高校生映画人 ~青春の監督達~   作:Boukun0214

17 / 19
右顧左眄して

私は、あまり遅くならないうちにとフィルムクラブのある廃校を後にした。

季節は冬だから、もう充分暗くなってしまっている。

 

そうか、もう12月か。なんか、実感が沸かないなあと。

聞いた話では、今企画を立てている作品は、冬休みのうちに撮影を終わらせて、2月に募集を締め切るコンクールに出品するという、一応の目標はあるようだ。確かに、当初の目標では今日、企画を決定し、意見交換をしながら今週を使って脚本を完成させ、その脚本を全員で読んでキャストやロケーションを決めるというものだったらしい。

最も時間的な融通の利く編集作業はフィルム・クラブでは監督がやるらしいので、結果的に皺寄せが全て監督に来てしまうという難点がありそうだ。

 

 

「ああ、明日は朝練かぁ。。。」

 

 

手帳でスケジュールを確認していたら、思わず、もう1つの現実に引き戻された。部活も勉強も、ここでの活動も、全部成立させないといけない。自分で選んだ道だけど、やっていけるだろうか。

家に帰ったら明日の予習をして、それでご飯を食べてお風呂に入って、早く寝よう。なんだか、今日は普段以上に疲れを感じてしまっている。

喉に乾きを感じて、鞄からペットボトルを出そうとする。

 

「そっか。」

 

まだ買っていなかった。

帰りに買わないと。むしろ、どうして気が付かなかったんだろう。しょっちゅう飲んでいるはずなのに。

部活動中も、水道水で済ませてしまっていたことを思い出した。冬場でよかった。夏だったら、暑さで確実に倒れてしまっているところだった。

 

帰り道の自動販売機で、いつものスポーツ飲料を買うことにしよう。中学生の時、部活の飲料としていつも飲んでいたら、別段好きでもないのに、常備するようになっていた。言ってしまえば、習慣になっていたのだ。しかも、石井くんに言われるまで気が付かなかったことを、よく覚えている。

そう、石井くんに。

 

「・・・悪いこと、しちゃったな。」

 

石井くんに、今日は怒鳴り付けてしまった。

これは喧嘩というよりは私が八つ当たりをしただけだから、どう切り出せば良いんだろう。きっと、いつも通り接しても良いのだろう。彼は優しいから、気にしていないかもしれない。

でも私にはできそうにない。できるわけがない。

 

溜め息と一緒に、白い靄が夜に溶けていった。溜め息をすると幸せが逃げると言うから、その白い"しあわせ"を少しかき集めようとしたけど、当然ながら、すぐに消えてしまう。集めたところで、迷信みたいなものだけど。

 

 

帰りに一本、スポーツ飲料を買って、家に帰った。

進めたようで、何も進んでいない一日だった。

強いて言えば、課題が増えてしまった。技術をやるのは良いけど、もうひとつの課題は、どうしよう。

 

「・・・馬鹿だなぁ。」

 

その呟いた一言は、自分への戒め。

それを心で反芻しながら、私は意識を夢へと沈めた。ああ、そういえば、まだ、明日の予習をしていなかったな。。。

 

 

 

 

 

朝、目が覚める。

枕元の目覚まし時計は06:00を示すのを確認して、起き上がる。カーテンを開けると、冬の日差しが鋭かった。

いつもの時間だ。さあ、さっさと学校に行って朝練をしよう。飲み物も忘れずに。

制服に着替えて荷物を持って、家を出る。外はやっぱり、痺れるように寒い。空気は乾燥していて、空は蒼く澄んでいる。そうだと思い、家の押し入れからお父さんのビデオカメラを持ち出す。長いこと使っていなかったせいか、埃を被っているもののしっかりと動く。

 

「赤いボタンを押して・・・」

 

時間もあるのだしと、少しだけ、家の前でその空や道路、普段見ているもの、気付かないもの、気にしないものを色々とカメラに収める。

 

「ズームが、これ・・・いや、近づいた方がいいのかな?」

 

思ったよりも、いや、普通に楽しい。()()()()()()という行為を、彼が、石井くんがよくやっていたことに納得した。少しだけ、と思い始めたのだが、すぐに時間は、朝練の遅刻ギリギリになってしまった。

 

 

 

 

 

 

「あー。。。つ、疲れた。。。」

「河瀬さんがギリギリなんて珍しいね。寝坊?」

「い、いえ。。。」

 

石井くんみたいに置き勉をしていないから、重いものを持ったまま走るのは本当に辛い。。。

 

「じゃあ、外周10周ねー。」

「はい!」

 

練習に来たのだから、あまり休むこともできず、そのままジャージに着替えて走り込みが始まった。

走りながら考える。

 

自分が()()()やりたいことは何か。

 

やっぱり、部活っていうのは、好きだし、やり甲斐も感じている。ただ、勉強、部活、そしてフィルム・クラブもとなると、それぞれを全てこなすのはなかなか難しいものがある。部活動を一日やると、その日は疲れて寝てしまうことがあるし、フィルム・クラブは企画段階での家での作業が多い。撮影になったとしたら、おそらくある程度台本を把握しておく必要なども出るだろう。そして勉強は学生として、最優先にこなすべきものだ。しかしどちらかといえば趣味に片寄る部活とフィルム・クラブにそのための時間と気力を圧迫されているのも確かだ。

要するに、取捨選択が必要なのだ。

 

 

放課後まで考えて、何度も、決めていた結論を反芻する。

 

「よし。」

 

思い立ったが吉日。

 

 

私は職員室に行き、顧問の先生に伝える。

 

「・・・私、部活を辞めます。」

 

一度に全部は無理でも、一つずつ、解決していこう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。