後この一周間は諸事情で投稿できません。ご容赦を。
力が、抜ける。
「がふっ」
息の代わりに、血が漏れる。
魔女の持つ蒼穹双刃は、的確に心臓を貫いていた。
油断なんてものは、始めからしなかった。
冷静に事を運んでいたはずだった。
だけど、神奈子達が召喚されてから、知らず知らずの内に、焦りが出ていたのかもしれない。
それ故に、見抜けなかった。
インターバルなんて、存在していなかった。
只のブラフ、はったりだった。
魔女は待っていた。あたしが決定的な隙を作り出すまで、ずっと虎視眈々と。
ボロを出さなかったのは敵ながらあっぱれだと称賛してやりたい。
そして、大振りの一撃は、十分決定的だった。
ものの見事に引っ掛かったあたしは今こうして、賭け金の命を取られた。
ズプッ
「あ…」
ゆっくりと、刃が引かれていく。
痛みなんて、もう感じられない。
ただ熱いのか冷たいのかわからない、変な感触。
腕は、あたしの命令を全く聞き入れない。
あたしは血に濡れた刃を他人事のように見ている他なかった。
刃が体から抜けきる。
体が、仰向けに倒れていく。
駄目なのに
負けられないのに
動かない
視野が狭くなる。
杏子達と約束したのに
動いて、よ
「ち、くしょ……う……」
~~「さやか……!!」~~
暗い視界の中で、微かにまどかの声が聞こえた気がした。
に……げ………て………
ピチャッ
頬になま暖かい液体が飛び散る。
「あ、がは……」
ドサッ
続いて、さやちゃんが不自然に痙攣して、仰向けに倒れた。
「さやちゃん?」
じわり、じわりと左胸がどす黒く変色していく。
あーあこれは洗濯しても落ちないものだろうなあどうしよう
「ゴプッ」
さやちゃんが血を吐く音がトリガーとなって、始めて一連の出来事を受け入れた。
「あ……いやああぁぁぁァァ!!」
血で服が汚れるのも構わず、必死にさやちゃんを抱きしめてゆする。
なんでどうして
死なないって言ってたのに
勝つって言ってたのに
約束は守るって言ったのに
「なにか言ってよ、さやかちゃん!!」
その時、ふっ、とまた意識が浮く感覚。
~~「大丈夫です! 信じてください!! 必ず、必ずこいつらは倒します!!」~~
~~「わたしは死ぬつもりは毛頭ありません!! 絶対勝ちます! 約束します!!」~~
わたしが、今さっき、さやか様に思っていたことを全部叫んで、単身妖怪の群れに突っ込んでいく。
さやかちゃんはまんまとおびき出されて、妖怪の足止めを食らっていて迎撃できるのはわたしだけ。
そして……
「そん、な……」
あれは、夢なんかじゃなかった。
私は円(まどか)
さやか様に仕える、巫女だった。
でも、思い出しても、あまりにも遅すぎた。
ああ、わたしはなんてバカなんだろう。
最初に嘘をついたのは、わたし。
とても、残酷な嘘をついてしまった。
到底許されない嘘をついてしまった。
「すみません……」
結界の入り口が広がり、なす術もなく取り込まれる。
目まぐるしく変わる景色。それに何の感慨も抱けず、たださやか様の体を抱き締める。
バタン
扉をすべて通過して、結界の中心部まで引き込まれたみたいで、そこで見たのは、さらにわたしを追い詰める。
マミさんが、
ゆまちゃんが、
杏子ちゃんが、
ほむらちゃんが、
血を流して片膝をついていた。
「あ……あ……」
怖い
皆が、死んでいってしまう
「まどか!! どうして入ってきたの!!?」
ほむらちゃんがわたしの肩を掴んで、睨んでいる。
――アッハハハハハハハ――
聞こえてきたのは笑い声
嘲り、嬉しさ、安堵、喜び、色んなものが混ざりあったものだった。
「おいおい……」
「冗談よね……」
カツン カツン
三人の使い魔の後ろから、さやかちゃんの形をした魔女が歩いてくる。
不意に、魔女と目があった。また、意識が浮遊する。
血に濡れたわたし。それを抱きしめ泣き叫ぶさやか様。嘘だ嘘だ、と否定するその姿。多分さやか様のものなんだろう。
嬉しくも、自殺したいほど自分が嫌になった。
わたしは、こんなにさやか様に思われていた。なのに、なのに……!!
