剣製少女の非日常   作:影使い

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3話

私が神の子を見張る者(グリゴリ)に来て一週間が過ぎた。

この一週間は凄く濃密な一週間だったと思う。新生活を迎えるために必要な物を揃えたり、学校への転入手続きや学校に関する説明、アザゼルさんからの裏世界に関する知識のレクチャー、その全てをこなしたからだ。

だけど、私に剣の才能が無いと分かった時はちょっとショックだったな。

あと、名字の神崎から衛宮に変えた。あの糞みたいな親と同じ名字をこれ以上名乗りたくないからだ。

そして、一段落した今日私はアザゼルさんに呼び出され神の子を見張る者(グリゴリ)に存在するアザゼルさんのラボに出向いていた。

 

 

 

 

「来たな、神崎志穂……いや今は衛宮志穂か。歓迎しようじゃないか。ようこそ俺のラボへ」

「あの………アザゼルさん。色々と便宜を図っていただきありがとうございます」

 

 

 

何故か凄く笑顔なアザゼルさんはそう言って私を歓迎してくれた。そんなアザゼルさんに私は感謝の意を伝えるために頭を下げる。

 

 

 

「いや、なに。気にすることはないぞ。志穂、お前に俺達が与えるものは全て俺達がお前に払うべき対価だ。だから、お前は平然とそれを受け取っていれば良いんだ」

「はぁ………」

 

 

 

しかし、アザゼルさんは一瞬真面目な顔付きになり優しい声色でそう言った。私はアザゼルさんの真意が理解出来なかったが一応納得することにした。

 

 

 

 

「ま、この話はまた今度にしよう。今はお前さんに見せたいものがあるんだ」

 

 

 

 

そう、話題を切り替えたアザゼルさんは私をラボの中央に置かれた机に案内してくれる。

その机の上にあったのは一週間前に私がはぐれ悪魔を殺した際に投影した(作り出した)黒と白の二振りの剣だった。

私はその二振りの剣を見たとたんドクンと鼓動が跳ね上がった感覚を味わう。

まるで私の身体があの剣に触れたいと訴えかけている様にも感じる。

 

 

 

 

「志穂、こいつは俺がお前さんを保護したときにお前さんの横に落ちていた物だ。

俺はこいつを使ってあのはぐれ悪魔を狩ったと推測しているが……どうだ?」

「はい。私と私の前世の方の得物です。銘は干将・莫耶。中国における夫婦剣の名剣です」

「はぁあ?!」

 

 

 

アザゼルさんは私の言葉に驚いた声をあげる。

 

 

 

 

「おいおい………。干将・莫耶って言えば行方が長いこと分かっていない最高ランクの聖剣………いや霊剣だぞ?

一説によれば失われた霊剣とさえ言われているあの干将・莫耶なのか……。しかも、前世の記憶持ちだと?……いや、有り得ないことは無いが……だが……」

 

 

 

へー、この世界の干将・莫耶はそう言う背景を持っているんだ。

あと、ごめんね英霊エミヤ。私じゃ上手い言い訳出来なかったから勝手に私の前世にさせてもらいました。

でも、私は正確には英霊エミヤと人間の融合体であるデミ・サーヴァントだしあんまり問題ないと思うんだよね。屁理屈だけど。

 

 

 

 

「あの……、アザゼルさん……。お取り込み中申し訳ないのですが………」

「なんだ?今ちょっと考え事をしているんだが……」

「良いから見ていてください」

 

 

 

 

色々と考えているアザゼルさんに声を掛けたあと私は言葉を区切り、魔術回路を開く。そして、あえて全工程をより正確に、丁寧に干将・莫耶を投影する。

 

 

 

 

投影(トレース)開始(オン)

「おい、志穂。お前さん、いったい何を?。それになんだ?この異質な魔力の質は?」

 

 

 

 

 

デミ・サーヴァント化したことにより追加された神経と一体化した特殊な魔術回路。それは固有結界に特化した非常に頑丈なエミヤの魔術回路だ。

そして、その特殊過ぎる魔術回路に同調し同質の物に変化してしまった私本来の魔術回路も相まって投影はスムーズに出来た。

 

 

 

 

創造の理念を鑑定し、

 

基本となる骨子を想定し、

 

構成された材質を複製し、

 

制作に及ぶ技術を模倣し、

 

成長に至る経験に共感し、

 

蓄積された年月を再現し、

 

あらゆる工程を凌駕し尽くし――――

 

幻想を結び剣と成す――――!!!

