高校生映画人 ~青春の監督達~   作:Boukun0214

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シナリオ決定戦

「お前ら、よくやったな。特に石井、期待以上だ!」

 

 

僕と伊丹さんが提出したシナリオに目を通したあと、溝口さんが僕らの顔を見直す。

 

「最後に、なにか言いたいことがあれば。」

「俺はありません。そのシナリオが、全てです。」

 

伊丹さんが首を横に振る。

 

「僕は、その、香具矢が昔助けた神さまだった、という設定に変えたので、前のプロットからは大分印象が違うと思います。」

 

そうなのだ。

この間の取材で出会った少女に影響を受けたのは言うまでもない。

 

友達との仲も上手くいかず、成績も落ちる一方、そして両親とも不仲というボロボロの主人公がある日家出をして、見知らぬ土地に迷い込む。都会の喧騒なんて知らない町だ。

そんななか、一人の少女が主人公に近付き、その痛みや悩み、そして喜びと向き合う術を悟らせていく。

数日間、少女と共に過ごすうちに、隣人は家族のように、家族は宝物のように扱う、そんな人々の暖かさに触れていく。

彼は、自分は、周囲の人々を、そこまで大切にしていただろうか。そんなことを考え始めるようになる。

そして主人公は自分の現状や周囲の環境を受け入れ、帰ることを決心し、少女に別れを告げる。

見送りに来てくれた少女にお礼をしようと振り返るが、そこには少女の姿はなかった。

そして、彼はある記憶を思い出す。

本当は、見知らぬ土地ではなかったのだ。幼い頃に一度、一度だけ訪ねた土地で、古ぼけて雨風にさらされている地蔵を見つけていた。幼き頃の彼は、そんな地蔵のために、地蔵堂を即席で建ててあげたのだ。

家に帰り、そのドアを開ける彼の目にはもう迷いはない。彼は、自信の日常に戻っていくのだった。

 

 

これが、僕が最終的に考えた物語だ。

僕が考えたような設定は、人に伝わるかはわからない。でも、人それぞれの解釈ができるように、そんな話になったと思う。

 

 

「とりあえず、脱退はこれでなしだな。じゃあ、本多、行くぞ。」

 

僕はどっと疲れを感じた。

よかった。。。

 

「は~い。」

 

本多さんはプラモデルを組み立てる手を止め、溝口さんと共にフィルムクラブの部屋を出る。

 

「これから話し合いをして来る。別室にいくからちょっと待っててくれ。」

「期待しててね~。」

 

 

っていうか、本多さんがめちゃめちゃ眠そうにしてるんだけど大丈夫だろうか。。。

内田いわく、彼は趣味のこと(十中八九ミリタリーだろう。)となると寝食を忘れ、没頭してしまうだそうだ。

気持ちはわからないでもないが、伊丹さんが心配するくらいなので相当なのだろう。

 

「大丈夫かな?どっちが通るかな?」

「いや、わからないけど。。。」

 

河瀬に言われて急に緊張してきた。

そうだ。選ばれるのは僕とは限らない。

 

「いやぁ、先輩ので間違いないですよ!」

 

内田が調子良く言うが、伊丹さんに睨まれる。

 

「おい。」

「ひっ!や、やだなぁ、伊丹さんのも十分ですよ。」

「十分ってなんだ十分って。」

「あ、いや・・・えっと。。。」

 

どうやら内田は伊丹さんの目が怖いようだ。

昔、何かやらかしたのだろうか。

 

「でも、どちらの作品が選ばれても、いい作品が撮れると思いますよ。」

「そうですよね!3週間もかけたんですから!」

 

 

そんなこんなで皆でおしゃべりをしながらすごすこと20分。

 

「・・・遅い。」

 

ずっと黙っていた伊丹さんが時計を見て呟く。

 

確かに遅い。

普段もこんなに時間がかかっているのだろうか?