「逃げ……て……」
声のした方を見ると、さやちゃんが胸を押さえながらも、立ち上がろうとしていた。魔法少女の体は伊達ではなかったらしい。
ゆまちゃんがかけよって治癒を始める。
「あたしが、食い止めるから……皆逃げて」
「な、何言ってるのさやちゃん!?」
「そうよ!! まだ終わってないわ!!」
「アタシは、まだ戦えるぞ!!」
「ゆまだって!!」
マミさんと杏子ちゃん、ゆまちゃんが食い下がる。
「違う……。魔女がああやって動けている時点で、精神世界の戦いに決着は着いたの。そして、あの魔女が動いていて、あたしの胸には、この傷」
「止めてよ……」
耳を塞ぎ、いやいやと首を振る。
「さやかは、負けたんだ」
聞きたくないのに、
なんでこの耳は正常に機能しているんだろう。
あの時、さやか様だってあらゆる五感をつぶして否定したかったのだろう。時を戻したかったのだろう。でもそれをしなかった。出来なかった。
でも、耐えて、耐えて、さやか様は前に進んだ。
さやか様、
わたしは弱い子です。あなたの死を受け止められません。
すみません、すみません……
わたしの目から戦意の火は完全に消えていた。
「……いつになく弱気ね。あなた本当に美樹さやかが作った仮人格かしら?」
でも、
「ほむらの言う通りだな。それがどうしたってんだ?」
4人の戦意は、砕けなかった。
「は?」
「負けただけでしょ? それって裏を返せば、まだ美樹さんはあの中にいる、ってことよね。」
「なら、私達が逃げる理由はないわ」
「でも!! 魔女は最強と言ってもいいぐらい強いんだよ!? あのワルプルギスの夜よりも最悪の魔女な「ゴチャゴチャうるせぇ!!」」
ドン!! と杏子ちゃんは槍を床に突く。
「あんたに言っても意味ないけどさ…。てめえだけがのうのうと救えると思うなよ」
たまには救われやがれ
そう言って、杏子ちゃんは背を向けて、槍を構えた。
「人はいつでも限界を越えれるんでしょ?」
「え?」
「いつでもは"今"もはいるよ」
そうゆまはさやの前に立つ。
魔女は三人に八坂様達を差し向ける。
対するマミさん達も各々で魔力を練り、迎撃する。
「なんで……」
なんで、諦めないの?
戦力差は絶望的。さやか様は心臓を一突きされているのに。
さやか様を助ける算段なんてもう無くなったのに。
なんで、どうして?
~~そんなの、当たり前でしょ。~~
さやかちゃんの声が聞こえた。神様モードの時のような、絶対命令の厳しさを孕まず、天使のような、暖かさを持った、希望を紡ぐ声。
~~まだ、何も終わってないからだよ。~~
「あう!!」
杏子たちは、ひたすら戦っていた。本人たちからすれば、今までで一番つらく苦しい戦いだった。と断言できるはずだ。
しかし、本気の神奈子たちからすれば、ただの児戯レベルに過ぎなかった。殺人的な量の弾幕の中、ただいたぶられるだけの存在。
そんな中、真っ先に落ちたのは、一番幼く、体力もなかったゆま。弾幕を浴びせられ、強かに体を地面に打ち付けられる。
「ゆま!!」
杏子が叫んで呼びかけるが、呻くだけで、体が動かせないようだった。
しかし、だからと言って、彼女たちが容赦してくれるはずもなく、四人にまた等しく弾幕が降り注いだ。
「ゆまああああ!!! くそおおおお!!!」
「こんのおおおお!!!!」
杏子とマミの顔がこわばり、弾幕を回避しながらも駆け寄ろうと、雄たけびを上げる。
しかし、彼女たちがどんなに頑張ろうが、届かないものは届かない。
一方のほむらも時間停止を試みたいが、使い魔はともかくとして、魔女が時間停止をものともしないのがネックだった。
魔女のもつ蒼穹双刃が時間停止している物体さえも斬るのならば、時間が止まった杏子たちに為す術はなく、リアルにいつの間にか死んでいたを地で行く可能性が高い。
三人が何も出来ぬまま、無常にもゆまに弾幕はせまり……
「滅魔陣」
弾幕が消え去った。
