剣製少女の非日常   作:影使い

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4話

私が神の子を見張る者(グレゴリ)に来て一年が過ぎた頃、アザゼルさんが私と余り年の変わらない子を連れてきた。その子は銀髪で一瞬女の子かと見間違う程顔が整った美少年だった。

 

 

 

 

「アザゼルさん、その子は何?」

 

 

 

 

私は色々な意味を込めてアザゼルさんに尋ねる。だって、目の前に居る美少年が余りにも異質すぎるから。幼い悪魔にしては強大過ぎる悪魔の力、それさえも凌駕しているドラゴンの力。その両方を同時に感じとれたからだ。

 

 

 

 

「ん?こいつの名前はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ。名前の通り先代の魔王の血を引く人間と悪魔のハーフであり……今代の二天龍の片割れである白龍皇だ」

 

 

 

 

何と、目の前に居る銀髪の美少年、ヴァーリとやらが神すら滅ぼすことが可能な力を持つと言われる13種類ある神滅具(ロンギヌス)の1つ白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の所有者らしい。しかも、先代ルシファーの血を引くハーフ悪魔だと言う。

 

 

 

 

 

「君があの二天龍の片割れ、白龍皇ね。私は衛宮志穂。一応、魔術師だよ」

 

 

 

 

 

私はヴァーリに対して当たり障りのない様に気を付けながら挨拶をする。下手に刺激して手でも出されたら私なんぞひとたまりもないのは明白だから。

 

 

 

 

 

「ふん、あんたがアザゼルの言っていた衛宮志穂か。………期待外れだな。大した魔力も持たず、才能も有るようには見えない」

「お、おい、ヴァーリ。お前、それは流石に………」

 

 

 

 

だが、ヴァーリの返してきた言葉で私は時が止まった様に思考が停止する。

そして、思考が再起動を果たしてヴァーリの言っていきた意味を理解する。同時にこいつとは馬が合わないと思った。

 

 

 

 

「アザゼルさん、用件はこれだけですか?もう、用件が終わったのなら帰りますよ。生憎、私も暇じゃないんで」

 

 

 

 

私は面倒な事に巻き込まれる前にその場を後にしようとする。

アザゼルさんは私の機嫌が悪くなり、この場から離れようとしている事を察して慌てて引き留めてきた。

 

 

 

 

「待て、志穂。今日、お前さんを呼んだのは頼みたいことがあるからだ」

「何ですか?さっきも言った様に私は暇じゃないんですよ?」

 

 

 

私はジト目でアザゼルさんに視線を向け、そう言い放つ。

 

 

 

「あぁ、それは重々承知だ。何、お前さんが普段こなしている仕事にこいつとペアを組んで欲しい」

「はぁ?!」

 

 

 

アザゼルさんは私の想像よりも面倒な厄介事を頼んできたのだ。

 

 

 

「何で私が実力も知らないような奴と一緒に仕事しないといけないんですか!?」

「そうだ!アザゼル!!俺はこんな奴とペアを組まなくても一人ででも仕事は出来る!!」

 

 

 

当然、私とヴァーリは当然ながら反対の意を示す。

 

 

 

 

「いいや。ヴァーリ、お前は実力はあるが実戦経験はない。

そこでだ、ある程度の実戦経験があり後方支援も前衛もこなせるお前さんに任せようと思った次第だ」

 

 

 

英霊化してアザゼルさんに無数の刀剣、それも宝具クラスの刀剣を空中に投影して剣先を向ける。

 

 

 

 

「アザゼルさんには悪いのですがハッキリ言います、嫌です。

私は神滅具(ロンギヌス)所有者、それも悪魔の関係者とも関わるつもりはない」

「頼む。そこをなんとか!」

「アザゼル、何もそんな女に頼み込むことではないと思うぞ。大方、自分の力に自信がないんだろう」

 

 

 

あ"?今なんて言った?このクソガキ?

