親愛へのレスポンス ~ Story of Honoka 作:Kohya S.
交流会の翌日の日曜日。μ'sの練習のために海未ちゃんとことりちゃんと一緒に学院に向かう途中、自然に話題は昨日のことになったんだ。
「来週は、中間発表っていってたよね」
私が思い出していうと。
「そうですね、皆さんの前で説明するのでしょうね」
うなずく海未ちゃん。
「ちょっと緊張するねえ」
「ライブとは、すこし違う緊張感が、あるよね」とことりちゃんも。
「うん、そうだね」
私はそういったけど……そっか、ライブにくらべれば、そんなに心配することないのかも。
「しかし、穂乃果のくじ運には助けられましたね」
海未ちゃんがそういったんだけど、グループ分けのことかな。
「うん、おかげで屋上に出られたしね」
屋上、眺めがよかったね。
「うふふ。それもそうですが……」海未ちゃんは笑ってから続けるの。
「千歳橋高校のかたは、がんばってくださっているように思います」
たしかに、ほかの学校だったら、どうなってたのかな。
「特に神部さんは……いろいろと気をつかわれているように感じました」
うーん、私にはよくわかんないけど。
「そうなのかなー」
「そうですよ。穂乃果は気付いてないだけです」
海未ちゃんはすこしすねたようにいいました。
「そっかー」
じゃあ、神部君にも感謝だね。
「交流会のこと、絵里ちゃんと希ちゃんに、聞いてみようよ」
ことりちゃんがいうので。
「おお、いいねえ。今度は教えてくれるよね」
私もそういったの。気になるよね。
・
屋上での練習が終わったあと、部室に戻ろうとする絵里ちゃんと希ちゃんに、私は話しかけたんだ。
「絵里ちゃん、昨日、交流会に行ってきたんだけど」
「ああ、この前いっていた……。開催されたのね」
そういって足を止める絵里ちゃん。
にこちゃんと一年生たちには、ことりちゃんが生徒会の話ですよ、と説明して先に戻ってもらいました。
「それで、どうやった?」と希ちゃん。
海未ちゃんが説明します。
「はい、グループにわかれて、自己紹介から始まって、作業をおこなったのですが……なかなか新鮮でした」
それを聞いて希ちゃんがうなずいたの。
「ほう、うちらとおんなじみたいやね」
「音ノ木坂では、あまりああいう活動はしないから、面白かったでしょう」
って、絵里ちゃんも笑みを浮かべていったんだ。
「うん、楽しかったよ。すっごく疲れちゃったけど……」
私がいうと、海未ちゃんとことりちゃんは笑いました。
「それで、絵里、希。残念な結果、といっていましたが……」と海未ちゃん。
うん、私も気になってた。
「ああ、それね……まあ、話してもいいでしょうね」
視線を交わす絵里ちゃんと希ちゃん。そして。
「最終発表のあとで、投票があるのよ」
そう絵里ちゃんがいったんだ。
「投票?」
私は思わず繰り返しちゃった。
「ええ、投票よ。ひとりずつが自分のグループ以外で、もっとも良かったと思うグループに投票するの」
「残念な結果、ということは……」
海未ちゃんが聞くと、希ちゃんがうなずいたの。
「そうやね、うちらは二位だったんや」
「一位はUTX高校のグループだったのよね……。私たちも悪くなかったと思うんだけど」
絵里ちゃんが首を振りました。
「まさかUTX高校と組んでたりして……」
希ちゃんがからかうようにいうと、ことりちゃんが答えます。
「穂乃果ちゃんがくじを引いて、私たちは、千歳橋高校と組んだんですよ」
「よしよし、さすが穂乃果ちゃんやね」
希ちゃんに頭をなでてもらっちゃった。
「私は、UTX高校と組むのも悪くないと思いますが……」
と海未ちゃん。たしかに、それも面白そうだけど。
「でも、もし負けちゃったら、やっぱりちょっぴり悔しいよね」
私がいうと、海未ちゃんとことりちゃんもうなずいたんだ。
「理由はどうあれ、がんばるのは悪くないわね。今年は、リベンジしてね」
絵里ちゃんはそういってウインク。
「うん、けっこういい感じに、なってると思うんだ」
私は胸を張っちゃいました。
「期待してるで」
希ちゃんが私の背中をたたきました。
・
