時空のエトランゼ   作:apride

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―西暦2198年―

現在、瓜生ミハルは統合幕僚監部作戦部に所属している。ヤマト計画には直接関わる立場にないが、つい最近の出来事から否応なしに【ヤマト計画】へ捲き込まれて行くことになる。



回想【其の五】【挿絵有】

《統幕長室》

 

「統幕長就任おめでとうございます… 父上様(・・・)。で、お呼びのご用件はなんでございましょ? 」

 

「皮肉はよせ… こんな時期にとんだ御鉢がまわってきおったわ。そんなことはよい、呼んだのは… ある人物の護衛に付いて欲しいのだ」

 

「護衛? 私はSPじゃありませんよ… 護衛なら警察の仕事でしょ‥ 」

「極秘任務だ! 相手は超が付く重要人物でな… 」

「まさかイスカンダル!? 」

「そう、イス‥ なんで知ってる? 」

 

昨日のことだ…。突如現れて国連宇宙軍の絶体防衛ラインを突破し、あっという間に地球大気圏へ侵入した宇宙船は富士宇宙軍港に強硬着陸した。それはガミラスとは異なる文明を彷彿させる『金色に輝く流麗』な姿であった。

即座に箝口令が敷かれたのだが…

 

「何千人の口を塞ぐことは不可能ですよ。それに俺だって情報部に伝がありますしね」

 

「情報部…。その… 付き合ってるのか? 」

 

光政はミハルが情報部の男と時々逢っていることを知っている。最近は頻度が上がっていることに心配していたのだ… 色んな意味で。

 

「ハハハ、ご心配なく。男に興味無いですからぁ~」

 

「興味無いのも困るが、相手は選ぶようにな… あと、()はやめなさい」

 

ミハルは身を翻すと右手を挙げヒラヒラと『はいはい』と素振りで退室しようとする。

 

「待たんかっ! 話はこれからだ! 」

 

「あっ、そうでした! 」

 

「ぬぅ‥ 知っているなら話は早い。お前に頼みたいのはイスカンダルからの特使の警護だ。若い姫君だそうだ… 身辺警護も見合った人選があって白羽の矢が立つことになった訳だ… 頼んだ(・・・)ぞ」

 

…話の中で【頼みたい】から【頼んだ】に変化したのを聞いたミハル(美晴)は理解した。

 

「判りました(父の頼みとは逆らえない命令なのだな)」

 

光政は素直に返事を返した娘を満足げに見つめた‥

 

 

 

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「さて、ヤマト計画が一気に動き出すな。この数年の流れから… ま、当然なのだろうが。森外務次官が接待役で、娘の雪が付き添い人だな… うん」

 

渡された資料に目を通しながら考える。ユリーシャと雪が被った『事故(・・)』はどの日時・場所か不明だ。事故かテロかもわからんが、下手を打つと自身も巻き込まれかねない。記憶にある事故現場の描写はワンカット… 自動車事故? 車両に細工か…爆発物かも?

 

「だとすれば… こいつは役に立たんかな? 」

 

資料と一緒に渡された小型のアタッシュケースをテーブルの上で開き見て呟く… 黒光りする逸物が納められている。

 

「おやおや‥ 物騒なモノを眺めてますね? 」

 

不意に掛けられた声に視線を向けると飄々とした長身の男が薄笑いを浮かべ立っている。

 

「なんだ、伊東か… 」

 

「なんだはご挨拶ですね… 父上と喧嘩でも? 」

 

ミハルの不機嫌な様子に肩を竦める仕草で伊東は返すが、いつもながらの糸目から考えが詠みにくい男である。

 

「昨日の異星人… その警護役にされた」

 

「…成るほど。異星の皇女だそうで、ならば予測の範疇でしょ? 学習院では宮様と御学友だったそうで… 」

 

「その頃の記憶はさっぱりでねぇ。今の俺に皇女殿下のお世話など苦痛でしかないわ! 」

 

「たしかに俺様(・・)な瓜生三佐殿には荷が重そうな件ですね。一応女性なんですから()はよしましょうよ? 」

 

堅苦しいのは苦手な様子に憤るミハルを、伊東は口元を歪めて誂う。

 

「親父と同じこと言うな! …気をつけてはいるのだがな。なら()なら良いかな? フフ」

 

何年経ってもなかなか抜けない。せめて『ボク(・・)』なら可愛く見てもらえるだろうか? …いい歳してボクっ娘はどうかと自己否定した美晴。

 

「俺も僕もいけません。お立場を弁えてください‥お嬢様(・・・)

「うちの爺の真似か? 全然似てねぇぞ… あの老獪な紳士の域にはまだまだ及ばんな伊東くん♪ 」

 

「…似合わないことはするもんじゃありませんね。貴女と居ると調子が狂いますよ」

 

そうは言うものの、伊東はこの垢抜けなお嬢様の傍が何故か心地好いのだ。瓜生家の新次郎もそうだが、狐の様なこの男も含め… 美晴はイヌ科に懐かれるらしい(笑)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ところで… この件。情報部はどこまで把握してる? 」

 

「……。 イスカンダルという星から地球を救済の意を持ち特使を派遣してきた。異星人は我々地球人類とそっくりな哺乳類型人類。藤堂長官と数名の高官が会談したが内容までは把握してません」

 

「それだけか? 」

「それだけです… 」

 

現時点では、具体的な救済内容や特使の名前なども情報部に流れてはいないようだ。イズモ計画派の動きが気になるところだが…

 

「芹沢局長の周辺に動きは? 」

 

「… 今の所は静観でしょう。が、此後の話の流れ次第では過激な行動も有り得ますね。なにせ、いきなり現れて『あなた方を救います』と胡散臭い話ですからね」

 

表情からは伺えないが、この男もイスカンダルからの救済話には疑念が強いようだ。旨い話には裏があると勘繰るのは無理からぬことだ。

 

「この話が纏まれば、恐らく… イズモ計画は破棄される。ごく僅かな選民の方舟などに… 逃げた先に希望など落ちてはいないものだ」

ミハルは誰に向かうでなく呟く…

 

 

「逃げた先……か」

 

イズモ計画などと御大層な名称の【ノアの方舟】を気取るが、簡単に言えば逃げ出すだけだ。故郷を奪われて逃げ出した民族が安住の地を得られるだろうか? 異星人の甘言に乗るのも気にくわないが、『逃げる』と言われるのは男としては聞き捨てならない言葉だ… 伊東真也は何処かしらプレッシャーを感じるのだった。

 

 

 

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「その様子では、瓜生ミハルはヤマト計画派で間違いないな。統幕長の娘だし、藤堂長官‥行政府の意向に沿うのが筋に違いないのだが… 監視は継続してくれ」

 

「了解です… 局長」

 

芹沢軍務局長の厳つい眼差しを前に相変わらず飄々とした物腰で伊東真也は軽く敬礼して退室する。

 

 

 

 

 

 

 

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