私は今、廃教会より300mにいる。
悪魔になった当代の赤龍帝君とアーシア・アルジェントのデート擬きをすることを許可した後、私は行動を開始した。
監視も平行して使い魔を介して行っているので分割思考を使用している。普段よりも少々負荷が掛かっているが許容範囲だ。
「フリード、そっちはどう?」
スマホに接続したインカムで私はフリードに連絡をとる。すると、私とは対称的に凄くのんびりとした様子のフリードが通話に出た。
『おー、志穂ちゃんじゃん?そろそろ始まるはず』
『(ぎゃ、ぎゃああああああ!)』
『お、始まった始まった』
電話越しに、はぐれエクソシストの断末魔と共に、廃教会から爆発音が聞こえてくる。
一応……一応、フリードに何をしたか確認をする。
「フリード?あなた、なにしたの?」
『俺っち特製プラスチック爆弾を起爆しただけでやんすよ。あ、ちなみに中身は米軍から横流しで手に入れたC4でっせ』
『(だ、誰か助けぎゃっ!!)』
パスパスとサイレンサー付きの拳銃の発砲音と思わしき音と共に誰かの断末魔が聞こえてきた。
『たくよぉ……たかだか雑魚ごときになんでこのフリード様が止めを刺さないといけないんだよぉ……。さっさと爆弾で死ねばよかったのになぁ』
「はぁ……なんつうもんを使ってんの……」
私は思わず額に手を添えてしまう。万が一、近隣住民に被害が被っていたらと考えると尚更だ。
『まぁ、爆薬は調節したし被害はこの中だけだからそんな怒んないの。お、堕天使共が血相変えて飛び出したかんじだな。志穂ちゃーん、あとよろ』
「はいはい。お、出てきた出てきた」
暫くして四人の堕天使が血相を変えて廃教会から飛び出してきた。女が三人、男が一人。どうやらフリードが寄越したレポートに狂いは無いようだ。
流石は人外、たかだか対人兵器であるプラスチック爆弾程度では仕留めれなかったみたいだ。まぁ、多少のダメージは有るみたいだけどね。
「まぁ、逃がしはしないけど……ねっ!!」
私は慣れた手付きで弓を投影しルーンで必中の加護を付加して、矢を放つ。矢は一直線に堕天使共の頭部を居抜き撃ち落とした。
頭部に直撃した堕天使共は絶命し、4枚の羽根を残し消えていく。それをフリードが回収して今回の任務が終わる。
そして、いつの間にかフリードは私の元に来ていた。
「さてさて、これで任務終了だなー。で、志穂ちゃんはこれからどうすんの?」
「私?私はアーシア・アルジェントの回収及び護送してそれでおしまい」
「ふむ……。で、肝心のアーシアちゃんは?」
「あぁ……それなら……」
そう、フリードに聞かれ赤龍帝君とアーシア・アルジェントを監視していた使い魔と視界を共有する。すると、今まさに赤龍帝君がアーシア・アルジェントを抱き締めている最中だったのだ。
『イッセーさん……?』
『ごめん、アーシア。俺、悪魔なのにアーシアの事が好きみたいだ……』
『イッセーさん……』
とまぁ、赤龍帝君がそうアーシア・アルジェントに砂糖を吐き出しそうな告白をしていた。
でもそんな事、私からすればどうでも良いところだ。
しかし、赤龍帝君の気持ちを今回は利用してやろうと思う。
赤龍帝と言えば白竜皇と対成す存在。そして、私の身近には戦闘狂で面倒な腐れ縁の白竜皇が居るのだ。
赤龍帝君を少しでも育てればヴァーリに当て馬位にはなるはずだし、あの戦闘狂が勝手に私に向けているめんどな意識を反らせる筈なのだ。
それに人の不幸で生計を経てている悪魔の癖に正義面しているのがとても気に食わない。
「………中々に良い根性しているじゃん。あの糞悪魔。よって、そんな赤龍帝君をデコイにしようぜ計画発案の私も悪くない」
「どーったの、志穂ちゃん?」
「悪魔君をどう利用すれば私に最も利益が出るか考えてただけだよ」
「ふーん?で、具体的にはどうするの?」
「内緒。良かったら来る?滑稽な悪魔の姿が見れるかもよ?」
とりあえず、方針は決まったし彼方に出向きますか。
悪魔君には悪いがここからは私の憂さ晴らしに付き合って貰おうか。
まぁ、会話を聞くからに悪魔君がアーシア・アルジェントの為に私に歯向かうのは分かりきった事だし。
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やーやー、皆さんこんばんは。みんな大好きフリードさんだヨ。
いやー、志穂ちゃんに着いてきたらこれは成る程、成る程。面白そうな物が見れそうだわー。
「あ、フェイカーさん……」
「なっ……フェイカー。てめぇ、やっぱりそのキチ◯イ神父と仲間だったのか……」
「こいつは私とクライアントが一緒なただの狂犬だよ。いやはや、まさか彼処まで脅したのに刃向かう気が有るとはね……」
「うるせぇよ……そんな事信じられるか……」
「やれやれ……これだから低能な悪魔は……」
俺っちは志穂ちゃんに連れられて赤龍帝くんとアーシアちゃんとの待ち合わせ場所に来た。
そしたら、俺っちを見た赤龍帝君の表情が一気に雰囲気が険悪なものになった。まぁ、志穂ちゃんはうんざりとしながら軽く流しているようだけどね。
それにしても、あの赤龍帝君は馬鹿なのか?