その週はあっという間にすぎて土曜日になって、私たち三人はまた千歳橋高校に向かったんだ。
千歳橋高校のふたりは先に来ていて。
「こんにちはー」
今回はしっかりあいさつしたの。もうすっかり仲良くなったもんね。
「あ、こんにちは」「どうも」
神部君と倉田君もそう返してくれたんだ。
各グルーブの机の上には、前回のスケッチブックとペン、名札のほかに、お茶や水の数本のペットボトルと、二台ずつのノートパソコンが置かれてたんだ。おお、今日はこれを使うんだね。
今日の内容について五人であれこれ推測していると、先週と同じく佐藤さんが演壇につきました。
「皆さん、こんにちは」
生徒たちはばらばらに、こんにちはと答えたの。
「えー、今日は、前回の内容を、パソコンを使ってまとめていただきます」
ふむふむ。
「皆さんにお聞きしますが、プレゼンテーション用のソフト、使ったことのあるかたは?」
私は海未ちゃんとことりちゃんを見るんだけど、ふたりとも首を振っていて……ありゃ。
神部君と倉田君は手を挙げてるみたい。
「はい、ありがとうございます。どのグループにも経験者がいるようですね。もしわからないことがあったら、グループ内で教えあってください」
……これはふたりに頼るしかないね。
佐藤さんは続けました。
「二時間半、取りますので、その間にまとめてください。そのあとで各グループに、十五分ずつ、発表していただきますね」
スクリーンに映し出されたのは「資料作成:三時半まで」の文字。
「休憩は随時、お取りください。では、よろしくお願いします」
佐藤さんがそういうと、一気に教室は騒がしくなったんだ。
・
「海未ちゃん、ことりちゃん、ぷれぜんてーしょん、用のソフトって、知ってる?」
私が聞くとふたりは首を振ったの。
「私は残念ながら……」
「お母さんが使ってるのは、見たことあるけど」
私は神部君と倉田君のほうに顔を向けます。
「情報の授業で、すこし使いました」と神部君。
「俺、けっこう得意かも」これは倉田君。
「よろしくお願いします」
私は机の上に両手をついてお願いしちゃいました。
「いや、そんな。一緒にやりましょう」
神部君は打ち消すように手を振って、そういってくれたんだ。
二台のパソコンはネットでつながってるみたい。
まずは前回、スケッチブックにまとめたのを入力していくことになりました。
最初にパソコンの前に座ったのはことりちゃん。
「えっと、この赤いPってアイコンですね」
「うん、それそれ」
ことりちゃんの横に座った倉田君がそういったの。ほかの三人はわきからのぞき込むような格好だよ。
ソフトが立ち上がると、白い用紙が画面に出てきて……。
「あれ、ワープロみたい?」
「はい、基本的な操作は同じですよ」
神部君が答えてくれたの。なんだ、それなら私もいけるかも?
「えーと、生徒会の役割は……」
ことりちゃんがスケッチブックを見ながら打ち込んでいくよ。
そのままだとわかりにくかったり、長すぎたりするところを、みんなでああでもないこうでもない、といいながら直していったんだ。
途中で倉田君に交代したりしながら、なんとか入力し終わって。
「じゃ、表示するよ」
倉田君がそういって操作すると、画面に入力した内容が表示されたよ。
「おお、なんかそれっぽいね」
私は感動しちゃいました。
「悪くないと思います」海未ちゃんもうなずいてる。
「そうですね、ここまではいいですが……もうすこし整理したほうがよさそうです」
でも、神部君はすこし不満そうだね。
「課題から解決策、理由の流れはいいですけど、文章が長いかなと」
うーん、そんな気もするなあ。
「俺は、もうすこし外見にこだわりたいな。色とか文字の大きさとか」
倉田君もいいます。そっか、そういうのもあるんだね。
ちらっと時計を見ると二時をすぎていました。あと一時間半かー。
「それじゃあ、分担して作業するのは、どうかな」
ことりちゃんが提案したんだ。
「せっかく二台あるし、文章班と外見班にわかれるの」
「おお、いいアイデアだね」
みんなも同意みたい。
「じゃあ、俺は外見のほうで……」と倉田君。
「わたしも、そっちかなー」
うん、ことりちゃんには向いてると思う!