 

 

 

「上等じゃないですか?えぇ……、そこのクソガキに別世界で錬鉄の魔術使いとまで言われた剣製の力、そしてようやく物に出来た私のルーン魔術を見せてあげようじゃないですか」

 

 

 

こうして、ヴァーリの挑発に乗る形で私はアザゼルさんの頼み事を承諾してしてしまったのだ。

 

 

────────────

 

 

数日後、じめじめとした湿地帯に私とヴァーリは居た。あれから私が白龍皇と任務をこなすと知ったレイナーレには凄く心配されたが舐められたままじゃ気が済まない。なのでレイナーレには悪いけど任務をやらしてもらう事にしたのだ。

 

 

 

 

「で、どこに居るんだ?その、危険な実験をしていると言うはぐれ悪魔、クルシュヴァは?」

 

 

 

 

 

と、ヴァーリは私にそう聞いてきた。どうやらこいつは下調べも何も無しに任務に来たらしい。私はヴァーリに今、私が持ち得る情報を簡潔に伝える。

 

 

 

 

「……情報ではこの先にある廃城に居るらしいんだ。ターゲットであるクルシュヴァはここから半径50㎞から神器使いや魔法の素養がある少年少女を連れ去り何やら実験をしている。

あと、ヴァーリ。これはほぼ正確な未確定情報だけどこの先に居るクルシュヴァは主から逃げ出す前はドラゴンスレイヤーについてかなり精通していたらしいんだ。だから、君は余り手を出さないでくれないかな?」

 

 

 

 

と、神器の恩恵でドラゴンの属性を持つヴァーリにとって今回の相手は分が悪すぎる。

なので、手を出さない様に言い含める。ヴァーリは私の指示は従うようにアザゼルさんに言い含めるられているので、渋々と言った様子で快諾した。

そして、暫く歩き私達ははぐれ悪魔がいるとされる廃城の目の前に到着した。

その途端、無数の魔法陣が現た。その魔法陣からは様々な魔獣の一部が継ぎ接ぎに付けられ辛うじて人の型を残しているキメラ、それも連れ去られた少年少女が素体であるとハッキリと確認できるキメラ、それと全身鎧が召喚された。

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁ……たすけ……て……」

 

 

 

その内の一体が私達に向かって助けを求めてきた。

それを聞いてしまった私は頭の中が真っ白になり、そのあと思考が妙にクリアになっていく。

多分、余りの怒りで逆に落ち着いたのだろう。

 

 

 

 

「何て……何て事を……外道が………」

「あぁ。俺でもそれくらいは理解できる。この先のはぐれ悪魔は俺にも相容れない存在のようだ」

「……ヴァーリ、君は右側の10体。私は残りをやる。あの子達を楽にしてあげよう。」

「了解だ、神埼志穂」

 

 

 

 

ヴァーリが背中から白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を出したのを確認する。

私は異空間からラミネート加工を施してあるルーンが印刷されたカードの束を幾つも取り出し、周囲にばらまく。そして、その全てと魔力的なパスが繋がったことを確認し呪文(発動のトリガー)を静かに唱える。

 

 

 

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ

 

それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり

 

それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸

 

その名は炎、その役は剣

 

顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ

 

 

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

 

 

 

 

私の詠唱が進むにつれ、3m位先に炎が集束していき通常の人間の2倍近いガタイを持つ炎の巨人が現れる。

数ある一般的な魔術の中でデミ・サーヴァント化していない素の私に一番適性が高かったのがルーン魔術だ。

そして、私がルーン魔術といったら真っ先に思い浮かべたのが某バーコード神父の魔術である魔女狩りの王(イノケンティウス)、バゼットさんの超人的な身体能力を実現する強化魔術だ。

イノケンティウス(魔女狩りの王)は使い方によっては某暴食シスターの戦闘モードとでも渡り合える代物だ。なので、私は堕天使のマッドサイエンティスト共と協力してこの世界のルーン魔術で再現し、私の切り札の一つとして扱っているのだ。

 

 

 

 

「行け!!」

 

 

 

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)に襲い掛かったのは全身鎧だった。

全身鎧は腰から古ぼけた剣を引き抜き斬りかかって来る。

が、魔女狩りの王(イノケンティウス)は接触1万度の焔で形成された物だ。

剣は魔女狩りの王(イノケンティウス)に触れた瞬間に融解した。

そして全身鎧は魔女狩りの王(イノケンティウス)の右ストレートによって吹き飛ばされた。

魔女狩りの王(イノケンティウス)はキメラにさせられた被害者達に向かって突進した。

しかし、彼らは才能こそ開花していないものの神器持ちや魔法の素養がある子供達だ。

意識もなく自我も無いが強制的に開花させたのだろう神器、魔法による攻撃を行ってきた。

私は攻撃を魔女狩りの王(イノケンティウス)を楯にしながらも前進させる。

しかし、神器持ちの被害者の一人に精神攻撃系の神器持ちが居たらしく、その攻撃を食らってしまう。

 

