μ'sic story:From,Love Live!   作:またたね

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お久しぶりです。


【高坂穂乃果】ヒーロー♯3

【高坂穂乃果】ヒーロー♯3

 

 

僕に起こる奇跡

 

 

その奇跡を起こすピースは

 

 

ほんの一欠片の勇気だと気づくのは

 

 

もう少し先のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…………

終業を告げるチャイムが鳴り響き、教室は一気にざわつき始める。

しかし僕の心の中のざわつきはこんなもんじゃない。5、6時間目の授業の内容なんて上の空、僕はただただ学校が終わるこの時を待ち続けていた。

 

 

───『今日一緒に帰ろうよ!』───

 

 

その言葉が現実だといまだに信じられない自分もいるけど、これは紛れもない事実。

想いを寄せる穂乃果ちゃんから直々に帰りを共にする提案を受けたのだ。

しかしここからどうするのだろう。

確かに帰る約束はしたけど、待ち合わせ場所なんかは全く決めてない。さすがに教室から一緒に帰るなんて目立つことはしないだろうけど……

そんなことしたら、僕はいいけど穂乃果ちゃんに迷惑をかけてしまう。

 

「じゃあね穂乃果!」

 

「うん、バイバーイ!また明日ね!」

 

クラスメイトに笑顔でさよならをしている穂乃果ちゃん。そこからどうするのだろうと思っていると……

彼女はおもむろに僕の方へと歩み寄り────

 

 

 

「────さ、帰ろっ!」

 

 

 

笑顔で僕へと語りかける。

その瞬間、教室に静寂が訪れた。

 

……あ、そんな感じで行っちゃう?

ストレートな感じで行っちゃう感じ?

ま、穂乃果ちゃんがいいならいいけどさ。

 

内心は周りの男子の刺すような視線と女子の奇怪な視線を向けられて冷や汗をかいていたけど、そこは鍛え上げられた鉄面皮(ポーカーフェイス)で誤魔化し抜いた。

 

「……う、うん、行こっか」

 

「えへへっ♪」

 

その笑顔を見ると、穂乃果ちゃんも僕との帰りを楽しみにしてたのかな、なんて。

……明日からどうなるんだろ、教室での僕。

そんなことを考えながら先導する穂乃果ちゃんの後に続いて居心地の悪い教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

校門を出て、幸運にも同じらしい帰り道を2人で並んで歩く。穂乃果ちゃんはどうやら誰かとマンガについて話したかったみたいでその友達が女の子にはいなかったらしい。ここぞとばかりに嬉々として僕に語ってきた。

僕もマンガの知識に関してはクラス1……いや、下手すれば学校1の自信があるので穂乃果ちゃんが語るマンガの内容は僕も知っていて話が弾んだ。

 

「はー、やっぱりマンガを知ってる人と語るのは楽しいっ!君と一緒に帰れてよかったよ!」

 

穂乃果ちゃんは本当に嬉しそうに笑っていて、僕も思わず笑顔になってしまう。

まるで夢のような時間。出来るならずっと───

 

「……あ、穂乃果がこんなにマンガのこと話しちゃって、ひいたりしなかった…?」

 

「ううん、全く。むしろ好感持てたかな」

 

「ほんと?よかったよかった!

……じゃあ、穂乃果こっちだから」

 

目の前に広がる2つの道。

ここで僕の夢の時間は終わり。

 

 

 

 

─────にしたくなかった僕は。

 

 

 

 

「……ねぇ、高坂さん」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

 

 

「……もう少し話して帰らない?」

 

 

 

 

勇気を出して、提案してみる。

 

すると穂乃果ちゃんはニコリと笑い─────

 

 

 

「うん!穂乃果ももう少し君と話したい!」

 

「……ありがとう」

 

「じゃあ、穂乃果の家まで送ってくれる?」

 

「……えっ!?」

 

「ダメ、かな…?」

 

「い、いや、僕は全然構わないんだけど……

高坂さんはいいの?」

 

「うん!むしろそうしてくれたら嬉しいな!」

 

……僕は今日死ぬのだろうか。

1日に幸運が訪れすぎて、そんな錯覚を及ぼす。

穂乃果ちゃんと帰れるだけじゃなく、穂乃果ちゃんの家にまで……!

