転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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どうしてこうなったか俺にもわからない。ただ運命に導かれたようにこうなっただけである。急展開すぎてごめん

あと叛逆の物語公開おめでとうございます


37話 反抗して?

「ぐっ……」

 

 脇腹に激痛。ものの見事に触手が貫通している。

 

 馬鹿か、あたしは。

 

 

自身への警戒を蔑ろにしてしまって、有ろうことか敵を視界から外してしまうなんて。

 

貫通した触手があたしを地上から引き離し、数多の触手があたしに襲い掛かる。磔状態で宙吊りに。身動きが完全に取れなくなってしまった。

 

「ハアアアアアア!!」

「温いよ」

「ぐあ!」

 

杏子が後ろから奇襲をかけるけど呆気なく返り討ちにあう。

 

「杏子!!」

「さて……」

 

黒まどかは私に近づいて、全身を丹念に見まわし、最後にあたしの顔を見て、

 

 

 

そして、顔を赤く染めてそっぽを向いた。その姿は、まるで初恋を知った少女のようで。

 

 

 待て。待て待て。なんだこれはなんだこれは

 

 

そしてモジモジと顔を俯かせていた黒まどかが意を決したように顔を上げる。

 

全身から恐怖とはまた違う汗がどっとにじみ出てきた。

 

すっ、と両手が頬に添えられて、黒まどかの顔が接近してくる。

 

ものすごく突拍子もない展開にあたしはどうすればいいかわからない。ただなすがまま。

 

 

 

こうして、あたしのファーストキスは雰囲気もへったくれもないものになってしまった。

 

 

「おま、なに「んふ♪」」

「んむう!?」

 

一度唇が離れた思ったら、喋ろうとして口を開いたところで再度キスされる。

しかも今度はディープな方。

見たところこいつはなぜか発情しているけど、こんなんであたしも発情するはずがない。むしろ、怒りさえ覚えた。

 

 

「うん。やっぱりわたし、あなたのことが好き。一目惚れしちゃった」

「……」

 

ひとしきりあたしの口内を蹂躙しやがったこいつは半ば確信していた言葉を紡ぐ。

 

「ねえ、私達恋人にならない? そうすれば、ここにいるみんなは見逃してあげる」

「……」

 

顔をそっと持ち上げてくるこいつに怒りのままに怒鳴り散らしたかった。だけど、あたしがここで我慢すれば皆は助かる。その考えがその言葉を喉元でかろうじてとどめさせていた。

 

「あたし、は……」

 

これからいう言葉にこれ以上ない屈辱を感じ、目を反らす。その目線が、たまたま気絶から復帰した、しかし朦朧としているまどかと目があった。

 

 “負けない”

 

瞳は揺れていたけど、その意思は全く動じていなかった。

 

 何を迷っているんだ、あたしは。

 

喉元で止まっていた言葉の枷はすでに取り払われていた。

 

「い・や・だ・ね」

 

何の躊躇もなく、あたしは拒絶の言葉を言えた。しかも素敵な笑顔のおまけつきで。

 

 こいつと恋仲? 寝言は寝て言え

 

「ふ~ん……」

 

偽まどかから表情が消えた。最早ゴミを見るような目と、隠そうともしない冷淡さにあたしは頬を引きつらせた。

 

 あ、やっぱり了承した方がよかったかも

 

そう後悔した直後、偽まどかは無造作にあたしの胸に手を突っ込んだ。

そこから、鮮血が迸り、悲鳴の代わりに口から大量の血が逆流する。

 

そして、こいつはぐちゃぐちゃと胸の中をかき回し、目当てのものをその手中に収めた。

激痛のなかでも何かわかるそれは、あたしの核(グリーフシード)

 

乱暴に引き抜かれたその真っ赤な手には、あたしの命があった。

 

「これがあなたのグリーフシードかぁ」

「かえ、せ……!」

「い・や♪」

 

偽まどかがあたしのGSを軽くはじく。すると、あたしの中で暴れまわっていた激痛が嘘のように消えた。触覚すべてが遮断されたわけではなくて、熱さ、冷たさ、触手の締め具合などは痛いほどわかる。

 

「すごいでしょ。私達魔女も魔法少女と同じで、その気になれば痛みなんて簡単に消しちゃえるの」

 

そう言って、こいつが腕を軽く振るうと、今まで四肢に絡みついていた触手がさらに巻き付き、完全に見えなくなってしまった。

そこからあたしは、気が狂いそうなほどの恐怖にさらされることになる。

 

熱いと感じた時には、締め付けがいきなり強くなり、ボキリと骨があっけなく折れた。

冷たいと感じた時には、構造上あり得るはずがない方向に、四肢が曲げられる。ばきん! と関節が多分砕けた。

また冷たいと感じた時には、触手がランダムに締め付けを加減する。ブチブチ! と砕けた骨で、筋肉がすりつぶされた。

また熱いと感じた時には。触手の隙間から血がたれてきた。

 

 なんだ、これ? あたしの手足、どうなってるの?