「そうすると俺は中身のほうですね」と神部君もいって。
「海未ちゃんはやっぱり、文章だよね」
私がいうと、うなずく海未ちゃん。
「そうですね、そのほうがいいでしょうね」
「μ'sの作詞担当、だもんね!」
「それで、穂乃果はどうしますか?」
そう海未ちゃんに聞かれて……うーん、悩んじゃうけど、生徒会長としては中身で勝負、かな。
「私も神部君と海未ちゃんと一緒に考えるよ」
神部君はにこっと笑いました。
それからファイルを二つにわけて、それぞれ修正していったの。
まずは神部君がパソコンを操作して、私と海未ちゃんは両側に座ったんだ。海未ちゃんはやっぱり文章にはセンスがあるみたい。長い文章をうまくまとめてくれます。
私も神部君にかわって途中から入力を担当して……意外にうまく使いこなせたと思うよ。
机の向かいからはことりちゃんと倉田君ががんばってる声が聞こえてきて。
「ここは、ピンク色がいいと思います」
「お、いいね」
倉田君がマウスをカチカチ。
「アニメーションとかも、できるよ」
「わー、楽しいです」
なんかあっちのほうが楽しそうだな……。
「穂乃果、集中してください」
よそ見してたら海未ちゃんに怒られちゃった。神部君が笑ってるよ……。
それから途中でファイルを交換して、仕上げていったんだ。
しばらくして、海未ちゃんが満足そうにいいました。
「できましたね」
「こっちも、もうすぐだよー」とことりちゃん。
外見班の作業が終わったのでファイルをひとつにまとめたんだ。
「じゃ、行きますよ」
倉田さんが操作すると再生が始まったの。
うーん、すごくカラフル! 文章が、ばーって動いてくるのも格好いいかも。最後のページなんか、くるくるっバーンって感じだし。
「なんでしょうか……動かしてみると、すごく……派手ですね」
海未ちゃんがすこし不安そうにいうと。
「うーん、そうですね」
神部君も苦笑してるね。
「ちょっと、やりすぎちゃったかな」
ことりちゃんは、すまなそうです。
「えー、いいと思うよー」
私がそういうと、ことりちゃんはほっとしたように笑いました。
ほかのみんなも納得したみたい。
時間を見ると三時十五分。あと十五分だね。
資料の一覧を眺めながら神部君がいったんだ。
「発表の分担は、どうしましょうか」
「五人でそれぞれ、わける?」と倉田君。
みんなで作った資料だし、それがいいのかな。
「うーん、そうですね……それだと発表者が多すぎる気もしますが……」
神部君は悩んでるようだけど。
「せっかくだから、みんなで発表しようよ」と私がいうと。
「では、順番を決めましょうか」
海未ちゃんの言葉にみんなうなずいたんだ。
順番は神部君、倉田君、海未ちゃん、ことりちゃん、そして私、になったの。おお、私、トリだよー。
「では時間まで、それぞれの部分を練習しましょう」
神部君の提案で、千歳橋組と音ノ木坂組でそれぞれパソコンを使って、自分の部分を読んでみたんだ。
時間いっぱいまで練習して……なんとかできそうな感じになりました!
――――――――
佐藤さんが演壇に立たれました。
「はい、そろそろ時間ですが、よろしいですか」
「すみませーん、あと五分だけ、いいですか」
ひとりの生徒さんが声を挙げました。
「……そうですね。じゃあ五分だけ待ちましょう。ほかのグループのかたは、休憩されてください」
佐藤さんはそういっていったん演壇から降りられました。
「海未ちゃん、私、トイレいってくる!」
穂乃果はそういいました。
「あ、私も行きます」
「ことりも……」
私は神部さんと倉田さんに軽く頭を下げてから、席を立ちました。
もう、神部さんが苦笑してますよ……。
廊下を歩きながら私は穂乃果に声をかけます。
「穂乃果、その……殿方の前なのですから……トイレにいく、などといわないでください」
「えー、だってその通りじゃない」
「いいかたというものがあります。たとえば、お花を摘みにいく、とか……」
私はすこし赤面してしまいました。
「穂乃果ちゃん、わたしも、すこし気をつけたほうが、いいと思うな」
ことりも助け船を出してくれました。
「うーん、そうかなあ」
穂乃果はいまひとつ納得していないようですが……。
・
教室に戻るとちょうど時間でした。
「では、そろそろ発表に移りたいと思います。皆さん、ファイルをサーバにコピーしてください」
倉田さんがパソコンを操作します。
「まず、Aグループからです」
ということは、私たちは二番目でしょうか。
「えー、マイクは、いらないですかね、この人数ですから。私は、疲れちゃうので、使ってますけどね。では、十五分でお願いします」
佐藤さんがそうおっしゃると、隣の机の五人が、教室の前に出ていって発表を始めました。
「私たちは、……高校と……高校です。よろしくお願いします」
Aグループは委員会活動をテーマに選んだようでした。
