時空のエトランゼ   作:apride

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18話 狩りの角笛【後編】

《 格納庫 》

 

「水原班長は居るかしら? 」

 

「これは参謀長殿! 整備班長は… おや!? 」

 

振り向き、即座に姿勢を但して敬礼する榎本掌帆長が言葉途中で気付いたかの様に…

 

「何か? (何よ! じっと見て!)」

 

榎本は被っている帽子の鍔をクルリと後ろに廻して叫んだ!

 

「いやぁー 今日は一段と別嬪(べっぴん)さんですな! ガハハ!」

 

「ウフフ 相変わらずお上手だこと! (流石はオヤヂのノリだわ)」

 

「俺に用らしいね? 」

 

後ろに水原が立っていた。

 

「ええ、頼みがありましてね。ちょうど良いから榎本さんもこっちへ! 」

 

軽い笑みを浮かべながら、招き猫宜しく手招きする。

 

「そんな風に呼ばれると困っちゃうなぁ~オジサン」

 

後ろ手に後頭部をワシワシ掻きながらついて行く榎本。

 

 

格納庫の片隅へ移動して、三人で顔を付き合わせる。

 

「哨戒機の準備を頼みたい」

 

ミハルは真顔になり、小声で二人に囁いた。

 

「哨戒機? 用途は? 」

 

水原も表情は真剣だ。

 

「対潜哨戒‥ いえ、空間探索かな? 亜空間ソノブイを使用出来るようにしたい」

 

「それなら、操縦士・電探員も予め手配しておくべきですな… 」

 

そう溢す榎本も真顔で顎を右手で擦る。

 

「100式探索挺を何時でも出せるように仕上げとくよ… 勿論、このことは他言無用で‥ だろ? 」

 

水原は全てお見通しとばかりに了解の仕草を向けた。

 

隣では榎本が親指を突き立ててウインクを飛ばす。

 

 

「では、お二方‥ 宜しくお願いします」

 

 

 

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《 技術解析室 》

 

デスクトップに肘をつく新見薫の正面に【藪 助治】一曹はいた。

彼は今、バケットチェアに腰掛けて少し項垂れている。

表情は暗く伏し目がちにブツブツ漏らすように話している。

 

山崎(ヤマ)さんと一緒にこそこそ俺に秘密を作って… 何か裏切られたような気がする」

 

 

「そう‥ 航海長の話をね… 」

 

新見は軽い相槌を打ちながら聞いている。

 

 

徳川(オヤジ)さんのことを信じていたのに… 」

 

スッと新見の左手が伸び薮の肩に置かれ、肯定するように潤んだ瞳で見つめると言葉を溢す。

 

「悲しいことよね‥ でもあまり思い詰めちゃ駄目よ」

 

薮の態度は一変し、頬を朱に染めていく…

 

薫は右手で軽く髪を漉きながら囁きかける‥

 

「何かあったら気軽に相談してね」

 

「あ‥ はい」

 

ペコリと会釈しながら退室する薮の目は色を取り戻したかの如く輝いていた。

 

 

 

「ふぅ… ガミラスの精神攻撃以来ここは大繁盛―― 大収穫ね」

 

新見薫はモニターに映る【島大介】のデータを横目にご満悦だ。

 

「それはなによりね」

 

「キャッ!? いつの間に‥ ミハル」

 

慌ててモニターを抱え隠す仕草になった薫はばつが悪そうだ。

 

「薮君と入れ替わりに入ったのに気づかなかったのは貴女よ? どこか抜けてるところは変わらないわね… 」

 

「っ! 貴女‥ 記憶が」

 

「一発でバレちゃいますか… 流石は薫ね」

 

姿を見た瞬間に感じた懐しい雰囲気の中に薫は見逃さなかったのだ。得意気な態度のある仕草(・・・・)を!

