ご注文は下半身不随ですか?   作:エステバリス

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はじめましての方ははじめまして。そうでない方はまた懲りずにやってるのかとでも。エステバリスです。

……衝動買いして書きたくなっちゃったんだ。仕方ないよね。




ひと目でなくても、うさぎだとはゆめにも思わなかったよ。

 

 

キリキリ……キリ。と地面を車輪が滑る音が聞こえる。

 

馴れたくもない音に耳を悩ませながら、この僕こと條亜 有人(すじあ ゆうと)は車椅子を走らせる。

 

この木組みの町は不思議な町だ。一見するとヨーロッパに町があるような雰囲気を帯びていて、辺り一帯にはちらほらと野うさぎがいる。

 

この町に初めて足を運んだのはつい一ヶ月前。動かない足と新たな学校生活の準備に苦労しながらなんとか身仕度を整えて、つい昨日二つのバイト先の面接に受かったところだ。

 

正直こんな僕を雇ってくれると言ってくれるお店が二つもあるとは思いにもよらなかったが、ともかく始業式を終えたので今日は一つ目のバイト先に行くことになっている。

 

「えーっと……あ、ここだ。……ぅ、ら、るぁ……ラビット……ハウス……ここだよね」

 

RABBIT-HOUSE……ここで間違いはないはず。ていうか面接でも来てるんだからここじゃなかったら僕の記憶を疑う。

 

従業員用の裏口からお店の中に入り、さぁこれから僕の高校生活始まるぞ―――ということろで。

 

「またかココア!私の後ろに立つんじゃない!」

 

「ひゃー!その銃しまってリゼちゃん!」

 

……そっとじ。

 

そうだなにかの間違いだ。僕は拳銃なんて見てない。拳銃握った喫茶店の制服を着た子が同じく喫茶店の制服を着た子に銃口を向けてるなんて気のせいに決まっている。

 

よーし切り替えた。それじゃあ改めて、僕の高校生活始まるぞ―――

 

「チーノちゃーん!今日もかわいいねー!」

 

「離れてくださいココアさん。動けません」

 

そっとじ。

 

……僕の名前は條亜 有人。僕のバイト生活一日目は………………………………前途多難になりそうです。

 

◆◇◆

 

「というわけで、もう既に三回目の自己紹介ですが條亜 有人です。よろしくおねがいします」

 

「三回目?まだ一回目だよ?」

 

「気分です」

 

ていうか僕は既に二回心の中で自己紹介したんだ。それでいいじゃないか。

 

「変な子だねー」

 

貴女達には言われたくないです。なんですか初対面で銃突きつけてる光景見せられたり。

 

「えーと、それじゃ有人だから、ユウくん、でいいかな?」

 

「構いませんよ……ココア、さんでしたっけ?」

 

「そーいう堅苦しいのなしで!同い年なんでしょ?」

 

「まあそうですけど。あくまで僕はバイトですし」

 

「………!!」

 

ん?なにやらココアさんが驚いたような顔をしてる。なにやら先程の青みがかかった銀髪の女の子、チノさん、だよね。と僕を交互に見てくる。

 

……なにやら目のやり場に困る。交互とはいえあまりにも女性に見られるのは男として恥ずかしい。

 

「この子チノちゃんに似てる!」

 

(女の子に似てるって言われても嬉しくないっ!)

 

あまりに唐突なそれに思わず僕もチノさんも目をパチクリさせてしまっている。なんだそれ。マジでなんだそれ。

 

まぁその沈黙もすぐに払われ、チノさんはコホン、と軽く注目を浴びせるような咳払いをする。

 

「こちらが天々座 理世(てでざ りぜ)さんです」

 

「リゼだ。えーと、まぁ色々聞きたいことはあるんだが、その足は大丈夫なのか?」

 

言葉遣いが中性的だ。不思議と態度も相まって頼りになるなにかを感じる。

 

「これですか?これは去年にやってしまいまして……もう動かないそうです」

 

聞かれたことは正直に帰す。それが僕の流儀。これ大事。

 

……なのだが、どうやらもう動かない、の一言が響いたのか、一気に三人がお通夜ムードになってしまった。

 

しまった、正直に答えすぎてしまった。リゼさんがそんなことを聞いてしまって申し訳ない、みたいな顔をしているが、むしろこれは聞かれなかったらさっきの幻覚と合わさってこの喫茶店疑うレベルだったので、悪いけどひと安心してしまいました。

 

「……お」

 

「お?」

 

そんな沈黙が何秒か続くと、絞り出すようにココアさんがなにかを呟き始めた。なんだろ?気になる。

 

「私をお姉ちゃんだと思ってなんでも言って!?」

 

「えええええええ!!!?」

 

何故!?何故僕は今急にココアさんにハグされてしまっているんだ!?ちょ、ま、引き剥がそうにも車椅子じゃ安定しない……!

 

「ココアさん、ユウさんが苦しそうです。放してあげてください」

 

「あ、はーい」

 

ぷぐぇ!くふぅ……はぁ……一瞬楽園が見えた……!

 

「あーその、悪かったよユウ。なにか事情があるならこれ以上は聞かない。だけどココアの言うとおり、私達に力を課せることがあるなら言ってくれ」

 

「ぜぇ……は……はい。その時は是非、頼りにさせてもらいます……!」

 

そうして僕はここ、一つ目のバイト先ラビットハウスの一員となったのだ。ここの人達はおよそお店のバイトとは思えないような人達ばかりだけど、これならなんとか上手くやっていけそうかな―――

 

「ところでチノさん、その頭の上に乗ってるのはなに?」

 

「これですか。これはティッピー。一応アンゴラウサギといううさぎです」

 

「うさぎなのそれ!?」

 

……うさぎが頭に乗っかってる喫茶店ってなんなんだろう……

 

と、ともかく!何度も言うけどこれから僕の高校生活が始まるんだ!楽しくないわけがない!

 

だから僕も早くここに馴れないと。早く馴染んで、この喫茶店の一員にならないと!

 

「―――いらっしゃいませ!ラビットハウスへようこそ!」

 

 






まるで最終回のような締め方じゃないか!

というわけで有人くんの紹介文でも載せておきます。興味ある人は見てください。



條亜 有人(すじあ ゆうと)
由来は某グループが発売しているコーヒーフレッシュの「スジャータ」

身長158cm。一応ココアよりは大きいが車椅子のせいでどうしてもココアの方が大きく見えてしまう。

中性的な顔だが見れば過半数は男と答える程度の顔つき。生真面目でプライベートでも基本的に歳上、歳下隔てなくさん付けと敬語がデフォルト。

去年足が動かなくなってからは急激に肌色が白くなってきていて肌色はほとんど女性と思われてしまうほど。

髪色は栗色。目の色は薄い茶色。

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