 

「まあ、今回は、どちらも難しいのではないでしょうか?」

「きっと、悩んでるんですよ!」

 

宮川さんと内田が伊丹さんに同意する。

そして、また、時計の針は10分、20分、30分と時間が過ぎていく。

 

「・・・ちょっと行ってくる。」

 

とうとうしびれを切らした伊丹さんが席を立ち、廊下へと出ようとする。

 

「あれ?どうしたんだ?伊丹。」

「あれ~、もしかしてトイレ?」

 

まさにベストタイミングというか、伊丹さんがドアを開けるとすぐそこに、二人が立っていた。

 

「いえ。・・・なんでもありません。」

 

伊丹さんが席へ戻る。

そして、審査員の二人も席に戻っていった。

 

「決まった。」

 

全員の目線が溝口さんに集まる。

 

あー、緊張する。やばい。顔をあげられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は、石井のシナリオにする。」

 

 

「・・・・・・」

 

喜びよりも先に、安堵が来た。

全身の力が抜ける。

 

 

「やったね!石井くん!!」

「そうですよ先輩!快挙ですよ!」

 

河瀬と内田が僕に笑いかける。

 

「うん。ありがとう。」

 

それでようやく、嬉しさが込み上げてきた。

 

うん。やった。やった!!

 

「そうだねぇ。面白い映画になると思うよ~。」

 

でも、僕はすぐに我に返った。

僕が勝った。つまり、敗けがいるんだ。

 

僕の先輩で、僕よりも才能があって、僕よりも、きっと映画を作ることが何かを理解している人。

 

 

「・・・畜生。」

 

 

ぼそりと、誰かの声が聞こえた。

その声の主を見る。

 

そう。伊丹さんは、悔しそうに顔を伏せ、そして、歯軋りをする。

 

「おい石井!!!!」

 

賑やかさを、一気に消し去るような大声を上げ、伊丹さんはガタンと立ち上がる。

 

 

「・・・お前は、俺がヘソを曲げて、協力しねぇんじゃねぇかって思ってるかもしれない。」

 

僕の目を真っ直ぐと見て、伊丹さんは続ける。

 

「でも、俺はそんな小せぇ人間じゃねぇ。」

 

何かを覚悟したように、僕のライバルは続ける。

 

「俺の目的は、いい映画を撮ることだ。だから、俺は・・・」

 

そして、僕に手を差し出して、僕らの仲間は、こう言ってくれた。

 

「俺は、高校生映画人として、お前に、全力で協力する。」

 

僕は、伊丹さんの手を取ろうと思ったが、先程の緊張で手汗が酷いことに気がつく。

慌てて、ズボンで手を拭いて、伊丹さんと握手をした。

 

 

「うん。二人とも、和解したな。」

「めでたしめでたしだね~。」

 

溝口さんと本多さんが拍手をする。

それに続いて、皆が次々に拍手をする。

 

少し誇らしい。

なんか、青春!って感じがする!

 

 

「・・・・っ」

 

って、あれ?

 

伊丹さんが僕の手を振り払い、皆に背を向けるように座った。

 

どうしたんだろ?

 

 

そう思い、回りを見渡す。

 

あ、なんか恥ずかしい。

なるほど。うん。

 

僕もつられて座る。

 

 

「今回は、非常に選ぶのが難しかった。だけどな、石井、お前のシナリオが完璧かと言えば、そういうことではないぞ。粗を探せばどんどん出てくる。」

 

僕はコクりと頷く。

 

「よしじゃあ、これから、シナリオ会議を始める。」

 

溝口さんの合図で、皆が切り替える。

始めに口を開いたのは伊丹さんだった。

「まず、作中で、電車に乗っているシーンがあるよな。」

「はい。」

「俺達みたいな個人の非営利組織では、基本的にこういった機関からは使用許可が降りない。だから、他の策を考える必要がある。」

「う~ん、ねぇ、溝口のとこで借りれないの?」

「いやお前は私をなんだと思ってるんだ?」

 

難しいな・・・。

 

「借りれるとしてもバス程度だ。」

 

えっ、バス借りれんの!?

 

「あ・・・じゃあ、それ、お願いします・・・。」

「わかった。手配しておく。」

「・・・金、あるんスね。。。」

「グッチーさんはお金持ちですからね。」

「家が、な。」

 

 

まあ、会議は、こんな感じで進み、伊丹さんや溝口さんが問題点を指摘して、代替案を皆で考える。

でも大抵、どこかで脱線するけど、それを伊丹さんか河瀬が戻す。

 

そこには、活発な会議があった。

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