確かに俺っちは先日の一件で赤龍帝君からの印象度は最悪だけどその印象を志穂ちゃんに向けるのはどうなのかね?
それに事情も知らないで
知っているかい?
目の前の志穂ちゃんや俺っちがまさにその存在だし、志穂ちゃんに至っては「悪魔死すべし、慈悲はない」を体現したような存在だから下手したら君死ぬよ?
「まぁ……良い。たかだか転生悪魔に恨みの一つや2つ持たれたところで私には関係ない。さぁ、アーシア・アルジェント、戻ろうか。君を保護してくれていた人達が心配していたよ」
志穂ちゃんがアーシアちゃんに手を差し向けて此方に来るように促す。全く、志穂ちゃんは無駄なところで仕草や動作がイケメンだから。
それに対して、赤龍帝君はそんな言葉を真っ直ぐに否定するってさぁ……。まぁ、これに関しては俺っちが悪いのでノーコメント。
「え、でも……私には教会にレーネ様も……それにイッセーさんにも……」
「大丈夫。それなら問題ないよ。堕天使レーネは重大な規律違反を犯した。それは保護対象だった君を利用し害を成そうとしたこと。
それと悪魔の主張する何の根拠もない人間界の領地(笑)の侵犯により連行されたからね
それに……そこの悪魔君にしても本来なら教会を追い出されてもなお聖女足らんとする君が関わることない存在だ。万が一、関わるならばそれは君の敵としてだ」
「それは……」
おー、流石志穂ちゃん。アーシアちゃんに正論ぶつけて暗にの今の気持ちを一時の感情だと説き伏せていますねぇ。その証拠にアーシアちゃんが俯きながら赤龍帝君に背を向け、志穂ちゃんの元に歩みだしていた。
「アーシア!!」
「イッセー……さん?」
が、赤龍帝君はアーシアちゃんをまるで青春ドラマの一シーンの如く呼び止める。そして、アーシアちゃんの元まで歩み寄る。
「アーシア。ごめんな、俺が悪魔だったばかりにこんな別れ方になっちまって。
だけど……アーシア。俺は強くなってこんな世界の在り方変えて見せるよ。そして、迎えに行く。今度こそ、一緒に学校通ったり、放課後遊んだり、本当のデートをしような」
「イッセーさん……はいっ!私、待ってます!いつか迎えに来てくださいね!」
と、まぁ。見ている此方が砂糖を吐き出しそうな展開が繰り広げられているのを見ている俺っちと志穂ちゃんは苦笑いをしている。
実際に目の前に居る悪魔はそれが出来てしまうのだ。今はまだ自分の本質にさえ気がついていないが……赤龍帝として覚醒し大成したら実現してしまうかもしれない。
「さて……水を差すようで悪いが。アーシア・アルジェント、そろそろ時間だ」
「は、はい……」
名残惜しそうに赤龍帝君から離れるアーシアちゃん。そして、志穂ちゃんは転送術式の術札を取り出し起動させる。
そして、志穂ちゃんは涙を流す赤龍帝君に一言声を掛けた。
「おい、悪魔君。君は確かに今は弱い。最弱と言っても過言じゃないだろう。だが、君には無限に強くなる可能性がある。精々強くなって三大勢力の在り方を変えて見せるんだな。もう会わないことを切に願うよ、今代の赤龍帝」
そして、俺っち達は転送術式でグレゴリに帰還するのだった。
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アーシア達が転送術式?って奴で何処かに消えていった。俺はやるせない気持ち以上に自分が弱いばかりにアーシアを引き止めれなかった事に無性に腹が立った。
そんな中、
「俺に可能性がある……?それに最後に俺の事を赤龍帝って言っていた……。くそっ!全然分からねぇ!」
『やれやれ……。今代は怒りがトリガーだったか……おい、坊主?俺の声が聞こえるか?」
「え?」
『強くなりたいんだろう?だったら俺が力を貸してやる。その代わり必ず強くなれよ。お前はドラゴンなのだから』
そんな時、俺の神器が勝手に具現化して……なんと喋りだした。そして、膨大な力が溢れだし姿が変わっていく。
「これは……」
『お前の神器の本当の姿さ。神器の中でも数少ない神を滅ぼしえる神器の1つ
「
にわかには信じがたいが目の前で起こっていることは現実だ。
『そうだ。よろしく頼むぞ、今代の赤龍帝よ』
「あぁ……こっちこそよろしく頼む、ドライグさんよ」
俺はその力強い声で強くなれる足掛かりを得たような気がした。
お待たせしました。これにて第1巻は終了です