桜が散りはじめた晩春、一人の女性がその様子を茶をすすりながら神社の居間で見
ていた。
腰のところまである青の髪をポニーテールにまとめ、服も青を基調とした魔法少女のようなものを着ている。
「……暇だ…………」
とその女性、美樹さやかが暇をもてあましていると
「お~~~~い」
と言う声と共に箒に乗って空を飛んできた、これまた白黒のいかにも魔法使いですという服を着た少女、霧雨魔理沙がそばに降り立った。
「どうしたの、魔里沙? 生憎お菓子は切らしてるよ」
「魔里沙さんはそんなお菓子をたかりにくるような人じゃないんだぜ。今夜博麗神
社で宴会があるから、それを伝えに来たんだよ。しかも今回は紫が主宰らしい」
「紫が? 珍しいこともあるんだ」
いつもと変わらない日常
「で、いつも通り酒持ってけばいいの?」
それが変わるのは予測がつかない。
「とびっきりいい酒を頼むぜ、じゃあな!!」
「うわっ、ちょ、飛び出すと時は周りを確認しろーーー!!」
その時がすぐそこまで迫っていても、全く、おかしくはないのである。
前兆は、確かにある。だけどそれはとてもささいなこと。簡単に見下ろしてしまう紙切れみたいなもの。そして、たとえ気づいてもどうにもならなくなっていることがほとんどだ。そしてあたしも、見逃したうちの一人だった。
「めいり~ん、ってまた寝てるし」
あの後、私は再びひまを持て余すことになったので、宴会までの暇潰しに美鈴と組み手することにして紅魔館に向かった。
着いてみると案の定、門の前で長い赤髪に大陸風の緑の服を着た女性が立ったまま寝ていた。
……それにしても立ったままどうやって寝ているのだろう……、あたしには到底できない。
「まあいいか。……コホンッ……。美鈴、ナイフの餌食になりたいのなら、そう言ってくれれば言いのに。いくらでもナイフを投げてあげましょうか? 」
「わひゃい!!いや違うんですよ咲夜さん、これはあの、なんと言いますか……ってなんだ、さやかですかびっくりしたぁ」
うん、咲夜じゃなくて良かったね。
でもね美鈴……、
「なるほどなるほど……美鈴、あなたの気持ちはよ~~~くわかったわ」
「ひっ!! さっ咲夜さん、今度は本物!?」
咲夜からあんたが逃げられるはずないじゃない。
美鈴の悲鳴をBGMに、私は美鈴の奇怪な踊りを楽しんだ。
それからなんとか咲夜を宥め、美鈴と組み手を小一時間程して別れた。
戦闘描写? 誰に何を求めちゃってるのさ?
「さてっと、次は守矢神社にでもいこっかな」
善は急げということで、あたしは守矢神社に飛んで行った。
守矢神社に着くと、ここの巫女兼現人神の早苗が、箒で神社前を掃除していた。
早苗がこちらに気付いて、顔を向ける。
「あっ、さやか様。こんにちは」
あたしに気づいた早苗は明るい笑みとともに挨拶をする。
「こんにちは早苗。諏訪子と神奈子は? 」
「お二人共なかにいらっしゃいます」
「わかった、ありがと」
「いえいえ」
中に入ると、神奈子と諏訪子がお茶を飲んでくつろいでいた。
「いらっしゃいさやか」
「ああ、来てたのかい」
「うん、それにしても早苗はいつ見てもいい子だよね。お持ち帰りしたいくらい」
「早苗はあげないよ。さやかも体鍛えてないでらいい加減早く巫女さがしなよ。神社を掃除する神なんてあんたぐらいしかいないよ」
「ははは、それはいわない約束だよ」
言い忘れて(?)いたけど、私は一応神である(妖怪でもあるけど……)。が、信仰はしてくれているのに巫女、というかあたしの下で仕えてくれる人が、今一人もいない。
おかしいな、幻想郷ができてから(その前からでもあるが)私、妖怪らしいこと一度もしてないのに。
これが社会の冷たさっていうやつなのかな?