 

「勝ち誇った態度の貴女が必ず右手の人さし指で下唇をなぞる癖! 憎らしいったらありゃしないわよ! ミハル!! 」

 

薫はミハルに抱きつくや胸に顔を埋め泣き出した。身長差があるので自然とこういう形になると諦める。

 

『君らまさか‥ そういう間柄』

「…(違います! 泣き上戸… やや重い女よ)」

 

 

「心配したんだからね。ヤマトで再開した時は期待したけど… 相変わらずだし。男勝りな瓜生ミハルも悪くなかったけどね」

 

新見薫は悪戯っぽく笑った。

 

「薫さん、男勝りはレディーにとっては禁句よ! それはおいといて… 頼みがあるのよ」

 

 

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《 同時刻 艦長室 》

 

椅子に腰掛け漆黒の宇宙空間を見つめる沖田十三

 

「検査入院か… 」

 

『 コン コンッ 』 ドアをノックする音が鳴る

 

「入りたまえ」

 

「保安部長 入ります」

 

「君とは‥ 珍しいな」

 

「少々お話がありまして… 」

 

 

涼やかに沖田を見つめる伊東真也の糸目が薄く開いた。

 

 

 

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───────

 

 

《 第一艦橋 》

 

エレベーターが到着し、中から古代と森が降りてきた。雪はご機嫌斜めで、一緒にやってきた古代はその様子が理解できないようだ。

 

『あちゃぁ、古代の奴は鈍さ半端ないな! 』

「…(古代君はほっときましょ。雪を押すわよ)」

 

 

 

「全員揃ったな。皆に報告がある! 沖田艦長が検査入院に入られた。‥検査と言っても診断には軽度の手術が設定される」

 

艦橋内にざわめきが起きる。

 

「静かに! その間は副長の私と参謀長で艦の指揮を執る。‥尚、この件は他言を禁ずる。艦内で不安を高め士気の低下を招くことは避けたい」

 

「艦長のご病気は何なのですか? 」

太田が不安を隠せず震えながら問いかけた

 

「… 慢性型の遊星爆弾症候群が疑われている」

 

その場が響動めく…

 

「あの人は死なん!! …絶対に死なん!! 絶対に‥

 

徳川機関長が祈るように… 呟き続けた

 

 

「四時の方向から魚雷!! 」

 

遮るように叫んだのはレーダー観測中の西条だった!

 

 

『来たぞ! ミハル』

「…(次元潜航艦!)」

 

ミハルの頭に美晴の声が響く

 

『 ド ォ ォ ー ン 』

 

被弾の衝撃が艦を揺らす!

 

「右舷に被弾! 回避行動で損害は軽微! 」

 

「全周域に艦影無し! 何処から撃たれたのか解りません!! 突然現れて… 」

 

「右舷前方に岩塊! 星間物質が濃密に存在します! 」

 

「魚雷2! 距離600! …8時の方向からです」

 

「嘘! そんな… 」

 

西条からの報告に『あり得ない』という顔の新見

 

 

「対空防御!」

 

古代の叫びと同時に対空パルスレーザーが斉射して魚雷を直前で破壊した。

 

「速度このまま! 2時の方向 原始恒星アステロイド帯域へ退避! 」

 

真田副長の指示で岩塊の中に身を隠すヤマトだった。

 

 

『間違いなく奴らだ! ミハル』

「…(岩塊が多すぎる! 艦載機を出すのは危険過ぎるわ)」

 

『間違えるなよ』

「…(そうだった)」

 

ミハルが脳内会話をしている間も間髪入れず魚雷が放たれていた。

 

 

「微妙な次元震… 」

 

スコープを覗きながら真田は呟く

 

「先生のご指摘通り、これまでの雷撃の記録にも同様の震動が記録されています」

 

新見がスコープを見つめたまま報告

 

「これは… 次元空洞へ任意に回廊を発生させてるのかも? 」

 

真田の呟く横からミハルは割り込む!

