バキッグチャッ
肉が潰れる音が響きわたる。
一瞬なにが起こったかわからなかった、なんては言わない。戦闘中の思考の停止は一瞬でも死を招くから。だからあたしは冷静にそれを認識する、してしまう…
そしてあくまで冷静に……キレた 。
縮地でマミさんの体をさらに咀嚼するという万死に値する行為に及ぼうとする魔女の横に移動し、霊力を込めて思いきりぶん殴る。
魔女は面白いようにぶっ飛ぶ。その際口からナニカがとびだした。
これで遠慮する要素は1つも無い。
その存在のチリ一片も残すことも許さない。
完膚無きまでに殺し尽くしてやる!!
霊弾を体の周囲に出現させる。その数約100個。
それを射出してすぐさま先ほどと同じ数の霊弾を出し、撃つ。
「マスタァァァァァ」
そしてしぶとく生き残っている魔女の上に跳び右手に溜めていた霊力を解放する。白黒の魔法使いやフラワーマスターが十八番にしているけど、その気になれば使える人は使える技
「スパァァァァーーーク!!!」
魔女は光の奔流に飲まれ跡形もなく消えさった。
カラン
グリーフシードが割れて血に濡れたカップの中に落ち、魔女の結界が消える。マミの遺体は結界と一緒に消えたのか見つからなかった。代わりにソウルジェムがグリーフシードのそばに落ちていた。
それらを大事に拾って握りしめる。衝動的にマミさんの姿を探したくなった。
まどかは泣いていた。何が起きたかまだ理解できてないない顔で。
「……くそったれ!!」
マミが死んだ。
そのことがあたしをがんじがらめに締め付ける。
マミだったら大丈夫? いつだれがどこで決めた!! 腹がたつ。マミを殺した魔女に。何より油断していたあたしに!!
気付けば手から血がでていた。強く握りしめたせいだろう。
「そのグリーフシード……渡してくれないかしら」
背後から転校生の声がする。
「…………これは渡せない」
「あなたが持っていても何の役にも立たないわよ」
「……誰がなんと言おうとこれはあたしのだ。渡さない。」
あたしはその場から立ち去る。
ここにいるとまどかや転校生にあたりそうだ。何より…耐えられない。
昔はこんなに取り乱したりしなかった……
ホント……平和ボケしてたよ
14年
人間(ヒト)になってからあたしはどれだけ弱くなったのだろう。
すごく興味深い
美樹さやかがあの力をあそこまで使いこなし、あまつさえ魔女を打倒できるその力。
アレを研究すればまた宇宙の寿命を伸ばせる方法がまた1つ増えるはずだ。
でも、疑問に思わないかい?
さやかがどのようにしてあそこまでアレを使いこなせるようになったのかも興味深いけど、本当にアレを使えるのは彼女だけなのかい?
過去を含めて、人類史上始めて彼女に備わった力だとは到底僕は思えないな。
過去にもいたはずなんだ。さやかのようにアレを使いこなせる人間が。
そこで地球の過去の情報をマザーベースで調べて見たんだけど、そこでも興味深いことを発見したんだ。
西暦1896年以前の情報が丸々無いんだ。
まるでその年から地球に降り立った様にね。
もともと地球の情報なんて欲しがる個体は有史以前の頃しかほとんどいないにしてもおかしい。
調べて見ると1886年に地球を監視していたマザーベースが突如爆発、僕たちが住んでいた星も同時に消滅したんだ。
結果それ以前の感情エネルギーの収集量等の重要なものを除いた全ての情報が消えた。
マザーベースにいた固体は当然全滅。星の方も信じられないと思うけど逃げる暇がなかったらしくててこちらも全滅。
月程の大きさの惑星だったけれど前触れも無しに一瞬で消滅するなんて普通あり得ないはずなのにね。
さらに地球に滞在している固体から情報はまた復元できるのにそれがなかったんだ。
すなわち地球上の全ての固体がその時までに死滅していたことが言えるよね。でも数がだんだん減少していたなら、マザーベースも異変を察知してそれに対応するはずなんだ。
その対応もとられなかった。いや、出来なかったと言うべきかな。地球上の固体も一斉に死んだことになる。
時期が合いすぎだとは思わないかい?