 

 

 

 

全ての行程を完了し、会心の投影で作った干将・莫耶。それを私の目の前に置いてあったもう一対の横にそっと置く。

 

 

 

 

「なっ………」

 

 

 

 

アザゼルさんは私が投影した干将・莫耶を見て絶句していた。

 

 

 

 

「分かっていただけたでしょうか、アザゼルさん。

私や私の前世の方が見きた刀剣類の

 

創造の理念を鑑定し、

 

基本となる骨子を想定し、

 

構成された材質を複製し、

 

制作に及ぶ技術を模倣し、

 

成長に至る経験に共感し、

 

蓄積された年月を再現し、

 

あらゆる工程を凌駕し尽くし――――

 

幻想を結び剣と成す――――

 

 

そうすることで再現率は80%程度ですが刀剣を複製する事が出来る。

それが私に唯一使うことの許された魔術です」

「お、おう……」

 

 

 

 

アザゼルさんは私の両手の夫婦剣を見詰めながらショックが隠せないと言った様子だった。

だが、直ぐに元の様子に戻り投影したばっかりの干将・莫耶調べ始める。

 

 

 

 

「おいおい……こいつはあそこに置いてある奴と同等同質の物じゃないか……。

俺はとんでもない拾い物をしちまったな……。

確かに現象事態は創造系の神器、例えば魔剣創造(ソード・バース)聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)に似ているが……あれらはオリジナルの魔剣や聖剣に比べるとかなり格の低い魔剣や聖剣を造り出せるだけだ……だとするとお前さんが言っていることは嘘ではないと言うことか……」

 

 

 

 

アザゼルさんが又々、一人自分の世界に入り込んでから暫くして、ラボのドアが開く音がして誰かが入ってくる。

 

 

 

 

「中級堕天使レイナーレ、アザゼル様の命により参上しました。………ってなんで人間が至高の堕天使であるアザゼル様と一緒に居るのかしら?」

「………だが……ん?お前がレイナーレか?」

「は、はい!!わ、私がレイナーレです!!」

 

 

 

 

入ってきたのは一人の美女と言った容姿を持つ女性の堕天使だった。

最初は私に凄く見下した態度でいたがアザゼルさんに話し掛けられると手のひらを返したように態度を変えていた。

しかし、一見ただのミーハーかと思ったが良く良く観察すると何か妙に演技臭いと思ったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

「よし、これで役者が揃ったな。じゃあ、志穂、レイナーレ。お前たち二人で模擬戦をしろ」

「「はい?」」

 

 

 

次の瞬間、私達は魔法で何処かへ飛ばされた。

 

 

=======

 

 

「ここは?」

「へぇ、ここを使うなんてアザゼル様は本気なのね。そこの人間、覚悟しなさい!!」

 

 

 

場所は変わり、何もなく凄く頑丈そうな造りをした一室に私と堕天使のレイナーレは居た。

レイナーレはここがどんな場所か知っているみたいだが、生憎私はここに初めて来たので知らない。ただ、あんまり良い予感がしない。

 

 

 

『あー、あー、テステス。

よし、二人とも声は聞こえるな。これから志穂の実力を知るために模擬戦をしてもらう。

ルールは簡単だ。何を使っても良い擬似的な殺し合いだ』

「へー、殺し合いかぁ…………って、殺し合い!?」

 

 

 

普通にアザゼルさんの説明を聞いていて、危うく聞き逃しそうになったが余りの物騒なワードに驚いてしまう。

 

 

 

『あぁ、殺し合いだ。

だが、安心しろ。その施設内は悪魔達のやっているレーティングゲームって奴を模倣しているから致命傷を負うか降参するかすると直ぐに転送される。

しかも、怪我も治っている状態でな。だから、危険はないから思う存分殺り合えばいいさ』

 

 

 

 

ふーん。

そのレーティングゲームがどんなものかは知らないけど仕組みからして物騒な物っぽそうだね。

まぁ、有り難く使わせてもらうけどさ。

私は戦いの才能がない分、英霊エミヤと同じように戦いの中で成長していくしか無さそうだし。

 

 

 

 

「分かったわね、人間?ちなみに全てアザゼル様がこのシステムを構築したのよ!あぁ……流石至高の堕天使アザゼル様」

『…………』

 

