時空のエトランゼ   作:apride

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19話 目覚めたミハル

次元潜行艦からの襲撃! 岩塊が漂う危険な空間を100式哨戒艇に乗り込む古代と山本。

 

「撃沈‥ は、どうか… 奴の鼻っつらを叩いてやる! 」

古代は逸る気持ちを抑えつつ、出撃前の瓜生の言葉を思い起こす。

 

――『沈めようと思うな! 奴の【目】を潰すことに集中しろ! ‥君らが無事に帰還することが最優先だ』――

 

 

 

「古代さん! ソナーに感! 微弱ですが、ガ軍の反応有り! 」

 

「座標上の目標にターゲティング! ヤるぞ!」

 

次の瞬間、機体から放たれた2発の対艦ミサイルが岩塊を縫うように飛翔…… 爆発の光球が確認できた。

 

「…やったか? 」

「目標に着弾を確認! やりました!古代さん! 」

 

 

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《 同時刻 ヤマトCIC 》

 

「ガミラス艦に動きが! 次元震動に乱調‥これは…損壊? 敵艦の転進を確認! 探査範囲外へ消えました! 」

 

『こちら古代! 敵潜航艦へ攻撃成功! 帰投する』

 

 

報を聞いた真田副長が静かに頷き、瓜生の肩にポンと乗せて労いの意を示した。

 

「…しかし、引き際が良いな。我々を翻弄する意図が有った筈だ。気を抜けないな…… 」

 

真田は顎に手を充てながら呟く。

 

「潜水艦ならば、隠密性が喪失することの意味を考えると適切な判断でしょう… この先に本隊が待ち構えていると観て間違いないと… 」

 

「同感だな… 君とは蟠りもあったが、謀に関しては敵わない。…頼りにしているよ」

 

ミハルと真田は【メ号作戦】で意見の相違があり、ヤマト乗艦まで険悪な関係であったのだ。作戦立案の当事者であった瓜生ミハルを真田は心情的に快く思っていなかった… 冷静沈着で無愛想に見えて真田志郎という男は血の通った人間なのだ。

 

 

 

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「記憶が戻ったそうじゃの? 」

 

戦闘の後に医務室を訪れた瓜生に開口一番‥佐渡先生は普段の態度と違う【医師】の顔で訊ねた。

 

「はい… 何もかも全て思い出しました」

 

愁傷な面持ちで答えるミハル。

 

「それで…… 失なっていた間の… 」

佐渡先生の最大の懸念が恐る恐る口から溢れる。

記憶喪失から回復するという… それにはひとつのリスクが考えられた。

 

――記憶を失なっている期間の記憶を喪失――

 

 

 

「不思議と… 全て記憶が繋がっております。目覚めた時に自身を見て狂乱したことから、メ号作戦… 多くの仲間を死地に送る外道… 」

 

ミハルは伏し目がちに、そして自嘲気味に呟いた。

美晴の行いは全て【瓜生ミハル】の行いなのだ。記憶に在るからには自覚は芽生えたが、未だに違和感が付きまとう。当然だ… 本来はミハルには身に覚えがないはずが、その身が体験した事象は脳に記憶として刻まれている。瓜生ミハルは【瓜生美晴】と違い、この世界に於いて超越者でなく大衆の一人に過ぎないのだから…

 

様子を伺い知った佐渡は

「記憶の齟齬に混乱が生じるのじゃろ? 何年分の記憶が急に重なるというのか… お前さんの頭が悲鳴を上げるのは当然じゃ! 非常に稀なことだから…当面はメンタル面でのサポートが必要じゃな! な、新見くん? 」

 

「そうですね、非常に興味深い症例ですから… あ、ごめんなさい」

チラッと視線を向けたミハルに新見は(てへっ)と舌先を出して悪怯れる。

 

「薫のモルモットにされるのはゴメンだからねっ! 」

そう言放ってミハルは(むうっ)と口をへの字に歪ませる。

「友人を‥ ミハルを動物扱いなんてするわけないでしょ! …モルモットほど可愛くないし」

「‥あらぁ? 最後に聞き捨てならないこと言いましたわね? 兎さん! 」

ミハルから見ると新見薫は明かに小動物系女子で、昔から【兎さん】扱いなのだ。

 

「はぁ‥ 間違いなく記憶戻ってる… とりあえずは安心したわ‥柴犬さん! 」

学生時代にミハルからウサギ扱いされ、苦し紛れに反したのが始まり。当初は【ワンコさん】だったのが、具体的に犬種を表し【柴犬さん】となり現在に至る。

 

二人のやり取りを見ていた佐渡がカハハと笑いながら

「どっちも可愛いくてお似合いじゃな! ま、可愛いレベルはうちのミーくんには敵わんが! ガハハ! 」

 

 

ウサギは兎も角、柴犬…は可愛いのか? ミハルは微妙だと思う… しかも猫と比べるな!

