高校生映画人 ~青春の監督達~   作:Boukun0214

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ひねくれた正直者

 

 

「面白い映画を撮れるのか?」

 

 

 

 

それが、伊丹さんからの初めての言葉だった。

 

突然の言葉に、僕は混乱する。

 

 

ようやく口から出たのは、弱々しい、こんな声だった。

 

 

「えっと、たぶん・・・」

 

 

しかしすぐに切り返される。

 

 

「"たぶん"などという曖昧な表現は好きじゃないな。」

 

 

やばい。なんだこれなんだこれ。

 

何か、良い言葉はないのか。

 

 

僕が困って言葉につまっているところで、溝口さんが助け船を出してくれた。

いや、逃げ道かな?

 

 

「おっと伊丹、彼をおちょくるのはこれまでだ。」

 

 

そして、相変わらずの眈々とした口調で続ける。

 

 

「それで、本題なんだがな。伊丹、石井、河瀬の三人に、次に撮る映画の企画を作ってきてもらう。」

 

 

その意味をメンバー全員が理解したときの反応は、様々だ。

 

宮川さんはおおっと言うように僕らの方を見てきたし、本多さんと内田はえーっと言いたげな顔をした。

河瀬はびっくりしたようにその場で止まってしまった。

伊丹さんの前髪に隠れた目が、少しだけ期待に染まっているような気もした。

 

そのときの僕は、多分、にやけてたと思う。

 

 

「企画、ですか・・・?」

 

 

河瀬が、おそるおそるという表現がぴったりな声でそう訊く。

 

 

「そうだ。たててもらった三本の企画の中で一番良いものを、今年作る映画にする。」

 

 

溝口さんがそう言うと、内田が、納得いかないと声をあげた。

 

 

「えーっ!私のじゃダメなんですか!?」

 

 

内田には、溝口さんがやれやれと反論する。

 

 

「お前はまだ未熟だ。本多だと怪獣映画になるし、宮川はそもそも専門外だからな。」

 

 

内田、本多さん、宮川さんの順にちらりちらりと目で追っていく。

 

宮川さんは専門外ってことは、企画じゃなくて技術の方なのかな?

 

 

「お前が推薦したんだから、文句言うな。」

「・・・はーい。」

 

 

内田は溝口さんの言葉にぶーぶーと文句を言いながら頷く。

どうやら、そうとう納得がいかないようだ。

 

溝口さんは僕らの方に向き直ると、

 

 

「まあ、というわけだ。来週、企画会議をやるから企画書をもってこい。体裁はお前らの好きなようにしろ。・・・できるな?」

 

 

と、決定事項を述べた。

 

 

「・・・はい。」

 

 

河瀬が自信なさげに頷く。

 

一方で僕は、自信満々にこう答える。

 

 

「もちろんです!必ず良い企画を持ってきます!」

 

 

しかし、僕の言葉に突っかかってきたのはまた伊丹さんだった。

 

 

「・・・君はちょこちょこ表現法方が変わるな。軸がぶれっぶれじゃないか。」

 

 

その言い方に、さすがの僕もムッとする。

 

 

「そんなことないですよ。」

 

 

伊丹さんは、なら、というように僕に念をおした。

 

 

「じゃあ、一週間後にはその『良い企画』とやらを"一週間後"に見せてくれたまえ。」

 

 

わざわざ"一週間後"というワードを強調してきた。

 

僕が言い返せないでいると、

 

 

「楽しみにしてるよ。」

 

 

と言い残して、伊丹さんは荷物を肩にひっかけて部屋の外へと出た。

 

 

少し間を開けて、河瀬が溝口さんに質問をする。

 

 

「伊丹さんって、いつも、あんな感じなんですか?」

 

 

溝口さんは溜め息をついて答える。

 

 

「そうだな。誰に対してもあんな感じだし、別に気にするなよ。」

 

 

非常に納得がいかないけど、僕は、うなずいた。

 

 

「・・・はい。」

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