 

痛いならちゃんと痛いと感じたい。それでどうなっているかある程度はわかるから。だけど、熱い冷たいじゃ、何もわからない。

触手の中からはもう音もしない。怖い。胸の惨状なんてもうどうでもいい。曲がりなりにも臓器は無事で、この程度ならほっておいても治るから。でもこれは、途轍もなく怖い。わからないのが、恐い。

 

恐怖で混乱の極みに達しようとした時、起死回生の手を思いついた。

 

 そ、そうだ時を、時を戻せば

 

そう思い立ち、すぐに能力を発動させようとした。しかし、最初からそんな能力はなかったかのように発動しない。

 

「な、なんで、どうして……?」

「ずるはいけないよ。能力は使えませ~ん」

 

答えは目の前にいる張本人があたしのGSをチラつかせながら教えてくれた。どうも、あれを握られた時点で、あたしの生殺与奪権はすでにこいつに奪われたらしい。

 

「ねえ、性奴隷になるなら、元に戻してあげてもいいよ?」

「ふ、ふざけんな!」

 

「そう。それがあなたの答えなんだね」

 

 

偽まどかは嗤った。まともにそれを見たあたしは恐怖で腰が引けてしまう。

何を思ったのか、こいつはあたしを縛っていた触手を解き、あたしを解放した。とっさに足で体を支えようとしたけど、そもそも足がないように体は落ち続け、ブチュッと何かやわらかいものを下敷きにした。同時に、左足膝から先が熱くなったとたんに、何も感じなくなった。

 

「ヒッ!」

 

遠くでゆまの悲鳴が聞こえて、つられて視線を下に下げた。

 

「ひっ…」

 

手はあった。原型を留めていて、血は“穴”から流れていただけだった。その血はドロドロとしていて、なにか細かい固形物が混じっていた。そして四肢の色は赤黒く、左足は破裂したようにちぎれていて、まるで中身がすべて抜き取られているように、空気が抜けたボールのようにしぼんでいた。呆然と見つめる中、あたしは血のなかに含まれる固形物がなんなのかを唐突に悟った。

 

 これは、骨だ。筋肉だ、健だ。腕の中にあるモノだ。

 

「うふふ♪ 神経だけを気づつけずにミキサーするのは大変だったよ。」

 

歯がうまくかみ合わない。目を合わせるのが恐い。逃げたい。何処かに隠れて、去るまでひたすら耐えしのぎたい。

こいつから逃げ切れるなら何でもするから。だから…

 

「ねえ、性奴隷になる? ならない?」

 

目の前の魔女があたしをチラつかせて再度尋ねる。なんとなく、恐怖に支配された頭でも次の行動は予想できた。あたしが断れば、こいつは痛覚を元に戻す気なんだ。

 

気が付けば、ボロボロと涙が溢れてきた。あたしからすれば、どっちも地獄だ。前者はこいつとずっと一緒だし、後者は身を焼かれるなど生易しい痛みがあたしの体を焦がすだろう。

そんな究極な選択に答えられるはずもなく、ただホロホロと涙をこぼしていた。

 

「………」

「っあ! やめて!!」

 

まどかはニコニコ顔から一転、表情を消してあたしの痛覚を戻そうとGSに手を近づける。そう直観したあたしはたまらず制止の声を上げる。

 

「よかった~、しゃべれなくなったのかと思ったよ。で、どっち?」

 

器用にこいつは感情を浮かべたり沈めたりできるようだ。そんなことをされても、あたしに答えられるはずもない。

 

「3、2、1…」

「お、お願いします、やめてくださいぃ……」

 

ついに業を煮やしたまどかがカウントダウンを始めた。あたしは尚も懇願する。こいつが望む答えを言えばいいのに、と片隅で思っていても、なんでかその言葉はだせなかった。

 

「0」

 

 

 

   助けて、さやか

 

 

「っうああ゛ああああアアぁぁあ!!!」

 

 

 

 

「これで、大きい傷は大方治ったわ」

 

みきがなぶり殺しにされている時、マミとゆまと杏子はほむら、まどかと合流し、まどかの手当てを行っていた。

 

「ありがとう、マミさん。もう大丈夫だから」

 

ほむらは安堵の息をつくが、その表情は厳しい。

 

勝てない。

 

 負けるしかない。

 

 

この壁の向こうにいる、"まどか"から万に一つの勝機も見出だせない。

 

 

 ここまで、来たのに……!

 

なんで、後一歩が届かない……

 

諦めたらそこで終わり? 窮鼠が龍を噛んでも逆に消し炭にされるだけ。

 

「ちくしょう……」

 

知らず知らずの内に悔しさがポツリと出た。

 

「なあ、さやかは?さやかはどうした?」

 

杏子が震える"あれ"を見てしまったゆまを抱きしめながら尋ねる。

 

「解らない。でも、最後に見た時、決して浅くない傷を負っていたわ」

「諏訪子さんとかなら、何とかなるわよね……?」

 

マミがあるはずのないIFを語り始める。

この状況で少しの希望にでもすがらなければやっていけないのだろう。

 

 

「例えそうだとしても、助けを求める手段がないわ。どのみち私達が助かる見込みは……」

「あら?私達が気付くという可能性もあるわよ」

「え……?」

 

 

なんで、"彼女"が?もしかして全部見越していた?

