ごちうさキャラは基本誰が一番好き、とはありません。博愛主義です。
でも強いて一番を挙げるのならココアさんですかね。
僕自身末っ子なので彼女の気持ちはわからんでもないです。下の子ほしいとか、頼られたいとか。
それは僕がこの木組みの町にやってきて少し経った頃のお話です。今思えばとても運命を感じますね。
「ねーねーユウくん!」
「なんでしょうかココアさん」
「お姉ちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「断じてお断りします」
幾日かが過ぎて、ようやくこのラビットハウスの喫茶店ては思えない雰囲気に馴れてきた僕は今せっせとコーヒーカップを磨いている。
料理にもそこまで関わってきていたわけでもないし、コーヒーに拘りがあるわけでもない。かといって、表だってウェイターをやることも車椅子という不便さからチノさん達がそこはかとなしにウェイターの仕事を多目にしているのだ。そんな気遣い必要ない、とは言いたいが車椅子では面積も多くとるわなにわで助かってしまうのも事実だが。
なので僕はこうしてカップを磨きつつもチノさんの淹れるコーヒーやリゼさんのラテアートを勉強しつつ、適当にココアさんの話し相手になるくらいしかやることがない。
「あ、そーいえばさチノちゃん」
「……はい?」
「ここの喫茶店のカップって質素だよねぇ」
「ウチは無地がウリなんです」
「確かに質素、ということに関しては同意しますね」
「……そんなことはありません」
チノさん、目が逸れてて答えを指し示していますよ。とは口が裂けても言わない。
「だよね!それでね!この前近くに―――」
「そういえばこの前柄とかのついたカップとかが売ってる店があったな。後で寄ってみないか?」
あ……リゼさんが見事にココアさんの台詞を奪っていった。ココアさんが目を丸くしてリゼさんを見て固まってしまっている。
……不憫な。
「……ココアさん、元気出してください」
とりあえずココアさんが見てられなかったので頭を撫でる。いつもは車椅子がそこまでないはずの身長差をつくってしまう弊害でこういうことはできないが、意気消沈して床に膝と両手を突く体勢になっているためにそれ事態は容易にできた。
「うん!元気でた!」
「えっ」
なんという立ち直りの速さ。思わず驚愕の声をあげてしまう。
「弟や妹に励まされたお姉ちゃんは最強なんだよっ!」
「意味がわかりませんが!?」
◆◇◆
「というわけで来てみましたが……」
「確かに可愛いものがあります」
ふむ。やはりこういうのは男よりも女性のほうがわかるんだなぁと思ってしまう。言い出しっぺのココアさんや食いついていたリゼさんは勿論のこと、チノさんも若干声音が高くなっている。
「おお、このカップ、なかなかイケてるじゃないか」
リゼさんが取ったのは綺麗な花柄が塗られたカップ。彼女の頼もしい印象や言葉遣いなどから感じるボーイッシュさからは少し想像がつかないが、なるほどやはりリゼさんも女性なのだと思わせられるチョイスだ。
「かわいいのを選びましたね」
「え、似合わないか?」
「いえ。リゼさんも女性なんだなーと。僕はこういうのは好きな色だったらそれでいい、程度に選んでしまうので」
「そ、そうか……」
よかったー、と息を吐いてリゼさんは安心した、と全身で表現した。
そんな時ココアさんが兎の装飾が飾られたティーカップを見つけて手を伸ばす。
「「あ、これなんていいかも……」」
ん?声が重なって聞こえる。気になってそちらに注視してみると、ココアさんと同じカップに触れていて、同じタイミングで互いの姿を確認していた金髪の女の子がいた。
「こんなシチュエーション、漫画で見たことあります」
「よく恋愛に発展するよな」
「それはあくまで男女間においての話ですがね」
僕は気づいてなかったが、なぜかその時ココアさんはもじもじとその女の子を見つめていた。何故だ。
「あれ、よく見たらシャロじゃん」
「てっ、ててて天々座先輩!?」
「リゼでいいよ。噛むし」
おや、どうやらリゼさんはこの女の子を知っている御様子。
「どどどどうしてここに……」
「知り合いですか?」
「ああ、学校の後輩だよ。ココア達と同い年」
先輩、と呼んでいたことからなんとなく察しはついたが、やはりリゼさんの後輩の人のようだ。
「リゼちゃんって歳上だったの?」
いっ……今更!?今更そこに突っ込むんですかココアさん!?