地球に存在するなんらかの生命体が僕たちを殲滅しようとしたのは確実だよね。
そこで今度は別の角度から調べて見たんだ。
西暦1896年以降の魔法少女の数の合計と魔女の発生数と死亡数の合計。理論上これらは多少の誤差はあれど等しくなるはずなんだ。
でも、ズレたんだ。
何なんだろうね。
このズレはとても興味深い。
でも、さやかのもつアレと魔力が合わさったらどうなるか……もっと興味深くないかい?
僕という固体が誕生して25年の中で一番興味深い事柄だ。
これはマザーベースに記録しておくべきだね。
ちなみに、僕たちインキュベーターにはSOPリンクver11014というのがあってね。思考の共有は勿論、マザーベースに"更新"と思うだけで自分だけが持っている情報をマザーベースに記録できるんだ。そしてそれはすぐに全インキュベーターに反映される。ただしこれは10年前に最新版になった時に追加された機能だけどね。
最近は常時マザーベースに情報が記録できるように改良していると聞いているけど、難航しているらしい。
閑話休題
さて、もうすぐさやかの家につくけど、もう本人の同意なしで契約してしまおうか。いや、それだとマザーベースからつきあげをくらってしまうから無理だね。あくまで合意の上じゃないと駄目だってうるさいんだよ。
まあ、逆に言えば合意さえ貰えればマザーベースは何も言えないんだよね……
『驚いたね。君にあそこまでの力があるとは』
夜、あたしがベットに寝そべっているとどこからともなく淫Qβが現れる。横に寝転がって背を向ける。こいつとは話もしたくない。
『マミが死んだのは君のせいだと自分を責めているのかい?』
「……」
『僕には理解出来ないな。たかが69億人中の一人が死んだだけだ。代わりなんていくらでもいるじゃないか』
……こいつ喧嘩売りに来たの?
命の重さがわからないようなこいつの物言いは、ひどくあたしをいらだたせる。
「……マミさんの代わりはどこにもいない」
『ならなぜあの力を最初から使わなかったんだい?そうすればマミは今も生きていたかもしれなかったよ』
「うるさい」
こいつ絶対喧嘩売りに来たな。次なんか言ったらその喧嘩買ってやる。
『異端と思われたくなかったからかい?それでまどか達から恐れられたくなかっ……』
ヒュヒュヒュン
起き上がりつつ振り向き、札から出したナイフで切り刻む
淫…もう白い生物(ナマモノ)でいいや――はバラバラになり中身をぶちまけた。
「……確かにあたしはまどかや家族にもこのことは話してない。他人から嫌われるのはなんとも思わないけど、親しい人から嫌われるのは嫌だったから」
独り言のような独白
「でも、そんなんじゃ救える人も救えるわけなかったね……」
力ない声があたしの口からこぼれ出る。前世のことを思いおこす。
妖怪になってすぐの時、一度妖怪だとバレると怖れられ、避けられ、襲われる。
それがいやだから、妖力をひた隠し、人を襲う妖怪を退治して、自分は人にとって無害な存在だと示した。
幻想郷にいた時も神として振舞い、妖怪としての過去は極力見せなかった。
そういや一回そのことについて聞かれたことがあったっけ……。その時ははぐらかしたけど……
「……なーんだ」
あたしは今も昔もハブられるのがいやで、根幹はなにも変わってなかったんだ。
「よし!! 決めた!!」
なら、ここで覚悟しよう。もう出し惜しみはしない。こわがられるとか恐れられるとか知ったことか。
今度こそ、あたしは……
「全部守ってやる」