 

「異次元からの攻撃の可能性大ですね」

 

「うむ、異次元航行能力を有する戦闘艦かもな」

 

 

「レーダーに感! 4時の方向 距離2万8千! 敵艦影1 星系外への転進認! 」

 

観測報告を告げる森に続き、相原が報告する。

 

「ガミラス艦の航行振動波確認しました」

 

「異次元への潜航時間にも限界があるかもと思ったけど、どうやら音を上げたみたいね」

 

新見が皆に振り向き告げる。何処と無くホッと抜けた表情が伺える。

 

『薫… 楽観的過ぎるぞ!』

「待ちなさい!…(わかってるわ)」

 

「ミハ‥ 参謀長」

 

「敵が次元潜航艦と推測される対潜水艦戦闘だ。ならば、互いに探り合いの戦い‥ 即ち【心理戦】の色あいが濃い! 敵の動きがあった今からが勝負だ! 皆気を引き締めろ! 」

 

「転進した航跡はデコイだと? 」

 

副長が問いかけてきた

 

「あからさまに過ぎますが、デコイの使い方としては初歩的なレベルです。まるで去って行く姿を晒すが如く… むこうは【様子見】の一手なのかも? 」

 

 

「艦首の亜空間XDCR(トランスデューサー)でピンガーを打ちましょう」

 

新見が意見具申する

 

「圧倒的に不利な状況下でピン打ちは自滅行為だ。哨戒機によるASW(対潜水艦戦闘)をやりましょう」

 

ミハルは新見を遮るように対潜哨戒機によるASW案を提示した。

 

「亜空間ソノブイか… 確かに。かなり危険を伴うが? 」

 

真田副長は同意しつつも、最後になにやら気に掛かるような?

 

「しかし! この岩塊空間は危険すぎます! 」

 

新見も反対だ

 

 

『コトニノゾンデハ…キケンヲカエリミズ…だ! 』

「… 我々の目的をお忘れか!? 優先すべきは本艦の生存だ! 真田副長‥決断を! 」

 

ミハルは真田に決断を促すべく叫んだ!

 

「やらせてください! 」

「意見を撤回します! ピンガーは本艦を危険に晒します!」

 

古代と新見だ!

 

 

「ふ、よろしい! これより対潜哨戒機によるASWを行う! 」

 

 

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───────

 

 

格納庫へと急ぐ古代の目の前に人影が立つ

 

 

「榎本‥掌帆長? ちょうど良かった! 100式探索艇に亜空間ソノブイを装備し発進準備! 」

 

「はっ! 準備完了しました! 」

 

「ええ~! 早っ!! 」

 

「常に一歩先を読めって訓練過程で教えたろ? 電探員も確保済みだ‥ フフ 」

 

得意気に語る榎本の後ろには山本玲が控えていた。

 

「山本… 」

 

「流石は俺だろ? ‥と言いたいとこだが、参謀長殿から頼まれてたんだな~俺と水原さんが! ナハハ! ほれっ、お前も準備しろ! 」

 

 

 

「こちら古代 発艦許可願う …(瓜生さんが先手を‥三歩くらい先読みするなんて)」

 

「100式 003 発艦せよ 」

 

「発艦する! 」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

その頃艦橋では森雪が心配そうに古代機を目で追っていた。

 

「大丈夫よ、彼は無事に帰ってくる」

 

「ミハル‥姐さん。 不思議ね? 姐さんが言うと納得しちゃうのよ… 何故だか? 」

 

 

『だって主人公だもん』

「だって主人公だもん あっ! 」

 

「主人公?? 」

 

「彼はあなたの主人公みたいなもんでしょ! ウフフ (美晴につられてしまった)」

 

「帰ってきたら抱きついちゃいなさい! 玲ちゃんに取られるわよ! 」

 

 

「やってみようか‥な」

 

握る手を見つめ決意を固める雪だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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