高校生映画人 ~青春の監督達~   作:Boukun0214

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天才と平凡

フィルム・クラブの部屋に、伊丹さんが入ってきた。彼の服装を改めて見ると、やはり黒一色で、威圧感のようなものを感じる。そしてそれは、彼の纏う雰囲気と合致しているように思えた。

 

「・・・」

 

彼は、私に一目くれるが、そのまま部屋の中へと突き進んでいく。

 

「あ、あの!」

 

思わず声をかけてしまっていた。突然の大声が静寂に反響する。

伊丹さんは、じっとりとこちらを見てきた。この視線はなかなかに辛いものがある。視線が刺さるという表現があるけれども、彼の視線は絡め捕ってくるような不気味さも感じる。

 

「えっと、その、私の企画は、どうでしたか?」

 

なんとなく、良い機会だと思った。彼に、話を聞きたかったのだ。彼の目には、私の世界はどう映っているのかを。私の作品はどれほどの価値なのかを。

 

「私の作品は、今日、未熟だと、思い知りました。だから・・・」

 

「お前の作品は、まず、熱意が感じられない。"これを映像にどうしてもしたい"そんな気持ちが伝わらなかった。」

 

彼は、私の言葉を遮るように批評を始めた。

 

「それに、物語の構成が雑だ。単にホームレスの兄弟と過ごしましたじゃあ、見ている側には伝わらない。同じ意味では、そもそもの主人公が初めから追い詰められているのも良くない。いきなりあれだと置いていかれてしまう。」

 

思っていたよりも、辛い言葉の連続だった。自分の作品を批評されるのは、こんなにも辛いのだと思い知った。この人もこの人で、何故、こんなにも遠慮の無い物言いが出来るのだろうか。

 

「あとは、あれだな。石井・・・と言ったか。アイツと物語の構成が被ってる。」

 

びくりと、身体が震えた。

 

「同じような土俵だと、問われるのは質だ。両方とも粗が非常に多い。まあ、二人とも初めてだろうから仕方がないと思うが、作った企画を読み返したりしたのか?もし読み返してそれなら、もっと気を配るべきだ。」

 

訊かなければ、良かった。

 

「ただ・・・」

「すみません。」

 

私は、耐えることができず、立ち上がった。

 

「もう、いいです。・・・ありがとうございました。」

 

そのまま、鞄を掴んでドアを開ける。

冬の空気が、私を締め付けた。早足で廊下を歩き、廃校を後にする。乾いた私の足音だけが、夜の闇に吸い込まれる。彼と一緒に、石井くんと一緒に帰れば良かった。こんな気持ちで帰るには、夜は寂しすぎる。

 

ああ、なんだか、泣きそうだ。

 

冷たい風が、熱を持った瞳に突き刺さる。

悔しさなんて感じない。あるのは、虚無感と哀しみだけ。こんなにも、創作は辛いものだったのだろうか。

 

私は、唇を強く噛み締めて、空を見上げた。

 

 

 

 

冬の夜空は星がよく見える。

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