親愛へのレスポンス ~ Story of Honoka 作:Kohya S.
私、
絵里ちゃんみたいにてきぱきこなすのは、とても無理だとしても、なんとかがんばってみよう、って思ってたんだけど……。早速、そんな私の意思が試される事態が、起きちゃったんです。
新学期の講堂での演説からしばらくたって、ラブライブ!の予選も無事に終わり、しばらくのときだったんだ。
「「「生徒会交流会?」」」
私と
放課後、生徒会室で資料を整理していた私たち三人のところに顧問の先生がいらっしゃって、交流会のことを話されたんだ。
そんな行事については、私たちはなにも知らなかったので、ビックリしちゃった。
「そう、交流会だ」
生徒会顧問の本条先生は繰り返したの。
「交流会というと……他校の生徒会の方とお会いするんですか?」と海未ちゃん。
「うん、近隣の区から、何校かの生徒会が集まるんだよ」
そう先生はこたえて、私たちにA4サイズの紙、数枚を渡されます。そこには交流会の内容が書かれていたの。
先生はそれを見ながら詳しい内容を説明してくださいました。
私立、国公立を問わず集まること、各校から二、三人の役員が参加すること、役員たちで問題を共有したり、親睦を深めたりすること、来週末から毎土曜日に三回集まること、などなど。
「えー、面倒くさいよー」
その内容を聞いて私は思わずいったんだ。だってμ'sの練習もそれだけできなくなっちゃう、ってことだもん。
「穂乃果、そんなこといってはいけません」
でも、海未ちゃんにさっそく叱られちゃった。
「まあ、気持ちはわかるよ」
本条先生は苦笑しながらそうおっしゃいました。先生、わかってるー!
「ただ、よその生徒会と話をするのは、これから一年、生徒会をやるうえで、損にはならないと思うぞ」と先生。
「たしかに、悩みとか、共有できそうですね」とことりちゃん。
うーん、そういわれちゃうと、参加しなきゃ、ダメかなあ。
「ちなみに、交流会の内容は生徒会新聞でレポートしてもらうからな、覚悟しておけよ」
先生はそういい残して生徒会室から出ていかれました。
・
ドアが閉まったあと、私は机に突っ伏しちゃった。だって、やっぱり面倒くさいんだもん。校内の仕事だけでも、この書類の山!なのに。それにμ'sの練習だってあるし。
「行きたくないよー」
私は椅子に座ったまま足をじたばたさせると。
「穂乃果、わがままいうんじゃありませんよ」
海未ちゃんが立ち上がって私に鋭い視線を投げかけてきたんだ。うん、わかってるけどさあ……。
「穂乃果ちゃん、わたしたちも行くから、がんばろ」
ことりちゃんも椅子から立って私をはげましてくれたけど……。
ちなみに
「そうだ!」
いいこと思いついちゃった。
「海未ちゃんとことりちゃんで行ってきてよ!」
「ええーっ、それはまずいよー。生徒会長は穂乃果ちゃんだよ」
ことりちゃんは両手を胸の前で握りしめて訴えるけど。
「大丈夫、ことりちゃんだって、書記じゃない。それに書記はひとりだけだし」
「それはそうだけどー」
「つまり、書記長だよ! ことり書記長。生徒会長より偉いよ! 同志ことり!」
私は椅子から立ち上がってことりちゃんに敬礼しちゃうの。
ことりちゃんは困った顔だけど、そんな顔も可愛い!