 

 

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「それで… 記憶喪失だった時のことだけど? 単刀直入に聞くわ! 本当に貴女だったの? 」

 

「口許にクリームついてるわよ」

「えっ!? 話逸らすなっ!」

 

薫は左手人差し指で口許を拭いながらミハルを睨んだ。

 

食堂に移った二人は気分転換に甘味を堪能している。薫は抹茶クリームあんみつで、ミハルはフルーツパフェである。

 

「いきなり本題に入るかなぁ… それに、どういう意味よ? 私は私に決まってるじゃない‥ パク ん、美味し… 」

真剣な眼差しの薫を横目にミハルは白桃を頬張る。

 

「ミハルにあんな… 女を武器になんて… 男を籠絡するような真似出来る筈ないわ…… 」

 

「… 知ってたんだ。 ふぅん… 」

 

「知ってたどころか… 司令部じゃ有名な噂よ!? 貴女が上司の武藤… ! 」

 

そこまで言い掛けた薫が不意に言葉を止めた。

 

「あー!? それって新作スイーツですか!? 」

 

数名の女子が目を輝かせミハルの前に鎮座するパフェを見つめていた。

 

「ああ、これ? 迷ってたら平田さんが試食してくれって… 新作なの? 」

 

「そういうことですから、皆さんにはもう暫くお待ち願います。メニューに載るまで我慢我慢!」

 

「「「ええぇ~!? 」」」

 

傍にやってきた平田がニコニコと悪怯れもせずに追加注文に先手を打った。試食のために平田がワンオフで提供しただけの一品だそうだ。因みに、フルーツはカットされた状態で生成されるのだ!? 分子レベルからカットフルーツが出来上がる工程を想像すると食欲が萎える…

 

この後、O.M.C.S(オムシス)にメニュー登録作業を行うのが手間らしい… 一度見せて貰ったが、素人が見ても難解な数式が膨大に並んでいて… 吐きそうになった。

 

「ミハルだけずるぅーい! 」

 

態とらしく薫は頬を膨らませる。

 

「はいはい、アラサーがぶりぶりしてもちっとも可愛いくないわよ! あ、平田さん‥新作のパフェ美味しいわ! 絶対売れるわよ! 」

 

 

「で、話の続きよ! 本当のところ… どうよ? 」

目が怖いよ薫さん…

 

「噂は噂よ! …一線は越えてないわよ」

(『越えてたまるか… 男に抱かれるなんて身の毛がよだつ!』)と、脳内の美晴。

 

「そう… 信じるわ」

 

「噂を信じちゃいけないのよ! 山本さんも言ってたわ… ? あれ… 何処の山本? 」

 

「山本? 山本玲さん? 」

ミハルの『山本さん』に山本玲三尉を思い浮かべた薫だが、ミハルが玲を山本さんと呼ぶとは思えず困惑顔になる。

 

(ちょっと! 頭の中で変な歌歌わないでよ!)

(『あ、すまん… 爺ちゃんが好きだったんだよ! 山本リ⚫ダ! 』)

 

「昭和時代かっ! 」

思わず声に出したっ! 別の人格が同居しているというのは… 厄介だ。

 

「ひっぃ! …突然どうしたのよ? 」

突然叫んだミハルに一瞬戦き… それから心配そうに薫がこちらを見つめる。

 

「ゴメン! ゴメン! 急に頭の中で歌声がしたみたいで… ホホホ 」

 

「……。 それ、笑えないわよ。 本当に大丈夫? 」

 

「……大丈夫。 ちょっと考え事してたから」

 

頭の中で歌声が聞えるというのは…… 今の状況だと精神鑑定されてもおかしくない。

 

 

「……(敵潜を撃退出来たことで、ドメルの包囲網に飛び込むことは回避…… 否、早計だな)」

 

 

「…で、また考え事なんだ? 」

 

悪戯っぽい眼差しで新見薫が微笑んだ。

 

 

ドメル軍団との邂逅は避けられない流れなのだろう。今暫くの時間が欲しい… 瓜生ミハルは目覚めたばかりなのだから。

 

