μ'sic story:From,Love Live!   作:またたね

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supercell:ヒーロー
【高坂穂乃果】ヒーロー♯1


 

 

 

 

もし何の力のない僕にでも

 

 

救える何かがあるとするならば

 

 

僕はその何かにとっての

 

 

“ヒーロー”になりたい

 

 

 

 

 

 

季節は残暑引きずる秋の始まり、東京都内のとある高校に通う僕は教室である一点を遠くから眺めていた。

 

「綺麗だなぁ…………」

 

眺めているのはそう、クラス1と言っても過言ではない美少女、高坂穂乃果ちゃんだ。

彼女は明るい性格で周囲を惹きつける魅力を放ち、男女両方から好かれる存在。

今彼女は昼休みでいつも一緒にいるメンバーで笑いながらお昼ご飯を食べている。彼女の笑顔は光り輝いていて、まさに太陽のようで……

 

……おっと、穂乃果ちゃんの紹介ばかりで僕の話を全くしてなかったね。

 

僕の名前は佐伯春一(さえきはるいち)

自分的にはいたって普通の高校一年生。でもクラスの中での立ち位置は……

 

「おい佐伯ィ」

 

「………………」

 

ほら、来た。

いつものようにクラスの男子の1人が僕に声をかける。

 

「ちょっと売店でいちごオレ買ってきてくれない?俺喉が渇いちゃってさぁ」

 

「…………わかったよ」

 

「ありがとなぁ、佐伯!あとでちゃーんと払うからよ!」

 

僕はそれ以上何も答えることなく席を立ち、1年生の教室からは結構離れている売店へと向かう。

そんな僕をくすくすと笑う声が教室に響いていた。

 

そう、これが僕の日常。

決して目立った真似をしたわけでもない。

周りと必要異常に関わってきたわけでもない。

しかし僕は、クラスの男子からパシリ……もといイジメを受けている。

僕は他の男子に比べるとチビでのろまで力も弱い。格好のイジメの標的にされてしまった、というわけだ。

元来争いが嫌いな性格と、何事にも自信が出ない内気な心が災いして、嫌だと言い出せずにされるがままになっている。

しかしどうしようもできないと諦めて、今の現状を受け入れる準備が出来てしまっているので、僕はこの学校生活、ひたすら目立たないように寂しく生きてきた。

 

そんな僕の心の活力────────

それが高坂穂乃果ちゃんなのだ。

 

彼女は容姿がいいだけではない。

楽しいときに友と笑い、悲しいときには友と泣き、友が不正をしようものなら、決してそれを許そうとはしない。

真っ直ぐで曇りのない、光のような明るい性格。

 

それはまるで─────────

僕が幼い頃から憧れた“ヒーロー”の世界に出てくるヒロインのようだった。

 

 

幼い頃から僕が心から愛しているもの……

それがマンガとアニメ。

宇宙から来た戦士、仮面をかぶったバイク乗り、カラフルに彩られた五人組。

僕はそんな“ヒーロー”に幼い頃から憧れ続けている。

幼い頃の将来の夢も“カッコいいヒーローになる”なんて書いてたっけ。

 

 

─────でも、自覚してしまった。

自分はそんな器じゃない。

カッコよくなんてなれないんだって。

 

顔もカッコよくなんてない、背も低いし力も弱い。

そんな僕なんかじゃ───ヒーローにはなれない。

そう悟った僕は、その悲しみを紛らわすように、絵を描き続けている。自分の思い描いた、理想のヒーロー像を。

 

 

 

昼休み終了間際、僕は教室へと戻りさっきの男子生徒へと買ってきたものを渡した。

 

「はいコレ」

 

「おっそいんだよ佐伯!……ってこれコーヒー牛乳じゃねぇか!おれいちごオレ頼んだんだけど」

 

「売店閉まる直前だったから売り切れてた。

変わりに買ってきたんだけどダメだった?」

 

「はぁ……ったくしょうがねぇなぁ飲んでやるよ。ありがたく思えよ?いちごオレ買ってこれなかったからお前の奢りな!」

 

「……わかったよ」

 

はははと笑うそのクラスメイトに背を向け、僕は窓際の一番後ろ……自分の席へと戻る。

そして鳴り響くチャイム。五限目の数学の開始時刻だ。

始まった授業をノートにペンを走らせて板書を取る───────フリをしながら僕はノートに“ヒーロー”を描いていた。

 

これも僕の日常。

授業は基本聞いたフリでやり過ごし、ノートに絵を描くか…穂乃果ちゃんを眺めるかどっちかだ。

5時間目、彼女は高確率で居眠りをしてしまう。

それが数学なら確率は100%となり─────

 

 

パシン!

 

 

先生に教科書で頭を叩かれる。

そして穂乃果ちゃんは反省の色を見せずえへへと笑うのだ。周りもそれにつられて笑う。

うん、やっぱり穂乃果ちゃんは可愛い。

……あ、別に僕はストーカーじゃないよ?

可愛い子……好きな子をちょっと見てしまうだけでそれを自分のものにしたいなんてことは全く考えてないからね。

穂乃果ちゃんを僕のものにしたいだなんて……

高望みしすぎだ。僕にとって穂乃果ちゃんは高嶺の花。触れることはおろか話しかけることすらも畏れ多い。

 

僕はただ────彼女という“ヒロイン”を眺められていれば、それでいいんだから。

 

こんな日々が入学してから秋までずっと続いている。

僕の日常をつまらない、味気ないという人もいるだろう。でも僕は満足なんだ。

僕みたいな人間には、これくらいでぴったりだ。

 

 

 

でもこの時の僕は知らなかった。

 

 

僕に訪れる“奇跡”を。

 

 

 

これはそんな弱い僕と、“太陽のヒロイン”の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はプロローグ的な感じで短めに。

さて、後書きでの挨拶になりますが、初めましての方は初めまして、またたねと申します。
今回新しい物を投稿させていただくことになりました。
まずこの作品がどういうコンセプトなのかを説明します。

この小説は現実に存在する曲の歌詞を私なりに解釈し、その世界観の中でμ'sメンバーと物語を作ろう、と言うものです。
簡潔に述べますと“その歌を聴きながらμ'sメンバーとの物語をイメージしたよ”ということです。
採用する曲は完全に作者の趣味です。リクエストを取る予定は今の所ありません。

メインの方は今後も「背中合わせの2人」にしていくつもりですので、
不定期にはなりますがどうぞこの作品をよろしくお願いします。
では、今回もありがとうございました!
感想評価お気に入りアドバイス等お待ちしております!



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