「さて、今から魔女退治体験ツアーを始めるのだけれど何か持ってきたかしら?」
学校も終わり、今あたし達は行き付けのファーストフード店にいる。
「あたしは取り合えずこれ持ってきた」
布に巻かれていた棒を取り出し、布を取る。そこには二本の木刀があった。
「修学旅行の時に買ったものなんだけどね」
「ま……まあ充分に意気込みは感じられるわ。それで鹿目さんの方は?」
するとまどかは一冊のノートを広げて
「えっと……私は自分が魔法少女になった時の格好だけでも考えておこうかなって……」
「フッ」
思わず鼻で笑ってしまったあたしは悪くないと思う。
崩れ落ちるまどか。ちょっと鳴咽が聞こえる。
「ふふっ、やる気は充分に感じられたわ、鹿目さん」
フォローを入れるマミ、さすがです。
「さて、そろそろ行きましょうか」
こんな感じで魔女退治ツアーが始まった。
最初に行ったのは魔女の捜索。
なんでも、魔女が近くにいるとソウルジェムが輝くらしい。
昨日襲ってきた魔女は昨日の場所の近くにはいなかったから、残り香を頼りに地道に魔力の痕跡を追う。
そして着いたのがとあるビル
「……確かになんか嫌な感じ」
「あ!! あそこ!! ビルの上!!」
上にはちょうど投身自殺を図った女性がいた。
「きゃあああああ!!!」
「マミさん!!」
「わかってるわ!」
まどかが悲鳴を上げると同時にマミが変身して落下地点に駆け寄り、黄色いリボンでネットを編み、受け止める。
目が虚ろだ……暗示かな?
首筋の呪印みたいなのでの思考誘導……?
「あの、この人の首筋にあるのって……」
「魔女のくちづけね。これをつけられると体を操られるわ」
幸いにも女性は気絶しているだけのようだから、ビルの入り口に寝かせておいて(口づけは取り除いてある)、魔女の捜索を再開した。
「ここね……」
この淀んだ空気の中で特に淀んでいる場所にマミが立つ。
そこに2、3発撃つと異空間へつながるゲートみたいなのが現れた。
「美樹さん、あなたの木刀貸してくれるかしら?」
マミが差し出した木刀に触れると、戦乱の武将達が良く使っているようなンプルな鉄刀に変わった。
「これであなたも使い魔ぐらいは倒せるわよ。」
「ありがたく使わせてもらうよ。なんなら魔女も一緒に退治する?」
「それには及ばないわよ。」
行きましょうと先を行くマミさん。
さて、気合い入れていきますか!!
「ここよ」
「意外とあっさり見つかったね」
「ふふ。美樹さんが後ろをバッチリ守ってくれたからね。」
ポジション的には逆なんだろうけどね。
マミが前方の敵を撃って前進し、後ろからくる敵はあたしが斬る。何故かマミはずっとイキイキしていた。
話を戻すけど今いるところの下に魔女はいるんだけど……
「うわ、グロい……」
「あんなのと戦うんですか?」
「ええ、そうよ。でも大丈夫。」
マミは私達の周りに半球状の結界をはり、
「負けるもんですか」
颯爽と降りて魔女と対峙した。そこで自然と魔女にまた目がいくけど、
……何度見てもやっぱりグロい
「…妖怪なんてもんじゃないわね。」
小声で自然とそんな言葉が出てくる。
人間の恐怖の象徴として具現する妖怪とこの世界の魔女。認めたくないけどどことなく似ている。喩えるなら妖怪が自然なら魔女は人工物。
……そういやそもそも魔女って何かあたし知らないじゃん。
「ねぇキュゥべえ。魔女ってずっと昔、4000年ぐらい前にもいたの?」
『いや、有史以前から魔女はいたね』
「マジで!? そんな昔からいるんだ……」
この世界の妖怪のポジションは魔女にとってかわられたようで……なんか憂鬱
「ティロ・フィナーレ!!」