 

ほむら達がその方へと視線を向けると、スキマに腰かけた八雲紫が、そこにいた。

 

「早速だけど」

 

そーれ、と間の抜けた声と共に紫が指をならす。

同時に、浮遊感。

 

「え?」 「ちょっ……」 「ふぇ?」

 

下を見ると、地面ではなくて、スキマが顔を覗かせていて……

 

 

「ボッシュート♪」

 

そのまま落ちていくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「はいストップ」

 

 

声が、聞こえた。ずっと待ち焦がれていた声。

 

 

さっきまで朧気だった視界が一気にクリアになる。

 

 

「さ……やか?」

「遅れてごめん。よく持ちこたえてくれたね」

 

 

四肢が治っていた。傷の面影なんて一切残ってない。

 

 

「ちょっと、休んでて」

 

 

え、と言った時には足元には亀裂が入っていて……

さやかはあたしをそこに押し込んだ。

 

 

 

 

「いったいなあ。いきなり腕を斬るなんて外道のすることだよ」

「あんたが言うな」

「それもそうだね」

「……さて、"また"会ったな。この身を貫かれた時まで気付けぬかったのは余が落ち度。だが、謝る必要は無かろう?」

 

さやかの口調が変わる。

くすり、とまどかが笑う。

 

「まさか、あんな所にさやかちゃんがいたなんてね。あそこの世界にはいないと思っていたのに。」

「くっ、その台詞、まるで余がいると不都合だと言っているぞ。もっとも、汝が手を加えずとも、八雲の手で飛ばされがな」

「…」

「なんだその顔は?まさか気付かれないないとでも思っていたか?急所を尽く外しておいて。気付くなと言う方が滑稽ぞ」

「何を言って…」

「誤魔化すな。見苦しい。すでに調べは着いた。だからこそ、余がここで汝に立ちはだかるのだ」

 

 

 

余しか汝を止められないのだからな。

 

 

 

"まどか"は"さやか"に憧れていた。

 

その人となり、性格、そして生き方に。

やがて憧れは、尊敬に変わり、不可侵のものへとなった。

 

 

しかし、魔女となった後、彼女は人間を信じられなくなり、人間は皆不幸だと、"さやか"の代わりに幸せにしなければならないと、手当たり次第に結界に取り込んだ。

 

そして、確かめるように一人一人の記憶、感情を確かめていった。

 

しかし、"さやか"を取り込んで、記憶を垣間見た時、状況は一変した。

 

 

"さやか"は、信じていた。

人に絶望しても可笑しくない程人の狡猾さ、妬み、負の感情、闇を見てきたはずなのに。

 

そして、幸せだと、これ以上は望まないと、思っていた。

 

 

 

 なんで!? それじゃあ、わたしは……

 

 

自己の願い、アイデンティティーを否定された気がして、気が付いたら"さやか""を結界から放り出していた。

 

 

この時、完全に自覚してしまえばそのまま消滅しただろう。

しかし、生存本能がそれを阻止した。

 

 

以降、"まどか"は人の記憶等はろくに顧みずに取り込んでいる。

 

願いを否定しうる存在への怯えと魔女の性質が相反する故の妥協案だった。

 

 

だが、ある一人だけはどうしても取り込めていない。

 

そして、彼女を止めることも

 

 

 

 

 

「どうして、それを……」

「人間を舐めるな、ということよ。特に希望を持つ者は、な。もっとも、此度は八雲の手腕の方が大きいか」

「っ! どうして! どの世界も苦痛! 悲鳴! そして穢れで溢れていた! あの世界だってそうだったのに!

だからわたしは送った! だれも傷付かないように! 幸せに暮らして行けるように!」

 

まどかは叫ぶ。己が正しいと、真理だと。

 

「それは皆が望んでいたか?」

「幸せになれるんだよ!? 当たり前に決まっ「もうよい」」

 

 

さやかは悟る。まどかが意志は独りよがりであると。紫からはヒルトはさやかを取り込めないということしか言われてない。しかし、その歪さの原因は私のあり方と関係していると、確信した。

 

「汝に余の考えは一生相容れぬものであろう」

 

さやかは静かに刀を構えた。

 

「汝が余を取り込めぬ所以、朧気ながら見えてきた。さあ、構えよ。余が正義も、汝が正義もまた真理。ならば、これ以上の問答は不要。後はぶつかるのみ」

「っ!そうだね。あなたは"さやかちゃん"じゃない。それにさやかちゃんがそういうなら、わたしも力で証明する!!」

 

 

 

群馬県三滝原市

 

午後5時38分

 

最後の戦いが、始まった。

 

 

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