冒険といっても、それは、小さな小さな、彼女だけの悩みの分かれ道。
揺れ動く心は一体どこへと向かうのでしょう?
想像を創造する
私は河瀬。
第一高校の1‐Cの議長で、同じくテニス部所属。
それと、最近、「フィルム・クラブ」のメンバーになりました。
で、問題は、そのフィルム・クラブで企画を出さないといけなくなったことなのである。
当然、生まれてこのかた物語に触れたことは数多くある。けれども。
それを自分で産み出すことはまた別の話なわけで。
「どうしよう・・・。」
これがさっぱり思い付かない。
やると言ってしまった以上、やらないわけにはいかない。だから私は暇さえあればノートを開いて、シャープペンシルをまっさらなページに突き立てる。
これが滑ってくれればいいのだけれども、どうも上手くいかない。
期日まであと二日。
きっと、石井くんはもう書き終えてるんだろう。
課題はギリギリまでやらないくせに、こういうことはすぐに終わる。まったく、しょうがない幼馴染みだ。
そんな彼のことが嫌いになりきれないということは、私もなかなかに"しょうがない"人間なのだろう。
問題の書かれた紙にペンを滑らせるのは簡単なのに、白紙にペンを滑らせることが全くもって出来ない。私は優等ではあっても、優秀ではない。
なんだか、気分が暗くなってきた。
外を見ると、すっかりと陽が落ちてしまっている。でも季節的に陽が短いというだけなので、時間はまだ六時頃だ。
なにかに詰まってしまったときは、散歩に限ると思い、そんな衝動のまま、コートを羽織って外に出る。
お母さんやお父さんはまだ仕事から帰ってきてない。それに、過保護なお父さんのことだから、私が暗くなってから外へ出掛けるのなんて黙ってないだろう。
玄関の外の世界は、街灯の光でアスファルトがグラデーションをかもし出していて嫌いじゃない。むしろ好きだ。なんというか、ほどよい暗闇が色々とあやふやにしてしまって、少し、特別な時間な気がする。
こんなにも素敵な世界を、どうして大人は子供から引き離すのだろう。そんなことを考えていた時期もあった。理由としては簡単で、人気が少なく、犯罪率が夜の方が高いから。
それを理解したとしても、いや理解したから、スリルを感じている自分がいる。普段の優等生な自分から離れられている気がして。
よし。テーマがひとつ決まった。主人公は、私のような女子高生にしよう。そうなると、成績とか、あと、恋愛の悩みとかあるといいかもしれない。どうせなら、私が出来ないことをさせてみようかな。家出とか。
不思議と、ひとつだけでもなにかが決まるとどんどん物語の欠片は大きくなっていく。膨らんでいく。
この感覚は、嫌いじゃないかも。なにかを作るっていうのは、楽しい。夢中になる人の気持ちがわかる。
「脚本、いいかも。」
ほとんど呼吸と一緒になって呟いた一人言は、白い靄になって夜に溶けていった。
とりあえず、家に帰ったら、ページを埋められるような気がする。
私は、回れ右をして道を行く。
今日は夜更かしをしよう。