考えてるうちにどうやらマミが勝利したらしい。
「……すごい」
あたしは万が一のことがないようスタンバっていたけど結局あっさり倒して意味はなかった。
でもマミさん、ものすごく華麗に闘いすぎです。ほら、まどかが見惚れてる。これじゃ死の危険性があるって伝わりにくいぞ。
けど言うのもなあ……。ベテランの動きって一種の芸術だって誰かが言ってた気がするけど、マミの闘い方もおそらくそれだろう。むやみに変えてもらうもんじゃないし……
魔女の結界も消えて、ビルの内部の景色になる。結局黙っとくことにした。変なこと言って負けられても困るし……あんまりキュゥべえの前で霊力は使いたくない。
結局この時、あたしは保身に走った。
マミさんが小さな黒い球体に針が刺さったようなものを持って歩いてくる。
何て言うか……負の感情がこれに集約されている感じがする……
「これはグリーフシードと言って魔女の卵よ。魔女が持っているわ」
「え!?大丈夫なんですか?」
『この状態のものは安全だ。むしろ魔法少女にとって役に立つものだよ』
マミは自分のソウルジェムを取り出した
「私のソウルジェム、少し濁っているでしょ?」
「本当だ」
「でも、ほら……」
マミはソウルジェムとグリーフシードを近づける。すると、ソウルジェムの黒ずみがグリーフシードに取り込まれた。
「これで消耗した魔力は元に戻るの。魔女退治の見返りよ」
いやそれ見返りじゃないし……装備の補充とかそこら辺に該当するよね?
突っ込みたかったけど、マミさんの揚げ足をとるようで気が引けた。
「ねぇ、ソウルジェムが完全に濁るとどうなるの?」
「魔法が使えなくなるわ。」
「それだけ?」
「私も良くわからないのだけれど、濁っていくとだるくなったり体に変調をきたして魔法が使いづらくなるからそうだと思うんだけど……」
「で、そこんとこどうなの?スト……転校生」
そう向こうの影になっているところに問いかけるとそこからほむらが出て来た。
……パターン化し始めてる。
「……何をいいかけたは知らないけど半分正解よ。」
「もう半分は?」
するとほむらは少し戸惑った後
「言う必要がないわ。」
と切り捨てた。
「じゃああたしが魔法少女になったら教えてくれる?」
言外に教えないと魔法少女になるぞという意味を含ませてみる。
「っ……もしそうしたら……」
一気に険しい顔になり、こちらを睨み付けるほむら。
なるほど、まどかだけでなくあたしにもなってもらうと困ると。
「出る杭は打つとでも言うのかしら?」
マミが口を挟む。
もしかして、マミやまどか……いや、キュゥべえがいるから言いたくても言えない?
「……ええ、そうよ」
「そう……それが答えと言うわけね」
相容れないとマミは感じたのだろう。対するほむらは表情こそ変わらないものの…なんでか悲しそうに見えた。
「あ、そうだ。昼間のガム食べた?」
「……えぇ、とてもおいしかったわ」
もう用はないと言わんばかりに立ち去るほむら。
ポケットからガムを一枚取り出す。
「まどか」
「え? なに゛!?」
それをまどかの口に突っ込んだ。
「!! うぇ、ゲホ、オェ……」
「やっぱり不味かったか……」
「ひどいよさやかちゃん。こんなの……あんまりだよぉ」
「ゴメンゴメン。でもこれぐらいの試練で挫けてちゃこの先乗り越えられないぞ」
「魔法少女にこんな試練はないのだけど……」
マミが介抱しながらツッコむ。
「けどあいつ、何を知っているのかねぇ」
キュウべえを抱き抱えてその無機質な目を見て言う。
『……』
キュゥべえは黙して語らない。でもいつかは……
「洗いざらい吐いてもらわないとね」