月村家のたくさんの猫たちのなかの一匹の物語   作:向日葵星人

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第9話

ここは、次元航行船アースラのなか、長机のある会議室です。

「というわけで、本日0時をもって、本艦全クルーの任務は、ロストロギアジュエルシードの捜索と回収に変更されます」

リンディは、机の上座に座り、宣言しました。

そして、わたしたち3人がクルーへ紹介されました。

わたしたちは、臨時局員として参加することになったのです。

臨時職員ということで、報酬も出るらしく、デバイスなどの装備もアースラのものを使ってよいとのことでした。

しかし、わたしの扱いは、2人の付属品程度のものでしたが。

2人は、それぞれリンディの紹介を受けて名前を述べました。

この2人、この会議室に入ってから、目に見えるほどがちがちに緊張していて、見ていて面白く、笑いをこらえるのが大変でした。

わたしは特に緊張することもなく、リンディの紹介を受けて、にゃ、と一言鳴き、右前足を軽く上げた。

その様子に、クロノはあからさまな様子で、こちらを睨んできました。

 

わたしたちは、臨時局員になったとはいっても、仕事はかなり散発的でした。

捜索は、オペレータの仕事でしたし、わたしたちの仕事は、ジュエルシードと思われる反応が見つかったら、その場に出向き封印作業をする、といったものでした。

しかし、封印作業は主にユーノがサポートし、なのはが封印作業をしましたから、わたしの出番はありませんでした。

特にやることがないとき、我々はたいてい食堂で話をしていました。

 

暇でしようがなかったので、部屋で魔法の練習を行っておりました。

魔法の練習と言っても、わたしはなのはのように魔力弾を撃つわけでもないので、部屋でもどこでも魔法の練習ができたのです。

それでも暇だったので、なぜこんなにも待遇が良いのだろう、と考えは始めました。

そして、もしかしたら今のわたしは、わたしに限っては、アースラに拘束されているのと同じなのではないかと思いました。

クロノに初めて会ったときは攻撃をしたわけですし、それに、わたしはひとりプレシアに会っていました。

それに、おそらく、わたしが全てを話していないことに、艦長は気がついている。

そういうことであれば、なのはとユーノが管理局に敵対的な行動をとれば、わたしの身の安全は脆くも崩れ去るのでしょう。

そのようなことを考えていた矢先、鳴海市の沖合数百メートルの位置にあったジュエルシードを、フェイトが強制発動させました。

アースラの判断は、フェイトが自滅したところを叩くとの事でした。

しかし、ユーノとなのはが独断で現場へ出て行ったのです。

このときは、わたしの退屈でも安全なアースラでの生活に終止符がうたれたかとも思ったのですが、とくにそのようなこともなく、わたしの心配も杞憂だったようでした。

 

アースラの特大モニタに映されている、鳴海臨海公園の沖は、とんでもない荒れ模様でした。

波は荒れ狂い、雨は吹き荒れ、竜巻が起こっていました。

そのなかでフェイトは、顔をしかめながら、荒れ狂う天候に翻弄されているようでした。

フェイトの持つ、バルディッシュから伸びる魔力刃は、途切れ途切れで、魔力の残りは少ないように見えます。

あきれたむちゃをする、リンディはフェイトをそのように表現しましたが、まさにその通りのようです。

その様子をみて、フェイトを助けるために、命令無視を宣言し、なのはは転送ポートから、ユーノの魔法でモニタに映されているその現場へと向かったのです。

このとき、この場に残されたユーノとわたしは、すぐに、管理局に拘束されるのだろうと、わたしは直感で感じたのです。

しかし、無断で出て行ったなのはを誰も追いかけようとせず、また、ユーノとわたしは、拘束されることもありません。

それどころか、ユーノが出て行くことすらもとめられることはありませんでした。

管理局というものは、合理的である風を装っているようですが、どうもここにいる人間たちはそれほど現実を割り切れているわけではないようでした。

そして、ユーノもそれほど間をおかずに現場へと向かいました。

なのははフェイトに自身の魔力を分け与え、そして、ユーノとアルフがチェーンバインドで、ジュエルシードの暴走を抑ました。

その間に、なのはとフェイトによって、ジュエルシードの暴走は止められました。

そして、中空に浮くジュエルシードを間に、なのはとフェイトは向かい合いました。

そして、なのはが、なにかの言葉をフェイトに伝えたようでした。

友達に、なりたい。

モニタには音声が中継されていなかったので、確固たるものがあるわけではありませんでしたが、なのははそう言ったように見えました。

 

『リンディ艦長、なぜ、わたしをつかまえない』

わたしは、どうもリンディの意図が読めなくて、しかし、質問しようかどうしようか、迷った挙句、結局質問することにしました。

「そうね、命令無視はたしかに正しくないわ、でもなのはさんの行動そのものは、結局、成功してしまったのなら、正しいことになるのよ」

わたしは、そうかんがえているわ、リンディはそう言った。

やはり、リンディはそれほどドライに現実を割り切れていないらしい。

心のどこかで、不確実ながらも最善の未来を描いていて、そして、それを捨てて確実な未来を選ぶことをためらってしまっている。

反対になのはは、不確実ながらも最善の未来を描いて、それにむかって、万難を排し突き進んでいく。

おそらく、リンディは、なのはのそういうところに人間的魅力を感じている。

『あなたは、なのはをまぶしく、そして、うらやましく感じている』

と、わたしは考えたのですが、とわたしはリンディの方を向かずに言いました。

「艦長としては、そのようなことは断じてないと言えるわ」

迷いのない、そして、厳しい表情でリンディ艦長は答えました。

そして、その瞬間、モニタ前のオペレータ用の席に座っていたエイミーが叫びました。

「次元干渉?」

わたしがモニタの方へ視線を向けると、モニタには警告を示す赤の表示が画面いっぱいにあらわれていました。

クルーの様子から、おそらく、ただ事ではないことを感じ、さすがのわたしにも緊張がはしりました。

そして、船体に衝撃がはしり、船体は地震のようにグラグラとゆれました。

わたしは、なんだこんなものかと、少し拍子抜けしてしまい、考えが少し巻き戻るような感覚を得ました。

そして、リンディの顔を見ました。

この人は、人間的であるし、たぶん情の深い人なのだろう。

しかし、上官としては、命を預けるには、少々心もとない部分があるかもしれない。

わたしは、そんな感想を懐きました。

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