「京介~、ってあれ?」
今日も京介の様子を見に来たけど病室はもぬけの殻。
通りかかった看護婦に聞くと今日退院したらしい。
「むぅ~京介のやつ。教えてくれてもいいのに」
昨日の意趣返しかな?
ただ単に忘れていた……とかだったらビンタしよう。学校で、それも公衆の面前で
フヒヒ……と黒いことを考えてながらまどかと合流しに病院を去る。
道中また白い生物を発見。黙って近くのトイ(ry
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「う~ん。見つかんないなあ」
しばらく魔女の反応を探して街のなかを歩き回るが一向にそれらしい気配がしない。
今日の探索はどうやらハズレになりそうね。
「……ねぇさやかちゃん」
さっき、というか今朝から黙りこくって、何か考えていたまどかが不意に口を開く。
「えっと、その……ほむらちゃんのこと何だけどね」
仲良くしてほしいなあ、なんて、と人差し指をもじもじさせながらお願いするまどか。
はて? あたしと転校生はそこまで仲が悪くないはず。
首を傾げていると、まどかはそれを違う風に受け止めたのか、
「だから、ほむらちゃんは無口で冷たそうに見えるけど、「不器用なだけで、本当は優しくて、気が回る」……うんそう」
あー、うん。うんだいたいわかった。
「つまりまどかはほむらと敵対するな、と言いたいと」
こくんと頷くまどか
「いや、あたしは別に敵対しているわけじゃないんだけど。向こうが歩み寄って来ない、っていうか、なるべく遠ざけたい、っていうスタンスなんだよね」
密会から一度も連絡も入らないし、まどか同伴の魔女退治にもとやかく言ってこない。来たるワルプルギスの夜の準備に忙しいのか、はたまた……。
「さやかちゃんはそれでいいの?」
別にいいけど、と喉まで出かかるが、まどかの悲しむ顔が見えたので何とか押し留める。
「まあ、転校生も転校生なりに考えがあるんでしょ。……まどか、」
これだけは言っておくけど、と何時になく真剣なあたしの口調に、まどかは身構えている。
「転校生はまどかの貞操の為だけを思って行動している。」
首を傾げて、こめかみをもんで、腕を組んで、あたしの言葉を理解しようとするまどか
「……ごめん、ちょっと一部分わかんなかったから、さやかちゃん、もういっかいゆっくり言って貰えないかな?」
「転校生は、まどかの、貞操の(口パク)、為だけを、思って行動、している」
「へぇ~、ふぅ~ん、ほむらちゃん、わたしの事を思って行動しているんだ」
明らかに信じてませんよ、と暗に示している棒読みっぷりだった。
「ま、しばらくしたら、また状況は変わるんじゃない?」
ほら、行くよ。と歩き出す。
まどかは戸惑いながらも頷いて付いて来た。
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夜
まどかと別れた後、気が向いたから、恭介の家に寄ろうかな、と恭介を訪ねる。
インターホンを押そうとした時、家の中からバイオリンの弾く音が耳に入った。
「……」
何となく、何となく押す気にはなれず、踵を返す。
「なんだ、押さねーのか」
ふと顔を上げると、目の前にポッキーをくわえている杏子とはむはむとあんまんを食べるロリがいた。
昨日のことを忘れたかの様に気楽に話しかけてきたから、少しあっけにとられた。
「あんた、昨日のこと忘れたわけじゃないよね」
「それとこれとはまた別さ。で?」
なおもしつこく聞いてくるのは昨日の意趣返しか、はたまた単純な興味なのか。
「なんか演奏聴いてたら、押し掛けるのは気が引けてね…」
「好きなのか?」
「ただの大事な男友達。好きっちゃすきだけど、愛してはない。」
はっ? と杏子は鳩が豆鉄砲くらったような顔をした。
「それじゃあんた、愛してもないやつの為に、願ったのか?」
「かけがえのない人の為に使った、と言ってくれない? それに恋愛感情は持ってないって言っただけで、友愛はもってるの」
……やっぱあんた変な奴だよ、と杏子がポッキーを差し出してくる。
「食うかい?」
「食います」
杏子と同じようにくわえてみる。
「あたしが……!?言うのもなんだけど、傷はどう?」
く……くわえながらだと喋りずらい……
なんで杏子はそんなすらすらと喋れるの?
立ったまま眠れる美鈴と同じぐらい謎だ。
「キョウコの傷はゆまが全部治したもん!!」
隣にいるロリ、ゆま? がいりき立つ。
こんな小さいこも魔法少女になれるんだ。あのロリコンめ。
「お~。よしよし。えらいね~」
しゃがんで、頭をなでてやると、顔を赤くしてゆまが照れた。
オウフ。あたしはナデポの能力があったのか!!(だから違います)
「そもそも、どうしてここに?」
「たまたまさ」
「あ、そう……」
なんか、このまま別れるのもアレかな……
「よし、組み手しよう」
「はあ!? なんで藪から棒に……」
「このまま別れるのも寂しいし」
「キョウコ、さやかと遊ぶの?」
「話聞いてたか!?」
ゆまは多分言葉の意味が分かってないだけだと思うぞ、杏子。
頭のなかでそう思いつつも、指摘せずに、いくぞ~、と杏子の手を引く。
あっこら、待てって。と文句を垂れながら抵抗する杏子。
「今日はあたしが満足するまで返さないぞ♪」
「人が誤解するようなことを言うな!!」
「? 何を勘違いするの?」
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引っ張ること数分後
着いたのは下が道路の橋
「ここなら遠慮なくできるね。いっちょ派手にやろうか(みっくみく(物理的)にしてやんよ♪)」
「(ヤバイ、笑顔が輝いてやがる)組み手は派手にできないだろ……」
諦めた様子の杏子。もうなるようになれ、と言った感じだ。
「そうだゆま。太極拳習って見ない? 面白いよ」
そういえばこの緑の少女。ゆまって名前。杏子から聞いた。
「昨日のあれのこと?」
あれって多分杏子を投げた技のことかな?
