこには劉備の連中が居た。

簡単に俺と子龍が試合する事になった経緯を劉備達に話。

そっこうで試合を始めた。

 

 

 

一旦距離をあけた趙雲子龍を警戒しながら見ていたが、せっかく相手が距離を開けたので俺は蛇腹刀を使う事にした。蛇腹刀を使いこなせるよう鍛錬してるが、5割使えれば良い方だろうな。

んで俺は蛇腹刀を両手で持ち、野球のフルスイングのように振り抜いた。

綺麗にビョン〜ンと真っ直ぐ伸びたが、あからさまな俺のフリで趙雲子龍は多少驚いていたが普通に飛んで避けた。

俺は蛇腹刀を引き戻そうとしたが、勢いを殺す事が出来ず横で試合を見ていた劉備達の方に、そのまま蛇腹刀の凶刃が伸びていった。ヤバっ!?

 

「避けろ!!」

俺は必死の形相で、あらん限りの声を出した。

 

蛇腹刀の刃が劉備達に迫り、牙連や武将数名は上に飛んで避け、数名の武将は軍師を押し倒すように下に避けたり、各自キチンと避けていた。

そして伸びた蛇腹刀は修練場の壁に突き刺さり、ようやく止まった。

 

しばし、静寂が辺りを包んだ。

 

「全員無事か?」

近くに行き怪我がないか尋ねると、非難の嵐が俺に猛威をふるった。

「使えない武器を使うな!」「お前はワシ等を殺す気か!」「はわわ」とか色々と言われた。

 

もはや子龍と戦える雰囲気では無いので、俺は子龍に謝った。

 

俺は地道に手で蛇腹刀を元に戻した。

 

蛇腹刀を戻し終わり、辺りを見ると牙連が張飛に高い高いしている。

ただ普通の高い高いじゃない、手で受け取るのを失敗したら死ぬレベルの高さまで放り投げている。しかも「次は璃々もやるー!」と小さい子がせがんでいた。

よく無邪気に楽しめるな…

 

そんな光景を少しばかり眺め、俺が部屋に戻ろうとしたら夏侯覇が声を掛けてきた。その第一声が「なぁ知り合いに巨乳の人いるか?居たら紹介してくれ!」コレだ。顔は凄く真面目だが、内容が阿保すぎる。顔がイケメンなだけに残念すぎる…

うん。こいつは間違いなく、本当の、本物の、真の馬鹿だ。

とりあえずキラッキラッした眼をしていたので顔面を殴っておいた。

 

馬鹿がうつるので踵を返し部屋に帰ろうとしたが、またしても声を掛けられた。今度は一刀だ。

 

「すまない。悪い奴でも馬鹿でもないんだが、頭が少し変なだけなんだ。わりと良い奴だよ」

フォローになってないフォローだな。いやフォローする気がないだけか。

 

「あぁ。で、なんの用だ?」

さっさと話し聞いて部屋に戻りたい。

 

「単刀直入に言う、俺達の仲間にならないか」

真摯な瞳で言われたが。

 

「断る」

真っ直ぐ見つめ返し、そっこうで断った。

 

「なんでだ?」

不思議そうな顔で聞かれたので、わざわざ俺は答えてやった。

 

 

お前等の考えは甘い。

たった一つを守るだけでも命懸けなのによ。色々なモノに縛られ、背負い過ぎてる。

誰も彼も救うなんて無理だ。俺は俺の世界を守る、他人なんか知らん。

俺は切り捨てる。世の中の全員が幸せになんかなれねぇ。

まぁ考え自体は嫌いじゃないぜ。

だが断る。

それに!男ならまず自分で天下を目指すもんだろ。

俺は俺のやりたい通りにする。それで死ぬなら本望だ。

 

 

そんな事を話、一刀の返事も待たず俺は部屋に戻った。

 

 

 

数日後。

牙連が「勘だけど家に戻らないと」と言った。

もう少し俺は都昌に残る事を伝えた。都昌の外は戦でグチャグチャなので、その手伝いをする事に俺は決めていた。

 

その夜。

俺は牙連と酒を酌み交わしていた。

 

「助かった」

空に浮かぶ月を見ながら、俺はポツリと呟いた。

 

「たいした事はしてないよ」

いつも通りの柔らかい口調だった。

 

「んな事ねぇだろ」

東門の兵士達に聞いたかぎりでば、牙連の奴は出撃をしない武将に「出陣せよ」と孔融の命令だと嘘を言い、確認する暇をあたえず、出撃の鐘を鳴らし、自ら先頭に立ち東門から出た、と聞いた。

 

「そうかな?」

ほうけたように言ってるが、この争い嫌いが自ら戦場に出たんだ…

 

「あぁ。それと…もしお前が危機になったら一番に駆けつける」

真っ直ぐ見つめ、俺が真剣に言うと。

 

「ありがとう」

ニッコリ笑っていた。

 

 

日の出と共に牙連は都昌から旅立った。

武器は何一つ持たず、一冊の本を持って、争い事が苦手は男は旅立った。

 

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