ことりちゃんは、すこしたれ気味の目に橙色の瞳が優しそうな雰囲気で……。ベージュ色の髪を、緑のリボンでくるっとまとめてるところがチャームポイントなんだ。
「ほーのーかー」
私は背後から冷たい視線を感じたんだ。
「いいかげんにしなさい……」
そう、海未ちゃんがこわーい顔をしてにらんでたの。
海未ちゃんはさらさらのロングの黒髪に茶色の瞳の美少女なんだけど……私を叱るときの迫力は、それはもうすごいんだから……。
「はい、すみませんでした……」
素直に謝る私。
海未ちゃんが穏やかな顔に戻ったのでほっとしちゃった。いつもそうなら可愛いのに……。
「でも、どうすればいいのかな」
ことりちゃんが書類をパラパラとめくるのを、三人でのぞき込んだんだ。
「えーと、千歳橋高校で開催されるようですね」と海未ちゃん。
千歳橋高校は音ノ木坂から数駅のところにある公立の高校だね。
「初回は来週の土曜日午後、それから翌週とその次の週も、ですね」
「三日間って、ずいぶん長いよね」
うん、ことりちゃんに私も同感だよ。
「グループディスカッションがあるので、それなりの時間を取るようですね。とはいえ、半日ずつですから」
「でも、それだけμ'sの練習、できなくなっちゃうね。ちょっと残念だな」
海未ちゃんの言葉に私がちょっぴり残念そうにいうと。
「穂乃果の気持ちはわかりますが……。これも大事な生徒会の役割ですよ」
海未ちゃんがなぐさめてくれたの。
「次のライブまで、すこし時間もあるし」
ことりちゃんも前向きだよね。
「でも、生徒会って、忙しいんだねえ」
私が溜め息をつきながらそういうと、さすがにふたりも同感、という雰囲気になっちゃった。
「でも、ほかの学校の人に会うのって、ちょっと楽しみかも」
ことりちゃんが微笑みながらいったんだ。たしかに、それはあるかも……そう思わないと、やってられないし、ね。
「そうですね。では、三人で参加する、ということでよろしいですか」
「「はーい」」
海未ちゃんの問いかけに、私とことりちゃんは声を揃えたの。
各校から二、三人ということは、私は生徒会長だから当然、参加しなきゃだけど、海未ちゃんとことりちゃんは、どちらかひとりだけでもいいんだよね、本当は。
それなのに、当たり前のようにふたりとも参加してくれるなんて、やっぱりふたりとも優しいな……。
当日はお昼過ぎに秋葉原駅に集合して、千歳橋高校に向かうことになりました。
「どうせなら平日にしてくれれば、授業が休めるのになー」
すこし遅れちゃったけど、練習に参加するため部室に向かいながら、私は思わず口に出しちゃった。
「えへへ、ことりも、ちょっとそう思っちゃいました」
ことりちゃんはぺろっと舌を出して笑ってます。
「うふふ、そうですね。でも、学業に影響が出ては本末転倒ですよ」
海未ちゃんも笑みを浮かべたの。でも、やっぱり海未ちゃんは真面目だなあ……。
なまけ者の私には、正直いって面倒なのは否めないけど……このふたりと一緒なら、楽しい交流会になるかも、って思えるよね。
・
練習を終えたあとの部室で、私たち三人は絵里ちゃんと希ちゃんに去年の交流会について聞いてみることにしたんだ。
「絵里ちゃん、希ちゃん、私たち、交流会に行くことになっちゃったんだよー」
私がそういうと、ふたりは顔を見合わせてる。
「穂乃果、それではわかりませんよ。私たち三人が、来週、生徒会役員の交流会に参加することになったのです」
海未ちゃんが説明してくれました。
「ああ、生徒会の交流会ね。私たちも参加したわよ」
うなずく絵里ちゃん。
「どんな感じなのか、教えてほしいんです」
ことりちゃんの頼みに……あれ、希ちゃんは首をかしげてるの。
「うーん……うちらは、ちょっとだけ残念な結果、だったかな」
「残念な結果?」と私は聞いちゃいました。
だって、交流会でそんな結果が出るなんて、不思議な感じだもん。
「交流会自体は、とても有意義だったわ。でも……もし今年も同じような内容だとしたら、あまり細かいことは、話さないほうがいいと思うの」
「そうやね、あれは知らないでいたほうが楽しいやね」
そういって絵里ちゃんと希ちゃんはふたりで笑ってるんだ。
こうなっちゃうと、私たち三人は狐につままれたような顔を見合わせるしか、ないよね。
――――――――――
私は園田海未、16歳、音ノ木坂学院の二年生です。故あって生徒会の副会長を務めさせていいただいています。
先週、生徒会交流会のことを知らされて、穂乃果、ことり、それに私の三人は非常に驚きました。交流会について絵里と希は詳しいことは教えてくれませんでしたが、有意義だったとのことで、私は興味がわいたのでした。
そしていよいよ当日を迎えました。
私たち三人は秋葉原駅の電気街口で、午後から待ち合わせです。
残暑もようやくおさまってきて、風にも秋の気配が感じられるようになってきました。UTX高校の大型ディスプレイにはA-RISEの姿が映し出されています。
「穂乃果ちゃん、遅いね」