「よし、術はちゃんと使える」
「まどか……?」
ほむらがあり得ないといった風に、目を見開いてその名を呟く。
「ごめんねほむらちゃん。わたし、思い出したの。戦う術、見つけちゃった」
まどかはさやの腕に張り付けてあった札を剥がし、自分の腕に張り付ける。
さやかは霊力を使えなくなった時から、札を放置していた。そして札の中にはさやか特製の札がぎっしりと詰まっていた。奇しくも、もう使い道がないと思っていたものがゆまの命を救った。
さやかでさえ予想しえなかったことだが、ともかく僥倖であろうことは間違いない。
「わたしは円!! 我が神、美樹さやかに仕え、魔を祓う巫女なり!!」
まどかは先ほど発動した札を掲げ、高らかに叫ぶ。
「今、時を越え、世界を越え、ここに推参したてまつる!!」
諦めない
言うのは簡単だが、今この状況で実行するのにこれほど難しいものはない。
さやかは生死不明。敵は大妖怪一人に、かつて強大な力を振るっていた神様二人。
さらに時間停止の前に対応出来るのはほむら一人だけ。
諦めなければなんとかなる? 何それ?おいしいの? 状態を体現したかのような状況の中、
この5人の顔は、ちっとも曇っていなかった。
どうとでもなる、そんな自信が全身から湧き出ていた。
魔女にとって、それが気に食わないのは当然のこと。
魔女は使い魔に命令して、まどか達をいたぶり殺せと命令する。
「アッハハハハハハハ!! こりゃあ一本取られたねぇ、さやか!! そしてお前たち!! よく頑張った!!」
そこに追い打ちをかけるかのように、心底愉快そうな笑い声が聞こえて、赤い服を来た使い魔の女の人が魔女を、明らかに敵意を持って蹴飛ばした。
諦めなければ、なんとかなるのだ。
――――――――――――――――――――――――
私は、一回死んでいる。その時のことは、今でも克明に脳裏に焼き付いている。結界が割れた音は今までの修行の怠り、そして自分の無力さを表すようで。どうにもならなかった。力を合わせても、無駄だった。ただ、無力だった。
――あなたは、生きて――
闇に包まれる直前に聞いた言葉は、それだった。
もう目は閉ざされたままだろう。この私の予想は外れた。すぐに紫の仕業だと気付いた。
再び目を開けた時、私は愕然とした。
過去に、生まれた時に戻っていたから。
その日、私は初めて泣いた。
己の無力に
騒がしく、うっとうしくも、いつの間にか大切になっていた人達を守れなかったことに
そして、決意した。
今度は、守り通す。
その日から、私はひたすら己を研磨した。
そのせいで、神童だの、幻想郷の紅白の巫女だの(まんまよね?)、色々ととやかく言われたけど。
私が生きていた間の史実は、変わらなかった。(過去の歴史はかなり変わっていたけど)
一回経験した通りに物事は進んだ。この世界は前世とは違うところは多々あったけど、最終的に行き着くところは変わらなかった。
ただ一つを除いて。
巫女さん募集中と言いながら、そのくせ何もしなかった、青が良く似合う神様。
小さい頃、確か先代と私を巡って、巫女異変というはた迷惑な騒動を起こした、
魔理沙とはまた違う、どこか不思議な雰囲気な魔法少女チックな出で立ちのそいつ。
美樹さやか
彼女はいなかった。それどころか、過去にも、いたという痕跡はなかった。
それを疑問に思いつつも、迎えたある日、
夢を見た。
彼女が、魔女と戦って敗れる夢
直感的に、これは夢じゃないと感じた。
「とても興味深いわね」
隣に、隙間に腰かける紫がいた。
いつの間に、なんては聞かない。
元々こういうやつ。
人の夢に勝手に土足で上がる奴。
でもそれも、私が考えつかない理由があるから。
「あなたは博霊の巫女よ」
わかってるわよ。
私は、この地の平定者。理由もなしに外に出ていくことなんて許されない。
だけど、
「紫、」
見捨てるなんてことも、絶対にしない。
おめでとう。まどかは円に進化した!