1人だったら確実に人には見せられない顔になっていただろう。しかし僕は思い人の前でそんな無様な顔は晒さない。表面上は笑顔をキープしながら、さも冷静を装って穂乃果ちゃんに返事をした。

 

「ありがとう。……じゃあ、行こうか」

 

「うんっ!」

 

そして2人は歩き出す。

先程までと同様に、好きな漫画の話に花を咲かせながら。

 

 

 

しばらくして話は落ち着き、話題はお互いの事へと移る。

 

「高坂さんのそのリボン……可愛いね」

 

「えっ、これ?」

 

そう言って彼女は、右側にサイドアップで上げられた髪を束ねている黄色いリボンに触れる。

 

「そうそう。よく似合ってるよ」

 

「ありがとうっ。……これね、大切な友達がくれたの。一緒の高校行く約束してたんだけど、穂乃果は落ちちゃって……」

 

えへへ、と穂乃果ちゃんは笑って見せたけど僕の方はそうもいかなかった。正直、話題を失敗したとさえ思った。しかし当の穂乃果ちゃんは笑顔で話を続ける。

 

「……そしてその友達が、このリボンをくれたの。“離れてても繋がってるからね”って!

だから似合ってるって言ってくれて嬉しいな!

ありがとう!」

 

「高坂さん……ごめんね、辛い話させちゃって」

 

「ううん、全然大丈夫!穂乃果もう気にしてないから!」

 

本人が本当にそう思っているかはわからない。

ただ、1つ確かにわかるのは……

穂乃果ちゃんがそのリボンを大切にしていること。

 

「ねぇ!佐伯君は自分で漫画描いたりしないの?」

 

「えっ、僕?…………まぁ、少し、だけ…」

 

「え!書くの書くの!?すごーーい!!」

 

「い、いや、別に大したことじゃ……」

 

そう、幼い頃からヒーローに憧れ続けた僕は、自分の思い描くヒーローをストーリーにしてマンガを描いている。

マンガは僕の唯一と言っていい特技で、客観的に評価しても面白い……いや、悪くはない。はず。

そして描き上げたマンガをスキャンしてPCに取り込み、WEBで発表する。これが僕のネット上での顔。幸いにも僕のマンガは面白いと評価してくれる人が居てくれるので、僕は現実では得られない充実感をこの趣味で得ている。

 

「穂乃果、佐伯くんが書いたマンガ、見てみたいな!」

 

「えっ!?いや、そんな人に見せられるものじゃ無いから……」

 

「……ダメ?」

 

穂乃果ちゃんが上目遣いでこちらを見てくる。

……そんな目をされたら僕は。

 

「……嫌だなんて言えないよ…」

 

「やったぁ!楽しみ楽しみー!へへへっ♪」

 

僕がOKを出すと、穂乃果ちゃんは心から嬉しそうに喜んだ。その笑顔が見れただけで僕がOKした甲斐がある、ってもんだ。

幸いにも、あと数ページで書き上がる作品があるし、それを完成させて……

 

「……ねぇ!佐伯くん!」

 

穂乃果ちゃんが立ち止まったので僕も立ち止まる。

 

「ん?どうしたの?」

 

すると穂乃果ちゃんは唐突に僕の顔の目の前に小指を差し出した。何を以てそんなことをしているのか、頭の理解が追いつかず僕は首をかしげる。

 

 

 

「────指切りだよ!」

 

 

 

「指切り…?」

 

「うん!絶対マンガ見せてくれる、って!」

 

 

────“指切り”、か。

何年ぶりだろうか。そもそも友達と指切りをした記憶が無い。

……高校生にもなって、という考えが一瞬よぎったものの、穂乃果ちゃんは本気だ。迷う必要なんて無い……それこそ穂乃果ちゃんに失礼というものだろう。

 

そして僕も小指を差し出し、互いの指を組み交わす。初めて触れる女の子の指は、とても柔らかかった。小さくて細くて、守ってあげたくなるほど儚くて……

 

 

「ゆーびきーりげんまーん……」

 

 

目を閉じて歌う穂乃果ちゃんの表情に見惚れる。

勢いでやってしまったことに多少の恥ずかしさを感じているのか、ノリノリで歌っているように見えるけれども、その頬は先ほどよりも確かに赤い。

 

 

「……ゆーびきった!はい!約束だからね!」

 

 

穂乃果ちゃんが解くことで離れた指。

それに少しだけ名残惜しさを感じながらも、それ以上に感情を支配する恥ずかしさに勝つことは出来ずに僕は彼女から視線を外した。

 

「……ねぇ、高坂さん」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

「今日……何で僕を選んだの?」

 

 

「え?」

 

「マンガ好きな人なら僕の他にもいたんじゃないの?それにほら……僕はクラスでも…浮いてるし、ね」

 

……自分の言葉に傷ついてちゃ世話ないな。

僕は自分を嘲笑するように言った。

 

しかし穂乃果ちゃんは────

 