ことりの言葉に私はうなずきます。ことりと私が先について穂乃果を待つ、といういつも通りの展開でした。
待ち合わせ時間をすこし過ぎて、そろそろ電話しようかと話していると、ようやく穂乃果がやってきました。
「ごっめーん、寝坊しちゃって」
穂乃果は息を切らしています。
「仕方ないですね。とはいえ、間に合いましたから良しとしましょう」
「あはは、ごめん」
穂乃果はそういって笑いました。……私も甘くなりましたね。とはいえ、穂乃果も致命的な遅れ方はしなくなりましたから、進歩しているのでしょう。
穂乃果は明るい茶色の髪を、黄色いリボンでサイドでまとめています。すこし青みがかった目によく似合っていました。
他校への訪問ですから三人とも制服姿です。所持品には筆記用具くらいの指定しかありませんでしたが、話し合って鞄もスクールバッグにしておきました。
秋葉原駅から電車に乗りました。数駅で千歳橋高校の最寄り駅です。
「こっちみたいですよ」
駅を出ると、ことりがスマートフォンで道を確認してくれました。
付近は雑居ビルやマンションが立ち並んでいて、音ノ木坂学院のあたりに比べると、いかにも街中という雰囲気でした。すこし離れたところには高速道路が走っているのも見えます。
「あんまりこういう所、来ないから、珍しいね」
穂乃果はビルに展示してある工具類や(こういったものを扱ってる会社なのでしょう)、株価の電光掲示板などにいちいち感心しています。
途中、私たちは橋を渡りました。橋の渡り終えたところの歩道はちょっとした段差になっていて、数段の階段がありました。その先は交差点です。
「いえーい!」
穂乃果は手すりに飛び乗って滑り降ります。
「穂乃果ちゃん、あぶないよー」とことりがいった矢先。
階段の先の左側、植え込みの陰から、ちょうどひとりの殿方が歩いて来たのでした。
「おぉっと」
驚く穂乃果。なんとか衝突は避けましたが、次の瞬間、バランスを崩してしりもちをついてしまいました。
「穂乃果ちゃん!」「穂乃果!」
私たちはあわてて駆け寄ります。それに、相手の方は大丈夫でしょうか。
「いったぁー」
穂乃果は同じ姿勢のままお尻をさすっています。
殿方は驚いているようでしたが、幸いなんともないようです。詰襟の学生服で、どうやら私たちと同じ高校生のようでした。
彼は穂乃果をびっくりしたように見ていました。それはそうですよね、突然目の前にに女の子があらわれて、盛大に転んだんですから。
しかし、私は彼の視線の先が気になりました。
穂乃果はしりもちをついていて……その……制服のスカートが……見事にめくれてしまっていました。
「きゃーっ」
穂乃果も気付いてしまったようです。みるみる頬が赤く染まりました。スカートをばっと押さえると、次の瞬間にはすっくと立ち上がり、そのまま明後日の方角に走り出しました。
「まってー、穂乃果ちゃーん」
ことりがあわてて追いかけます。
彼はそのようすをあっけにとられたように見ていました。
なぜか私と彼が置き去りにされたような格好です。
「あの……どうもご迷惑をおかけいたしました」
私は頭を下げました。
「あ……いえ、大丈夫です」
彼も心なしか赤くなっているようでした。
「では、失礼いたします」
私はそういって、足早に穂乃果とことりが走っていったほうに向かいました。
数ブロック歩いて、雑居ビルの入り口の前にいるふたりをようやく見つけました。
「大丈夫、穂乃果ちゃん」
ことりが穂乃果を気遣っています。
「えーん、知らない人に、パンツ、見られちゃったよ……」
さすがの穂乃果もショックだったようですね。
「穂乃果、怪我などはありませんか」
私はそう声を掛けます。
「あ、海未ちゃん。うん、私のお尻は大きいから、平気みたい」
「そうですか、ならよかったですが……」
とりあえず一安心ですね。
「もう、穂乃果ちゃん、あぶないっていったのに」とことり。
「ごめんね、海未ちゃん、ことりちゃん」
穂乃果は素直にいいました。
そういわれるとつい許したくなるのですが……さすがに、すこし釘をさしておいた方がいいでしょうね。
「穂乃果の落ち着きのなさには、困ったものです」
「てへへ、すみません……」
「今回はたまたま大丈夫でしたが……もし相手の方を巻き込んだら、たいへんなことになっていましたよ」
「そうだね……」
穂乃果はしゅんとしています。もう、仕方ないですね。
「相手の方には、私から謝っておきました。……せめて見通しのいいときだけにしてくださいね」
「うん、わかったよ!」
笑顔が戻りました。
しかし私はさきほどの光景を思い出してしまいました。
「落ち着きがないから……その……あのような破廉恥なことになるんですよ」
「そうだ、私のパンツ……」
穂乃果が目を落とします。
「穂乃果ちゃん……」とことり。
穂乃果はしばらく下を向いていましたが、さっと顔をあげました。
「ま、いっか。減るもんじゃないし」
そういって笑いました。つられて私たちも笑ってしまいました。
まったく、穂乃果は切り替えが早いですね。そこが穂乃果のいいところなのですが……。