高校生映画人 ~青春の監督達~   作:Boukun0214

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仲直りのシナリオ

家のリビングで、少々僕は真面目にパソコンの画面に向かう。

 

そう。シナリオを執筆しているのだ。これがダメだとフィルム・クラブを抜けないといけないからかなりヤバイ。

 

こんな状況だから、一人でカタカタと集中できればいいのだが、どうもそうはいかないらしい。

 

 

「はぁ、で、なにしに来たの?」

「ふぁい?」

 

僕の中学校のときの後輩こと、フィルムクラブでは先輩の内田が、麦茶片手にお菓子を頬張る。

 

いやね、いいんだけどさ、なんで家に当たり前のようにいるの?家教えた記憶がないんだけど。。。

いや、いいんだけどさ!

 

 

内田は、お菓子をごっくんと飲み込んで、話を始めた。

 

「いえですね、いっしー先輩。さっき、伊丹さんの家に行ってきたんですよ。」

「へぇ。それで?」

「むぅ、そっけないですねぇ。」

 

そっけない態度を取ったものの、気になるものは気になる。

少しだけ、耳を傾けてみた。

 

「それがですね・・・」

 

 

とりあえず、ここからの話はちょっと長かったからまとめよう。

 

伊丹さんの家に偵察というか、遊びに行ったら、伊丹さんはパソコンの画面は開いているもの、シナリオはまったくの手付かずだったらしい。

そして居座ろうとしたら追い出されたとか。

 

「ふぅん。伊丹さんなりに、考えがあるんじゃないのかな?」

「そうですけど。。。」

「さあ、こっちもまずいんだから、帰った帰った。」

 

内田のことをぐいぐいと外へ押し出す。

 

「そんなー!いっしー先輩まで伊丹さんと同じ追い出し方するんですかー!!」

 

内田の抗議の声を無視する。

 

さて、邪魔な後輩も帰ったし、続きだ続き!

 

 

 

 

この間は、『社会派でシリアス』という、伊丹さんの土俵で戦ってしまった。それだと伊丹さんの方がやはり有利なんだろう。

 

なら、僕は路線を変えよう。

この間の、あの女の子との出会いは、確かに僕のなかで変化をもたらしていた。

 

 

 

一度書き終えたシナリオを、もう一度読み返す。

 

ーーダメだ。これじゃあ、まだ下を見て甘んじてしまっている。

 

修正点を見つけては、内容を書き換える。

そして、また確認。

 

ーーここの台詞は、少し伝わりにくいかもしれない。別の言い回しはどうだろう?

 

何度も何度も見直しと修正を重ねて、シナリオを紡ぐ。

 

『映画は受けとる側が決める』

 

伊丹さんにいつか言われた言葉は、きっとこういう意味なんだろう。

 

客観的な視点を考えて、また粗を削る。

 

何度も、何時間も、そのことを繰り返していく。

 

 

 

「うーん・・・」

 

あるところで、執筆の手が止まってしまう。

どうもこの先は進まない。。。

 

よし。行くか。

 

"あの場所"へ。

 

僕は、カメラバッグを引っ掴んで外へと飛び出した。

 

 

 

 

「あ、やっぱり。」

 

目的の場所には、僕の幼馴染みがいた。手には家庭用のビデオカメラを持っていて、練習をしているみたいだ。

 

「おーい!河瀬!」

 

少し遠くから声をかけると、河瀬はこちらを振り向いた。

 

「あ、石井くん。」

 

この場所は、昔、よく二人で遊んだ場所だ。河瀬は何かあるとよくここに来る。

 

「カメラ、上手くなった?」

 

河瀬の横に座る。

河瀬が、少しそっぽを向いてしまう。どうしたんだろう?

 

「うん。宮川さんのおかげで、少しは、ね。」

 

 

会話が途切れてしまう。

なんだか、二人とも黙っている空気に少し耐えられなくて、ちょっと慌てて話題を出した。

 

「そういえば、今日は部活じゃないんだね。休み?」

「あ。部活ね、辞めたんだ。」

「へ?」

 

河瀬は部活をとても一生懸命やっていた記憶があるので、びっくりしてしまった。

 

「あっ、これね。うちから持ってきたカメラなんだ。」

 

河瀬が、手元のカメラに視線を向ける。

性能は悪くはなさそうだけれども、やはり一般的なカメラだ。

 

「それじゃあ、練習するのには不便じゃない?」

「ううん。大丈夫。」

 

河瀬は、首を横に振ったが、すぐに訂正する。

 

「・・・いや、うん。少し、ね。」

 

 

今日、このカメラを持ち出したのは、いつものように見慣れた風景を撮影するためじゃない。

 

僕は、肩からかけたカメラバッグを、少し持ち上げる。

 

「河瀬、このカメラ、使ってよ。」

「えっ?」

 

このカメラは、僕が持つよりも、きっと河瀬に使ってもらった方がいい。

 

「僕は、監督をやる。だから、このカメラは使わない。それに、河瀬がこのカメラを使った方が、喜ぶと思うんだ。」

 

河瀬は、少し固まって、僕へカメラを押し戻した。

 

「でも・・・こんな大事なもの・・・それに。」

 

ちょっと、言葉に詰まってから河瀬は続けた。

 

「この間、私、石井くんに、当たっちゃったから。私には、そんな資格は・・・」

「ああ、えっと、あのときのこと?僕は気にしてないよ。それよりも。」

 

遠慮する河瀬に、僕は語りかける。

ちょっと、こんなことを言うのは照れくさいけど。

 

 

 

「僕の作品は、河瀬に、このカメラで撮って欲しいんだ。」

「・・・」

「うん。だからさ。これは、僕のわがままなんだ。」

 

押し黙る河瀬に、僕の宝物を差し出す。この言葉は、僕の本心だ。

 

河瀬は、少しの間、僕のことを見て。

そして笑顔でこう答えた。

 

「・・・ありがとう。」

 

河瀬はカメラを受け取って、大切そうに抱える。

 

「でも、まだ私、監督を諦めた訳じゃないから。」

 

そういって胸を張る河瀬が、僕の親友が、なんだかちょっと可笑しくて、笑ってしまった。

 

「アハハハハっ。」

 

少しだけポカンと僕の顔を見たあと、河瀬も一緒に笑い出す。

 

「ふふっふふふっ。あはははっ」

 

 

親友同士が、夕日に包まれ、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし。出来た!」

 

力作とは、こういうときにこそ使う言葉かもしれない。

あのあと、家に帰り、そのまま執筆を再開した。

 

流石に夜ご飯はしっかり食べましたよ。ええ。だってお腹すくもの。

 

 

このシナリオで、僕は勝負に出る!

 

 

そして寝る前に、窓の外を眺めた。

 

空の黒は、もう、少しだけ青く輝きを取り戻しつつあった。

 

 

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