 

「───そんなことないっ!」

 

「えっ……?」

 

「ほ、穂乃果は……き、君が……」

 

「こ、高坂さん……?」

 

 

 

「……君と帰りたかったのっ!それじゃ…ダメ…?」

 

 

 

……やばい。

嬉しすぎて、空へと飛んでいきそうだ。

 

「あ、ありがとう……」

 

「もう!こんな恥ずかしいこと言わせないでよぅ!」

 

本気で恥ずかしかったのだろう、先程よりも遥かに頬を染めてプィッとそっぽを向いてしまった穂乃果ちゃん。

 

「……ご、ごめん…」

 

「……ねぇ。佐伯くんはどうしてマンガを描こうと思ったの?」

 

「…………そう、だね…“なりたかった”んだ」

 

「なりたかった?」

 

「ヒーローに。小さい頃からそれがずっと夢で。

でも、気づいちゃったから。僕は力も弱いし、泣き虫で、勇気もない。……ヒーローになんかなれない、って。だから僕は描き続けてる。自分が憧れた、自分がなりたかったヒーローを。

 

……それぐらいしか出来ないから」

 

……何を聞かせてるんだろうか。

自分の弱音を、本音を漏らしてしまった。

誰にも聞かせるつもりもなかったこの思いを聞いて、穂乃果ちゃんはどう思っただろう。

……きっと幼稚だ、とか弱虫だとか、幻滅しただろうな。……幻滅しうるほどの信頼を得ていたのか自信もないけれども。

 

しかし返ってきた言葉は、僕の想像だにしない言葉で。

 

 

「────大丈夫だよ」

 

「え?」

 

 

 

 

「────君ならなれるよ。自分が描いた、自分だけのヒーローに」

 

 

 

 

「……高坂、さん……?」

 

僕の呼びかけに返事はなくて。

穂乃果ちゃんはニコリと微笑んだ。

 

「……じゃあ穂乃果の家ここだから」

 

「えっ……」

 

穂乃果ちゃんが立ち止まったのは、近所でも有名な和菓子屋さんだった。

 

「……この店、高坂さんの家だったんだ……」

 

「えっ!知ってるの!?」

 

「うん。ここの和菓子美味しいからよく買いに来るよ」

 

「わぁ!そうなんだ!じゃあ今までに会ったことがあるのかもね!」

 

「……かもしれないね」

 

口ではそういったもののそれはないだろう。

だってもし見たことがあるのなら……その時に僕は君に惚れていたはずだから、ね。

 

「今日はありがとう!楽しかったよ!」

 

「うん。僕も楽しかった」

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

 

 

「────次はウチに遊びにおいで!」

 

 

 

「…………………………………………ゑ?」

 

「それじゃあまた明日ね!佐伯くん!」

 

 

 

ガチガチに固まってしまった僕を残して、穂乃果ちゃんは家の中に入っていった。

残された僕の中にはいろいろな思いが渦巻く。

 

 

和菓子屋……穂乃果ちゃん……次……ヒーロー……穂乃果ちゃん……

 

 

うまく回らない頭の中で暫定的に導き出した答えは

 

 

 

とにかく僕は、穂乃果ちゃんが、大好きだ。

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

あれから僕は学校が終わるとすぐに家に戻り、自分の部屋で机に向かい合い、作業に没頭していた。

その作業とは……マンガ。

完成しかけのものを放っぽりだして、新たに一からマンガの作成へと取り掛かっている。

 

 

今までは高嶺の花だって諦めてた。

でもそれじゃ僕はきっと僕のままだ。

心の中では諦めてたけど…

 

 

やっぱり僕は穂乃果ちゃんと、恋人になりたい。

 

 

立場が、欲しい。友達としてじゃなく、ちゃんとした理由を持って彼女を守れる立場が。

 

だから僕は、それ相応の“勇気(マンガ)”を作って、彼女に想いを届けよう。

何も無い僕が、唯一できる何か。

それがマンガだから。

 

穂乃果ちゃんは、何と言ってくれるだろうか。

僕のマンガを見て、笑ってくれるだろうか。

 

「……ふふっ」

 

僕らしくもないとわかっていながら、期待せずにはいられない。

 

「……よし!」

 

声と共に気合を入れ直し、僕は目の前の作業へと取り掛かった────

 

 

 

 

 

 




どうも、またたねです。
自分がメインで書いている『背中合わせの2人。』の方に力を入れすぎて久々となってしまいました。待っていてくれた方、申し訳ありませんでした。

【高坂穂乃果】編は、次回で完結となります。

それではまたお会いしましょう。
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