「あんたいつも何してるのさ?」
「美鈴と組み手、たまに幽香が遊び(襲い)にくる」
「他には? 」
「武器の手入れや神奈子達のところでダベるくらい。」
「……もうそれさ、巫女探しが面倒くさいからやってないだけだよね…………」
他愛のない話をしているうちに日も暮れはじめ、私は宴会に持って行く酒を取りに私の神社に戻る。
「? ……やけに静かだ……」
お酒を持って博霊神社に向かおうとしていて、不気味なほどの静けさに気づいた、ちょうどその時、
ズン、と緊急時でも聞かないような、ありえない轟音が響いた。
「!? 何!?」
ピシッ……ピシッ……
上から罅が入る嫌な音
見上げると、結界に罅が入り始めていた。
「結界が……」
呆けている場合じゃない! 今は状況確認をしないと……。
私は能力を使って空間を繋ぎ、博麗神社に移動した。博霊神社には、宴会に来ていた人や妖怪が大勢いて、あたしはその中で特徴的な紫の服をきた女性を見つける。
「紫!」
「……さやか」
「どういうことよ!? なんで結界が割れ初めてるの!?」
私は紫に詰問すると、彼女はどこか諦めた様子で言う。
「……外からの圧力に耐えられないからよ」
「外からの圧力って……、今までそんなのなかったじゃない!!それになんでボーっと突っ立ってんのよ!?」
紫は何を考えているか全くわからないけど、幻想郷を愛していることだけは確か。
幻想郷が崩壊するのは、なんとしてでも避けたいはず…。
だけど紫はあたしが期待した返答はしなかった。
「なにも、できることがないからよ。あらゆる状況における数多の策を立て、施行した。でも、ただ一つだけ立てれもしない状況がある」
残酷な真実を受け入れろと言わんばかりに、紫はそれを突きつける。
「…………それが……いや、その状況ってどんな時なの?」
「…………世界の崩壊……」
私は息を飲んだ。
「それじゃあ……外の世界は……」
「無いわ。後残っているのはここ、幻想郷だけ」
罅がどんどん細かくなっていく。皆が頑張っているけど、何分もつか…。
「……私が空間を断絶して、紫がその間に幻想郷を一つの世界にするのは……」
即興だけど考えられる対応策を提案する。何もしないよりはましなはず。
「必要エネルギー量が圧倒的に足りないし、ここまで小さい世界はすぐに押し潰される。何より……時間がない」
「でも……っ」
認めたくないけど、体はなんとなく理解してしまった。この世界はもうだめだと。
「……なたは逃げないの?」
「そこまで薄情に見えた?」
「失言だったわね。忘れて頂戴。」
「いや…………」
謝りたいのはこっちの方。
なんにもできない自分が、許せなくて、視線が落ちる。
良く見ると、彼女の手は自分の血でぬれていた。
パリン……
呆気なく結界が割れて、
底知れない闇が私達を飲みこんだ。
ピビッ ピビッ
「…………懐かしい夢見たなぁ」
あたしは目覚まし時計を止めながら、今までのことを振り返る。
気が付いたら赤ん坊だった何が(ry
……ともかく私は二度目の転生を果たしてしまったらしい……。
……で、その名前が
「美樹さやか」だった。
ここまではまあ、わかる。
実は、あたしは通算で二回目の転生を果たしたことになる。
しかも、今世は前前世と同じ環境もだったはず。
一般的に言えば強くてニューゲームってやつ。
あの時のことは思いだそうとしたけれど、なぜか内容が全く思い出せないが…。
ギリギリ家族のことと、自分がいつ死んだぐらい。そしてろくな死に方はしなかったはず。
これが噂の世界の抑止力か……。初めて実感した瞬間だった。
前世では職業=神様だったあたしだけど、創造神の存在を真面目に信じたくなってきた。
次に、能力を使おうとしたけど使えなかった。発動する気配もない。
しかもただの人間だから、神力や妖力が使えるわけなくて……。
代わりの霊力もずば抜けて高くもない。
つまり簡単に言うと、
チート要素がなくなった強くてニューゲーム。
なんか矛盾してるけど、気にしちゃダメだよね。
……まあ戦闘経験はあるし、一通り武器は全部使える。もしかしたら、なにもおこらないかもしれないし、考えるだけ無駄よあたし!! ポジティブになろう!!
さて、考えもまとまったところで……。
「今日も1日元気に行きますか!!」