月村家のたくさんの猫たちのなかの一匹の物語   作:向日葵星人

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第12話

「次元振の余波はもうすぐおさまるわ、ここから、なのはさんたちの世界になら明日には戻れると思う。」

リンディの言葉に、なのはは、顔を輝かせて喜んでいました。

しかしながら、ユーノの帰路、ミッドチルダへの航路はまだ安定しておらず、安全な航行ができるようになるまでには数ヶ月から半年はかかるようでした。

ユーノは、スクライアは遺跡を探して流浪しているような部族であるから、急いで帰る必要がないなどと、言っていましたが、おそらくリンディの心配していたことは、そういうことではないのだろうなとわたしは思いました。

そして、「ずっとここにお世話になるわけにもいかないし」などといっていましたが、それこそ違うでしょう。

リンディの心配をよそに、なのはは、「ならうちにいれば良いよ、今まで通りに」といって、満面の笑みを浮かべていました。

リンディもそれなら良いか、と思ったらしく、笑顔でそのやり取りを見ていました。

しばらくしてから、クロノとエイミーもやってきました。

エイミーはとても眠そうで、頭には寝癖が立っていました。

「あのひとが目指していた、あるハザードって場所、ユーノ君は知ってるわよね」

リンディによってアルハザードとはどんな場所なのか、なのはとわたしに向けた説明がありました。

次元世界の狭間に存在し、今は失われた秘術の眠る地。

とうの昔に次元断層の狭間に落ちて滅んだ地。

プレシアは、そこに辿り着くこと、そして、アリシアの復活と、自身の回復を望んだのでしょう。

しかし、魔法をもってしても、死者蘇生、時間跳躍などは決してできないこと。

そして、アルハザードの存在は御伽噺のようなもの。

しかし、大魔導師プレシアテスタロッサが命を懸けてまで探していたのだから、もしかしたらあるハザードへの路をほんとうに見つけたのかもしれない、リンディは言いました。

「いまとなっては、もう、わからないけどね」

リンディはそういって話を区切りました。

 

食事をしながら、リンディはこちらを向きわたしに尋ねてきました。

「そうえば、アースラに戻ってきてから、ずっとその姿よね」

わたしは、プレシアの最後を見届けアースラへ戻ってきてからずっと人間型に変身していました。

「少し、思うところがあってね」

別に、たいしたことではない、といった雰囲気を出したつもりでしたので、リンディにはそう伝わったようでした。

「もしかして、ユーノ君みたいに、そっちが本当の姿だったりして」

エイミーが、冗談を言うときのいたずらっぽい表情で言いました。

「吾輩は猫である」

わたしは、憮然とした顔で言いました。

 

アースラの面々と別れた後、鳴海臨海公園でなのはとユーノとも別れ、わたしは吾が家へと向かいました。

月村家は、わたしが出かけたその日と同じように、そこにありました。

門の前で、わたしは人間の姿で立っています。

ここへ来て、どうしようとか、やめておこうかとかいう気持ちが起こってきました。

それから、月村家の前を5往復ほどして、門の前へ差し掛かったときでした。

「おかえり、レオーネ」

透き通った声、柔らかそうな髪、やさしい笑顔。

そこに、月村すずかが立っていました。

「いま開けるね」

わたしは、主すずかが扉を開けても、まだ、呆然としていたようでした。

門扉を開けた主すずかに手をとられて、ようやく、はじめて話すことができました。

「ただいまです。主すずか」

主すずかは、わたしの声を聞いて、くすぐったそうな顔をしました。

「すずか、すずかって呼んでね」

わたしは、手を引かれて家の中へと入りました。

「おかえりなさい、すずかさま、レオーネ」

玄関には、月村家のメイドであるノエルが立っていました。

知らないはずの人物から、名前を呼ばれるのは2度目であるので、今度はそれほど驚きませんでした。

おそらく、知らぬは本人のみであったようです。

「朝ごはんは、3人分用意しますね」

「うん、お願いね」

すずかはうれしそうでした。

わたしが、その横顔を見ていると、すずかはこちらを向き、わたしに微笑みました。

「いつもは、お姉ちゃんと2人だけだから、人数が増えてうれしいの」

 

帰ってきてから少しして、わたしとすずかが朝食の席に着いたとき、まだ忍はいませんでした。

「すずか、その、えと、いつごろから気がついてましたか」

「何にかな」

わたしは、聞きたいことがたくさんありすぎて、返答に困りました。

「そうだね、まず、レオーネが言語を理解しているのに気がついたのは、レオーネがウチへ来てすぐにだよ」

「そんなに早くに」

「だって、本棚から本を引っ張り出して読んでる猫なんて、レオーネくらいだよ。お姉ちゃんも、それには気がついてたよ」

わたしたちが話していると忍が眠そうに眼をこすりながらやって来ました。

「あら、レオーネ、お帰りなさい」

「ただいま」

忍は自分の席には着かないで、そのままわたしの隣へやってきました。

「すずかには聞いていたけど、かわいいわね」

そういって忍はわたしの頬を撫でました。

「でも、どうして男の子みたいな格好をしているの」

一歩下がって、わたしの姿を上から下まで眺めながら言いました。

「わたしは、わたしの服を着るように言ったんだけど、レオーネが嫌がって」

「すずかの服じゃいや?」

「いいえ、そんなことは、ありません」

「そう、でも服がないのは困るわね。そうしたら、次の休みにでも買いにいきましょう」

忍は、かわいい服をとそう付け加えました。

 

朝食を食べ終わると、すずかは学校へ向かう準備を始めるようでしたので、わたしは忍とふたりで、そのまま話していました。

「あなた、すずかに見つかっていたのよ、変身するところを」

「そうだったのですか、でも、忍はその話をすぐに信じませんでしたよね、おそらく」

「そうね、最初はそんなわけないとも思ったのだけれど、すぐにそういうこともあるかもしれないとおもうようになったわね、世の中って、不思議なことがいっぱいよ」

そういって、忍は笑うのでした。

「不思議と言えば、あなたがその姿で帰ってきたことも不思議だわ。だれにも気がつかれていない気でいたのでしょう。その格好で帰ってきたのにはなにか理由があるのかしら」

「わたしは、この姿じゃないと声を出してしゃべることができないんです。だから」

「うーん、そういうことではなくて、なにか思うところが有ったりしたのかなって思って」

「そうですね、なのはやユーノたちが頑張っているのを見ていたら、なんだか、そういうのがうらやましくなって、人間の姿をしてやっていけば、いつかはあんな風になれるかなと思ったので」

わたしを拾い上げてくれた、すずかに、なにか返せるものがあるのではないかと。

「なるほどね。なのはちゃんのファンはあなたで3人目よ、私が知っている限りにおいては」

別に、なのは個人に憧れてというわけではなかったのですが、でも、なのはの姿を見て人間に憧れたのだから、忍の言うことも間違いではないのかもしれないと思いました。

この後、忍はわたしが月村家で暮らしていくに当たって、幾つかの規則を提示しました。

そして、「あなたは、私たちの家族よ」そう言って話を切り上げ、食堂から去っていきました。

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