 

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《 ガミラス銀河方面軍 旗艦ドメラーズⅢ世 》

 

「UX-01より入電! テロン艦載機からの攻撃を受ける! 損傷軽微なれど、任務遂行を断念! 離脱したと… 」

 

「なっ!? なんだとぉ!! フラーケンのど阿呆めがっ!! あんのっ役立たずがぁぁ!! 」

 

通信兵の報告を聞き唾を飛ばして憤慨するのは副司令のゲール少将だ。

 

「フラーケンが返り討ちに遇ったか… 易々と予定通りにはやらせて貰えぬか… 成る程、なかなか賢いフォクト()のようだ… 面白い!! 」

 

「へ? な、なんと仰いますか? 」

 

ドメルの言い様に振り返り呆気に取られるゲールだが…

 

「獲物は賢ければ賢い程に狩り甲斐があるものだ。奴等が此処を避けては通れないのは折り込み済み… 作戦を変更する… 存分に愉しませて貰うぞヤマト! 」

 

エルク・ドメル上級大将は腕組みの立ち姿で薄笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

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「沖田艦長が復帰されてひと安心ね」

 

「ええ、でも… 沖田提督もあんなボロボロの身体で見てられないわ… 」

 

薫の安堵した言葉にミハルは不安を溢す。ヤマトに乗艦して何度か診察に立ち会い、目にした姿を思い浮かべる… 実際に生身の傷を目の前にすると痛々しさが目立つのだ。其ほどまでに沖田十三の身は痛ましい…

 

「…艦長が居ればねぇ。提督が艦長を兼務するのはご負担も大きいと思うわ。今更だけど、どうして艦長の代替え人事だけが無かったのかな? 貴女は知ってるんじゃない? 」

 

新見薫が振ってきたことはヤマトクルーの中では誰もが疑問視しているが、何故か触れようとしない事柄であった。ヤマト計画発動に際して乗員人事が行われ、艦長以下の主だった人選が成された。ところが、直前にガミラス空母部隊からの威力偵察によりシェルターに集まっていた幹部要員が死亡してしまった。それにより、古代と島など若手が急遽引き上げられたのだが、何故か艦長だけは不在とされた…

 

「…… (上層部)のことだからはっきりとは聞いてないけど、亡くなった谷艦長の後任に〔キリシマ〕艦長の山南さんを推す声が有ったのは事実よ。でもね、艦長の人材が極めて枯渇した現状では後任を据えることが叶わなかった… らしいわ」

 

「そんな! 山南艦長なら能力的に申し分ない筈でしょ? 沖田提督とも直前まで一緒に戦った人じゃない! ヤマトは地球の全てが掛かっているのに… 」

 

「薫… 冥王星のガミラス前線基地を攻略したからと、地球に対する脅威が排除された訳じゃないよ? 地球防衛の要として土方提督と山南艦長は残った」

 

「…〔きりしま〕くらいしか艦が残ってないのに? まさかっ?! 新造艦? 」

 

ここまで話を聞いて薫は気づいた。波動エンジン開発は継続中… 問題は【波動コア】を独自に製造する目処が立てば量産可能な段階にあることは新見も既知だ。

 

「断言は出来ないが、そういうところじゃないかな? ヤマトが帰ったら地球は滅亡してました! ‥なんてのは困るからね さぁ、そろそろあがるわ! 湯疲れしちゃうわ」

 

「ミハル! 真田さんを… 助けてね。彼も技術屋が本業だし、副長の任は負担が大きいはずなのよ… 」

 

「わかってる… だから私のような参謀が乗艦してる」

 

『真田志郎二佐は本来【技術士官】なのだ。艦長不在に技術士官が副長とは… なんとも出鱈目な戦艦だな! 』

と、ミハルの脳内では美晴がぼやいた。

 

「…(貴方の存在が出鱈目の始まりでしょ! )」

 

 

「私ものぼせそう… それにしても、記憶が戻ったにしては… 男っぽさは抜けないわね? 」

 

目の前に広がる天橋立の景色を見ながら新見薫は呟く。

二人は大浴場を後にするのだ………

 

 

「……(気づいたけど、貴方ずっと薫の胸見てなかったかしら? )」

『…大きいオッパイは目の保養』

「…(保養に足りない胸で悪かったわね! )」

 

 

ミハルはアニキャラには希少種の微乳だ…

貧乳でないところが希少種たる由縁です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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