「うーん。あれとはちょっと違うけど、基本は同じかな。ゆまも杏子投げ飛ばしたい?」
「おい……」
「さやかお姉ちゃんを投げ飛ばしたい」
……ウオウそうきたか
なかなか強かだった。
橋の真ん中に差し掛かった時、向こうからくる人影が見えた。
「誰だろこんな時間に……って、あ……」
相手もこっちに気付く。
「なっ!? あなたは……」
「昨日さやかにやられたマミの偽もんか……」
「ピンクのお姉ちゃんに酷いことした人だ」
「ていうかまだいたの。さっさと出てけ、って言ったのに」
「黙りなさい!! 今度こそ、その顔を……」
とマミ(偽)が魔法少女に変身しようと、ソウルジェムを掲げる。
勿論変身させる気は毛頭ないし、動作自体かなり遅かったから、瞬動でマミ(偽)の目の前に行き、ソウルジェムをはたき落とす 。
ソウルジェムはきれいな放物線を描いて、橋から落ち、ちょうど下を走っていたトラックの目の前に落ちた。
……?なんか体に違和感が……
「顔に……何?」
パリン……
ソウルジェムの割れる音が、やけに大きく聞こえた。
「そんな!? いつの間……に…………」
いきなり顔から生気が無くなって、崩れ落ちるマミ(偽)
「えっ? どゆこ……?」
カチリ
と、と言った瞬間に世界がモノクロとなる。崩れ落ちているマミ(偽)も、杏子も、まるで"時間"が止まったように……。
14年間一度も見なかった、そしてこれからも見ないだろうと思っていた景色の中に、あたしはいた。
これは……もしかして……
「あなた、どうして……」
困惑の色を隠せなずに現れた転校生。
……能力が戻った~。やった~、という淡い幻想は転校生によってぶち壊されましたよ、ど畜生……
いや……能力が無くなったのではなくて使えないだけないんだ……、それがわかっただけでも収穫なんだ。ポジティブ、ポジティブに考えろあたし!!
「……あ、あんたの能力が時間操作だとはね」
「どういうこと。あなたの能力は時間操作ではないはずよ」
「それは後で話す。それで、なんでここにきたの?」
「……杏子と協力関係を結んでいるからよ」
カチリ
モノクロからカラーの世界へと変わる。
転校生が時間停止を解いたようだ。
ドサッ
マミ(偽)が倒れた音がする。
瞳孔が開き胸も上下していない。
「え? ちょっとまさか……」
腕を取って脈をとるが何も感じられない。
「死んでる」
それを聞いた杏子が顔色を変えて、マミ(偽)の首を掴んで持ち上げる。
ダイナミック脈拍測定ですね、分かります。
「マジかよ……」
『彼女のソウルジェムは砕け散ったからね。死ぬのは当然のことさ』
いつの間にか橋の欄干の上に座っている生物。
「どういう意味だよオイ……」
『そこにあるのは、ただの脱け殻さ。ただの人間と同じ、壊れやすい体で戦ってくれなんて、とてもお願いできないよ。君達魔法少女にとって、もとの体なんてただの外付けのハートウェアでしかないんだ。君達の本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで安全な姿が与えられているんだ』
生物は一呼吸おいて続ける。
『魔法少女との契約をとりむすぶ僕らの役目はね、君達の魂を抜き取って、ソウルジェムに変えることなのさ』
「ふざけんな!! それならあたし達、ゾンビにされたようなもんじゃないか!!」
怒り心頭の杏子がキュゥべえに掴みかかる。
『むしろ便利だろう? 心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その体は魔力で修理すればすぐまた動くようになる。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君達は無敵だよ。弱点だらけの人体よりは戦いにおいては、よほど有利じゃないか。』
え、今こいつ何て言った?
魔力さえこめれば元通りになる?
それってつまり……
「フッフフ……」
ああ駄目だ。人殺したってのに……
「アッハハハハハハ!!」
嬉しさで笑いが止まらない。
「あんた……」
心配そうに見てくる杏子
おおかた人殺しで気が狂った、とでも勘違いしているようだけど、別に人の形をした存在を殺したのはこれが初めてじゃない。
それにこいつも曲がりなりにも魔法少女、死ぬことぐらい覚悟してたはず……、何も問題は、ない。
ユラリと立ち上がる。
よろよろとキュゥベエに歩み寄り、隠し持ったナイフで17分割する。
「初めてあんたに感謝したよキュゥべえ。アハ♪」
マミは、生き返れるんだ。
キュゥべえをコマ切りにした後、さやかは嬉々として帰って行った。
ゆまはさやかの豹変ぶりにアタシの服を掴んで、さやかがいなくなった今も、酷く怯えている。
あの様子だと、キュゥべえが言ったことに全くと言っていいほどにショックを受けてないのだろう。
どうやら気が狂ったと思っていたが、違ったみたいでよかった。が……
人を殺したのを気にかけないこと
そしてキュゥベエを切り刻んだあとの、ナイフを持つさやかの笑みが、
まるで人の形をした人でないもの――強いて言うなら、妖怪――を幻視させた。
「本当に、なんなんだよ……」