 

 

 

 

「うっ…………は?」

 

 

 

 

一瞬だけ目眩がした後に目の前にはまだ転生したての頃、私の容姿が自分達に似ていかったのが気に入らない。

たったそれだけの理由で私を虐待していた実の親が当時の格好のままで現れる。そう、恐怖の象徴と言っても過言でもない当時の姿でだ。

 

 

 

 

「あぁ……そうか……。私は……いや、あの頃の私は無意識の内にあんた達の事がトラウマになっていたのか。ぐうぅ……」

 

 

 

一瞬軽いズキッとした頭痛がいきなりしたと思ったら封じ込めていた昔の記憶が蘇る。

それは私に殴る蹴るの暴行を行ってくる父親、私に火が付いた煙草を押し付けてくる母親、その他の私が受けてきた虐待の記憶だった。

そして、昔の記憶が私を過去の精神的に弱っていた私に戻していく。

そして私はいつの間にか涙を流し叫びながら魔女狩りの王(イノケンティウス)をけしかけていた。

 

 

 

 

「消えろ!!私の目の前から!!!」

 

 

 

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)は両親の幻影を燃やし尽くし、その勢いで側に居た精神攻撃系の神器使いを消し炭にした。

その勢いは止まらず魔女狩りの王(イノケンティウス)はその身に内包した膨大な熱量を一気に周囲に放出して残りの被害者達も消し炭にし、消えて行った。

そして、精神攻撃系の神器使いが死んだことにより私は徐々に正常に戻っていく。

 

 

 

「はぁはぁ……くそっ……」

 

 

 

 

暫くして自分の担当していた被害者達を彼なりの方法で対処したらしきヴァーリも白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を展開したままの状態で戻ってくる。

 

 

 

「衛宮志穂、俺の方もどうにかする事が出来た。そろそろ、高みの見物と洒落混んでいた悪趣味野郎を消すぞ」

「……了解だよ。ただ、さっきも言ったけど君は後方支援に徹すること」

「あぁ、分かってる。先程の彼らにも不完全ながらドラゴンスレイヤーが仕込まれていたからな」

 

 

 

その後の行動は速かった。

まず、私達が出せる全速力で屋敷の玄関に突っ込み私が普通の《強化》とルーン魔術による強化の二重掛けした状態で扉をぶっ飛ばし屋敷の中に侵入。

次に屋敷の中に入ったら遠隔操作された傀儡とでも言うべき鎧が襲ってくるが私とヴァーリの魔術と魔法で消し飛ばした。

そして、傀儡に繋がっていた魔力のラインをたどり着いたのは地下にある一室だった。

 

 

 

「ここだね」

「ああ。ここから鎧を操っていた奴の魔力が感じることができる」

「よし……突入するよ。私はなるべくクルシュヴァを一瞬で仕留める様にする。だから私が仕留め損なったらヴァーリがとどめを刺して」

「了解だ」

 

 

 

私達は一瞬だけ視線を合わせアイコンタクトで今から突入すると合図を出す。

私はドアを殴り飛ばし、並の悪魔でも補足することが難しい速度で距離を詰める。

 

 

 

 

「なっ?!」

「沈め!!」

 

 

 

私の拳がクルシュヴァの溝内にめり込み、一気に意識を刈り取り、クルシュヴァを吹き飛ばし壁に叩き付けた。

そして、ヴァーリと共にクルシュヴァを拘束し終わりアザゼルさんに連絡を入れて今日の仕事が終わる。

 

 

 

「………ミッションコンプリート。久々に胸くそ悪い仕事だったよ」

「…………魔術師ってこんな脳筋だったか?」

 

 

 

私の戦闘スタイルはヴァーリが思い描く魔術師の物とはかけ離れていたらしく暫くの間悩んでいたのだった。

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