 

 

 

なんか恍惚とした表情でレイナーレがアザゼルさんを誉めちぎっているが……アザゼルさん、ドン引きしてるよ。

マイク越しからでもそんな雰囲気が伝わるぐらいには。いい加減止めようよ、その演技。

 

 

 

 

『じゃ、じゃあ。模擬戦を始めるとするか。俺は一切、手を出さないからな』

 

 

 

 

そして、マイクが切られる。

私は撃鉄を起こすイメージをして通常の魔術回路40本、固有結界専用の魔術回路27本全てを開く。

前回と同じ様に私はただの人間から錬鉄の英霊になる。

先程投影した干将・莫耶を構え、今出来る全力の強化を自身に掛ける。

 

 

 

 

「直ぐに殺してあげるわ!!」

 

 

 

私の準備がすべて終わった瞬間、レイナーレが堕天使と天使が持つ力だと言う光の力で構成された槍を作り出す。

それを普通の人間では回避はまず不可能な速度で私に向かって突きを放つ。

が、この身は英霊の霊基を受け継いだデミ・サーヴァント。

英霊としては極々平凡ながらも人間とは隔絶しや身体能力を持っている。

両手に持っている干将・莫耶で光の槍を叩き落とし、素早く次の動作に移りレイナーレの元へ間合いを詰め、斬りかかる。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

 

が、伊達に中級堕天使をやって居ないらしくレイナーレは咄嗟に光の槍を光の剣に再構成し、右手の莫耶を受け止め、その状態から弾ける様に間合いを開く。

私が体勢を整えるよりも前にレイナーレは体勢を切り替え、光の剣を上段に構えて突っ込んで剣を降り下ろす。

私はそれを横に体をずらすことで避けるが捌ききれず傷付いてしまった。

私はお返しとばかりに、人間ならば蹴り殺せるレベルで思いっきり蹴り飛ばした。

 

 

 

 

「ぐっ……。人間の癖にやるわね、あなた」

「衛宮志穂。私の名前は人間じゃない。呼ぶんだったらそっちで呼んでよ」

「ふん。あんたが私に勝てたら……ね!!」

 

 

 

 

レイナーレは再び、光の剣を構えて突っ込んで来た。

 

 

 

 

=======

 

 

私、中級堕天使のレイナーレは苛ついていた。

その理由は、私が戦っている人間……衛宮志穂だ。

ただの魔術師の癖に体を強化して手に入れているであろう中級堕天使に匹敵する身体能力、上級悪魔に匹敵する魔力を持っている。

しかし、その能力に振り回され、才能が有るだけの半端者。

生まれつき能力値が低く、努力だけでここまで這い上がった私からすればその恵まれた才能を棒に振っている衛宮志穂の様な存在は見ていてイライラする。

でも、手に持つ武器もボロボロで身体中に傷だらけにしても諦めないその不屈の精神は私には無かった物だ。

 

 

 

 

「ぐっ………」

「何でよ………。何で、諦めないのよ!!」

 

 

 

 

気が付くと私はそう叫んでいた。

私は諦めてほしかった。自分と同じように諦めて逃げて欲しいと願ってしまう。じゃないと私が酷く惨めな存在に見えてしまうから。

 

 

 

 

 

「……私は弱い。受け継いだ能力をもて余す半端者だ……。だけど………だけど!それで諦める程柔な精神しているつもりは無い!!」

 

 

 

 

衛宮志穂がそう叫ぶと魔力が吹き出し、両手に持っている双剣が修復される。

そして、聞いたことの無い呪文を唱え始める。

 

 

 

「 |I am the bone of my sword.《体は剣で出来ている

Steel is my body,and fire is my blood. (血潮は鉄で心は硝子)

 

I have created over a thousand blades. (幾たびの戦場を越えて不敗)

 

Unaware of loss.(ただ一度の敗走もなく、)

 

 

Nor aware of gain.(ただ一度の勝利もなし)

 

Withstood pain to create weapons,(担い手はここに独り)

 

waiting for one's arrival.(剣の丘で鉄を鍛つ)

 

I have no regrets.This is the only path. (ならば我が生涯に意味は不要ず)

 

My whole life was(この体は、)

 

"unlimited blade works" (無限の剣で出来ていた)

 

 

 