発表資料はシンプルで、説明もあまりわかりやすいとはいえないように思いましたが……熱意は伝わってきました。
しばらく時間がたったとき「チン」とベルの音が鳴りました。「あと三分です」と佐藤さん。
発表中の生徒さんは明らかにあわてたようで、早口になりました。
そして、また「チンチン」とベルの音。「あと一分です」の声。
「うわ、これ、緊張するねー」
穂乃果が私にささやきました。
「そうですね、気を付けましょう」
私はそう答えました。しかし、今さらどうしたらいいのでしょうか……。
一分後、今度はベルが三回、鳴りました。
生徒さんはいよいよ急いで残りを読み上げて……なんとか最後まで終えました
「……以上で発表を終わります。ありがとうございました」
そういって五人は頭を下げました。教室からは拍手が上がりました。
「次はBグループ、お願いします」
佐藤さんの声に、私たちは教室の前に進み出ました。
神部さんがまず演台に立ちました。ほかの四人はわきで待機します。
「では、音ノ木坂学院と千歳橋高校から、発表させていただきます」
神部さんがそういってパソコンを操作すると、スクリーンに「文化祭の運営と盛り上げ方」の文字がアニメーションして表示されました。
教室から驚きとも笑いともとれるどよめきが起こりました。
「おおっ、受けてるよ」
穂乃果がことりに耳打ちしています。
神部さんは無事に担当分を終わらせました。続いて、倉田さんとことりも。いよいよ私の番です。
「さきほど申し上げました、『会場の確保』について、なにができるかですが……」
私は資料を読んでいきました。
ふと神部さんがなにか合図をしているのに気付きました。これは、もうすこし速めに、ということですね。私は軽くうなずきました。
「……以上のように、効率的な運用が可能と考えました」
なんとか私も終わらせました。神部さんに頭を下げると、彼は笑い返してくれました。
次は穂乃果ですね。いつになく緊張したようすで穂乃果は演壇に立ちました。
「えー、最後に挙げたのは『生徒会にできること』です。……あれ、ページが進まないよ」
神部さんがあわてて手伝います。
「あはは……すみません。えっと、私たちは実行委員会との分担が必要だと思います……」
穂乃果はなんとか進めていきます。
そこでベルが「チン」と鳴りました。
「わっ」
穂乃果は驚いたようでした。時間的にはまだ余裕があるのですが……かなりの早口になってしまいました。
私は必死に合図しますが、穂乃果は気付きません。
「あ、これで最後か。……以上で私たちの発表を終わります。ありがとうございました」
穂乃果がそういって頭を下げたとき、ちょうど「チンチン」と二回のベルが鳴りました。
生徒さんたちからの拍手を受けながら私たちは席に戻りました。
「ごめん、なんか、あわてちゃって……」
穂乃果は頭をかいています。
「いえ、今回は中間発表ですから、練習だと思えば、あまり気にしなくても……」
神部さんがはげますようにいいました。
「それに、オーバーするよりはいいと思います」
「えへへ、ありがとう。神部君はバッチリだったね!」
と穂乃果は笑顔で答えます。
「そうでもないですよ」
彼も照れたように笑っていました。
・
「では、次はCグループ、お願いします」
佐藤さんが呼びかけると四人の生徒さんが立ち上がり、演台に向かいました。
「UTX高校だね」
ことりのささやき声に穂乃果と私はうなずきました。
ひとりの生徒さんがパソコンの前に立ちます。そして演台の真ん中にふたり。もうひとりはわきで待機しています。
「東雲学院とUTX高校です。よろしくお願いします」
そう口を開いたのは演台のふたりのうちの片方の男性でした。東雲学院のかたですね。
彼がちらっと合図するとスクリーンに発表が映し出されました。
「私たちは地域貢献をテーマとして選びました……」
発表資料は決して派手ではありませんが、要点がよく整理されていて、すっと頭に入ってきました。また、資料に書かれていることをそのまま読むのではなく……資料を補うように説明をしていきます。
また、彼がパソコンを操作するのではなく、パソコンの前にいるかたが、話が進むのにあわせて操作していました。
ときどきわきにいるもう一人が、腕時計を確認して彼に合図しています。
発表が区切りにくると、発表者は東雲学院のかたからUTX高校の女性に交代しました。すらりとした長身で、すこし茶色がかったセミロングの髪を、後ろでまとめていました。名札には生徒会長、白井さやか、と記されていました。
UTX高校の白井さんの発表はさらに洗練されていました。私も自然に引き込まれていくのがわかります。
「ここまでで課題についてはご理解いただけたと思います」
彼女が合図をするとスクリーンが暗転しました。自然に視線が彼女に集まります。
「それでは私たちに、なにができるのでしょうか。ひとつの方法がスクールアイドル活動なのだと考えます……」