「ま、まぁ……私達は喫茶店で使うカップを買いに来たんだよ」
「そうだったんですか」
「ああ。ところでシャロは欲しいものあった?」
「いえ、私は見てるだけで充分です……この白いすべらかなフォルムが……」
シャロさんは不思議と遠いものを見るように手に取ったティーカップを眺める。な、なんというお嬢様な御趣味……
「それは変わった趣味ですなー」
「ココアさんがそれを言いますか?」
モフモフモフモフ、人でもうさぎでも関係なくモフモフし出すココアさんには言われたくない気がする……
「あ、カップを探してるのならこのティーカップはどう?香りがよく広がるの。それでこっちは取っ手の触り心地が工夫されてるのよ」
「カップにも色々あるんですね」
チノさんが興味深そうに覗いている。へぇ、匂いを広げるカップか……そんなのもあるんだ。
「詳しいんだな」
「上品な紅茶を飲むにはカップにも拘るべきです!」
「なるほど……でもうちの店はコーヒーが主だからカップもコーヒー用じゃないとなー」
「えっ、そうなんですか!?」
あ……シャロさんが露骨にがっかりとした顔をしてらっしゃる。コーヒーが苦手……というか、苦いものは好みじゃないのかな?
「砂糖とミルクいっぱい入れれば美味しいよ?」
「にっ、苦いのが苦手なわけじゃないの!……えと、カフェイン摂りすぎると異常なテンションになるみたいなの。自分じゃよくわかんないんだけど」
「コーヒー酔いですか!?」
お酒で酔うのは当たり前の日常茶飯事と言っても過言じゃないのにコーヒーで酔うとはこれいかにっ……でもやっぱりシャロさんってそこはかとなく気品が溢れてるよなぁ……
「シャロさんって色々なカップに詳しくてお嬢様みたいですね」
「お嬢様!?」
「その制服の学校は才女とお嬢様が多いと聞きます」
「そうなんですか」
お嬢様が多い……シャロさんもさすがのお嬢様という感じだ。
「おまけに美人さんだし完璧だねー」
「それリゼ先輩に言いなさいよ!」
「まぁ、シャロにとってはこのカップも小物同然なんだろうな」
リゼさんがはは、と笑いながら購入予定のティーカップを眺める。それに目を白黒させたシャロさんは思わずリゼさんに反論した。
「そっ、そんな!末代まで家宝にしますけど!?」
ビシッと決められるお嬢様ポーズ。なんていうお嬢様オーラ!
そしてシャロさんを褒めちぎるココアさんとチノさんが恥ずかしいのか、シャロさんは少し頬を赤らめながら、複雑そうな表情でカップに目を移す。
「やはりキャビアとか食べるんですか?」
「そ、そういうのはリゼ先輩に聞いた方が……」
「ん?私がよく食べるのは……ジャンクフード?レーションのサンプルとか。即席で食べられるものっていいよな」
「わかります!卵かけご飯とかいいですよね!」
「卵ってキャビアのことかな?」
僕の知ってる卵かけご飯と違う。
◆◇◆
「ただいまー……」
夜、だいたい8時頃。木組みの町から一つ隣りに離れた町にある僕の家。
その家の電気はどこもかしこも真っ暗で、今帰って来た僕以外誰もいないことを示していた。
「……いない、か」
冷蔵庫を見てみると、そこに掛けられていたコルクの掲示板に封筒が掛けられていた。5000、と書かれている。
「………」
財布の中から5000円札を取り出して封筒の中に入れる。そして冷蔵庫の中を漁って、適当に野菜炒めを作って朝に炊いたお米を確認する。
中身はなかった。まぁそれはわかっていたことなので静かにジャーを閉める。
「いただきます」
カツ、カツ……と静かにお箸とお皿がぶつかる音が聞こえる。大して面白くもないバラエティ番組を見ながら、僕は静かに呟いた。
「……ココアさんとチノさん、今日はなに食べてるんだろ……」
今日の晩御飯は出来立てなのに冷たかった。
ちょっぴり不穏な家族関係……え?んなことより千夜ちゃんどうしたって?
………………
順番を無視してもいいじゃない。日常モノだもの
えすてば
や、やめて!石を投げないで!でももっと投げてもいいですよ!