神埼志穂が最後の一節を唱え終えると神埼志穂を中心に炎が広がり、視界を覆った。

そして、目を開けるとそこは何処までも続く荒野に無数の刀剣が刺さっている異様な場所に変わっていた。

最初は幻覚を見せられているのだと思ったが直ぐに違うと理解した。世界が塗り替えられているのだ。

 

 

 

 

「こ、これは………」

 

 

 

私は神埼志穂の作り出したこの世界に気を取られていたがふと神埼志穂を見ると何と彼女の身体のあちこちから出血が確認出来たのだ。

だが、神埼志穂はそんな事お構い無しに私に向けて手を降り下ろした。

無数の剣が虚空から現れ、その剣先を私に向ける。そして、次の瞬間私に向かって射出された。そして、私は無数の剣に突き刺され意識を失ったのだった。

 

 

 

======

 

 

 

……はい、未熟者の癖に勢い余り、無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)を発動してしまった愚か者の志穂です。

いやいや、ビックリしましたよ。レイナーレとの模擬戦が終わり戻ってみるとアザゼルさんが私を見て驚いていた。

そして、差し出された鏡を見ると何と身体中から出血しているて、前髪の一部の付け根辺りが白髪に変質していたのだ。

出血量が酷くなり、目眩をお越し直ぐ様病室に連れていかれ輸血と治療を受けていた。

そして、その間にもアザゼルさんにあの現象は何なんだと問い詰められる。

仕方がないので無限の剣製及び固有結界の事を話終え、私の身に起きた現象の説明を受けていた。

 

 

 

 

「志穂、下手したらお前さんは魔力が枯渇して死ぬところだったんだぞ?

大方、お前さんの身に起きたその現象だってまだ身の丈に合わない大魔術を行使した為のフィードバックだ? 世界を術者の心象に塗り潰す大魔術だ?

それに解析した武器を貯蔵して複製するだと? 更には貯蔵した武器の記憶した使い手の技術を憑依させて扱えるだ? そんな出鱈目にぶっ飛んだ術式聞いたことねえぞ。

それにレイナーレ、お前が結界の中で見た刀剣の中には高位の聖剣や魔剣が有ったんだな?」

「はい。衛宮志穂の固有結界とやらには天使供が所有している7本のエクスカリバーやデュランダル、アスカロンや魔剣グラム以上の物も複数確認出来ました」

 

 

 

 

あ、レイナーレが私のこと名前で呼んでくれた。まだ、フルネームで他人行儀たけどね。

 

 

 

そして、レイナーレの報告を聞いたアザゼルさんは深刻な顔で私の方を見る。

 

 

 

 

「良いか、志穂?現状は無闇矢鱈にそんな業物を複製するな。お前さんの切り札として使うことを許す。

だが、その固有結界とやらは絶対においそれと人前で使うなよ?良いな?」

「えー」

「い い な ?」

「……了解です」

 

 

 

私はアザゼルさんの言葉にしぶしぶ同意する。そんな私を見てアザゼルさんは溜め息をつく。

 

 

 

「おい、レイナーレ。お前さんを監視役として志穂とペアを組んでもらう。

それにお前さんも俺が志穂と一緒に鍛えてやるよ。俺から見てもお前さんにはまだまだ延び白があるからな」

「え?」

 

 

 

最後の言葉にレイナーレは一瞬時が止まった様に固まり、再起動を果たすと何か壊れていた。

 

 

 

「мжаёжЫёккюъфчйт│шх┐ю─шотч!?!??!!!」

「落ち着け。

お前さん、マトモな指導を受けたこと無いな?

自己流で彼処まで光力を扱えるなら正規の方法で扱えば、お前さんは化けるぞ。

それも上級堕天使に昇格も夢じゃない。それにもう自分を偽る必要もないんだぞ?」

 

 

 

そして、その言葉でレイナーレは今度は号泣していた。それをアザゼルさんは優しく抱き締めていた。

あ、レイナーレがアザゼルさんに完全に落ちたね、これは。

アザゼルさんもアザゼルさんで満更じゃなさそうだし。レイナーレって美人が多い堕天使の中でも綺麗だし。

全く理解不能な言語で叫んだり、号泣したり、アザゼルさんにガチで惚れたり忙しい奴だな。

 

 

 

こうして、私の騒がしくも刺激に溢れた生活が始まった。




無限の剣製はあえて士郎版の詠唱を使いました。あとレイナーレを色々と改変したのは完全に私の趣味です。
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