スクリーンに次の発表資料が映りました。
ベルが鳴っても彼女たちはあわてることなく発表を進め、二回目のベルが鳴ったときには、ちょうど最後のページでした。
「なにか質問はありますでしょうか?」
彼女がそういって教室を見渡しました。特に質問はなく……。
「以上でCグループの発表を終わります。ありがとうございました」
といったときに三回目のベルが鳴ったのでした。
「いやー、そうだよね、スクールアイドルにもできること、あるよね」
穂乃果は腕組みをして感心しています。私もうなずきました。
「そうですね、考えさせられました」
「……でも、すごい完成度だったね」
ことりが心配そうにいいました。そうです。来週は投票で順位を決めるのでした。
「そっか、どうしよう」
穂乃果は暗い顔になってしまいます。私たち三人は顔を見合わせるのでした。
「すばらしい発表、ありがとうございました。では、次はDグループ、お願いします」
佐藤さんがうながされると、最後のグループが発表に向かいました。
彼らの発表も悪くないできでしたが……やはりCグループにくらべると、どうしてもわかりにくく感じられました。
「さて、以上で作業は終わりになります。今日の発表で、みなさんも自分たちのいいところ、悪いところがわかったと思います」
佐藤さんがそうおっしゃると生徒さんたちはうなずきました。
「来週は資料を仕上げていただいて、最終発表になります。発表後はみなさんで投票いただいて……一位と二位のグループを発表します」
教室にどよめきが起きました。
「もしファイルを持ち帰って作業したいグループがありましたら、終わったあとでご相談ください」
佐藤さんはいったん言葉を切られます。特に質問などがないのを見てお続けになりました。
「では、今日はここまでです。みなさん、お疲れさまでした」
教室は一気に騒がしくなりました。
・
「あんなの、私たちには無理だよー」
UTX高校の発表は穂乃果には相当ショックだったようです。頭を抱えてしまいました。
「そうですね……」
私もどうしたらいいのか……すこし途方に暮れてしまいました。
「そんなに落ち込まないでください」
神部さんが話しかけると、穂乃果は顔をあげました。
「でもー」と頬をふくらませす。
「まだ、一週間ありますし、いろいろとできることはあると思います。……とりあえず、ファイルをもらいましょうか」
神部さんがいって席を立ちました。
「あ、私もいくよ」
穂乃果も勢いよく立ち上がりました。私もあとに続きます。
佐藤さんのお話では、メールで送るかUSBメモリで受け取れるそうです。
「ちょっと生徒会のを、取ってきます」
神部さんはそういって足早に教室から出ていきました。
彼を待つあいだも、教室からは生徒さんたちが帰っていきます。
UTX高校の生徒会のふたりが通りかかりました。
「あら、音ノ木坂学院の高坂さんね」
先ほど発表された白井さんでした。
「あ、UTX高校の……」
穂乃果と私はなんとなく頭を下げます。
「ラブライブ予選ではお見事でしたわ。でも……やはり生徒会とスクールアイドルの両立は、無理があるんじゃないかしら」
にこっと彼女は微笑みました。
「そ、そんなことないよ!」
穂乃果は大きな声でいいました。
ちょうど戻ってきた神部さんがそんな穂乃果のようすを気掛かりそうに見ています。
白井さんはくすりと笑いました。
「来週の最終発表が楽しみですね。それではまた」
彼女と副会長さんは制服のスカートをひるがえし、教室から出ていきました。
「もう、あんなこといわれちゃったよ、海未ちゃん」
穂乃果はふくれています。
「そうですね。でも……ああいわれても仕方ないですね」
そういって私は首を振りました。
「うーん、そうだよね」
穂乃果はさきほどの発表を思い出しているのでしょう。目を落としていつになく真剣な表情でした。
神部さんはUSBメモリにファイルをコピーしていただいたようです。
いったん席に戻りました。
「これからどうするの、穂乃果ちゃん」
ことりが心配そうに聞きます。
穂乃果はきっと顔を上げました。
「うん、私、来週までの間に、もうすこしなんとかしたい」
穂乃果のスイッチが入ったようですね。
「どうかな、海未ちゃん、ことりちゃん」
「私は賛成!」とことり。
「ええ、私はもちろんかまいませんが……」
私はちらっと向かいの千歳橋高校のふたりに目をやりました。
「そっか……。神部君、倉田君、どうかな?」
穂乃果の目はきらきらと輝いていました。
神部さんの顔がすこし赤くなったように見えました。
「俺は……そうですね、ぜひやりましょう」
「俺はどっちでもいいよ」
倉田さんもいいました。
「よし、やろう!」
穂乃果が高らかにいいました。
「うん!」「はい!」「わかりました」「おー」
私たちも口々に答えたのでした。