月村家のたくさんの猫たちのなかの一匹の物語   作:向日葵星人

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第5話

捜索を再開後、ビル街でジュエルシードを一個見つけました。

しかし、封印作業を始めようとして、すぐに、金髪ツインテールのフェイトと狼女アルフがやってきて、交戦となりました。

この二人、先の温泉旅行のときも現れたらしく、ユーノ、なのはと交戦となり、ジュエルシードを持ち去っていったのでした。

ユーノがアルフの相手をし、アルフとフェイトが共闘することを妨げ、なのはがフェイトと戦いました。

わたしは、なのはやユーノのように高速で飛ぶことができないので、地面にへばりつき、建物の陰に隠れ、二人の戦いの行方を見守っていました。

できることなら、なのはやユーノのサポートができれば良いのですが、攻撃魔法はデバイスなしでできるといえるほどのものではないのです。

ただ、幻術魔法は少しできましたので、フェイトを牽制するために、なのはの攻撃にあわせて、攻撃魔法を模した幻術魔法を放ったりしていました。

しかし、これに惑うのはなのはばかりで、どうも邪魔をしているのではないかと思い始め、途中でやめまてしまいました。

フェイトは、戦いの素人であるわたしが見ても、戦いなれているようでした。

なのはは、フェイトになんとか応戦しているという状況でした。

そして、戦局は一時停止し、なのはは、フェイトにジュエルシードを集める訳を問いました。

しかしそれは、アルフの言葉にさえぎられてしまい、結局、フェイトの答えは聞けなかったのです。

戦局は再開し、フェイトとなのはのデバイスがジュエルシードを目の前に交錯しました。

そのとき、ジュエルシードは爆発的に発動したのです。

 

目が潰れると思うほどの閃光がジュエルシードを中心に起こりました。

そして、爆風が起こりました。

なのはと、フェイトは、ジュエルシードから弾かれるように飛ばされました。

なのはと、フェイトは特に傷ついた様子ではありませんでしたが、ふたりのデバイスは罅が縦横にはしり、コアが弱々しく明滅していました。

フェイトはバルディッシュを待機状態へ戻し、すぐにジュエルシードへ近づいて行きました。

その目は、虚ろでありました。

わたしは、このような人間の目をみたことがなく、しばらくその目を忘れることができませんでした。

フェイトは、ジュエルシードを両手で包みました。

自らの魔力を以って、自らの力で、封印をしようとしているようでした。

先ほどの発動から、ジュエルシードはかなりのエネルギーを内包していることは明らかであり、このような行為はかなり危険であるでしょう。

フェイトはジュエルシードをなんとか封印しましたが、魔力と体力の消耗が激しいらしく、気を失って倒れてしまいました。

そして、すぐにアルフかけより、フェイトを抱きかかえるようにして、その場から撤退していきました。

 

家に着いたころには、主すずかはすでに寝巻きに着替えた後でした。

主すずかは、わたしをみると、やわらかく微笑んでくれました。

わたしは、やさしい人、穏やかな人、厳しい人、怒りっぽい人を見たことがありましたが、今日のフェイトのような眼をした人間を見たことがありませんでした。

しかし、それが猫であるなら別で、主すずかが以前連れてきた、人間に虐待された過去を持つ猫があのような眼をしていました。

その猫は、目に見えるのも全てが敵だと思っていたらしく、わたしが近づいていくと、右前足に爪を立て、わたしの額をがりっと引っ掻いたのです。

しかし、その猫も、月村家で生活するうちに次第に穏やかになり、普段は普通の猫と変わらなく生活するようになりました。

ただ、物音や、暗闇を怖がるなど、記憶に刻まれた恐怖はいまだに消えることがないようです。

 

明くる日の昼間、高町家が経営する翠屋の近くを猫の姿で散歩していました。

以前、ジュエルシードの捜索でこのあたりを歩いていると、翠屋で買い物をした人間が、猫であるわたしに甘い砂糖菓子を分けてくれることがありました。

あれはおいしかったと思いながら、また、親切な人間に出会えたらなどと考えながら歩いていきました。

翠屋の前に着いたとき、だれか出てこないかと、入り口を覘きました。

すると、なにやら、どこかで見たことのある金髪ツーテールが目に留まりました。

なぜ、こんなところで、と思いました。

そういえば、わたしは姿を見られていたことに思い当たり植え込みに姿を隠しました。

フェイトは、一人で店を出、歩いてゆきました。

翠屋で菓子などを買いどこへ行くのかと、少々興味を持ち、身を隠しながらついていきました。

 

ついていった先は、隣町のマンションでした。

随分と高級な住宅に住んでいることに感心していました。

フェイトは、実は良いところのお嬢なのかと、そのときは思いました。

フェイトはマンションの玄関を通り、エレベーターへ乗り込みました。

さすがに、同じエレベーターに乗るわけにもいかず、また、フェイトが去った後、猫の姿ではエレベーターに乗ることはできても、操作ボタンには届かず、そこで追跡は終わりにすることとなりました。

やってきたこのマンションは、この町では珍しい高層建築物でありました。

屋上から見る景色は素晴らしいものだろうということが頭を過り、わたしはマンションの屋上へと向かいました。

こういうとき猫の体というものは便利で、管理人や監視カメラの目を盗み、屋上へ向かうことなど、たわいも無いことでした。

 

猫の体ではエレベーターを使うことをできないので、階段を使い、屋上を目指しました。

最上階まで上がって、そこで重大な事実に気がつきました。

なんと、最上階から屋上へ向かう階段が無いのです。

古いマンションであれば、屋上にある給水タンクなどのメンテナンスのために最上階から屋上へ上がる階段があるものですが、なるほどこのマンションは最新のものであり、そのようなものは無いのでしょう。

仕方が無いので、最近やっと思い通りに使えるようになってきた飛行魔法を用い、最上階から屋上へ上がりました。

すると、屋上にはなぜかフェイトとアルフが居り、二人の足元には巨大な魔方陣が展開していました。

「次元転移、次元座標、876C-4419-3312-D699-3583-A1460-779-F3125、開け誘いの扉、時の庭園、テスタロッサの主の下へ」

フェイトの口から以上のような呪文がささやかれ、二人は光に包まれるように消えてゆきました。

なるほど、これが、ユーノが得意だという転移魔法のようです。

しかも呪文と、魔力の流れから察するに次元を跳躍するものであるように思われました。

最近、ユーノから魔法を教えてもらっていることで、他人の行使する魔法の、魔力の流れを、なんとなくではありますが、感じることができるようになってきていました。

 

座標を口走ってくれるなんて、なんと迂闊なことか、と思いながら、わたしの頬は緩みっぱなしでした。

久しぶりに、好奇心がかきたてられるのを感じました。

わたしの思考の中にある信号はオールグリーン。

誰もわたしを止めることはできないのです。

先ほどのフェイトが行使した魔法の魔力の流れを再現し、そして、例の呪文を唱えたのです。

『次元転移、次元座標、876C-4419-3312-D699-3583-A1460-779-F3125、開け誘いの扉、時の庭園、フェイト・テスタロッサの主の下へ』

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